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アジア太平洋障害者の10年の評価<完全参加と平等<へのNGOの展望

「国民の啓発」タスクフォースレポート

「ESCAP の十年の行動課題1993-2002
「RNNの国民啓発のためのタスクフォースによって作成されたレポート

コーデイネーター:ノーマン・カーン(バングラデシュ)

1.0 序論

ESCAの十年の行動課題の目標と関連して、RNNは、率先して個々のメンバー国の進歩状況を評価するためのイニシアティブを取ってきた。このイニシアティブの実行段階として、RNN は、十年の成果と未達成を見直しするために13のタスクフォースを立てた。それは、「障害のある女性・少女」に関する付加分野とともに、アジア太平洋障害者の十年の行動課題における12の政策分野と符合することである。‘国民の啓発’は、これらのタスクフォースのなかに含まれたものである。NGOの代表によって開発されたこれらのレポートは、2002年10月に日本で開かれるESCAPの政府間の高位レベル会合に資料として提出される予定である。

このイニシアティブの主要な目標とは:

  • NGOのそれぞれのRNNメンバー国/地域における「十年」の進歩を評価すること。
  • 障害者の完全参加と平等のための各国と地域及び、アジア太平洋地域の課題と問題を確認すること。
  • NGOとGOの次の十年の行動として地域協力を進めるための次期行動計画を提案すること。

そのアジェンダ文書に明示された「国民啓発」のもとでの行動課題の目標は、

  1. 民間セクターや地域メディアを含む全国そして地方の出版物と電子・電波を通じたマスコミが、障害のある人びとへの国民の認識と態度を改善するための定期的な正確な記事を通じて、「十年」に関連した話題を特集に取り上げるように、直ちに働きかけること。
  2. 青少年のための事業を実施するすべての教育・訓練機関、政府機関、 NGOは、すべての青少年のために企画された活動に障害のある青少年が参加できるようにするための方法を明確にし、実施するよう促す段階的行動を取ること。
  3. 文部省とその他関連する全省庁により、それぞれの国や地域で使われているいろいろな様式の教育と機能的識字教材のすべての見直しを直ちに開始するよう促すこと。そして障害のある人を傷つけるような内容を取り除き、彼らが地域生活の主流に溶け込むのをサポートするイラストや説明を加えることを促す。
  4. アジア太平洋地域における障害のある人びとの完全参加と平等を促進する初日カバー及び記念切手の発行の即時実行を促すこと。
  5. 情報とメディアの政策及びプログラムに障害問題を含め ,障害分野のために適切な時間とスペースを取るよう主張する。さらに、各種のパフォーマンス、特にコメディー,映画、漫画などを通じて障害のある人びとに対する否定的イメージや不正確なイメージを描写することを禁ずるよう主張すること。
  6. 障害のある人びとに対する国民の認識を高め ,態度を改善するためのマスコミの努力に関する資料収集のため、政府の省庁及びNGOが、報道紹介サービスを実施するよう促すこと。
  7. アジア太平洋地域レベル、国レベル及び国に準ずるレベルで、障害のある人びとの才能と願いを目立たせる国民啓発キャンペーン活動の一部として、障害のある人によるあらゆる文化的行動芸術と舞台芸術を含む )とスポーツを推進すること。
  8. 公務員及び全部門の専門技術者の養成カリキュラム及び現任訓練カリキュラムに、主流の開発問題として障害を位置づけること。これは、障害問題における多面的協力を促進し、すべての主流開発活動へ障害のある人の統合を推進するためである。

1.1 レポート開発のための方法論、及び、プロセス

RNNガイドラインに合わせてすべてのRNNメンバー国から情報を収集するために、国民啓発のためのタスクフォースがイニシアティブを取った。関連諸国のRNNメンバーからの情報を集めるために努力した。これ以外に、インターネットを含むほかの情報源が情報収集過程で検討された。そのタスクフォースは、情報収集のために次のような方法とツールを利用した。

  • RNN によって提供されたガイドラインに基づいて、情報収集ツールが、設計された。 そのツールは、国民啓発のもとでの全ての目標を含む。各国から報告しやすくするために、それぞれの目標は、さらに細かく特定課題別に分けられた。
  • そのツールは、 RNNのすべての関連メンバー、そしてその国の他の情報源に配布された。
  • 様々な関連文書の他、入手できた ESCAPの報告が、情報収集のために評価された。
  • 関連情報を得るため、既存のウエブサイトにインターネットを通じてアクセスした。
  • 異なるソースから見出された関連情報の編集。

1.2 レポートの限界

タスクフォースは、特定目標ごとに達成度をランク付けし、そのランクの理由を記した報告を開発しようと期待した。しかし、各国の関連ソースへの繰り返しの要請にもかかわらず、得たフィードバックは限られたものだけであった。これらのフィードバックは、成果とその達成度に関して望ましい形の情報ではなかった。そのような状況のなか、タスクフォースは、 ESCAPの文書、諸国のレポート、そして、インターネット・ウエブサイトのような二次的な情報源に専念しなければならなかった。その調査結果に基づいて、タスクフォースは、国民啓発の課題と関連した各国の取り組みの記述を編集することとなった。色々な試みが行われたにもかかわらず、一部の国からは情報が得られなかった。

2.0 小区域別に見る個々の国の成果

東アジア及び北東のアジア

中国
  • 定期的イニシアティブとして、スポーツ、ゲーム、及び、アート・フェスティバルが、国、地方、都市部レベルで開催された。特別な賞が設けられ、 (a) 国の障害者の日に、(b) 障害のある人びとを支援する青年パイオニア、(c)障害のある人びとを援助する青年ボランティア、(d) 障害のある人びとへの支援モデルに公表・受賞された。
  • これらのイニシアティブに通じて、社会は、障害のある人々に対するケアリング、敬意、理解をもっと深めることになった。より高い自尊心、自信感をもつにつれて、障害者は、自己修養、自助努力に気づくことになった。障害者は、より活発な社会参加を行い、そして社会貢献をしている。また障害者は、徐々に自らの権利を保護する法律に関する関心を持ちはじめている。
香港中国
  • 障害のある人びとに対する肯定のイメージを促進するために、セミナー、展覧会、ロードショー等を含む宣伝プログラムと活動を開始した。
  • 精神保健の月が、精神的問題のある人々対する国民認識、 (社会的)受け入れを促進するために、毎年10月にとり行われた。政府とNGOの両方によって国際的な障害者の日が挙行された。「皆のための社会(Society for All)」のメッセージが、広められた。
  • 1994 年以来、障害者(PWDs)の能力と才能に関して公共の関心のあるテレビエピソード及びコマーシャルが、作り出された。
  • 政府は、障害のある学生が主流の教育を受けることを励まし、容易にするための政策を立てた。
  • 2001年7月に、教育の実践のコードが、障害のある学生、教育(サービス提供)者へのガイドラインとアドバイスを提供するために、障害者差別禁止令のもとで定められた。
  • 2002年12月にアジア太平洋障害者の 10 年の終結を記念するために、郵便局では特別なファースト・ディーのカバーと郵便の特別消印を発行する予定である。
  • 障害を持つ国内競技者ためのサポートが行われてきた。
  • 労働省は、障害者の就職を促進するために、障害者の勤労能力に関する雇用者と公共の理解を高めるための、広報活動を定期的に行なっている。

これらの活動には、 (業績などが)優れた障害をもつ従業員や理解のある雇用者に対する年一回の表彰式、展覧会、セミナー、ラジオ番組などがある。

日本
  • 障害の問題に対する国民の啓発を高めるために、 12月9日を「障害者の日」としている。
  • 「障害者週間」は「国際障害者の日」( 12月3日)から始まり「障害者の日」(12月9日)までであるとされた。その目的は、障害のある人自らの自立並びに社会参加への意欲と国民の障害者問題に対する理解と認識をより一層高めるための運動を展開することにある。目標に従い、政府は地方自治体と障害者団体が多数の記念プログラムを開催している期間に、メディアを使って国民の啓発を高めるよう取り組んでいる。
  • 2001年4月の「世界健康デー」のテーマは「こころの健康」であった。その機会を利用し、日本政府はさまざまなプロジェクト(例:心の健康についての出版物)を国民の教育のために実施した。
モンゴル
  • 障害のある人の支援と協同における前向きな精神的環境の進展を目的とし、国民の啓発を高めること。
  • 「障害者の 10年」への取り組みをなお一層強固なものとするべくモンゴル政府は2001年を 「障害者推進年」“The year of Promotion of the Disabled” とし、しかも、注目すべき成果を遂げた。
  • モンゴル政府と NGOは障害を持つ人への支援活動に取り組んでいる。
南アジア
ブルネイ・ダルサーラム
  • 種々の啓発キャンペーンが、ラジオ、テレビや新聞といったマスメディアやパンフレット、ワークショップ、セミナーそして宗教の講演会を通じて、ブルネイ政府と NGOにより実施された。
  • 障害のある人の訓練へ親が参加することは、最も重要なことであるとされている。
  • セラピスト、ボランティアおよび親自身といった世話をする関係者を含めた家族のサポート・システムは、情緒面での支援を促進していくものとされている。

これらの活動を通して、ブルネイ・ダルサラームの一般大衆は、現在、より多くの障害のある人々を受け入れている。

カンボディア
  • カンボディア国内の国を挙げての国民の啓発活動は、政府組織 (GO)、NGO、国際組織(IO)とともにDAC ( Disabled Action Committee )により実施されている。
  • NGOが国民の啓発運動を始めた。
  • 「国際障害者の日」、「国際婦人の日」が正式に挙行された。
  • 「カンボジア障害者スポーツの日」は例年祝われている。
  • 教師、僧、ヘルスケアワーカー、政府施設、及び NGOといった教育的影響力のあるグループは、人々の態度を変化させることにもまた役立っている。
  • 参加者がすべて障害者であるスポーツ競技とゲームが企画された。
  • 国民の啓発は、障害者が入手可能なサービスやリハビリテーションについて定期的に新聞発表、ラジオおよびテレビ放送を行い強めている。
インドネシア
  • 「国際障害者の日」が正式に挙行された。
  • 「全国アクセス運動」 “National Movement on Public Accessibilities (GAUN 2002)” が2000年6月4日に創設された。
  • マスメディアを通じてのさまざまなトーク・ショー、障害者の社会福祉に関する本や雑誌、障害のある人のスポーツ・イベント、障害者の作品の展覧会などを開催した。
ラオス人民共和国
  • 1996年初頭、アジア太平洋諸国の過去2年における「アジア太平洋障害者の10年」に対する経過報告がわが国で翻訳、出版された。その内容は、中央政府の全省庁、全地方行政組織に影響を与えた。これは障害のある人への人々の態度を変化させることになった。
  • 1996年4月、わが国は医療会議を開催した。その目的は、地方都市及び地区レベルにおける住民への医学リハビリテーション・サービスの提供の強化とそのシステムの改良にあった。
  • 「障害者のための協力会議」 “Conference on Cooperation for Disabled Persons”は1996年9月に開催された。社会福祉省(the Department of Social Welfare)、地方公共医療サービス(provincial health services)、リハビリテーション・ユニット(rehabilitation units) からの24人の代表が会議に出席した。
  • 1995年から、医学のリハビリテーションは地方大学で医学研究カリキュラムに含まれることになった。
マレーシア
  • 政府メディアは、関連する話題をテレビ、ラジオのよく行われているトーク・ショー、インタビュー、プログラムというようなさまざまな番組で取り上げた。
  • 新聞もまた障害者問題について特集記事を組み、詳細に報道した。
  • 毎年行われる「障害者の日」に因んで、トレーラーフィルムとコマーシャルが作られ、テレビとラジオを通じ放送された。
  • キャンペーン 1999がマレーシアで組織された。
  • 第 1回 Asian Para Games が開催された。
  • 障害のある人による特別コンサートが組織された。
  • RTMとNational Film department も、また、いくつかのドキュメンタリー・フィルムを作製した。それは、さまざまな分野で成功を収めた、あるいは名声を博した障害のある人の話にハイライトを置いている。これらのフィルムは1997年からTVマレーシアを通じて放映され、時々再放送された。
  • 手話は、 RTMのTV-1で放送されている定時ニュースで使用されている。
  • 障害のある子どもを登録することの重要性が、電子メディア、及び印刷物を通じて広められた。それは、障害のある子どもが教育とスキル・トレーニングの機会を持つことができるようにする為である。
  • 障害のある子は、教育省により設立された障害児のためのさまざまな特殊学校に入学を許された。
  • 政府プロジェクトを計画及び実施している政府機関は、種々の政府や公の建築を計画するときに、概して障害のある人のニーズにより敏感になった。
  • 様々なイベントやメディアを通して、障害のある人の能力や成し遂げられた業績を強調した。
  • 情報が障害のある人に広まった。

上記の促進運動は国民の啓発、障害のある人に対する前向きな態度、アクセシビィリティの保証、身体障害者にやさしい建築物、障害者差別の解消に役立った。

ミャンマー
  • 1994年から、12月3日の国連の「国際障害者の日」を毎年祝うために、「国際障害者の日」が制定され、絵画等の芸術、歌、ダンス、籐編みの技を競うコンテストが催されている。いろいろな障害を持つ人たちが、熱狂的にこれらのイベントに参加し、盲人のフットボールの試合は、多くの興味や関心を引きつけている。

これらの国民の啓発を高める運動は、「異なった能力を持つ人」(障害をもつ人)による技の披露に焦点があてられて、大変効果をあげている。

  • 「国際白杖の日」が 1992年に定められ、毎年挙行されている。
  • 国民の啓発運動は国のメディア、及び他の活動を通じて激しさを増した。
  • Ministry of HealthとMinistry of Social Welfare、Relief and Resettlement はNGOの組織と共に、より一層の国民の啓発を高めるために働いた。それは、種々の活動、特別なプログラム、広告そしてテレビで特殊学校の日々の活動を放映することを通じて実施された。
  • 「国際障害者の日」、毎年行われている障害者スポーツ・イベント、盲人のフットボール試合、というような特別な出来事は、テレビで放映されている。
  • ミャンマーでは、視覚障害者のための学校によるステージ・ショーが行われた。
  • タレント・ショーは視覚障害者、身体に障害を持つ人、及び知的障害者が一緒になって上演した。
  • クリスマスコンサートは、言語あるいは聴覚に障害のある人が出演した。
  • 1996年にthe Ministry of Healthのヘルス・ワーカーのために啓発のワークショップと権利擁護会議が開催された。
  • NGO組織の大部分は、彼らの訓練プログラムの中に国民の啓発を高めることを課題として取り入れている。
フィリピン
  • IECの材料が開発され、障害問題に関する権利擁護キャンペーンが正式に行われた。
  • 「全国障害予防・リハビリテーション週間」が、障害者問題の解決促進と権利擁護のための手始めとして行われた。
  • 人形劇( puppetry)は障害問題に対する国民の啓発を高めるためと障害のある人に対する前向きな姿勢を招くために人気のあるメディアとして使用された。
  • 全国的なラジオ番組は、障害者が障害問題に焦点を当てて総合司会を務める番組を毎週放送した。
  • 障害者組織は障害問題に焦点を当てた色々なプログラムに参加した。
  • 「アジア太平洋障害者の 10年」記念切手が1998年に発行された。
  • 障害をもつ青年がフィリピン・ナショナル・ゲームに参加した。
  • 雑誌及び他の出版物は障害問題を記事とした。
  • メディア広告は正式に障害問題を取り上げた。
  • 「全国障害予防・リハビリテーション週間」が挙行された。
  • 障害問題についての特集記事が組まれ出版された。
  • 障害問題に関するすべての新聞発表の切り抜きが、保全された。
  • 全国的な SPEDキャンペーンのための特殊教育のポスターが造られ、貢献した。
  • NGOと共に教育、文化及びスポーツ省と他の省庁は、いろいろな形式と方言により、実用的な読み書き教材や教育教材を開発した。それには、主流の地域生活への障害者の参加を支援するイラストと説明が含まれている。
  • 国際イベントに参加すること ----アビリンピック、パラリンピック、FESPICゲーム、全国的あるいは地方の文化スポーツ運動、およびTESDAのフィリピン全国技術協議会と国内のアビリンピックへの統合は、障害者の技能競争を通じ、働く機会を広げることになる。
シンガポール
  • 適切な用語の使用に関する小冊子は NCSSによって出版され、一般大衆に広められた。
  • シンガポール政府は NCSSに資金を提供して、障害のある人の能力について国民の啓発を高めるという目標を持つ啓発プログラムをはじめている。
  • 「障害とは不可能を意味するものではない」( Disabled does not mean Unable) が1994年と1995年の国民の啓発プログラムに採用された。
  • 模範雇用主および模範従業員賞は、障害のある人の雇用に著しく貢献した顕著な雇用主と、他の模範となる勤めをした障害を持つ従業員を認めるために 1996年にはじめられた。
  • NCSSは2002年に、the Ministry of Health(MOH) とMCDSの下、発達障害を持つ子どもの早期発見と取り扱いのために小冊子を作製した。
タイ
  • タイ政府は「国際障害者の日」を祝うために財源(約 400万バーツ)を充当した。
  • 1999年に、タイは身体障害者のための第7回 Far East and South Pacific GamesとFESPIC Gamesを主催した。
  • 12月3日、「国際障害者の日」に、障害のある人のために働く人および障害のある人を雇用する事業所が選出され、その貢献により首相から表彰の額を得る。
ベトナム
  • ベトナムは第 9回「アジア太平洋障害者の10年」キャンペーン会議をハノイにて主催した。
  • マスメディアは障害者関連の取り扱いを増やした。それは、障害のある人が演じる伝統工芸や歌、ダンス及びドラマである。
南および南西アジア
バングラデシュ
  • 手始めとして NGOと中央政府の共同によって「アジア太平洋障害者の10年」に関する出版物の記事を公表することから始められた。そのような記事の出版は10年についての一般大衆のための情報であった。
  • 教育プログラムを実施している NGOに対して、障害のある人をふくむようを促す取り組みがなされた。教師と関係者たちも限定した規模ではあるが訓練された。教育省初等教育局長は初等教育における障害学生の統合のための国の方針と行動計画をまとめるという課題の研究に取り掛かった。
  • バングラデシュ政府と NGOは、障害者の完全参加と平等ということを促進する記事を掲載した全国紙と雑誌の発行に共同作業で取り組んだ。これら新聞雑誌の報道は、国際障害者の日、国の障害者の日、安全白杖デー等の日により集中して行われた。
  • NGOとマスメディアは、近頃の障害者の生活に変化をもたらすという重要な役割を果たした。内部にあり隠れていた障害者問題に焦点を当てたNGOの強力なアドボカシーとメディアの効果的な宣伝によって、障害者問題の国民啓発は大進展を見せたと考えられている。国内および国際の障害者の日のすべてのイベントはテレビで放送されたが、そこにはテレビスポット、ドラマ、レクリエーション番組、討論会、政策アドボカシー番組などが含まれていた。
  • 障害者問題の国内ネットワーク組織は、障害者に対する国民の啓発を高めるメディアの成果に関係する文書を集めている。いろいろな NGOによる地方や国のレベルの切り抜き記事の収集の努力もなされた。
  • NGOと提携して社会福祉省は、いろいろな日を祝って定期的な文化的イベントを主催している。多くのNGO組織は独自に障害のある人のために文化、スポーツ・イベントを主催している。国民スポーツ連盟もまた障害のある人のスポーツ活動の推進を促すために結成された。バングラデシュ政府とNGOもまた、障害のある人を国のスポーツの主流にのせる行動を取っている。これらすべての取り組みと国際的なスポーツ・イベントにおける障害のある人の称賛に値する活躍のすべては、障害問題における国民の啓発を高めることに貢献している。けれどもこれは大変限定されたもので、特に都市近辺に見られることである。
  • 社会サービス局と NGOが主導権を発揮して、局内の職員を対象にした障害問題のオリエンテーションコースである勤務中のコースを始めた。

訓練プログラムはすでにスタートし、かなりの数の人たちがすでに訓練を受けた。障害のテーマはバングラデシュ政府のシニアレベルの職員に訓練コースを提供している公務員研修センターでも取りあげられている。

インド
  • 社会福祉と開発のフェアが実施されており、そこでは障害問題が含まれている。
  • インド政府は国民の啓発を促す最先端のあるいは伝統的な福祉機器、バリアフリー仕様を展示する国内・国際展覧会を計画している。
  • NGOによるセミナーや国民の啓発を高めるキャンペーン。児童と若者のために企画されたすべての活動に障害児と障害を持つ若者を含めることを目的とする国の機関の努力。
  • 国内では切手が発行され、メディアも記事として取り上げた。
  • パラリンピックに参加した。この問題の記事は国民の啓発を促進した。
  • 障害者の能力についての啓発を創り出すパイロット・プロジェクトが 22の地方で2002年に実施された。
  • 障害に関する単元が、 1999年以来公務員のためのLBS 全国行政学院で導入された。
イランイスラム共和国
  • メディアは前向きな態度と国民の啓発を鼓舞することに焦点をあてて定期的に記事として取り上げた。
  • 障害問題に関する国際ニュースは国の言語に翻訳された。
  • 国内では障害者のスポーツ競技と文化プログラムが催された。
モルディブ
  • 1990年から、障害のある人の情報を広めることと障害予防を目的とする国家的運動とキャンペーンがマスメディアを通じて定期的に実施された。
ネパール
  • テレビニュースには手話が使用されている。
パキスタン
  • 一般大衆の理解の向上は多くのメディア、電子およびセミナーのプレゼンテーションの対策により成し遂げられた。
  • 大衆啓発キャンペーンはテレビを通じてはじめられた。
  • 政府組織と NGOは障害問題に関する国民の啓発を促す運動を実施している。
  • 国内ではポーテイジプログラムの啓発が実施された。
  • 特殊教育の啓発についてのセミナーがいくつかの大学において行われた。
  • 婦人開発・社会福祉・特殊教育省の下の特殊教育局長はイスラマバードにおいて国立図書館と情報センターを設立した。それは次のような特殊教育サービスを提供するためである。
  1. 特殊教育に関する外国の本。
  2. 海外ジャーナル。
  3. 特殊教育に関するオーディオとビデオテープ、主に国立特殊教育研究所のコース参加者と教師向けのもの。
  4. 海外ジャーナルの目次ページサービス。
  5. 報告書と学会紀要。

教育分野におけるこのような取り組みは、国民の啓発の発展に寄与した。

スリランカ
  • 「国際障害者の日」は一般大衆の否定的な態度を根絶し、障害者の平等の権利と謬道の参加について理解してもらうために国民の啓発を促す目的を持って社会福祉省により毎年記念式が挙行されている。
  • 世界行動計画と ESCAPの行動課題のために印刷物と電子メディアを通して幅広い広告が行われた。
  • 一般大衆にメッセージを運ぶためワークショップ、会議、スポーツ試合を実施した。
  • 毎年、担当の省は「国際障害者の日」に因んだ特別テーマを選び、関連のあるプログラムを続けている。
  • 心理社会リハビリテーション、障害者雇用、建築物へのアクセシビィリティ、地域に根ざしたリハビリテーション等のワークショップが催されてきた。これらの主題について事務所と一般大衆が知っているようにするためである。
トルコ
  • 障害と障害のある人について国民の啓発を高めるために、競技会、会議、シンポジウム、パネル展示および障害のある人の雇用が行われた。
  • 障害問題を含む多くの文書(例として障害予防、リハビリテーション、特殊教育、アクセシビリティ、職業訓練と雇用)が政府や NGOにより出版された。
  • 障害のある人および彼らの生活についての映画ショーがフィルムにされ、国民の啓発を高めるために使用される目的で地方自治体に送られた。短編映画が障害予防のために作製され、すべての国営や地方のテレビ会社に贈られた。
  • 「障害者のためのサービス機関カタログ」が準備され 2000年には最新版となっている。
  • ヨーロッパ交通省会議によって決定された文書、「移動のハンディキャップがある人のために輸送を改善しよう」が国の言語に翻訳され公表された。それは、障害に関する交通関係のガイドのために地方と中央政府に送られた。
  • 栄養不良や食事に関連した障害、そしてある種の障害のための技術を述べている「栄養・食事と障害」という本が、すべてのリハビリテーションセンター、特殊教育のセンターと学校、病院と障害者団体に送られた。
  • 1998年に、トルコでは老人ホームの65歳以上の人の障害の出現率と原因を調べる研究がおこなわれた。そのデータと関連する提言が記載された本は「高齢者の障害の評価」である。
  • 「障害者雇用の案内」が印刷され、障害者組織を通して関連団体と個人に配布された。
  • 国連の勧告と決議と「障害者機会均等化に関する基準規則」は国の言語に翻訳され、障害問題に関連する国と地方組織と NGO組織に配布された。
北および中央アジア
アルメニア
  • テレビと出版関係のメディアは障害問題に関する国民の啓発を高める点に焦点を当てていた。
  • 障害に関する情報を交流するために NGOの参加によるセミナーがもたれた。
ウズベキスタン
  • 国民の啓発を高めるために、障害の専門家による資料が作成され、地方紙に掲載された。
  • 国内では障害問題のパンフレットと小冊子が印刷された。
  • 専門家と障害者の会議が開催された。
  • 障害問題とリハビリテーションと職業病の特集がメディアで組まれた。
太平洋
クック諸島
  • 「障害者の質の高い生活は人権だ」というテーマの下、クック諸島のすべての島から障害のある人の代表、介助者、両親、関係する政府代表が集まり、全国的な規模の国民の啓発のワークショップが行われた。
  • クック諸島国民障害者議会(The Cook Islands National Disability Council)は2001年3月に組織された。
  • メディア(ラジオ、テレビおよび新聞)はすべての国民への障害問題の啓発に使われた。
  • 2つのESCAPのビデオ(「認められ、意見を聞かれ、考慮されるために」”To be seen, heard and counted”と「障壁からの自由」“Freedom from Barriers”)およびバヌアツで作成された「我々が話さないこと」”Things we don’t talk about”が国営テレビ局で放送され、2001年10月の第2の全国的規模のワークショップ「権利擁護訓練」の実現を導いた。
フィジー
  • 「国際障害者の日」-国民の啓発を高めるために毎年挙行されている。
  • 「アジア太平洋障害者の 10年」と障害者の発展を描いた切手が発行された。
ミクロネシア連邦
  • 「国際障害者の日」が挙行されている。
  • 国民の啓発のためにラジオ番組、小冊子およびポスターが使用されている。
  • 国民の啓発に関して会議とワークショップもまた催された。
ニュージーランド
  • 「ニュージーランド障害戦略」は 2001年4月に始められた。それには国民の啓発に関する課題が含まれている。
  • 心の健康に関する委員会は 1996年に設立された。その委員会は心の病へのスティグマと偏見を減らす国民の啓発のキャンペーンの責任がある。
  • 障害問題省は障害問題に関して国民の啓発の発展を促す定期的なニュースレター「参加」を発行している。
サモア
  • 障害者の成果についてとりあげる幅広いメディアの存在。
  • 文化活動分野における障害者の参加の増進と促進。

以下の国・地域からは何ら情報が得られなかった。

アフガニスタン、アメリカ領サモア、オーストラリア、アゼルバイジャン、ブータン、カレドニア、朝鮮民主主義人民共和国、フランス領ポリネシア、ジョージア、グアム、カザフスタン、キリバチ、キルギスタン、マカオ、中国、マーシャル諸島、ナウル、ニューニウエ、北方諸島、パラオ、パプア・ニューギニア、大韓民国、ロシア共和国、タジキスタン、トンガ、ツバル、ウズベキスタンおよびバヌアツ。

結論

報告書は「10年」の目標に従ってアジア太平洋地域のメンバーである国の国民の啓発活動の限られた部分を描き出したに過ぎない。けれども、これらの国々では報告書に記載されなかったより多くの活動があることは疑う余地のないことである。今回の報告書作成に関して、最も大きな制限の一つは、タスクフォースチームがこの地域の多数の国の情報を得ることができなかったことである。

この報告書を通して提供された情報は行動課題の示す目標の達成状況を反映していないけれども、しかし、それは、国民の啓発についてのそれぞれの国で実施された活動には目標の圧倒的な影響が存在するということを明らかに示している。これはそれぞれの国における ESCAPが宣言した「10年」の効果の標識である。メンバーの国が、障害問題における国民の啓発を高めることに関連した課題を非常に重視していることもわかった。国民の啓発は、障害のある人の平等の機会と権利に向けての最終的な進展のための、非常に重要な欠くことのできない領域であるとされている。

データを編集する間、メンバー各国間の国民の啓発におけるイニシアティブの動機は、「 10年」の後半部分に向けられていると認識した。つまりこれら各国が組織的に進歩するため今後のよりいっそうのイニシアティブを計画、発展させるための足場を建設することができたということである。この足場に立って、行動課題の目標について政府組織とNGOが共同で取り組むことができる。この啓発活動は地域のやがて来る「10年」に、障害のある人のニーズを扱う関係諸国へ力強く組織的に影響するものである。

(翻訳:日本社会事業大学大学院 松永千恵子、金文華)