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アジア太平洋障害者の10年の評価<完全参加と平等<へのNGOの展望

モルディブ共和国

A.全国的な障害統計

モルディブにおいて障害を持つ人々に関する国全体の統計を取ることは難しいことである。 それは、適切な調査が未だ行われていないからである。障害を持つ人々の国全体の統計の情報は 1981年と2002年にまとめられている。 2002年の国勢調査によれば、この国には計4,728人(正確な数字ではないが)の障害を持つ人々がいる。

普通の人は障害を持つ人を指して “nukulhe dey meehum” と呼ぶ。その意味は「障害者」である。Care Society(ケア協会) やいくつかの政府機関の事務所では特別なニーズを持つ人という用語を使うが、社会でその意味を理解している人は数少ない。精神病の人については、障害の世界で意欲的に動いている人々は彼らもまた障害者であるとみなしているのだが、一般には「きちがい」(“crazy people”)と言われる。

それゆえ、モルディブの障害者の総数は限られた情報により以下のように把握されている。

2002年国勢調査
番号 障害種別 障害者数
聴覚障害 1219
歩行困難 1049
四肢の障害 624
視覚障害 1132
会話困難 1112
精神の問題 1364
不明 932
合計 4728

B.障害を持つ人々の生活の総体的な状態(概観)

(B-1)あなたの国で障害を持つ人たちが最も緊急に必要としているものは何でしょうか?

モルディブの障害を持つ人たちが最も緊急に必要としていることは、全国的教育組織における障害者のためのアクセシビリティの不足とリハビリテーション・サービスの不足に対処することである。 教育は広く国内に普及したが、学校は障害者が教育を受けるのに適した環境と資源を備えておらず、障害を持つ児童は首都のあるマ―レ島の Jamalludheen School で国が行っている特別クラスでのみ授業を受けられるという限定された状態にある。 けれども、Care Society もまた首都マ―レにおいて障害を持つ児童と若年成人向け限定40人の特別教育を実施している。それは、リハビリテーション付の特別教育と家族が完全参加する社会的統合プログラムである。従って、私たちのプログラムは重い障害を持つ児童を対象としていると言える。

然るに、200の島々の地域社会に居住する障害者まではこのようなサービスが及んでいない。それゆえ、私たちの最優先事項は島々でCBRプログラムをスタートさせることである。 第1回CBRワークショップは2002年の9月第1週に Addu Atolls において開催される予定である。これが島々における一連のワークショップの始まりである。 私たちはそれぞれの島がCBRの活動の所有権を握ることで、地域社会が活性化することを意図している。

2人の脳性まひ児が能力訓練支援を受けている

障害者の社会への参加状況をどれぐらいだと思いますか?

2人の脳性まひ児が能力訓練支援を受けている写真

障害者の地域社会への参加は5%にも満たない。けれども、私たちはこの議論をサポートする統計をなんら持っていない。政府は2002年末に国を上げての障害者のニーズ調査を計画している。うまくいけば私たちは、(今の統計から得られるものよりも)良いモルディブの障害者の状況を提供することができる。

各自の社会の中で社会と経済の発展に参加している障害を持つ人々が、わずかながら存在する。しばしばそれらの人々は、国外の施設に子どもを送り込むことができる余裕のある家庭の出身である。海外に子どもを行かせる余裕のない家庭は、子どもの身体的・精神的発達の機会を奪われ、その結果、社会参加は大変限定されたものになる。

(B―4)障害者はいつ社会の主流になると予想できますか?

Care Society には長期戦略プランがある。それによって、2010年までには、制度と地域に根ざしたプログラムを通じ、首都メールや他の島々の教育、リハビリテーション、社会的統合と雇用の機会が望めるだろう。Care Society は政府施設、NGO、障害者の家族、そして Care Societyの関係者の支援を受け、この目標を達成するよう試みるつもりである。

私たちはCBR プログラムを、Addu Atollというさんご礁の環礁からできた19島のひとつで2002年9月に始める予定である。私たちは障害者とその家族に関連するすべての問題をCBRで扱うことに対して楽観的観測を抱いている。この最初のワークショップが成功すれば、全国の他のところでも実施されよう。

(B-5)障害者のモデルとしてあなたの国でよく知られた人物は誰でしょうか?

(RNNの障害者ヤングリーダー(チームリーダー)にどうぞ推薦してください。)

C.現在の障害者のための施策と予算の概算

[C.1]  あなたの国の政府が、1993年からの10年間の現在に至るまでに、障害者のために達成した5つの主要な事項をご記入ください。もし、追加の達成事項があるならば、紙を追加してご記入ください。

最初の特別ニーズ教育のクラスは、聴覚障害の児童のために Jamaaludheen School 内に1985年2月16日に設置された。

過去の期間において、このクラスは大変な発展を遂げた。過去には外人がクラスの運営において鍵となる役割を演じていた。けれども、彼らはすでにこのクラスにおいて現地の人が児童を教育することができるよう訓練を始めていた。学校もまた近ごろ指文字アルファベットを用いた手話を始めたと発表していた。これがたぶんこの国の完全な手話マニュアルの始まりかもしれない。

他のクラスは 1998年1月18日に身体障害と知的障害の児童のため同じ学校内に始められた。

このクラスの重要性を考慮した結果、学校は身体障害と知的障害の児童のために新しいクラスを追加した。けれども学校はさらに人を訓練する必要があった。児童それぞれの身体障害と知的障害の実情にあう方法と資源の開発のためである。

Care Society は1998年11月8日にこの国における障害者の権利のために働くように設立された。

Care Society 主催による最初の障害理解プロジェクトの発会式

Care Society はこの国の障害者の権利のために働いている。私たちは、障害者のよりよい環境を達成するため、アドボカシーと意識啓発のキャンペーンにおいてより重要な役割を演じている。私たちの目標は、政府、NGO、障害を持つ人たちの家族をキャンペーンに含めることである。従って私たちは国内的にも国際的にも資金・資源を得るために熱心に働く必要がある。

親、障害児教育の教員、子供たちで Villingli 島へのピクニック。

介護をする親の会( Care Parents Forum)はいくつかの家族により2000年に設立された。

ピクニックの集合写真

介護をする親の会はこの国における障害者の親の唯一の組織である。その組織の仕事は、親に障害について教育することと、障害児のよりよい未来を提供するすべての考えられる機会を探すことである。

Gayyoom 会長による Care Society の新館とケア開発センターのオープンセレモニー

ケア開発センターは2001年8月1日に特別教育の提供とリハビリテーションを目的として設立された。
ケア開発センターは障害を持つ児童と若年成人層を対象とした教育付のリハビリテーションセンターである。
私たちは地元の人に特別教育分野の訓練を始めた唯一のNGOである。それによって、メインストリーミング教育の中で勉強する機会を得ることができない障害児を援助することになる特別教育に携わる教育者を生み出すことになった。私たちは特別教育の上級課程の終了証明書を得る訓練を13人まで実施した。そのうちの11人はケア開発センターで働いており、残りの2人は Jamalidheen School の特別教室にいる。私たちは、島々と首都マ―レの学校からきたその他13人の地元の人に訓練を実施する予定である。その訓練を受けた者は障害児を引き受けている学校の運営に役立つことになるだろう。

オープンセレモニーの様 新館の紹介

障害者のための補助具の提供

政府はモルディブの障害者の生活を向上させるいくつかの用具を手に入れる援助をしている。たとえばその用具とは、杖、補聴器、車椅子などである。

視覚障害者手当ての給付

政府は婦人・社会保障省に登録したすべての人に対して視覚障害者手当てを給付している。 その給付金額は一人当たり一ヶ月に300モルディヴィアンルヒヤである。 よって彼らは2001年には合計50,100ルヒヤ与えられた。

[C-2] あなたの国で国民および障害を持つ人々に対してここ10年間で最も影響のあったニュースや事件は何でしょうか?

image:研修会の様子

私は、1998年の Care Society の誕生がこの国の障害者にとって大変良識ある出来事であったと思う。それ以来、政府や一般社会のどちらにも、障害を持つ人々に対してかなりの態度の変化が見られた。私たちは自国の障害者のために技術的教育の訓練やリハビリテーションの提供を始めた。続いて職業訓練、アドボカシープログラムも始まった。私たちは2002年にCBRもまた始めるつもりである。それゆえ障害者とその家族は希望を持っている。

[C-3] あなたの国のどれぐらいの人たちが、この10年の存在を知っていると思いますか? 

私は1%にも満たないと思う。10年の活動と関係している省庁ではキャンペーンについて知っているけれども、関係のない省庁と一般大衆には多くは知られていない。従って、その活動と目的を知っている人はわずかである。

[C-4] あなたはどれぐらいの人が1975年の国連の「障害者の権利宣言」を知っていると思いますか?

1%にも満たない人々しか、1975年の国連の「障害者の権利宣言」については知らない。

上記の宣言は公的にあなたの国の言葉に訳されていますか?

[I-はい、II-いいえ]

II.いいえ、私たちは公式、非公式を問わず国連の権利宣言の翻訳版を持っていない。

Care Societyによる国民啓発研修会

D.次の十年へ向けての障害者の5つの最優先事項の評価

[D-1] あなたの国の政府に次のアジア太平洋の10年において障害者のために実施してもらいたい5つの最優先活動を記入してください。もし、追加の活動を含める場合には紙を追加してください。

モルディブでは、より良い障害者の環境を作り出すために、私たちが実施すべき多くの領域がある。

  • 憲法で認められた教育、リハビリテーション、社会統合、そして雇用の権利
  • 憲法で認められた障害者の権利の実施を進める法律と規則
  • 障害者の権利のための要求に対して責任を持つ部や省庁の指定
  • 障害者の権利に関係するさまざまな政府の部門の手続き、責任、そして、説明責任を見守るシステムを作り上げる。
  • すべての貧困者に対する既存の援助制度とは別の認定による、障害者のための特別な医療と経済的援助の提供

E.国際協力が求められている領域

[E-1] 次の10年において実行を希望する国際協力プログラムの中の3つの優先事項について記入してください。追加のプログラムを含める場合には紙を追加してください。

  • 私たちは学校において障害を持つ児童に教育の機会を提供する特別教育の教育者を地元の人を使って訓練する際に、援助してくれる国際的な団体や人々を必要としている。よくある話であるが、重い障害を持つ児童は学校に出席しない。そして、学習障害のような軽度の障害を持つ児童は、他の児童とうまくやっていくことができない。その結果、軽度の障害児は失敗を繰り返すため学校から去っていくことになる。
  • 他の特別の領域での地元の人への訓練は、たとえば作業療法、理学療法、言語療法などがある。
    これら専門的技術は、障害者にとって効果的で有益なプログラムを開発することになり、大変重要なものである。モルディブでは作業療法士は一人もいない、理学療法士と言語療法士が一人ずついるだけである。それゆえ国における大学教育とこの分野の専門家の不足のために、少なくとも 2人はそれぞれの分野で訓練を受ける必要がある。
  • モルディブでは200に及ぶ島の地域社会に私たちは住んでいる。それゆえ地域社会を基礎としたリハビリテーションは私たちにとって大変重要である。これは私たちにとって新しい領域であり、コンセプトでもある。私たちは地域社会の人たちを活性化するために、それぞれの地域社会で働いてくれる地域開発に携わる人を訓練する必要がある。また、私たちは自国の障害者のニードに合う資源を必要としている。たとえばそれは、情報、それぞれの島における障害者の開発のために効果的に働いているグループへの象徴的な援助(国際的な機関が認知・支持していることを示すこと:訳注)である。
  • また、私たちはモルディブの障害の考えられる原因を明らかにするための調査プロジェクトへの援助を必要としている。モルディブは自然資源が大変限定され、人々の生活スタイルも大いに異なった独特の島国家である。私たちのおもな食料資源は、米とマグロである。多くの野菜を摂取することが難しいため、子どもたちは栄養失調になることもある。それゆえ、そのような研究が、新しい考えをもたらし、重篤な障害のさらなるケースを予防する希望を運んでくれるよう願う。

4)関連報告資料、たとえば本、新聞、絵画、ビデオや他の映像資料は大変歓迎する。 (RNNは10月の会議でそれらを展示する予定である)

身体・運動発達訓練の様子その1 身体・運動発達訓練の様子その2

障害の意識啓発キャンペーンのために Care Society が作り出し開発した資料、レポート、新聞、ビデオ等の添付リストをどうぞご覧ください。

障害者のための国内 NGOのリストは:
Care Society,
Care Parents forum
Maldives Association for the Hndicapped

子供たちがケア開発センターのスタッフから身体・運動発達訓練を受けている。この種の初めてのサービスである。

Mr. Ijazulla A. Ali  ケア協会(Care Society )創設者

(訳:日本社会事業大学大学院 松永千恵子)