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アジア太平洋障害者の10年の評価<完全参加と平等<へのNGOの展望

「地域協力」タスクフォースレポート

アジア太平洋障害者の10年(1993-2002)の行動計画
政策目標「地域協力」の報告

ジョセフ クォック博士

2002年9月

1993年に国連・アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)で採択された地域協力に関する政策目標とその後の主要な報告

地域協力は、アジア太平洋障害者の10年の行動課題として採択された12の政策目標のひとつである。地域協力の第一の目標は、国レベル、地域レベルの両方でアジア太平洋障害者の10年の行動課題の実施を促進することである。

1993年に採択された10年の行動課題には、次のような地域協力のための目標が明白に示されている。

1.ネットワークづくり

1.1 機関と組織の地域ネットワークを構築する。そして、選別された領域を特定して、ネットワークを通じて活動を行う。

1.2 そのネットワークは分散されたベースで運用される。機関と組織は、特殊な領域についてサブネットワークをつくる。

1.3 各サブネットワークは、アジア太平洋障害者の10年の間、特殊な領域の活動促進について、次のような責任を持つ。

  1. それぞれの優先領域で、48/3決議を実施するため、ESCAP地域内にある資源(例えば、テクノロジー、テクニック、スキル、物資)の利用の可能性を高める。
  2. その領域の情報交換を促進する。
  3. その領域の研究や開発の強化を支援し、地域にある発展途上国の条件に合わせて、テクニック、テクノロジー、及び物資の適切性を改善する。

1.4. 各サブネットワークの指導機関・組織は、順番に、次のような活動の責任を持つ。

  1. 技術協力のニーズ、リソース、潜在能力、実施中の活動、実施経験、そして主要な担当者に関する地域情報データベースの開発
  2. 優先領域の促進に関心があるすべての機関と組織をつなぐネットワークづくりの開始。
  3. その領域に関するリソースとニーズの最新の情報をだれもが使えるようにする。
  4. 特に、48/3決議にある発展途上国の技術協力(TCDC)を促進するために、要請に応じて、支援を頼める経験を持った人材の名簿を作成する。
  5. それぞれの領域で、障害者に対して明瞭で積極的な影響を与える技術協力活動を計画し、実施する。分散したネットワークの性質から、ネットワークに参加する国の間で責任を分担することで、活動資金の調達は容易になる。特に、指導組織は、地域協力に対する貢献策の一環として、担当するサブネットワークの活動資金の大半を受け持つ。ネットワークが効果的に機能するよう、適切な追加資金の集金方法の可能性を考える。

10年の行動 課題を実現するための、国による主な地域協力の取り組み

アジア太平洋障害者の10年の活動促進において、地域協力が果たした役割を報告する際、地域が過去10年間に直面してきた困難を指摘することが重要である。それは地域の財政危機、地域内数カ国における政治的不安定、そして民族の紛争である。このような背景から考えて、地域内諸国の次のような発展した出来事を報告できることは喜ばしい。

第1に、アジア太平洋障害者の10年を支援する二つの主要な連携組織に参加する国々が目立って増えてきたことである。ひとつはESCAPの下にある障害問題作業部会(TWGDC)であり、もうひとつはアジア太平洋障害者の10年推進NGO会議(RNN)である。RNNが組織する例年のキャンペーンに地域のいたるところから参加する障害者の数は増えてきており、実際の地域協力をみる指標になっている。

第2に、地域レベルや国際的レベルの両方で、障害者運動に大きな継続的影響を与える、国が主催する地域イベントもある。

  • 9つの国と地域がRNNキャンペーンを受け入れ、キャンペーン後、受け入れ国の障害者対策に明確な発展があった。
  • 障害者の働く場を増やし、そこで作られた製品を地域内で交換するため、 1997年にアジア太平洋障害者 ワークセンターネットワーク ( APWD)が設立された。
  • マレーシア政府主催で、障害者に関する多部門共同行動の国家間セミナー(1996年12月2日-6日)が行われた。
  • 2000年3月、世界NGOサミットが中国の北京で行われ、国際的な障害者権利条約の推進を目指す共同戦線が結成された。
  • バングラディッシュの社会福祉省と障害者支援組織全国フォーラム( NFOWD)は、1997年12月にダッカで、第2回南アジア地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)会議を開催した。
  • スリランカに南アジアCBRネットワーク支部が設立され、南アジア諸国の協力関係が促進された。
  • 1994年にパラオ政府の支援で始まった太平洋関連機関指導者会議は、2年ごとに開催される。毎回開催地は異なり、様々な太平洋の島で行われる。この会議は、障害者の生活に強い影響を与える諸問題について、太平洋地域の指導者の技能と知識を高めることを目的としている。
  • 2000年タイのバンコクで行われたアジア太平洋障害者の10年のキャンペーン中に新しく女性障害者地域ネットワーク(RNWWD)が作られた。
  • ESCAPが2000年に開始した東チモールへの具体的共同支援に、多くの国連機関と国際NGOが参加した。アジア基金と第16回リハビリテーション会議の基金から資金を得て、障害者に関する地方ワークショップと全国ワークショップ、そして調査が2001年に行われた。これらの共同行動は、支援を必要とする国々を支える地域協力の有効性を明らかに示している。
  • 極東南太平洋障害者スポーツ連盟(FESPIC)大会と2000年にはシドニーでパラリンピックが行われた。

第3に、地域の協力イベントに多額の資金援助をした国々があった。特に日本は、様々な訓練プログラムを組織し、また地域の障害者の自助組織を支援するESCAPの活動のために資金供給を行った。

第4に、アジア太平洋障害者の10年を支援する2国間協力プログラムを開始した国があった。例えば、中国とモンゴルの2国間プログラムとクック諸島とニュージーランドのネットワーク等である。

第5に、タイ政府と日本政府は共同して、アジア太平洋障害者の10年の目標達成を目指す継続的な地域の活動を支援するため、タイにおけるアジア太平洋障害者開発センター(APDCD)の設立を進めている。このセンターは、アジア太平洋地域の地域協力センターとなり、また障害者や関連機関の情報センターとなる。

アジア太平洋障害者の 10年を推進する地域協力のさらなる重要性

第1に、バリアフリー、情報通信技術、職業訓練、そして雇用などの領域の特殊な活動に取りかかるため、機関や組織の地域のネットワークを構築する、より一層の協調のとれた努力と資源が必要である。

第2に、特に、南アジアや太平洋諸島など、過去の10年間にあまり活動的でなかったサブ地域での協力関係の強化が求められる。

第3に、地域内の諸国政府には、2004年バンコクに設立されるアジア太平洋障害者開発センター等、ESCAPと地域NGOが進める地域やサブ地域への支援に、より一層のイニシァチブを発揮し、より多くの資源を援助することが求められている。アジア太平洋障害者開発センターは、地域の中の、新しい先進機関ネットワークのセンターになりえる。

第4に、地域協力を推進し、具体的な地域やサブ地域活動を行っているESCAPに対する支援が、政府に求められる。

第5に、諸国政府とESCAPは、障害者問題が地域やサブ地域のすべての主な主流連携組織の不可欠の要素であることを認識し、国や地域レベルでNGOがそれらの場で積極的な貢献を果たせるための手段を提供すべきである。

(訳:日本社会事業大学大学院 島田肇)