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アジア太平洋障害者の10年の評価<完全参加と平等<へのNGOの展望

「国内調整」タスクフォースレポート

2002年9月18日

作成

Mr. Ahsan Habib
Assistant Director, CRP, Bangladesh, Task Force Coordinator,

Ms. Chalermsee Chantaratim
Chief of Goodwill Industries of Thailand, Task Force Co-Coordinator

Muhammad Mushfiqul Wara
Research & Evaluation Officer, CRP, Bangladesh, Task Force Member

タスクフォースメンバー

Ms. Chalermsee Chantaratim Thailand
Phillip Yuen Hong Kong China
Hisao Sato Japan
Ahsan Habib Bangladesh
Munishwor Pandey

謝辞

アジア太平洋障害者の10年(1993-2002)の行動課題の「国内調整」を評価する地域NGOネットワーク(RNN)のタスクフォースレポートには、いろいろなレベルの重要な人々が関わっている。 RNN の事務局、タスクフォースコーデイネーター、そして、政府の省庁や機関、障害者のためのあるいは障害者とともに活動しているNGO,障害者団体、自助組織、女性障害者団体など、いろいろな国から参加しているタスクフォースメンバーである。

我々はRNNの調査コーデイネーターの佐藤久夫氏に感謝したい。彼は評価活動の調整役としての責任を上手にこなし、多くの重要な文書と情報を送ってくれた。またいつも連絡を取り我々に意見を寄せてくれた Ms. Siriporn Chinaporntham と Ms. Chalermsee Chantaratim にも心から感謝する。

さらにこの活動に貴重な時間と知性を使ってくれたタスクフォースメンバー、すなわちタイの Ms. Chantaratim 、 香港特別行政区の Mr. Phillip Yuen 、 日本の Mr. Hisao Sato 、ネパールの Mr. Munishwor Pandey 、バングラデシュの Mr. Nurun Nabi Talukder, M. Saidur Rahman, Mr. Ahsan Habib, Mr. Muhammad Mushfiqul Wara, Mr. Wasimur Rahman Tonmoy, Ms. Ashrafun Nahar Misti 、

そして各国からの報告作りに参加した次の国々の人々にも心から感謝したい。すなわち、中国、モンゴル、カンボジア、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、ベトナム、インド、イラン、パキスタン、スリランカ、トルコ(「宣言」の署名国ではない)、ロシア連邦(同)、アルメニア、ウズベキスタン、クック諸島、フィジー、キリバチ、ミクロネシア連邦、ニュージーランド、パラオ、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島。これらのカントリーレポートを本報告の準備に際して活用した。またこれらの政府が評価活動に十分な時間を与えたことにも感謝する。

我々は、バングラデシュ政府のCRPの主任 Ms. Valerie A. Taylor と局長の Mr. A K M Momin が、このRNNタスクフォースの活動を励まし、そのコーデイネーターの一人の時間を保障し、またCPRの他のスタッフがこの活動に参加することを認めてくれたことに対して、特に感謝する。

最後に特段の感謝を、大きな責任感をもって進めてくれた Mr. Muhammad Mushfiqul Wara にささげたい。彼はまず準備段階でエネルギッシュにサポートをしてくれた。すなわち調査方法の開発、質問紙のデザインやデータ収集である。さらに彼は収集されたすべての回答・報告を長時間使って分析した。回答内容の検討、調査結果の分析、報告書の編集、そしてすべての関係者への報告書の送付である。

感謝を込めて。

Ahsan Habib, タスクフォースコーデイネーター

Chalermsee Chantaratim, タスクフォース副コーデイネーター

概要

アジア太平洋障害者の10年は2002年に終了する。この「10年」のテーマ・目標はアジア太平洋地域での障害者の完全参加と平等を促進することである。

アジア太平洋地域の41の加盟国、準加盟国が、「アジア太平洋地域の障害者の完全参加と平等の宣言」に署名した。

「国内調整」問題のタスクフォースは、今回の評価をRNNのために行った。評価にあたってはRNN調査コーデイネーターが設けた「作業課題」を使った。アジア太平洋障害者の10年の107の目標の中の、「国内調整」の目標に基づいた調査票が用意された。調査票はアジア太平洋諸国のタスクフォースメンバーに送られた。各メンバーは、日本、香港特別行政区、タイ、バングラデシュでデータの収集をした。タスクフォースコーデイネーターは本拠地をバングラデシュに置き、分析のために回答票からデータを収集した。

「国内調整」問題のタスクフォースコーデイネーターはまた、ESCAP地域の評価に関連する他の文書も活用した。

RNNの「国内調整」問題のタスクフォースが行った「国内調整」問題の評価によれば、「10年の宣言」に署名したすべての国では、「国内調整」問題の実行目標の各項目の初歩的なレベルに関しては、一定の注目すべき成果をあげた。そこには、全国レベルおよびそれに準じるレベルでの国内調整委員会(NCC)機構を開発すること、あるいは既存の機構を障害者のリハビリテーション活動を調整できるように改善すること、より多くの政府機関、NGOおよび障害者団体の参加により執行機関を強化すること、障害者のための貧困緩和事業に関係する政策を開発すること、障害者のための制度やサービスに関する情報を収集するためのデータベースを開発すること、などが含まれる。

主要な問題点の中には、NCCの法的権限の問題、自律的な機関としてのNCCの機能に関する政府の理解の問題、障害者団体や関係者からの参加の問題、サービスや制度に関する十分なデータがないという問題、障害者の公的なイメージを地域社会に広げるための協力した取組みを巡る問題、などがある。

はじめに

この評価の目的は、アジア太平洋障害者の10年(1993-2002)の「行動課題」の「国内調整」問題の実行状況をふりかえってみることである。この評価は、「10年」のテーマとゴール、つまりアジア太平洋地域での障害者の完全参加と平等の促進、に照らして行われた。そこでは、「国内調整」領域の政策の実行に向けての進歩は何か、目標の達成レベルはどうか、実行途上で直面した問題は何か、そして将来に向けての計画はどうか、などを評価した。

「国内調整」の目的の達成は、全国レベルとそれに準じるレベルでの調整機関およびその執行機関に多分野の人々の参加が確保されることによってなされる。障害者および関係者の参加の現状から伺われることは、障害者が国レベルやそれに準じるレベルで平等に参加する権利を持つということを政府が認識すべきだということである。障害者が決定に参加することは彼らの生活に肯定的な影響を及ぼす。政策、法律、サービスプログラムは、障害者、その組織、その他の関係機関および市民社会が完全なパートナーとなって形成されなければならない。

アジア太平洋障害者の10年(1993-2002)

背景

アジア太平洋障害者の10年(1993-2002)の「行動課題」(以下「10年の課題」)は12の政策領域から構成されている。「国内調整」はその内の一つである。近年この「行動課題」は、ESCAP地域の政府にとって、障害者に関する政策決定やプログラムの企画と実行をガイドする効果的なツールとなってきた。

「10年」は2002年に終了する。「アジア太平洋障害者の10年」の終結のための政府高官会議が2002年10月25-28日に日本の大津市でESCAPの主催によって開かれ、日本政府と滋賀県がホストすることになっている。第48期委員会で採択された決議 58/4 は、アジア太平洋障害者の10年(1993-2002)をさらに10年、2003-2012年まで延長することを宣言した。

評価プロセス

作業課題

ハノイのRNNの総会で、アジア太平洋障害者の10年の評価のためのタスクフォース活動を行うことが決まった。その後RNNはアジア太平洋障害者の10年の「行動課題」の12の政策領域と、「10年」の中で新たにでてきた「女性障害者」問題を加えて、13のタスクフォースを組織した。

タスクフォースの任務は次の項目でのタスクフォースレポートを作成することである。

  1. アジア太平洋諸国・地域での「10年」の進歩をNGOによって評価すること。
  2. アジア太平洋諸国・地域での障害者の完全参加と平等にとっての論点と問題を明らかにすること
  3. NGOおよびGOにとっての「10年」後の地域協力のために将来の行動計画を提案すること

また、タスクフォースレポートは2002年の最終年キャンペーン会議(大阪フォーラム、10月21-23日)に提出されるということも述べられている。またNGOからの意見として、10月25-28日に日本の滋賀県で開かれるESCAPによるアジア太平洋障害者の10年政府高官会議にも提出される。

そこでRNN事務局は、各国のRNN加盟団体にタスクフォースメンバーの推薦を依頼した。メンバーは自国の報告と評価を用意し、他のメンバーと協力して地域としての評価を行う。この評価はRNNとして行うものであるので、タスクフォースに参加したい人は組織として加わることが求められた。

Mr. Ahsan Habib が「国内調整」タスクフォースのコーデイネーターと指名されていたので、 Ms. Siriporn Chinaporntham が推薦した Ms. Charlermsee Chantaratim は副コーデイネーターとなった。こうしてタスクフォースの委員会がすでに形成されていたバングラデシュに加えて、香港特別行政区、タイ、日本で作られた。これらのタスクフォース委員会には、政府機関からも、自助組織や女性障害者の団体を含むNGOからも参加している。

この評価はRNNの事務局から示されたタスクフォースの任務を具体化するために取り組まれた。繰り返しになるが、この「国内調整」問題の評価報告は RNN の企画に沿って行われたものである。

方法

RNN 事務局の調査コーデイネーター佐藤久夫氏のガイドラインにしたがって、タイ、香港、日本の RI, II, WBA などのリソースパーソンと連絡が取れ、これらの国々で「国内調整」のタスクフォースが形成された。香港、タイ、日本から「国内調整」についての報告が届けられた。これらの各タスクフォースはRNNの調査コーデイネーターが作成した「作業課題」にしたがうとともに、バングラデシュのタスクフォースコーデイネーターと緊密な連絡を取った。これらのタスクフォースには、GO、障害者とともに活動しているNGO、障害者の自助組織や女性障害者の団体が含まれていた。これらの各国のレポートがバングラデシュのコーデイネーターの事務所に集められた。タスクフォースコーデイネーターと一人の研究者(タスクフォースメンバーでもある)が、最終的なレポートを作成するためにすべてのデータを集めて分析した。

上記の国々のタスクフォースメンバーには、アジア太平洋障害者の10年(1993-2002)の「行動課題」の「国内調整」の諸目標および RNN タスクフォースに与えられた評価任務に照らして作成された質問票が送られた。質問票には、「国内調整」の各目標のなかの各活動ごとの点数評価、それぞれの点数についての文章によるコメント、各活動を実行する上での問題点、および将来の行動計画への提言、などが含まれていた。質問票は「国内調整」の11の目標をベースにして作られた。さらにこれらは次の4点スケールで評価することとした。

0=まったくあるいはほとんど対策が取られていない

1=やや実行されている

2=かなり実行されている

3=完全にあるいはほぼ完全に実行されている

あわせて回答者には、それぞれの目標の中の活動ごとの点数について、文章での説明が求められた。それはこの研究において、タスクフォースメンバーの間での共通理解を促すためである。

この質問票は、(可能であれば)直接の聞き取り、または郵送、Eメールやファックスで行うこととした。タスクフォースメンバーのいないアジア太平洋の国々については、バングラデシュのコーデイネーターの事務所に寄せられたいくつかの文書の内容を分析して取り入れた。それらの文書には、アジア太平洋障害者の10年(1993-2002)の報告の予備的草稿が含まれる。

この調査の結果は対照され、それぞれの目標の中の活動ごとの概要が描けるように対照された。RNN調査コーデイネーターから送られた文書も活用され、その意見や助言はメンバーの間に紹介された。

調べられたデータは分析され、報告書の作成のために準備がなされた。そしてバングラデシュ、ダッカ、サバールの CRP のコーデイネーターの事務所において、アジア太平洋障害者の10年の成果の評価のための地域評価報告の予備的草稿がつくられた。

この研究の限界

時間の制約のためにすべての省庁、NGO、障害者団体、女性障害者団体が質問票によるインタビューに応じられるわけではなく、またタスクフォースメンバーも訪問調査によるデータ収集に十分な時間を割くことはできなかった。情報の収集はEメールやファックスなどの間接的なものによることとなり、評価のためのデータ収集方法としては十分ではなかった。

この評価のための質問票は英語で作られ、そのために回答者の表現を制約したと考えられる。

文章記述部分は締め切りまでに分析を終了するために25字に制限されたが、これもまた点数の説明に必要な詳しい理由を述べる上での制限となったと思われる。

「宣言」に署名した次の国々からの情報が得られなかった:朝鮮人民民主主義共和国、中国マカオ、韓国、ブルネイダルサラム、ラオス人民民主主義共和国、ブータン、モルデブ、キルギスタン、オーストラリア、グアム、トンガ、バヌアツ。

「国内調整」について、「宣言」に署名していない次の国々からの情報が得られなかった:アフガニスタン、アゼルバイジャン、ジョージア、カザフスタン、タジキスタン、ツルクメニスタン、アメリカ領サモア、フランス領ポリネシア、マーシャル諸島、ナウル、ニューカレドニア、ニウー、北マリアナ諸島、ツバル。

また、障害者統計や「国内調整」の諸課題の実行状況についての情報の不足のために、タスクフォースコーデイネーターが十分に分析することができなかった。

結果

バングラデシュ、香港特別行政区、タイ、ネパール、日本はコーデイネーターにそれぞれの国の「国内調整」に関するタスクフォースレポートを送ってきた。調査コーデイネーターから次の国々の「国内調整」の状態に関する情報が送られてきて、それらはこの報告書に含めた。そこには中国、モンゴル、カンボジア、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、ベトナム、インド、イラン(イスラム共和国)、パキスタン、スリランカ、トルコ(「宣言」署名国ではない)、ロシア連邦(同)、パプアニューギニア(同)、アルメニア、ウズベキスタン、クック諸島、フィジー、キリバチ、ミクロネシア連邦、ニュージーランド、パラオ、サモア、ソロモン諸島が含まれる。

「国内調整」の評価結果は、アジア太平洋障害者の10年(1993-2002)の目標に従って述べられている。

目標 1.1

障害問題国内調整委員会(NCC)を設立し強化する。NCCは、「10年」の行動課題実施のための、多分野アプローチの推進に関する報告義務を議会・政府首脳に対してもつ適切な機構を備え、国と地方のすべてのレベルの政府及び関連省庁・政府機関の政策決定レベルの代表が参加し、また障害者自助組織や知的障害者親の会、女性障害者を含むNGOが実質的に参加し、かつ資源の適切な割り当てを受けるものとする。

達成のための目的要件 平均応答
(アスタリスク)
概要
0 1 2 3
a. 障害問題国内調整委員会(NCC)の設立、強化 * 宣言に署名している国のうち、日本、モンゴル、インドネシア、マレーシア、フィリピン、ベトナム、バングラデシュ、インド、イラン (イスラム共和国)、パキスタン、スリランカ、トルコ、クック諸島、フィジー、ネパール、香港中国、タイ、ニュージーランドでNCC機構が可能となっている。タイでは、1991年障害者リハビリテーション法に基づき、政府関連省庁、NGO、障害者の参加により全国障害者リハビリテーション委員会が設立された。バングラディッシュでは、「2001年障害者福祉法(DWA)」の制定に基づき、法定組織と1993年の既存の機構がDWAにしたがって強化され、2001年11月にNCCが設立された。インドでは中央調整委員会が障害者法 (1995)にしたがって設立された。ベトナム障害者国内調整協議会(NCCD)は2001年、政府、専門家委員会、障害者連合により設立された。政府のみによる国もある。日本、モンゴル、インドネシア、マレーシア、トルコである。日本では各政府関連省庁がかかわっているが、全ての省庁が参加して障害者福祉促進のための本部を内閣におき、そこで実施している。1993年に障害者基本法が改正され、NCC(中央障害者施策推進協議会)への障害者の参加が法的に義務付けられることになった。しかし政府の縮小政策に伴う法改正によって、2001年1月NCCそれ自体が廃止され消滅した。以来、政府障害者施策推進本部(GDC)のみが存在している。トルコでは1997年、571法により内閣官房障害者問題担当部が設立され、障害者問題担当部により責任が分かち合われている。ニュージーランドでは1999年に障害者問題担当大臣の席が設立され、障害をもつ人々の利益を代弁し政府内で障害関連の問題にリーダーシップと戦略的アドバイスを提供することに責任を持つこととなった。全国人民代表大会のリーダーが議長を務める中国の場合、政府と共にNGOも参加をしている。すなわち、委託権限を見直して既存の機構を発展させ、障害者団体や関係者からより多くの代表を加えることによって香港特別行政区におけるNCCのような機能を果たしている。これらのNCCは調整機関として十分に機能することが当然ながら要求される。イラン(イスラム共和国)は国家福祉機関とNGOが参加する障害者協議委員会を設立した。
カンボジアのように、専門委員会/作業部会、政府、 NGO、障害者、そして相談役として関わる家族を含む組織を発展させている国もある。バングラデシュ、ネパール、タイ、スリランカ、クック諸島のように、政府、障害者の自助組織や障害者を含むNGOが参加するNCCを近年発展させた国もある。バングラデシュでは女性障害者も参加している。またNCCが発展するよう取り組んでいる国もある。シンガポールのように、全国社会サービス協議会(NCSS)が先頭団体として、障害者とともに活動しているNGOの相談や協力活動を行っている国もある。これによく似た相談型の全国障害者リハビリテーション委員会がタイでも設立され、政策決定にも参加をしている。ネパールの全国調整委員会はMWCSWの政策形成や国家事業計画立案において顧問の役割を果たしている。
しかしながら NCC機構について得られた情報によれば、マレーシア他の複数の国々でNCCは(単に助言するだけの:訳注)顧問的性格のものである。中には法的権限をもたないものもある。
パキスタンでは全国レベルでの活動委員会が招集されている。
NCCが適切に強化されていない理由に、たとえば障害者団体や関係者からの任命というよりは個人を基準とした任命など、政府、NGO、自助組織の代表の出し方に偏りがある場合がある。
NCCが発展させられない理由にはまた、戦争で疲弊した経済の基礎構造の発展事情が考えられる国もある。「内政」の危機が考えられる国もある。たとえばインドネシアではNCCが発達過程にあるが、多次元的な危機という好ましくない状況のために効果的な機構にはまだ発展できていない。
政府の政策も NCCが強化されない理由の一つとなっている。日本ではNCCが廃止され、政府の障害者施策推進本部のみが残ったが、そこにはNGOや障害者のNGO、障害者のためのNGOは参加していず、特定問題の会合で発表者が招かれている。
b. 政府関連省庁・政府機関のNCCへの参加 * 香港特別行政区、日本、モンゴル、ベトナム、バングラデシュ、イラン (イスラム共和国)では、必要な政府関連省庁、政府機関がNCCに参加している。しかしいくつかの国では、関係のある省庁であってもNCCに参加していない。さらにイラン(イスラム共和国)等では社会福祉/開発省、そして労働省がNCCに参加しているとされる。
ベトナムでは、労働・障害・社会問題省、建設省、健康省、交通通信省、文化情報省、教育訓練省を含む包括的な省庁が参加している。バングラデシュ、スリランカでは社会福祉省が主導となり、健康、教育分野での省庁の介入がそれに続いている。バングラデシュの場合、アクセス分野や法制局など総計 16の省庁が参加している。しかしながら、地方レベルの政府機関の参加は法で定められているものの、地方レベルの委員会の設立は全体の50%であり、残りのは現在設立途上である。地方レベルの行政機関の多くは、政策作成段階には活発に参加してはいない。フィジーでは、女性社会福祉省と貧困緩和省が1994年のFNCDP法により責務を負い、健康、教育、住居、交通及び環境、職業訓練及び雇用、スポーツ及びレクリエーション、法律作成/政策について6つの諮問委員会に参加している。タイでは、全国障害者リハビリテーション委員会 に関係する省庁が参加している。日本では、様々な省庁から集められた高級官僚によりGDCが構成されているが、NGOからの参加はない。アジア太平洋障害者の10年の期間中、地方行政体の政策自治と財政責任は高まった。しかし地方行政が国の障害政策に参加する効果的な仕組みはまだない。
c. 障害者自助組織や知的障害者親の会、女性障害者を含むNGOのNCCへの参加
*
中国、香港特別行政区、バングラデシュでは、障害者自助組織や障害者の親の会、女性障害者の組織を含む NGOがNCCに参加している。中国では重要な行政上の地位と本部はCDPFが占めている。香港特別行政区 ではNCCといくつか同じ特色をもつRACが、政府を通じ、障害者団体や関係者の代表というよりも個人としてメンバーを指名する。
ベトナムでは、主要な NGO、 自助組織、女性障害者が参加している。一方で、ネパールのようにNGOは全てのタイプの障害者を適切に代表していないとする国もある。タイでは、自助組織や障害者の親の会はNCCに参加していない。バングラデシュでは自助組織を含むNGOの参加があるが、障害者の親の会や女性障害者の組織のすべてが政策策定レベルで適切に代表を出しているのではない。タイには女性障害者の組織はない。日本では、常設のNCCはないので、ほとんどの省庁では通常の政策策定の過程で自助組織を含むNGOに意見を表明する機会を保障している。女性障害者がGDCや省庁の主催する会合に加わることは多くはない。カンボジアのように、障害者が委員会や作業部会のすべてに顧問として加わる国もある。タイではNGO、障害者、障害者連合からの代表がだいたい同じ役割を担っている。日本では、障害者の団体や障害者のためのNGOがGDCによって主催される会合に、問題ごとに、発表者として招かれている。
d. NCCへの資源の適切な割り当て *
NCCが定期的に資源の割り当てを受けている国はタイ、バングラデシュ、スリランカ以外にはほとんどない。バングラデシュでは、障害者と障害者のために活動する組織を支援するために政府から社会福祉省を通じて多額の財政的な寄付が出され、障害者の開発のための国立基金が創設された。基金の投資による利息は障害者の発達のために使われるが、その額は不十分である。香港特別行政区ではRACが政府の障害者事業への資源の割り当ての決定に影響力を持っている。スリランカでは全国会議視覚障害者信託と名付けられた基金が設立された。しかし多くの場合資源は不十分であると考えられる。日本の場合でも小さな資金とわずかな事務員のみしかいない。多くの国では社会福祉省が資源割り当てを行っている。
「行動課題」遂行上の問題/課題

10年の目標を達成するために、宣言に署名した国は NCCを発展させてきた。そのあり様は国ごとに多様であった。NCCの組織は各国の政治形態-官僚中心から草の根活動の人々中心まで-をしばしば反映した。宣言に署名した国は多くの点でNCCの基本的な必要条件-設立及び強化への過程における-を確立することができなかった。調整委員会は多くの方法で仕組みを促進するよりも制御することを強調してきた。政府関連省庁、障害者事業に取り組むNGO、障害者の自助団体や障害者の親の組織、女性障害者のような障害者組織からバランスのとれた代表を得ることによって、国と地方のレベルで委員会の力をさらに高めることが必要である。多くの国によってNCCが開発されているが、これらのことが現在のNCCには欠けている。

障害者のために活動する NGOと障害者のNGOの経験から、これらの組織のNCCへの参加は、障害者団体や関係者の代表としてではなく政府によって選ばれるという不本意な意味をもつことも多いことが明らかにされた。それゆえ、NCCのメンバーは障害者団体や関係者の総和を代表しているのではない。

多くの国で NCCは政府の顧問(助言)団体であり、自律的な機関として機能する権限をもっていない。多分野からの参加のために十分な予算をつけることはNCCの本来の機能にとって必要だがしばしば実行されていない。

将来の行動計画

次の「行動計画」では、 NCCをすでに設立した国と設立に向けて行動中の国では、統一的機構をそなえたNCCを追及するべきである。政府関連省庁、関係機関、障害者にサービスを提供するNGO、障害者の自助組織、女性障害者の組織の適切な参加を期間を定めて確保するために、共通の方法を国々が採用する必要がある。NCC機構の形成とその活動に参加している各構成員に対して適切な資源の割り当てが確保されるよう国は努めるべきである。

目標 1.2

NCC執行委員会を設立し強化する。この執行委員会は、国と地方の政府、関連省庁・機関の代表、および障害者自助組織や知的障害者親の会、女性障害者を含むNGOの適切な代表者によって構成され、NCCの決定の実施状況を適時にフォローアップし、監視するとともに、NCCの活動を推進する。

達成のための目的要件 平均応答
(アスタリスク)
概要
0 1 2 3

a. 執行委員会の設立と強化

*

入手できたデータによると、執行委員会が設立されているのは、香港特別行政区、フィリピン、タイ、バングラデシュ、インド、イラン(イスラム共和国)、スリランカ、トルコ、ロシア連邦、ネパールである。香港特別行政区では、政府の健康福祉食糧局の援助のもとで障害をもつ人に関係する事案をリハビリテーション室理事とともに、執行部が調整し組織化する。タイでは 1999年、各州に障害者リハビリテーション地方委員会が設立された。ロシア連邦では現在調整委員会がすべての地域に設立されている。バングラデシュでは政府が2001年に国立障害者開発基金を設立した。DWAによると、この基金はNCCの執行委員会の事務局である。インドでは中央執行委員会が障害者法 (1995)に基づいて設立された。この中央委員会はほとんどの州に設けられている州調整委員会から構成されている。スリランカでは国会の下に下位委員会が設立された。ネパールでは、政府部門、NGO、自助組織、女性障害者が参加する執行委員会が考案された。国によっては執行委員会の評価は現在進行中であり、将来さらに強化されると考えられる。日本など、執行委員会のまだない国もある。日本ではGDCに執行委員会がない。GDCの一部は事務局として活動している。GDCは実質的な政策を提出してはいなく、むしろ省庁間の調整をしている。既存の機構を修正し、国家行政、省庁、行政機関を総合的に包含することによって執行委員会を強化した国もある。

b. 政府、関連省庁・機関の代表の参加 * 執行委員会に地方自治体の代表の参加を確立しているのは、フィリピン、バングラデシュである。トルコでは、政府、 NGOその他草の根組織が参加している。バングラデシュでは、執行委員会へ政府省庁の代表が参加している。しかし一方で、サービス提供者の中には、関係のある省で参加から外れたままの省がある-例えば情報省-との意見もある。地方自治体はほとんど委員会に参加していない国や、いまだにまったく参加がないという国もある。
c. 自助組織や親の会、女性障害者の参加 * 障害者の組織の参加について情報が提供されたのは以下の国である。自助グループが執行委員会に参加しているのはバングラデシュ、タイ、日本、トルコである。親の組織や女性障害者の組織は執行委員会に適切に参加してはいない。障害者の組織も含め NGOの執行委員会への参加を確立している国はほとんどなく、事務局が障害者の協議会に置かれることもほとんどない。タイでは、地方委員会においては障害をもつ人が4人参加することが絶対必要とされている。 しかし多くの執行委員会では障害をもつ人は障害者団体や関係者の代表としてではなく個人として選ばれて参加している。また、障害者及び関係者の参加がまったくない執行委員会もある。トルコでは、政府、NGO、被雇用者、雇用主連合、大学が委員会のメンバーとして含まれている。
d. NCCの決定の実施状況を適時にフォローアップ、監視
*

執行委員会への障害者組織の参加についてバングラデシュ、シンガポール、スリランカ、トルコから情報が寄せられている。 トルコなど、1年または2年ごとに定期的な見直しが行われる国は僅かしかない。 バングラデシュを含む多くの国では NCCの定期的な会合が、NCCの決定の成果を監視する効果的な方法として評価されている。 シンガポールでは NCSSが複数の作業部会と障害に関する様々な領域を振り返る委員会の先頭に立っている。地域開発スポーツ省(MCDS)とNCSSは内部再検討委員会を作り、合同で障害政策とサービスの再検討に着手している。 スリランカでは、全国障害者事務局が国会と社会福祉省の指導のもとで課題と行動について、調整と監視を行っている。 トルコでは、評議会が第2相談問合せ先となり、障害問題省と首座により2年に1度調整されている。 日本のように NCCの監視機能がいまだに弱い国もある。また、執行委員会の情報が得られない国もある。トルコでは障害問題省が障害者のサービスを提供する団体の発展も監視しているとされる。
「行動課題」遂行上の問題/課題

設立されている執行委員会はその国のすべての地域をカバーしてはいない。多くの国では執行委員会は中央中心であり、そのため執行委員会の委員としていろいろな分野の州/地区レベルの組織が適切に代表となっていないか、あからさまに排除されている。

NCCの執行委員会は政策決定過程において多分野の人々の取組みを適切に代表してはいないので、時宜を得た追跡やNCCの決定の成果についての監視はいつも疑わしい。

執行委員会の代表となっている委員の選出に統一された方法がないため、この委員会でなされた決定がつねにすべての分野に受け入れられるというわけではない。

将来の行動計画

調整委員会や執行委員会を組織化する時期をそろえ、政府、 NGO、障害者組織、女性障害者の参加を確保するために、多分野から参加できるための統一された方法が各国で取られるべきである。こうしたことは調整機関をすでに設立したすべての国と、こうした機関の設立を準備している国によって確認されるべきである。

目標 1.3

全国レベルに準じるレベル(州や県など:訳注)に調整機関及び執行機関を設ける。そこには草の根運動のグループと組織の参加のための適切な方法を講じる。

達成のための目的要件 平均応答
(アスタリスク)
概要
0 1 2 3
a. 全国レベルに準じるレベルに調整機関及び執行機関を設置
*

全国に準じるレベルの調整機関についてはデータのある国が限られるが、そこから示されるのは以下である。これらの国では中国のように自助組織を代表する障害者の協議会の参加を得てこのレベルの機関の設立が可能になってきており、またフィリピンでは州、自治権のある地域、市レベルまた下位州レベルで調整団体が設置されている。バングラデシュではそれぞれの副長官によって率いられる地域レベルでの委員会が設立されている。しかし多くの地域レベル委員会は現在成立の過程にある。インドでは、目標ごとに全国に準じるレベルの委員会が設立された。他の国々では全国に準じるレベルの組織を地域で広げてきたが、地理上の地域すべてをおおうことはできないでいる。フィジーでは9つの地域障害者委員会が設立された。モンゴルでは、政府が参加する NCCの機関を、市、地域、州に設立した。 日本では障害者基本法によりすべての都道府県は都道府県障害者施策推進協議会( PCC)を障害対策と事業について設立しなければならず、またすべての市町村は市町村障害者施策推進協議会(MCC)を設立するよう努めなければならない。今日すべての都道府県とわずかの市でこのような委員会が設置されている。いくつかのNGOの代表が大抵PCC、MCCの常任委員になっているが、草の根レベルの組織の参加は必要とされていない。
b. 草の根運動のグループと組織の参加のための適切な方法
*

フィリピンでは、地域、州、市、町レベルのすべての調整及び執行機関には、障害セクターから代表が出ている。草の根グループの組織が全国に準じるレベルの委員会に参加する方法は様々である。多くの場合、地域/全国に準じるレベルでの活動は政府の通知の発行のみである。バングラデシュでは、地域レベルの委員会は政府省庁の代表と障害問題について活動している NGOで構成されている。 この委員会は障害をもつ人の発見と登録に責任を持ち、地域レベルでの障害介入の調整に主導権を持っている。多くの国で、特にNCCやその他の機関の設立を準備している国では、政府は国家に準じるレベルの委員会に草の根グループや組織の代表も加えるための必要なステップを踏むよう、NGOに奨めている。

フィジーでは、健康、教育、子どものための国民会議を含むすべての国家計画に FNCDPが参加している。FNCDPはまた女性に関する作業部会のメンバーである。

「行動課題」遂行上の問題/課題
将来の行動計画

目標 1.4

達成のための目的要件 平均応答
(アスタリスク)
概要
0 1 2 3
a. 国内行動計画の作成

*
国内行動計画について、中国、香港特別行政区、フィリピン、バングラデシュ、ウズベキスタン、日本、ニュージーランドから返答が得られた。 タイのように国内行動計画を国内リハビリテーション計画とした国も多く、タイでは全国リハビリテーション委員会が作成した。中国、香港特別行政区、フィリピン、シンガポール、タイ、バングラデシュ、日本、ウズベキスタンでは国内行動計画が進展している。日本では、国が障害者のための新長期計画( 1993-2002)を立てたが、1996-2002の障害者プランではこれに単に数値目標がついて補われている。バングラデシュでは、国家の障害者政策の観点に基づいて国内行動計画が1996年に立案された。その行動計画の見直しがDWA2001に引き続いて今進んでおり、1996年の国内行動計画では「行動目標」の達成に至らなかった失敗経験も考慮されている。(訳注:国名は未記載だが、シンガポールと思われる。)MCDSとNCSSからなる内部再検討委員会が2002-2007年の長期計画の作成に寄与した。ニュージーランドでは、ニュージーランドが統合された社会を目指すための長期計画を示し、政策の進展の枠組みを提供する2001年障害戦略に着手した。香港特別行政区では政府の健康福祉食糧局がリハビリテーションプログラム計画の通常の見直しを通じて1998年計画を進展させた。ウズベキスタンでは、障害者リハビリテーションプログラム1996-2000が1995年に採択され、1999年に家庭における女性の役割を強めるためのアクションプログラムと、また同年に困窮高齢者や年金生活者、障害のある人のための社会維持プログラム2000-2005が採択された。
スリランカなど国内開発行動の成果をあげるために適切な政策を進めているところであるとする国もある。
b. 国内行動計画の国内開発計画への組み入れ * 国内行動計画を国内開発計画に組み入れ、それを5年間の開発計画に含めた国は中国など数国である。中国は障害者のための国内行動5年計画を2つ終え、 2001-2005の行動が計画に従って継続されている。フィリピンは国の中期開発計画に障害者分野を含めている。タイでは、第8次国家経済及び社会開発プラン1997-2001で障害に関連する特別戦略を組み入れている。香港特別行政区では、政府が障害問題の進展を年次政策演説と財政予算に含めた。しかし近年の新しい取組みはリハビリテーションプログラムプランにあまり関連していない。日本では障害者プラン1996-2002が財務省も含めて、承認された。 国内行動計画を国内開発計画に含め、近い将来に長期開発計画として発展させていこうという国もある。バングラデシュでは、国内行動計画が国内開発計画に取り込まれ、また国の貧困削減戦略に障害者も含めるための努力がますます払われるようになってきている。
c. 監視と評価 * 香港特別行政区のように1年/2年を基本として定期的に国内行動計画を見直す国はわずかしかない。香港特別行政区は政策と財政予算に焦点をおいている。バングラデシュでは、見直し中の行動計画は新しく形成された国内調整委員会の指導による改定の過程にあり、とりわけ「行動課題」の目標に対する達成状況が注目されている。 多くの国で、監視と評価の領域が弱い。タイでは全国障害者リハビリテーション委員会 が振り返りを行い、委員会の事務局は一定の機能を果たした。一方日本では、監視の仕組みが組み込まれてない。 GDCは2002年にプランに対する評価報告を公表している。しかしそれは政府提供サービスの種類と量の進展についての単なる報告書でしかない。
d. 適切かつ多分野にわたる資源の割り当て * 多くの国で国内行動計画における資源の割り当ては、バングラデシュやタイのように、社会福祉省/公共福祉からおもに供給されるか、または労働省も巻き込むものとなっている。バングラデシュでは社会福祉省が単独で資源の割り当てを行い、他の省庁は資源の割り当ての過程に関与しないので、「行動課題」は予想通りに履行された。多くの国から寄せられた回答によれば、国内行動計画のための資源の割り当てをどのような省庁が関与して行うかの見直しが行われている。
ニュージーランド政府は、 1993-1995年に改革を行い、その間にサービスの基金は健康分野に移動し、障害者支援サービスの枠組みが設けられた。香港特別行政区では異なる政府の事務局と省がそれぞれの予算を割り当てていたが、リハビリテーション委員会の期待にたいしてさほど十分ではなかった。日本では、予算は政府とNGOサービス機関へと割り当てられるが、その量は十分ではない。しかし企画庁は財政面の考慮にも関わった。
「行動課題」遂行上の問題/課題

目標とされていた、完全参加と障害者の機会均等化の確保のための国内行動計画の策定は、多くの国でいまだ成し遂げられていない。国内行動計画を進めた国もあったが、いくつかのリハビリテーション領域を含むプランを立てる国もあり、行動計画のようなものはまったくつくらない国もある。各国の行動計画には共通する特徴はみられない。

あらかじめ組み込まれた監視の仕組みはない。定期的に振り返りをするという国もある。国内行動計画、国内開発計画の目標はしばしば数値であるが、このため障害者の生活状態の実際の変化は見えてこない。

多くの国で予算の割り当てがとても不適切である。大抵の国では、政府は障害者のために活動している組織、障害者とともに活動している組織、あるいは障害者による組織に資源の割り当てをしない。

将来の行動計画

国は障害者の質的発展に焦点を当てた国内行動計画を作り上げるべきであり、多分野の人々を含めることにより行動計画を国内開発計画に組み込むべきである。またその中では監視の仕組みも適切な資源の割り当ても明記されるべきである。

目標 1.5

国内行動計画において、国内で実施される都市と地方の開発計画を含むすべての貧困緩和事業に障害のある貧しい人々の参加を促進する方策を確認し、それを優先させる。

達成のための目的要件 平均応答 (アスタリスク) 概要
0 1 2 3
a. 障害のある貧しい人々の参加を促進し国内行動計画の中で貧困緩和を進める方法 * 多くの国では障害者の生活水準を上げることは社会福祉省だけの責任だと思われている。社会福祉省による社会保障の体制は障害者にも利用できるとする国はわずかである。 次にあげる国では障害者のための独自の事業が確立し、優先されている。香港特別行政区では、障害者の雇用を促進するための事業が開発されている。タイでは、失業者のための雇用産出に的を絞っているが、ここには障害者も平等に参加する権利を持っているとされている。事業主は障害者を雇用することを奨励され、でなければ障害者のための政府の基金に寄付をしなくてはならない。障害者は州の委員会を含む委員会の事務局にどんな援助も求めることができる。貧困緩和の分野で活動する
NGOに障害のある貧しい人を事業の中で優先させるよう政府が通知を出した国もある。バングラデシュでは、改定国内行動計画は現在見直しがなされているが、そこでは都市及び地方の取組みを含めすべての貧困緩和事業の中で障害を持つ貧しい人の参加の促進に大きく力を入れることにした。しかし未だに、障害をもつ貧しい人の開発プログラムへの参加を促進する特定の方法はない。
相談機関を通して参加が促進されたという国もある。例えばトルコでは、執行委員会のメンバーに障害問題省によって用意された、または用意されている事業の選択や申請の優先順位を決める責任がある。登録制度を発足させた国や、以前からの登録制度を継続している国があり、障害者の認定に使われている。障害者に与えられる登録証は利用可能なプログラムへの参加を保障する。
日本では、社会保険や歴史的な理由などの様々な制度上の問題から障害年金に不適格とされる障害者が推定 100、000人いる。この社会問題を解決するための具体的な行動はとられていない。
「行動課題」遂行上の問題/課題

多くの国では障害者を支えるために用意された特別な基金がある。例えば、障害者の自営を支える社会プログラムや雇用プログラムなどである。これまでいくつかの国では障害者の認定に役立つ方法を採用しているが、すべての障害者をいまだカバーしていない。開発事業の中への障害者の統合を強調する国もあるが、障害者を優先するにはまだ程遠い。 NGOの中には障害者のための特別なプログラムを始めたものもある。その中には、政府がほとんど何もしないなかで、障害者を開発事業、特に貧困緩和のメンバーとして含めているものもある。

将来の行動計画

次の行動計画では、国内の地方及び都市の開発プログラム及び事業を含むすべての貧困緩和プログラムへの障害者の参加を促進するために、国は革新的な方法を採用しなければならない。これらは国内行動計画の中で優先される必要がある。

目標 1.6

貧困緩和や他の開発諸計画に対する資金提供の基準として障害を持つ人々の参加を明確にすること

達成のための目的要件 平均応答
(アスタリスク)
概要
0 1 2 3
A.貧困緩和や開発諸計画に対する資金提供の基準として明確化された障害を持つ人々の参加
*

依然として多くの国では、障害者の (参加の)進展は、社会福祉担当省だけの責任で行われている。しかし、いくつかの国では、労働省も含まれている。 多くの国では障害者を(社会参加させる)開発の主流に参入させることについて楽観的であったものの、ほとんどの国ではそれらの問題を開発計画の中の最優先課題としてはいない。 タイでは、障害を持つ人たちは、障害者向けのリハビリ基金に対して長期金利無料のローンを申し込むことができるが、この基金は、「リハビリテーション法」に従って設立された。タイ政府は毎年、その基金に対して2,3千万バーツを充当している。最近バングラデシュでは、国営および民間銀行が、資格要件を満たした障害を持った人に対してマイクロクレジット (小口貸付)計画の準備を行うように行政命令が出されている。NGOの極めて多くが、所得創出のためのマイクロクレジットグループの中に障害者を含めることを始めている。しかし、障害を持つ人々の参加は、未だに、すべての貧困緩和機関/機構によって基準が明確にされても、具体化されてもいない。他の開発諸計画は、それらの計画の中に障害者を組み入れるという目標とはかけ離れている。 日本では、貧困な障害者は公的扶助に頼ることが可能である。公的扶助制度の中には、貧困な障害者に対して、さらに追加的な給付が用意されている。事業を始めようとする人々には、長期低利融資を申し込む制度がある。
「行動課題」遂行上の問題 /課題

いくつかの国では、国際的な圧力もあり、政府は NGOが障害者向けの事業をはじめるか、既存の開発計画の中に障害者を組み入れるよう促している。しかし政府が、これらの計画に障害者が参加するのを援助する方策はほとんどとられてきていない。現在の貧困緩和計画の中で、資金提供の必須条件として障害者の参加が明記されたものはほとんどない。

将来の行動計画

次の「行動課題」の中で、各国は、貧困緩和や他の開発諸計画及び事業への資金提供を承認するための強制的基準として障害を持つ人々の参加をくみこむよう努めなければならない。

目標 1.7

適切な資源と社会資本によって永続的な国家機関として効果的な役割が与えられるように主要組織を強化しその調整力を強化すること。

達成のための目的要件 平均応答 (アスタリスク) 概要
0 1 2 3
a.永続的な国家機関としての調整力強化と、主要組織の強化 * ほんの僅かな国だけが、完全な調整・執行機関、すなわち、明確な組織の責任を成し遂げる権力を持った永続的な国家機関を保有しているに過ぎない。それはバングラデシュや香港特別行政区における RACやリハビリ事務所管理官であり、またタイの全国リハビリテーション委員会やその役人は、永続的な組織・職員である。2002年3月7日に、社会福祉省は、調整力強化と執行組織の強化のために資源のてこ入れを行った。 香港特別行政区連携委員会は依然として助言・相談機関の立場にある。 そこでは日本の NCCのように障害者を含むNGOの正式な代表が依然として不足している。日本では、GOとNGO代表からなるNCCは、1993年に法律で設立されたが、2001年に修正法で廃止され、現在は政府機関としてのGDCだけが存在する。
b.適切な資源配置 * バングラデシュでは、社会福祉省が、財務省に対して調整と執行組織に対する財政的配分を要求し、予算配分と予算の強化が行われた。こうして現在の調整と執行組織はいくらかの資源を持っているが、十分ではない。ほとんどすべての国は、国内調整と執行組織における資源配分は不十分だと表明している。 いくつかの国は、配分された資源が障害者の期待やニーズを反映していないと述べている。
「行動課題」遂行上の問題 /課題

いくつかの国では障害者の参加の進展のための法を制定し、永続的な法定機関として NCCを制定したが、その一方でいくつかの国ではNCCは既存の法改正で廃止され、NCCは単に政府を代表する委員会に置き換えられた。それゆえ、AP地域の政府のNCC構想の強化や設立に対するアプローチはさまざまである。ある国では、NCCの機能は、障害者コミュニティ代表のいない協議機関のようであり、他のいくつかの国では、NCCは同様に協議機関ではあるものの障害者コミュニティはそこに参加することを促されている。

第二の 10 年で、 NCC を強化することが意味するのは、障害者コミュニティを代表する永続的な機関という基本的基準にしたがって、すべての政府が統一的な NCC を作る必要があるということである。

目標 1.8

地域生活と同様に、教育、訓練、雇用、スポーツ、芸術、そして文化的活動分野における彼らの可能性、素質、成果を含め、そしてまた障害者の日や、国際障害者の日などの行事、地域の催し、他のメディアに登場する機会を用いて障害を持った人たちへの肯定的な印象を至急に促進する方策を追求する。

達成のための目的要件 平均応答 (アスタリスク) 概要
0 1 2 3
1.教育 * 多くの国では障害児童への教育は特別優先事項として始まった。ほとんどの国では障害児童は依然として特殊学校で教育されている。パキスタンでは、障害者に対する国の作業委員会が特殊教育を近代化するために設立された。立案 /実行の5ヵ年計画が計画立案委員会によって地方政府との協議の中で取り上げられた。しかし、ほとんどの国では多くの特殊学校は就学年齢にある障害児童の実際のニーズよりもはるかに不十分である。バングラデシュでは、NGOの障害を持つ人を含んだ教育プログラムの運営を促進する方法をとってきた。教師とその関係者は、限られた規模ではあるもののやはり訓練されている。文部省(初等教育局)は、初等教育に障害学生を含める国の教育政策と行動計画を作成立案するための研究を行った。また、香港特別行政区では、いくつかの普通学校は障害を持つ生徒の入学をためらっている。しかし、タイでは障害を持つ人たちは特殊学校や、普通学校のどちらにも入学する権利を持っているし、技術学校さえも含まれる。特殊学校は、普通学校と似たカリキュラムを持っている。その上、慢性的な症状にある障害児童向けの病院の中にもまたクラスがある。いくつかの国では、教育機会の平等に向けた国内規則が考案された。
2.訓練 * いくつかの国では、さまざまな職業で障害者の訓練がなされていると述べられている。ごく一部の国では障害者向けに、タイの社会福祉局によって運営されているようなあるいはバングラデシュにあるような8つの職業訓練センターを設立した。しかしある国の技術機関では、香港特別行政区のように、障害のある学生の入学を常に喜んで受け入れるとは限らない。スリランカでは、社会福祉省と社会事業局が、ボランテイア団体や職業訓練センターに対して、障害のある児童向けの芸術、ダンス、ドラマの訓練の支援をしている。しかし、ほとんどの国では、障害者向けに設備提供できる能力は、ニーズに対してあまりにも少なすぎる。
3.雇用 * ごく少数の国だけが、障害者雇用の促進を保障するように進んで援助している。 1994 年には労働省と社会福祉省は、 200 人以上の従業員を持つ企業は働く権利のある障害者をどのような立場であろうとも一人以上雇わなければならないという政府規則を出した(訳注 : 国名は未記載だが、タイと思われる)。しかし、南アジア諸国ではそのような状況は極めて稀なことである。スリランカでだけ、障害のある人たちを含んだ自営業、失業者層への補助金に対する社会保障計画が開始された。 バングラデシュのような、ごく少数の国で障害者への割り当て雇用が開始された。障害者に対する一般的な態度は、香港行政特別区の公的、民間部門両方の雇用主の間に依然として優勢で、そのため障害を持つ求職者の採用に多くの制限を設けて採用が控えられている。 バングラデシュのように割り当て雇用制度が開始されるなど、すくなくとも書類上は均等化が重視されている国がある一方で、多くの国では香港行政特別区のように障害者の雇用機会に対する条件や制限を未だに持っている。
4.スポーツ * 多くの国では、国民レベルのスポーツに障害者が参加している。スリランカのケースのような一部の国では、国民的なスポーツ活動は社会福祉省とスポーツ省の協同になっている。バングラデシュでは、障害者のためのイベントが地域スポーツに包括されている。「国民スポーツ連盟」もまた、障害を持つ人たちのスポーツ活動の助長促進のために結成された。スリランカを含むいくつかの国では、障害者がパラリンピックやアビリンピックに参加している。これらの障害者は多くの国に栄光をもたらした。いくつかの国では、 GOとNGOは、パキスタンのケースのような「パラリンピック」や国際イベントに関わることに重点を置いている。香港行政特別区で障害のあるアスリート達は、過去10年の国際イベントにおいて目覚しい業績を達成した。しかし、他の障害者を含むトレーニング施設や、スポーツ促進施設は依然として十分に割り当て配置されているとはいえない。これらの施設はしばしば中央集中/都市部地域に置かれる。一部の国では、国民レベルでの障害者のスポーツは、スリランカのケースのようにおもに障害者連盟などのNGOが社会福祉局との協力によって運営されているが、パキスタンのケースのようにほとんどの国では政府によって行われている。
5.芸術および文化活動 * すべての国で障害者が芸術や文化活動に参加することが促進されていると報告されてはいるが、具体例の紹介はほとんどされていない。しばしば障害者の芸術分野や文化活動における参加の進展は個人的な取組みで、一例としては香港行政特別区で、障害者が全国的マスコミの中で人気歌手になったことが見られる。 いくつかの国では、社会福祉省や文化省が障害者を援助している。これらの国ではこれらの活動は CBR機構を通して行われる。例えば、バングラデシュでは、NGOと関連した社会福祉省が、国内のいろいろな祝日の中で、定期的な文化イベントを企画している。多くのNGOは障害者向けの文化的スポーツ的イベントを、独立して企画している。これらはしかし特に都市部に限られたものである。
6.地域生活および地域行事 * 多くの国で、地域生活の促進と地域行事への参加は草の根活動組織によって運営されてきたが、障害者自身の組織による運営はまれで特殊なケースに限られていた。これらの行事への女性の参加は、ごく僅かなものである。つい最近になって、 SHOによる「文化活動への参加」を考慮する地域統合計画が見受けられる。 香港行政特別区では、障害者に係る教育プログラムは地域レベルでリハビリテーション機構や地方自治体によって恒常的に組織化されている。タイでは、障害者向け学校教育はリハビリテーション機構や地方委員会事務局によって恒常的に行われている。 バングラデシュでは、 350人の障害を持つ人たちが最近の総選挙の間、選挙監視人として参加していた。
7.国内および国際障害者の日を祝うこと * 多くの国で国内および国際障害者の日は、バングラデシュやタイを含めて、ふさわしい方法で祝われてきた。バングラデシュでは4月の第一水曜日が 1999年から国民障害者の日として宣言され、祝われてきた。国内および国際障害者の日でのセミナーやワークショップを通しての公教育プログラムには、GOや自助グループを含むNGOが参加している。    香港行政特別区では 1993年から毎年、国際障害者の日を祝っている。モンゴルでは2001年を「障害者の促進年」として祝った。障害を持つ人たちを含む機関間委員会はフィリピン障害予防・リハビリテーション週間を祝った。これらは主にNGOやSHOが代表として参加している社会福祉局によって運営連携されている。
8.メディアに登場する機会 * 障害者がメディアに登場する機会について述べた国はごく少ない。バングラデシュでは最近、障害者の要求や権利が報道され、メディアが重要な役割を果たした。香港行政特別区などでは、障害者が個人の努力によってメディアに登場した。
「行動課題」遂行上の問題 /課題

すべての国が国内および国際障害者の日や、地域の催しやメディアに登場する機会を用いて、教育、訓練、雇用、スポーツ、芸術そして文化活動領域で障害者の肯定的なイメージの促進をする方策に着手しえたわけではない。多くの国では(障害者の社会参加)促進計画は、依然として「特別な日」の行事のままである。障害者には依然として普通学校への入学、職業訓練 /技術訓練プログラムへの参加、公的あるいは民間の仕事への採用などの権利が与えられていない。割り当て(雇用)制度がいくつかの政府で採用されたが、これらの割り当ては実行されていない。

いくつかの NGOでは、障害者が社会や経済活動に参加できるようにするための地域に根ざした計画を行っている。これらの計画は、しばしばサービス提供者の間で調整されていない。これらの組織によって行われる権利擁護事業は、障害者の肯定的なイメージを実際に高めるのに役立つが、権利に根差した主流事業にはまだなっていない。

将来の行動計画

次の「行動計画」の中で求められるのは、 GO,NGOおよび障害者の組織の間での教育、訓練、雇用、スポーツ、芸術、そして文化活動領域での障害者の参加促進のための調整システムであり、そこには具体的な行動計画が含まれ、また計画の達成を監視する適切な仕組みも必要とされる。それはまた、サービス提供者と障害者が適度に関わった地域に根ざした計画でもある。

目標 1.9

全国的にも地方レベルでも、すべての障害者問題の関係者の有効な情報伝達経路を確立すること、そのことを通じて情報の流れを確保し、効果的な問題解決を確実にし、多部門間での協議、特に自助グループや障害者サービスを提供している NGOとの協議を促進すること。

達成のための目的要件 平均応答 (アスタリスク) 概要
0 1 2 3
a.全国的地域的レベルで効果的な情報伝達経路を確立して効果的な情報の流れを作る * ごく一部の国だけが、国内の隅々まで広がるような情報伝達経路を持っているとしている。香港行政特別区では身体障害者合同評議会や香港社会福祉協議会が政府と密接であり、政府部局と NGOとの間で円滑なコミュニケーションがとられている。タイでは情報伝達経路は自助組織を含むタイ全国リハビリテーション委員会や全国社会福祉協議会をとおして確立された。 大多数の国では日本の場合のように、重要な行政機関の間でのコミュニケーション確保のために、中央部分にネットワークがあり、周辺部では情報伝達が弱い。 周辺地域では、自助グループや NGOはそれらの間で情報伝達経路を持っている。
b.自助組織と障害者へのサービスを提供するNGOの参加 * 大部分の国では、 NGOや自助組織はすべてのレベル、つまり全国レベル、州(県)レベル、全国レベルに次ぐレベルなどを的確に代表してはいない。それゆえ、ほとんどの国で情報伝達経路は、タイムリーな協議や有効な問題解決手段として成功してきたわけではない。 香港行政特別区では地域レベルの障害者自助グループとリハビリテーション NGOのネットワーキングは政府の社会福祉部局の地域事務所によって構築されている。タイでは、地域レベルでの障害者自助グループとリハビリテーションNGOとのある種のネットワーキングがあり、県のリハ委員会によって築かれている。バングラデシュのNFOWDは、国の政策や法律を作り出し、改正するために設けられ、全国委員会や執行委員会にGOやNGOを参加させ、その間に橋を架けたものである。ある草の根NGOネットワークはGOとNGOとの介入を調整している。効果的な情報の流れを確立するための情報伝達手段を通して、地方に情報をもたらすためにさまざまな努力がされてきている。電子メディアや出版物、すなわちCSIDの利用を通して更なる情報が収集され普及されている。 自助グループの間で中央レベルへの電子リンクを展開することのできた国はごく少ない。
「行動課題」遂行上の問題 /課題

障害関連の情報伝達経路は全国的にも地域的にもまだ非常に弱い。 NCCは極めて弱い組織であり、重要な省庁/部局/機関や障害者団体もまた含まれていない。このためすべてのレベル、つまり全国レベルと全国レベルに次ぐレベルでの調整委員会・執行機関での効果的な情報の流れが制限されている。実際に、この欠落はいかなる適切な協議や、問題解決の機会も与えていない。

将来の行動計画

次の「行動課題」では、いろいろなレベルでの情報伝達経路を確立する特別な配慮が求められるが、それは早急な伝達が可能でかつすべての集団を含むものである。

目標 1.10

障害を持つ人たちの機会均等に関するすべての法制やその修正を含め、障害者に対するすべての事業、サービスや計画についての情報を、障害を持つ人たちやその家族の識字レベルに合った言語や利用可能な書式で、確実に編纂し、広め、公表すること。

達成のための目的要件 平均応答 (アスタリスク) 概要
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a.障害を持つ人たちの機会均等に関するすべての事業、サービスや計画についての情報を、障害を持つ人たちやその家族に合った言語や利用可能な書式で、編纂し、広め、公表すること。 * 一部の国では、サービスや均等に関する情報が、地域の障害者自助グループを通して障害者やその家族にその国の言語と点字または大活字という二つの手段で編纂され、広められ、公表されている。バングラデシュでは国の障害者政策が細かな叙述や説明で公表され広く障害者の間に配布されている。さらに全国レベルや地方レベルで組織されたワークショップやセミナーでは、障害者が利用できるサービスの公表をしている。 タイでは、委員会や NGO,自助組織は法律や障害者や家族に対するサービス情報を普及している。ワークショップやセミナーでは障害者が利用できるサービスを公表している。視覚障害者と家族には点字のコピーが配布され、ラジオ放送が発信されている。 トルコでは、障害者問題担当局が、自治体や非政府組織を援助して障害に関する視覚メデイアや文字メデイアの準備、出版の準備、教育フィルムの準備を行っている。いくつかの国では、情報提供をめぐって、点字コピーの利用が課題となっている。 香港行政特別区でのように、多くの場合政府部局は視覚の障害や知的障害を持った人のための、点字コピーや簡素化した政府出版物の普及に何度も失敗した。
「行動課題」遂行上の問題 /課題
将来の行動計画

目標 1.11

達成のための目的要件 平均応答 (アスタリスク) 概要
0 1 2 3
a. 障害者とその家族の生活状況に関する正確なデータを集めて定期的に更新するための機構を設立する * 日本、中国、香港行政特別区やタイのように技術的に比較的に発達した国では障害者向けのウェブサイトがあり、それは障害者に共用されている。 地域の他の国で、香港行政特別区ではリハビリテーションの中央登録システムが政府の健康・福祉・食料局の下で設置されたが、障害者のデータは過小報告だと思われている。タイでは労働および社会福祉省によって障害者リハビリテーション委員会が利用できるようにリハビリテーション中央登録制度が設立された。その役所は障害者とともに働いている団体名簿を出した。バングラデシュでも同様に障害者分野で働いている団体名簿を作成し、二度改訂され、最近では名簿を毎年更新させることになった。これは利用可能な国の資源やサービスの最新で的確な情報を与える。ある国では、政府の中央データベースが欠けているので、 NGOが障害者向けのサービスに関するデータベースを発展させてきた。バングラデシュなどではこれらのデータベースは国中で共有されている。 トルコでは、障害者事業局が障害者に関する調査を実施し、統計データを収集し、障害者のデータベースを構築した。
b. サービス利用状況や障害のある人々の機会均等化の進展状況についての 情報に基づいた 判断が奨励される * バングラデシュでは、最近の調査 (2001)が初めて国勢調査の方法を取り入れたものであった。多くの国のデータベースは、特殊な目的で使われる。たとえば貧困な障害者や、訓練や仕事を求める失業者の確認をするためである。タイでは、委員会事務局が全国計画の発展のための参考として障害者問題や研究を収集した。バングラデシュでは障害者の実態や障害の発生率などに焦点を当て、政策提言を含んだ調査が行われてきたが、国の政策や計画の発展のための参考として使われている。 データの中の格差は、サービス提供者にとって重要問題で、障害者関連データの情報に基づく使用の邪魔になる。さらに香港行政特別区などでは、調査や研究はほとんどされていない。 しかしながら、この目標領域について記述したすべての国は、利用可能なデータはある程度活用されたとしている。
c.政策編成に使われるデータ * データベースはさまざまな国の中で、データの質に応じて政策編成に使われている。香港行政特別区では、個人データ (プライバシー)条例が新しく導入され、適切に守られている。ある一国では、データベースは国の障害者政策の発展にとてもよく使われてきたと述べられている。
d.障害者の個人情報についてのプライバシー権の保障 * 香港行政特別区では、リハビリテーションプログラム計画の作成過程で、関連データが海外の出現率のデータと一緒に活用され、さまざまな障害者グループの人数推計に使われてきた。タイでは、障害者のプライバシー権利の侵害を予防するためにプライバシーデータ保護規制法が制定されたとしている。 他の国では、いかに障害者に対してプライバシー権利が守られているのか全く述べていない。
「行動課題」遂行上の問題 /課題

この分野ではほとんど努力がされておらず、いくつかのデータベースがネットワーキング機構によって開発された程度である。これらのデータベースはそのメンバーの中で共有され、他のサービス提供者を排除してきた。これらのネットワークは計画やサービスについての情報を含んでいる。しかし詳細な情報はこれらのネットワークデータベースにはない。

これらのデータベースはケーススタディを含んでいない。また障害者のサービス利用状況についての情報に基づく判断に役立つようなデータともいえない。これらのデータベースは政策編成には役立たない。

障害者のプライバシー権利の保障は、たとえ法律が適切に実施されたとしても明らかに疑問である。というのは、すべての国が障害者のデータの権利を保護する法律を制定しているわけではないことが明らかであるからである。この分野でごく少数の国のみが法律化している。

将来の行動計画

現在のデータベースは、お互いにリンクすることが求められ、必要とする誰もがアクセスできることが必要である。これらのネットワーキングされたデータベースの管理調整が求められる。目下のところこれらのデータベースには入っていない特徴であっても、「行動計画」の目標に従って追加することが必要である。

新たな課題

社会保障の不足、および障害を持つ人たちの状況を改善するために必要とされる貧困削減戦略の不足という、懸案がある。ある政府は、戦争の影響による高コストや、経済の低迷、政情不安などにより、これらの取組みが制限されてきたと述べている。

ソロモン諸島では、10年以上にもわたる民族間闘争や政府援助の不足により、国内調整が全く進展しなかった。結果として宣言に署名して以来なんの行動もされていない。

日本とモンゴルのような国では今も政府機関だけが調整機構の代表となっている。しかし、興味深いことに、これらの国のいくつかの政府機構は障害者向けのNGO活動を調整し始めた。これらの機構の調整の仕組みは、あらゆるレベルの意見が反映されるようにNGOに対して‘促進的’アプローチがなされるべきであるとしている。

10年の最後には、ソロモン諸島のように何も進展がないと述べている国や、調整機構のメンバーのあり方を議論し、障害者の参加を考慮している国もある。バランスの取れた参加を確保するための方策が必要である。

タイなどでは、政府によってなされた成果は本当にユニークなものである。1994年に労働者災害補償法を制定したが、これは従業員を労働による障害から保護するためで、医療費の補償や、補装具や装備、肉体的精神的リハビリテーションの補償をするためである。特別な職業リハビリテーションが Pathum Thani 県のBangpoonの産業リハビリテーションセンターで行われている。この法律は、職場での健康とよりよい安全の問題を推進する。

まとめ

この報告は各国の国内調整の関連データで入手できたものを基に準備された。多くの国について作業部会のチームは、関係する適切な情報を得ることができなかった。例えばインドネシアについては、利用可能な情報としては「インドネシアの社会は諸問題を解決し、APDDPの12課題を満たすために努力している」と述べられているのみである。

利用できない情報の例としては、マレーシアのケースがあるが、こう述べている。「マレーシアの障害を持つ人たちのクオリティオブライフを進展させるという決意は、1994年5月16日のアジア太平洋地域における障害者の完全参加と平等を求める宣言に署名したことでさらに確立された。加えて児童の権利条約の署名によってすべてのマレーシアの児童や、障害を持つ児童が経済的、社会的発展に完全な参加をする権利を保障され約束された。」。さらにネパールの例では「計画、監視、実行の機関の間のよい調整」と述べられていたが、これがどの特定の分野のことか不明である。それゆえ、この報告は、「行動課題」に従ったアジア太平洋地域の加盟国での「国内調整」活動の遂行を取りまとめることができるだけである。

加盟国中の多くの場所で見られる結果や成果から学べることは、アジア太平洋障害者の10年 (1993-2002)の「行動課題」の目標から遅れていることである。しかし結果から極めて明らかなことは、「目標」が各国の国内調整活動に肯定的な影響を与えたということである。このことは、ESCAPが宣言した10年の直接的影響だといえる。この地域の多くの国は、経済力の強さが大変不均等で、それゆえ障害者の発展分野では多大な制限がある。しかし、障害者への介入や参加機会の開発促進という分野では、政府、非政府組織からの積極的な活動があることもまた見ることができる。2001年には、諸機関間協調チームが国民会議からの資金を得て一日だけの障害者会議を開催したが、これには400を超える障害者個人やその家族のメンバーたちが出席した(訳注:国名不明)。このことは貧困者や、高齢者などの、国から長い間希望を失わされた人たちへの社会正義の問題の中で、障害者問題を浮かび上がらせることになった。クック諸島では「国の障害者政策を創出する動き‥‥政府(行政)の一部分として、2000年8月に内務省の中に障害者担当官が任命された。」このことは、間違いなく強い勢いをつけることとなる。アルメニアでは、障害者に対する国内調整会議は設立されていないが、社会保障省(成人および障害者問題関係局)とNGOの社会連盟が障害者問題を扱っている。キリバスでは、障害者に対する国内調整はないが、1990年代後半から環境および社会開発省によって社会福祉サービスが提供されている。同様にロシア連邦では、市民、経済、政治的な機会均等および他の権利や自由の実現がロシア連邦憲章によって保障されている。ロシアで受け入れられた障害者の機会均等化に関する基準規則は、国に対して障害者の生活の質と平等の維持について深刻な倫理的社会的責任を負わせることになった。障害者問題のいくつかは、1995年1月16日の「障害者への社会的援助」♯59、(これは1999年に完成された)計画の中で解決された。ミクロネシア(連邦)では、NCCの発展準備の面で魅力的な段階が踏まれた。つまり障害者向けの計画やサービスを調整する政府内担当部署を設けたこと、NGOを承認し彼らの意見を障害者のための国の実行計画に組み入れたこと、そして障害を持つ人たちのための特殊教育局の局長に助言するために、諮問委員会を創設したことである。パプアニューギニアは、1998年に設立された委員会を再建させようと願っているし、サモアでも同様に機能していない国民委員会を再建させようとしている。サモア政府は、特別ニーズ教育への政策を採用し、特別ニーズ教育委員会を設置することで活発な実践実行をしている。この国ではまた、障害者向けの公共建築物の建築計画に関する政策を準備している。これらはすべて障害者の完全参加と平等の発展に向けた積極的な印である。これらの国ではより明るい未来が開け、第二の10年では、NCCがまだ十分にそだっていないこれらすべての国で機能する完全なNCCを設立する挑戦を行いうる。

ミャンマーは「障害者に関する国民会議の設立準備」を報告しているが、この記述から我々が積極的に学ぶべきことは、多くの目標が未だに達成されていないということであり、第二の10年に対する特別な将来計画の必要性を考えさせる。

いくつかの地域で成果が不均等であることに、特に注意を向けねばならない。データを分析している間に判明したことは、多くの国では10年の半ばから国内調整委員会と執行委員会を発展させるイニシアチブに勢いがついたということである。それ以降約5年が過ぎたが、NCCを効果的な法的機関へと強化する課題は達成されていない。NCCを、多部門が関与し、障害者の参加を強め、NGOや障害者団体の関与するものへと発展させる政府の意志と方針を、誠実に実行に移す必要がある。

「行動課題」の政策分野における多くの目覚しい成果を理解する際に、自己満足しないことが求められる。データの不足のために、この地域の中で、アジア太平洋障害者の10年によって生活に影響を受け、機会が拡大された障害を持つ人たちのパーセンテージがどれくらいであったかを知ることはできない。しかし完全参加と平等の獲得にはさらなる行動が必要とされることは明らかである。ナショナルデータベースの創設は、障害を持つ人たちと彼らの状況の正確な情報の提供に必要不可欠である。これがなくては適切なサービスの計画を立てることも、完全参加と平等への発展を監視することも困難である。

社会参加の開発促進や政策決定に参加する権利も含め、すべての障害を持つ人たちの平等権の保障が、2012年までにアジア太平洋地域で達成されるためには、地域的およびサブ地域的な全面協力とともに、なによりもこの地域の各国政府の決意が必要とされている。

文献

  1. Towards Equalization , End of the decade: Meeting the targets and the future challenges, Asian and Pacific Decade of Disabled Persons 1993-2002, The Bangladesh Context, Ministry of Social Welfare Government of the People’s Republic of Bangladesh, National Foundation for Development of Disabled Persons and National Forum of Organizations Working with the Disabled (NFOWD) June 2002.

  2. Report of the Regional NGO Network (RNN) Task Force on National Coordination for Equalization of Opportunities for Disabled Persons for the Asian & Pacific Decade of Disabled Persons, 1993-2002 National Coordination Task Force Bangladesh, Ahsan Habib, Assistant Director Personnel & Finance Centre for the Rehabilitation of the Paralysed and other Task Force Members of Bangladesh, June 2002.

  3. Regional Review Paper on the Evaluation of Achievements of the Asian and Pacific Decade of Disabled Persons --- Preliminary Draft, 23 June, ESCAP.

  4. Questionnaire Data Summaries including 1 National Coordination Achievements.doc and the 14 Additional Comments.doc , ESCAP .

  5. Task Force National Coordination Report Thailand, Ms. Chalermsee Chantaratim and Task Force Members, August 2002.

  6. Task Force National Coordination Report Hong Kong China, Phillip Yuen, August 2002.

  7. Nepal’s NGO Answer, Munishwor Pandey, May 2002.

  8. Country Report of Thailand: The Implementation of the Agenda Action, Ms. Chalermsee Chantaratim and Task Force Members, September 2002.

  9. Task Force National Coordination Report Japan, Dr. Hisao Sato, September 2002.

  10. ESCAP Decade Agenda for Action RNN Report on Public Awareness, Report Developed by RNN Task Force Public Awareness, A H M Noman Khan, September 2002.

略語

AP=Asian & the Pacific (アジア太平洋)

APDDP= Asian & Pacific Decade of Disabled Persons (アジア太平洋障害者の10年)

CDPF= China Disabled Persons Federation. (中国障害者連盟)

Decade Agenda= Agenda for Action for the Asian & Pacific Decade of Disabled Persons, 1993-2002 (「行動課題」)

DPO=Disabled People’s Organization (障害者機構)

DWA= Disability Welfare Act  (障害者福祉法)

ESCAP=Economic and Social Commission for the Asian & the Pacific(アジア太平洋経済社会委員会)

FNCDP= Fiji National Council of Disabled Persons (フィジー障害者国民会議)

GDC= Government Disability Committee (国家障害者委員会)

GO= Government (政府)

II=Inclusion International( インクルージョンインターナショナル、世界育成会 ) 

MCDS= Ministry of Community Development and Sports (社会開発およびスポーツ省)

MWCSW= Ministry of Children, Women and Social Welfare (児童、女性および社会福祉省)

NCC= National Coordination Council (国内調整会議)

NCC=National Coordination Committee (国内調整委員会)

NCCD= National Coordination Council on Disability of Vietnam (ベトナム障害者国内調整会議)

NCSS= National Council of Social Services (国民社会事業会議)

NFOWD= National Foundation of Organizations Working for the Disabled(全国障害者支援団体機構)

NGO=Non-Government Organization(非政府組織)

RAC = Rehabilitation Advisory Committee (リハビリテーション諮問委員会)

RI=Rehabilitation International (国際リハビリテーション協会)

RNN= Regional NGO Network(地域NGOネットワーク)

SHO=Self-help Organization(自助組織)

TF= Task Force(作業部会)

ToR=Terms of Reference(委任事項、権限)

WBA= World Blind Association(国際視覚障害者連盟)

WwD= Women with Disabilities(障害のある女性)

(翻訳:日本社会事業大学 吉田滋 高島恭子 佐藤久夫)