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アジア太平洋障害者の10年の評価<完全参加と平等<へのNGOの展望

モンゴル

アジア太平洋障害者の10年における
モンゴルの取り組みに関するNGO評価報告書

2002年8月21日

A.全国的な障害者に関する統計数値

モンゴルは、約156万km2の土地を有する広大な内陸の国であるが、人口はわずか260万人である。人口の約3分の1が首都ウランバートルに、他の3分の1が21県庁都市もしくは地方都市に居住している。残りの3分の1は孤立した集落に住むか、牧畜のためによりよい牧草を求めて次々と移動していく遊牧民として生活している。モンゴルは、1921年から1990年にかけて、記録されるような貧困もなく、高いレベルの人道的発展を成し遂げた。1990年(*)以来、法定貧困レベルが36%まで上昇し、完全失業率も17%以上と概算された(**)。そうした状況から最も悪影響をこうむっているのが障害者である。

モンゴルでは、障害者に関する統計値がいくつか算出されている。健康社会福祉省(Ministry of Health and Social Welfare)のデータによると、モンゴルにはおよそ115,000人(全人口の4.8%)の障害者がいる。統計による内訳は、視覚障害者が10,100人、聴覚言語障害者が6,500人、知的障害者が20,900人、移動障害者が28,000人、他の障害あるいは重複障害のある者が約42,000人である。働く能力があるとみなされた障害者およそ39,700人のなかで、実際に就労している者はわずか5,200人(13.1%)である。そのために障害のある人々の不就労者の割合は、87%と極端に高くなっている。障害のある人々の約50%が貧しい生活をしており、その内の約60%は女性である。

他の(社会福祉センター Social Welfare Center)調査では、67,558人の障害のある人々が、いろいろな種類の障害交付金を受給するために登録されている。実際には44,800人が障害手当てを受給している。農村や田舎地域では、医療サービスや社会サービスが十分でないことや、情報が不足していることなどを考慮すると、これら公的補助金の受給資格を有する障害のある人々の実数は、さらに高いものであることが予測される。また、16歳未満の障害児は、通常は、補助金を受ける資格がない。

イタリアのNGOであるAIFOと欧州連合体European Union(1992-2000)が請け負ったCBRプログラムの中で、1,427,608人(モンゴルの総人口の半数以上)に実施した調査によると、およそ47,050人、すなわち調査した人々の約3.3%に障害があるとしている。障害種別の内訳は、視覚障害者が24%、聴覚言語障害者が15%、移動障害者が15%、痙攣のある者convulsionsが6%、精神障害者が4%、知的障害者が10%、残りの26%は重複した障害を有している。これら障害のある人々の年齢別内訳は、5歳以下の幼児が13%、6歳から15歳の児童が12%、それ以上の年齢の成人が75%である。

学齢期の障害児は、34,000人以上いる。しかし、特殊教育であれ普通教育であれ、学校教育を受けている者は、彼らのわずか36.8%である。(***)

* 民主改革と自由市場経済の導入(訳者注)

** 900,000人が、貧困であると推測されている。(National statistics 国民統計,2000)

*** 文化省(Ministry of Enlightenment)のデータから、1998年

B.モンゴルの障害のある人々の実情

B-1.

モンゴルにおける障害者は、社会の中で、最も貧しく最も脆弱なグループに属しているといえる。市場経済への移行後、健康や社会福祉や教育に関するサービスの経費は削減されている。そのために、非常に限られた財力しか所持していない多くの障害者たちは、自由経済市場のシステムの中で生活していくために数多くの大きな難問に直面している。一ヶ月に約13,800~17,600ツグルク(*)支給される障害交付金は、インフレ率の増加のために、家賃や、暖房費(**)、食費への支出のような、生活上ほとんど必要不可欠なニーズさえも満足に保障してはいない。障害者の88%が貧しい生活を送っていると見積もられ、その数は貧困者全体の36%に匹敵している。わが国の障害者の困難や苦悩の全てを表現することは大変に難しいことである。特に、移動や視覚に重篤な障害のある者の状況は筆舌に尽くしがたいものがある。彼らの大部分は、障害手当てとして支給されるわずかのお金で生き残っていくために、一日一日をまさにやっとの思いで過ごしている状況である。ごくわずかしか障害者のための法律は存在しておらず、その施策も実際に十分に履行されているとはいえない。

* 2002年8月1日における、1ドルの為替レートは1101TUGである。

** モンゴルでは一年の中で霜の降りない日は僅かに100日である。

B-2.

初等および中等の義務教育のシステムは、自由市場経済への移行後は弱体化している。そして障害児たちは、学校をドロップアウトしていく顕著な存在となりつつある。特に農村や田舎の障害児は、教育を受ける機会が非常に制限されている。障害児たちは、彼らの身体能力や精神力によっては、教育の期間中、寄宿舎に滞在し続けることができないことが往々にしてある。(*)基本的な教育的基盤を持つことなしに、彼らが資格を得られるように学習していくことは不可能である。それゆえに、彼らは失業したままの状態が続いていくこととなる。さらに大きな阻害要因として、大学及び大学教育が今やもはや無料ではないということもあげられる。聴覚言語障害や知的障害の子供たちのために、ごくわずかの特殊教育の学校が存在している。そして、これら非常に数少ない学校は、首都ウランバートルに設けられている。これら特殊教育を行なう学校の中のたったひとつが、視覚障害児のためのクラスを提供している。多くの家族は、障害をもったわが子が特殊教育を受けるニーズがあるという可能性に気づいてはいない。あるいは、もし気づいたとしても、都会に滞在する費用の全額を供出することはできない状況にある。

* 牧畜という遊牧民の生活スタイルのために、彼らの子供達は、教育期間の間、寄宿舎に滞在しなければならない。

B-3.

働く能力があると見積もられた障害者39,700人の内87%は、就労していない。共産主義時代の政策は、障害者を分離した状態におくことが強調されていた。障害者のためには、もっぱら「保護」雇用施設が準備されていた。教育や訓練の施設もまたそれぞれ別々に供給されていた。市場経済への移行後に、このシステムを持続していくことは不可能であることが判明した。しかしながら、いまだに新たな総合的な政策は導入されてはいない。障害者が、自らビジネスを経営していくための貸し付けを受ける機会もほとんどない状況である。

建物へのアクセスのバリアフリー、障害者のための特別な環境整備、職業リハビリテーションなどは、よく検討され開発された重要なコンセプトである。障害者が取得可能な役立つ資格のリストは、従来からの資格が中心であるために不足していて、現在の自由経済市場のニーズを満足させてはいない。障害者の利益のために1999年に改正された労働法 The Labor Lawは、まだ初歩的な実施段階にしかない(*)。障害者を雇用している組織は、仕事のために必要とする条件の全てを満たすようには整備されていない(**)。国立障害者リハビリテーションセンター the National Rehabilitation Center for the Disabledにある唯一の職業訓練センターが、いくつかの専門的なトレーニングを提供している。それは、縫製業や、木工業、じゅうたん織りのクラスを含み、新たに、美容師業、理髪師業のためのクラスを開設している。(年間120人の学生を受け入れている。)

*改正された労働法のパラグラフ111は、障害者の雇用を明確な目標としている。50人以上の従業員がいる組織には、少なくとも3%以上の障害のある人々を就労させることが求められている。この最低基準を満たしていない組織は、基準に達するために雇われていたであろう障害のある人々の代わりに税金を払わなければならない。

**国立中央職業所 the State Central Employment Office の最近の調査によると、モンゴルには50人以上の従業員を雇用している組織が708あるとしている。それらは、ほとんどが国の所有する組織である。国家組織への予算を、この税金の支払いのために使用することはできない。結果として、事業者は仮に税金を課されても支払うことはない。

B-4.

リハビリテーションサービスは、首都ウランバートルに集中している。地方の障害者は、経済的な問題のためにウランバートルへの移動手段を確保することは難しく、このようなリハビリテーションサービスをほとんど受けることができずにいる。彼らの大多数は、義肢装具使用の支払いができるほど経済的に余裕があるわけではない。10年間、修理や取り替えなしで補装具を使用している人もいる(*)。理学療法士や作業療法士などの専門職の不足は、障害者の日常生活をさらにネガティブな方向へと作用している。

*モンゴル社会福祉法 the Social Welfare Law of Mongoriaによると、障害者は生涯を通じて一度だけ無料で義肢装具の支給を受けられる。

B-5.

ここ10年間に、モンゴルではNGOが積極的な活動をしている。短い期間であるにもかかわらず、現在、NGOは国家の社会面及び政治面で重要な役割を担っている。NGOはモンゴルの脆弱な立場にある人々に対して、政府が行なう社会サービスを首尾よく実施している。法務省the Ministry of Justiceには、約50の障害者の/ためのNGOが登録されている。その内の35のNGOが統合して、モンゴル障害者組織中央協議会 the Central Council of Mongolian DPOs を発足した。活発な活動をしているNGOとしては、「脳性まひの子供たちの権利を保護する会」や、国と協力して視覚障害者の職業に関する事業を支援するために設置されたモンゴル盲人協会、モンゴル女性障害者協会、AIFOとの長い協力の歴史をもつ「Tegsh Duuren」、日本政府の支援を受けていて伝統的医療を行なっている「Tahilt」リハビリテーションセンターと「Saikhan Setegel」などがあげられる。ここにあげたようなごく一部のNGOは国際協力の多大な恩恵を受け、マネージメントやコミュニケーションの技能を向上させ、モンゴルの障害者の生活をより良くしていくのに大いに貢献している。しかし、ほとんどのNGOは独自の事務所がなく、業務連絡のアドレスは個人に属している。それらのNGOは、権利擁護や経営管理や国際協力の開拓などをアドバイスできるような専門家が不足している。財政上の理由から、モンゴルのNGOの大部分は、ボランティアの手でほとんどの仕事を実施している。

多くのNGOには、確とした目的や目標がなく、いいかえれば、それが政府及び国際組織と協調した政策を維持していくのに問題を生じさせることにもなっている。障害者の/ためのNGOの大部分は首都ウランバードルに設けられ、地方の人々にそれが行き届くことはほとんどない。NGOの中には、単に私的利益を目的に活動しているものがあり、それは私たち障害者にとって非常に悪い影響をもたらすこともある。

モンゴルの障害者の生活をより良くしていくための国際組織による寄付や援助協力、融資などの管理運用、またその実施において、多くの場合は政府組織に優先権が与えられている。結果的に、政府組織は、最終的には実施状況の正確な報告を提出してはいるものの、供出された資源を政治的利益にもとづいて使用している。

C.モンゴルの障害者施策と障害のある人々への予算の概算に関する現時点での優先事項

C-1.アジア太平洋障害者の10年が開始した1993年から現在までの10年間に、モンゴル政府が障害者のために達成した5つの主要な事項

  1. モンゴル政府は、障害者のための対策を改善していくための支援をWHOに要請した。それに応じて、WHOはモンゴルにおけるCBRプログラムの開始を決定し、イタリアのNGOであるAIFOとともに、関係地の共同視察団を編成した。このプロジェクトの調査した地域は国のおよそ半分に及んだ。リハビリテーション分野の何人かの専門家が海外での訓練を受けてきた。彼らは次ぎ次ぎと、臨床医、医師補、教師、ボランティア、ソーシャルワーカーのためのCBRトレーニングを組織化していった。プロジェクトの主な活動は、医療従事者やソーシャルワーカーのトレーニング、包括的な教育プログラムの運営、書籍や訓練マニュアルや所得を創出していくための活動などの翻訳と出版などである。このようなプログラムの実践は、CBRのプログラミングの中でも稀でユニークであるとして高く評価された。「アジア太平洋障害者の10年の最終年に、モンゴル国家はいくつかの分野において障害者の状況をより良い方向に改善していくことが政策上重要な決議であるとして熱心な活動を展開した。しかしながら、 基盤となる施設や設備の不足、点在している遊牧民、厳しい気候条件などが、このプロジェクトを成功裡に実践していくためには大きな障壁となった。同時に、広大なモンゴルでは障害のある人々のモニタリングは難しく、地方在住の人々がこのプロジェクトにどのように関係し、どの程度受け入れ、どれほど生活に影響していたかを、正確に評価することは困難であるとしていた。モニタリングの難しさは、地方の障害者の生活におけるサービスへの接近性や、障害受容の可能性や、環境要因からの影響というようなカテゴリーの実際の適用範囲を評価することを困難にしていた。」(*)

    *2001年、モンゴルにおけるCBRプログラムのケーススタディ報告
    Manoj Sharma助教授,健康と体育教育とレクリエーションの学校、Ohamaのネブラスカ大学;Sunil Deepak、Chief、Medical Support部、Associazone Italiana Amici di Raoul Follereau(AIFO)

  2. 1993年に、モンゴル政府は、障害者のために、3つの貯蔵用ビル(以前にソ連軍のキャンプとして使用されていた)と、5つの貯蔵用ビルおよび格納場所の一部を供給すると約定した。
    米国政府の支援のもとに、駐モンゴル米国大使館 the Embassy of USA は、これらの建物のセントラルヒーティングと電気のために、1350万ツグルクを寄付することに同意した。残念ながらこのプロジェクトは完了せず、資金は運営管理ネットワークの中で消滅してしまった。
  3. 1998年に、障害者のQOLの向上に関する国家プログラム the National Program on Improving the Quality of Life of the Disabledと、そのプログラムを実行するための1998年から2004年の活動計画が承認されたこと。
  4. 1997年に、障害者への専門的な処遇を規定している障害のある人々のための社会保障法 the Social Security Law for PWDs が承認されたこと。その結果として、政府の障害者対策の修正があったこと。
  5. 1999年に、ウランバートルの市街地に国立障害者リハビリテーションセンターが設立されたこと。モンゴル国立障害者リハビリテーションセンターは、義肢装具のワークショップ Prosthetic Workshopと、医学的リハビリテーション部門 Department of Medical Rehabilitation と、職業訓練センター the Vocational Training Centerから構成されている。政府の唯一の組織であり、モンゴルの全ての障害者のために、全国的レベルでリハビリテーションを提供している。上記のサービスは、健康保険と社会保険の緊密な連携のもとに、障害者に無料で提供されている。障害者はこの組織を利用するのであれば職業訓練センターでその資格を取得できるようになっている。センターの設立は、国家責任の観点や、障害のある人々を支援していこうとする政策的意向の観点からも重要であるといえる。
  6. 障害者雇用義務のプログラムを実現するために、政府規約137条 Government Regulation No.137とモンゴル労働法の修正the Amendment to the Labor Law of Mongoliaを承認したこと。(3ページを参照してください)
  7. モンゴル政府は、2001年を障害者を支援する年 an Year for the Support of the Disabledと宣言した。様々な活動の全体プログラムは、この一年の間に実行されている。その際、特に強調されたことは、国民の障害者問題に関する社会認識を啓発していくことであった。

C-2.この10年間にモンゴルの障害者に関することで、国民及び障害のある人々に最も大きな影響を与えたニュースと出来事。

  1. 歴史上初めて、モンゴルの障害者は自分たちに対する政府の現在の政策を批判し、「障害者権利擁護特別委員会 Special Committee on Protecting the Right of the Disabled People」を設立した。私たち障害者は被弾圧者記念碑 the Memory of Repressed (共産主義による弾圧の時代に迫害を受け亡くなった人々への慰霊のために造られた)の近くでストライキを行い、モンゴルの議会や政府や大統領に自分たちの意見を表明した。私たちはこのことをひとつの歴史上の重要な出来事として捉えている。モンゴルの政府、大統領、首相が、障害者の代表との面談を設定し、私たちの意見を聞き入れた。この闘いは、1998年6月18日から1998年10月3日までの約4ヶ月間に及んだ。最終的に、モンゴル政府は私たち障害者の発言を聞き、そして、その意見を考慮していくことに理解を示した。また政府は私たち障害者が理論的、社会的、政治的な知識をより深めていることを認識した。そしてモンゴルの障害者は自分たちの権利は擁護されるべきであり、また擁護できるということを経験した。
  2. モンゴルの有名な詩人T.Galsan.本格的な作曲家のN.Jantsannorov 及び人気のある歌手Dashpeljeeの協力で、「Flag and Emblem(旗と象徴)」という障害者のための曲が生まれた。私たち障害者の声を聞かせることができ、私たち障害者の"知的財産"を見せることができるようになった。障害者組織は団結して、障害者組織中央協議会 a Central Council of DPOsを結成した。中央協議会は全てのモンゴルの障害者組織を傘下とした。結果的に、私たち中央協議会は、政府と障害者組織の安定した関係を保持し続けると共に、障害者の近況や直面している問題の情報を直接政府に伝えられるような、モンゴル国内における障害者のための代表的機関となった。同様に、中央協議会は、国内外の関連組織からの支援や激励を受け入れの中心となる対応機関ともなった。障害者組織中央協議会はモンゴル21県を網羅するために国内いたるところに支部を設立していった。その結果、地方の障害者も最近の出来事や政府の政策について、最新かつ正確な情報を入手できるようになった。
  3. 私たちは障害者への運転免許取得コースを開設するために必要な法的な準備をほぼ終了した。障害者が必要としている知識や資格を得る均等な機会を提供していくために、私たちは国連総会規則48条the 48th Regulation of UN General Assembly. を履行しようとしている。
  4. 2000年12月1日に、障害者組織中央協議会の代表者は、モンゴル大統領N.Bagabandiに自分達と会見し、意見を聞くように要求した。その結果、モンゴル政府は、2001年を障害者を支援する年にすると宣言した。この2001年に、様々な障害者組織に関連する多くの活動が実践された。モンゴルの障害者たちは"Humuun Zaya"(人間の運命 Human destiny)という名の障害者のための新聞社を設立した。視覚障害者や聴覚障害者を含めた障害者たちが"Khatan Zorig-Enerehuu"(勇敢に人間らしくBravity and Humanity)というハイキング・ツアーを企画し、240kmを旅行した。そのツアーは、障害者のために現在ある社会福祉サービスや法律について国民の認識を啓発し、環境を整備する目的で実行された。都市部や農村部の障害者が作成した手工芸、器械で作成した品物、接ぎ木、アクセサリーなどを披露する"自分たちの手で We can do it"と名づけられた展示会が、開かれた。その障害者たちは国家から表彰された。
  5. 日本政府の協力を得て、アジア開発銀行は障害者の生活支援に約1,000万(米)ドルの資金供出を決定した。不幸にも、この資金は政府や官庁を通したプロジェクトに分配されるだろう。私たちはこの事実に疑念と不安を抱いている。
  6. アジア太平洋障害者の10年がさらに延長されたという現実は、次の10年で、過去に犯した過ちを正し、私たち障害者は大きな成功を収めることができるだろうという期待を持たせてくれる。

C-3.国民の中で、どれくらいの人たちが「アジア太平洋障害者の10年」を意識していただろうか?

モンゴル政府が障害者を支援する年として2001年を宣言したことによって、障害者のほぼ100%がアジア太平洋障害者10年について、またこの10年がまもなく終了するということも知っている。以前は(主に政府組織内であっても)わずか35%から40%位の人たちしかこの10年について認識してはいなかった。

C-4.どれくらいの人たちが1975年の国連の「障害者の権利宣言」を知っているだろうか?

モンゴルの障害者組織によるこの宣言の宣伝活動はきわめて不十分であったために、障害者の約30%はそれについて全く知らず、障害者のわずか10%がその宣言を把握していると推測される。

C-5.あなたは上記の宣言をあなたの国の言語に訳した公式翻訳版を持っているか?

「障害者の権利宣言」はモンゴル語に翻訳されています。

D.次の10年へ向けての障害のある人々のための5つの優先的な対策

  1. 私たちは、9の都市、21の県、331の村全てのモンゴル全域が参加できるような、モンゴル障害者国民議会 a National Assembly of the disabled people of Mongoliaを組織していく計画を持っている。国内各地の代表として熱心で信頼のおける障害者が集まり、自分たちの考えや意見をまとめていく予定である。また、この議会に外国の経験豊かな障害者を招聘して、彼ら自身の意見や体験を分かち合っていきたいと望んでいる。
    私たちは5日間に渡ってこの議会を開き、以下の重要事案について議論しようと考えている。

    • 障害者のために現在ある政府の政策と、それを改善していく方策を討論すること。
    • 障害者への利益のために、現在の法律を改正していく方略を議論すること。
      私たちは、社会福祉、措置課税、NGOなどに関する法律の改正や修正をするために政府に強く要請していく方法を探求したいと考えている。障害者のためだけに意図された特別法も存在するべきである。
    • 障害に関する調査研究と、わが国でそれを実施する方法について議論すること。
    • 障害者に関係するシステムやサービスあるいは障害者組織の構造や機構のあり方について議論すること。
    • 障害者のための活動の今後の10年間への主要な計画を練り上げること。
    • 特定の分野において、障害者の代表者たちを、障害者のために働く仕事の正職員として推薦できるかどうかの可能性について議論すること。

    私たちは、現在のモンゴルの障害者の実情について包括的な調査を行なう必要がある。障害者に関する現在実施されている調査は、全体としての重要な課題を、例えば医学的、社会的条件などのように1,2のポイントに焦点に絞って、部分的に調査しているにすぎない。私たちはモンゴルの21県を5つの地区に分け、障害に関するより詳細な調査を実施する予定である。

    1. 農村地区 Rural region Hovd県を中心に
    2. 半谷地区 Hangai region Arkhangai県を中心に
    3. 砂漠地区 Desert region Dundgobi地区を中心に
    4. 大草原地区 Steppe region Dorond県を中心に
    5. 中央地区 Central region 首都ウランバートルを中心に

    私たちは、この調査を財務面(障害者議会への見積もり予算は、参加者の交通費・宿泊費・生活費込みで85,000米ドル)において、政府にできる限り依存しないように準備していくことが重要だと考えている。モンゴル障害者国民議会は、現在の社会福祉法 Social Welfare lawとその施策の改正および修正の提議が、重要な役割になっていくと考えられる。

    *モンゴルは行政的に21の県に分けられ、その県は村にわけられている。(全部で331村)

    • 政府には、私たち障害者が信頼でき、私たち障害者の苦悩や生活状況を理解し、私たち障害者のために働いてくれる人間はほとんどいない。これらの理由からも、障害者に関する現在の法律は実際には機能しておらず、現実離れしている。この状況を改善するため、政府に"陳情団 Lobby group"を送る必要がある。私たちは、障害のための特別なプログラムを計画している人たちの中から議会への候補者を選出し、当選に向かって闘っていこうとしている。
    • 私たちは、モンゴルの障害者組織を、財政的な管理や施設運営、権利擁護、コミュニケーション技能などにおいて強化していく必要がある。同時に、専門職の介入によってスタッフの質的な向上をはかっていく必要がある。障害者組織のスタッフやボランティアが、障害についての彼らの知識を広めていくために、世界レベルの障害者の状況や成功した経験や他所に住んでいる障害者の生活を学ぶための国際的なあるいは国内におけるトレーニングを供給していかなければならない。障害者自身にも、障害者組織の活動についての認識を啓発していってもらう必要がある。この困難な状況のなかで、私たち障害者の生活を向上させていくことの必要性が認知されるよう全力をあげて働き続けていくつもりである。
    • モンゴルにおける障害者職業リハビリテーションシステムの改善のために。
    • 障害者が資格を取得する機会を増加するために、役に立つような資格を選択できるように改善していくこと。
    • 障害者の労働に関する現在の法律を効果的に活用していくこと。
    • 職業に関する相談、指導などと連動した総合的な職業訓練を提供いくこと。
    • 障害者の特別なニーズに対する雇用者の理解を促進したり、そのニーズを満たすような物や条件が快く整備されるようなシステムを確立していくこと。
    • 障害者への情報提供を拡大したり、社会の認識を啓発していくために、障害者のための新聞”Humuun zaya”(「人間の運命 Human destiny」)の財政と経営の能力を強化し、新聞が定期的に刊行されるように支援していく必要がある。この新聞は、政府へ障害者の声を届けることも使命としている。
    • 視覚障害者の生活をより良くしていくために。
    • 資格を取得する機会を増やしていくこと。
    • 視覚障害者だけが取得する権利のある資格のリストを提供していくこと。
    • 視覚障害者を支援する日である10月15日に、毎年、メディアもかかわって、国民の認識を啓発するプログラムを用意していくこと。(記者会見を計画する)
    • 他の地域で視覚障害者によって遂行された国際的障害者慈善団体への業務などの小さなプロジェクトを紹介していくこと。
    • 私たちと同様の外国の視覚障害者組織との間に文化的な交流を発展させていくこと。
    • 視覚障害者のための文化的な活動や、スポーツ活動を実践していくこと。
    • 点字プリンタや、専門のスキャナとコンピュータのシステムや、点字本などを備えた視覚障害者のための図書館を設置すること。

    E.国際協力が求められている領域

    1990年の民主革命以来、わが国は国際協力に対してより開放的になった。これは、また、私たち障害者のための/のNGOについてもあてはまる。現在のところ、国際的な経験から利益をもたらしたというNGOはほんのわずかしかない。訓練されたスタッフや最新の情報が不足していることや、障害者への権利擁護やコミュニケーション技能が足りないことなどが、数少ない国際協力を受ける際に大きな障壁となっている。それにもかかわらず、リハビリテーションインターナショナルのモンゴル組織の会員や、世界盲人協会におけるモンゴル盲人協会の会員や、他の会員たちの活動は、私たち障害者が今後より一層発展していくだろうという期待を与えてくれる。私たちは、国際的協力の非常に重要な領域として、権利擁護、法律制定、職業リハビリテーション(障害者の雇用、障害者のためのクレジット/ローン基金)、医学的リハビリテーション(理学療法士、作業療法士、義肢装具士)、そして国際間の交流などがあると考えている。

    署名
    B.Zinamider、
    モンゴル障害者組織中央評議会 議長
    モンゴル ウランバートル

    訳:日本社会事業大学大学院 高田明子・深谷順子