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アジア太平洋障害者の10年の評価<完全参加と平等<へのNGOの展望

スリランカ

RNN カントリーレポート

4つの評価等級

 0:全くあるいはほとんど対策が取られていない
 1:やや実行されている
 2:かなり実行されている
 3:完全にあるいはほぼ完全に実行されている

機会均等

評価レベル1:やや実行されている

政府は企業ごとに,全従業員の3%は障害のある人でなければならないという施策を進めてきた。すべての主要な企業はこの政策に気付いているが遵守しておらず,その結果としてその政策の大部分は無視されている。

特別のニーズ(障害)のある児童のための養護学校は20年以上建設されていない。教育省は,すべての学校の中に特殊学級(特別な設備)をつくることを希望しており,そこでは障害のある児童は特別な訓練を受けた先生からの援助を受けながら普通の学校で教育を受けることができる(これらは現在進行中である)。今までのところ,大多数の学校では、通学できるのは移動に問題のない生徒に限られている。これは,田舎の学校においてはかなり簡単に是正することができるが,都市部の地域ではより解決が難しいであろう。

さまざまな障害のある児童が登下校する際の交通手段の確保はしばしば困難である。今までのところは,この点についてほとんど対策はなされていない。

開発過程における障害のある人々の包含

評価レベル2:かなり実行されている

いくつかの所得生成計画はすでに始まっており,それらは政府と非政府組織のどちらにおいても進められている。次の10年間ですべての学校が整備され,スタッフは視覚や聴覚の障害のある子供たちと健常児がとともに教育をうけるように適正な訓練を行われることが望まれている。この点は,かなりの進歩が達成されている。主要な職業訓練センターにおいて障害のある人を包含する試みが行われている。

スリランカにおける障害のある人の概要と将来の展望と基礎データについて

a1. アジア・太平洋障害者の10年の期間を通じてスリランカの障害のある人の生活における3つの重要な変化は:

社会事業省による職業訓練と所得生成計画の導入である。それらの対策は,障害のある人々に対し自立生活の手段を与えることを目的としている。今のところ,このプロジェクトは市場志向ではないが,同時に750人が職業訓練を受けることができる政府が設置した5つの施設がある。職業訓練局は,地域レベルや農村部にある訓練センターのネットワークを開発する過程にある。「完全参加と平等」や包含という概念に基づき,障害のある人々は主要な職業訓練センターの中に含まれている。

包含と承認という政策が導入され、障害のある人々をさらにエンパワーしてきた。国内組織は対応する国際的組織との間に強い連携を確立した。

a2.スリランカにおいて障害のある人々が障害のない人々と比較してもっとも遅れた3つの問題は:
教育

障害のある子供や若い世代は,学校にいくことをあきらめさせられていると感じている。学校に行っている子どもはしばしば教師達や仲間達のどちらからも差別され,その結果として学習していない。教師達の一部は障害のある人々は学ぶことはできないと考えており,彼らの自己満足的な予言は,子供たち自身に障害のある人々は学ぶことはできないということを信じ込ませている。

現在の指針によると,教師の能力は担当した生徒達の成績を基礎にして評価される。特別なニーズを持つ子供たちは高い成績をもたらさない傾向にあるので,全体の成績を引き下げ,このため教師は彼らのクラスに特別なニーズを持つ子供たちが入ることを嫌うようになる傾向がある。この問題を緩和するため,教師達が障害のある子供達に対する教育をかれらの成績に関係なく評価されるべきであるということが提起されている。

過去において,特別なニーズを持つ子供達のための養護学校を設置する政策がとられたが,この政策は20年前に破棄されており,普通学校での特殊学級やすべての子供たちの統合教育が期待されている。

訓練計画は,教師達がそれらの学級においてはたらけるように準備されているが,今までのところ,それらの訓練を受けた多くが普通の学校や学科で働いている。

差別、アクセス問題や交通機関の要因などによって,教育終了前の高い中退率が生まれている。

アクセス

スリランカ政府は,移動性に問題を抱える人々を対象とした,建造物のアクセスに関しての公式な政策を実施していない。コロンボにあるわずか3つのビルが車椅子に対応した特別なデザインで建てられており,そのうちの1つだけにリフトを備え付けてある。これは,全障害者の13.5%が移動について制約があるにもかかわらず,事実である。最も受け入れられ,また最も多くの助けを与えられるグループ(特に職場において)は視覚障害者(全体の4.7%)である。しかし交通機関は,すべての障害のある人々にとって使いにくい。点字で方向や場所が書かれた案内はない。

国の政策

スリランカにおいて,障害に関するものや障害のある人々のためのリハビリテーションに関する明確な国の政策はない。国民は実施されている政策に気付いておらず,公報もほとんど無い。情報に対するアクセスは視覚や聴覚に障害のある彼らにとって,非常に制限されたものである。

a3.政府が障害のある人々に対して行わなければならない3つの重要な施策は:

障害児に対する特殊学級(特別な施設)はすべての学校になくてはならず,そこで働く多くの教師が特別な訓練を受けなくてはならない(理想的な比率は,生徒4人につき教師1人)。すべての教師は,手話の訓練を受けなければならない。コースやカリキュラムは更新されなければならず,全ての人々に利便性の高いものでなければならない。

政府は,障害のある人々と協議し,障害のあるすべての人々にとって,公的な建造物が利用しやすくなるような施策を計画し,実施しなければならない。

CBR計画は,政府といくつかの非政府組織によって進められている。地域における責任は各地域で果されるが,不幸なことに多くの地域リハビリテーション委員会は社会的動員(social mobilization)の初期段階への配慮不足により失敗している。

a4.スリランカにおける障害のある人々のための地域の協同に関する3つの重要な課題は:

スリランカの14の小さな組織は,彼らの権利や障害のある全ての人々の権利について政府に働きかけることを目的とした連盟を形成した。

CBR計画が実施されるには,すべての地域社会の構成員が参加することが必要である。組織のリーダーたちは,障害を持つ人々を受け入れることをより広い地域や範囲に拡大する前に,彼らの身近な地域社会において積極的な姿勢を増やすことや障害のある個人を受け入れるように働いている。

多くの地域社会で共有された目標は,公的な施設や特に学校へのアクセスの向上である。学校に通うことやトイレや教室などのアクセスはしばしば限定的であるが,多くの改良が障害のある児童に対して行われている。多くの肢体不自由児は学校の登下校時に困難を抱えている。

Part B 基礎データ

B1

スリランカの社会事業省は,継続的に行われている施策からデータを得ており,人口全体の4~5%が何らかの障害を抱えていると見積もっている。政府は障害やリハビリテーションに関するまとまった公式な政策はもっていないが,国際的な進展についていくために分野ごとに政策を行っている。

パドマニ・メンディス(Padmani Mendis)博士による障害を持つ子どもたち(193人)に関する障害種別の出現率の報告は,以下のとおりである。全人口に関する利用できる公式データがないため,これらの結果から予測することが可能である。

障害の種類

障害児数

割合(%)

移動障害

26

13.5

聴覚障害

26

13.5

言語障害

15

7.8

視覚障害

9

4.7

学習障害

13

6.7

発作

9

4.7

行動障害

14

7.2

その他

24

12.4

2障害の重複障害

40

21.0

3障害の重複障害

9

4.7

4障害以上の重複障害

8

4.1

合計

193

100.0%

スリランカにおける障害の原因はさまざまであるが,紛争関連の障害の割合は不釣り合いに高く見える。それらは地雷,国境に近い町への攻撃によるもの,戦闘や戦闘への巻き込まれ,コロンボで発生したような自爆テロによるけがなどが原因である。

さらに原因には出生時や出生前の問題,特に高齢女性、そして医療サービスに手が届かない状況にある健康に問題を抱えている女性や栄養失調の女性などの問題が含まれる。子どもの頃の健康問題や栄養失調は大人になった際に障害の原因となる。

その他の要因としてはポリオがある。ただし現在では,政府のポリオ撲滅対策により、新規発病数は取るに足らないものとなった。

研究によると,性別間の障害者数が明らかにされており,女性のうち全人口の2.1%に障害があり,男性においては2.9%に障害がある。

社会事業省は学齢期の障害児数を導き出し,76の地域(Divisional Secretary Divisions)において6010人の子どもたちを抽出し,半分以上(3015人,全体の50.1%)の子どもたちが学校に通っていないことを発見した。この数字は幼稚園に通う年齢ではより高くなっている。すなわち1425人中909人(63.7%)が幼稚園に通っていない。これは先生や生徒の冷たい態度やアクセスの貧弱さや登下校時の交通機関の無さが原因である。また,専門的な訓練を受けた教師のほとんどは障害児のための特別な部署に配置されていない。

読み書きレベルの学習について具体的な情報はないが,障害のある人々については,学校の出席率が低いため,一般よりも低いレベルとなる傾向がある。

障害者の中で雇用されている数を高めるための取り組みがとられている。その中にはすべての採用の3%を障害者とするよう公的企業や省庁を教育する広告も含まれる。職業訓練センターのいくつかはすでに発足しており,政府と州の自治体から障害者の自営業に対する補助や車椅子,補聴器や眼鏡など障害者の雇用の助けになる物品の支給がなされている。

B2

スリランカの下記の認識レベルを知るための公的な調査は存在しない。全ての統計は障害者のコミュニティーの仕事に関する広範な経験による推定である。

  1. アジア太平洋障害者の10年(1993-2002)は,一般にはほとんど知られておらず,障害者コミュニティーにおける認知度は約10%と見積もられている。政府は国民に対して広報活動を実施しておらず,障害者団体の一部のみがアジア太平洋障害者の10年について知っていた。
  2. より多くの人々が国連の「障害者の権利に関する宣言(1975年)」を知っている。その数字は,全人口の約10%であった。
  3. 国民の約50%が国際障害者年(1981)を知っている。
  4. 全体の約8%しか国連障害者の10年(1983-1992)を知らなかった。

障害者に関する基礎的な情報

障害者の国内組織はジョイント・フロント(the Disability Organization Joint Front)である。連絡先は以下の通り。

16/1Galle Road,Mount Lavinia,Sri Lanka
電話(941)730984
Email dojf@diamind.lanka.net

将来のスリランカにおける障害者のリーダーは,アカサの収入役であるアノージャ・サンダナヤーク(Anoja Sandanayake)で,以下で連絡を取ることができる。

Pahalagoma Road,Kongollewa,Talawa
電話(025)57586
E-mail akasa7@slthet.lk

スリランカにおいて障害問題の分野で協同している外国の組織はスウェーデンのSHIAである。

SHIA
16/1Galle Road,Mount Lavinia,Sri Lanka
電話 737341
Email shia@sri.lanka.net

障害に関する政策や学術研究の専門家はパドマニ・メンディス(Padmani Mendis)博士である。

17Swarna Road,Colombo 6
電話 587853
Email mendis@panlanka.net

Kamala, Association of Women with Disabilities

訳:日本社会事業大学大学院 小佐々 典靖