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第3回アジア太平洋CBR会議

社会福祉法人むそう

◆発表主旨

どんなに障害が重くても、地域で最期まで暮らし続けられるシステムを創るため、24時間365日、必要な人に必要なときに必要なサービスを届ける事業を多角的に展開している。利用者本人の就労・自立支援(エンパワメント)、高齢化による廃業やシャッター商店街の再開発、社会的孤立や二次障害の抑止、障害への正しい理解の促進、地域経済の活性化、地域コミュニティに対する啓発・エンパワメントなど様々な成果を上げている。

本人の想いやニーズに合わせた支援は、本人の状態をよくするだけでなく、周りにいる人や地域の本来持っている力も引き出す力がある。「共生」とは、「様々な人に影響を与え与えられている関係がある」ことである。障害者ばかりが集まって暮らす特殊なエリアをつくるのではなく、障害者が暮らしの中の風景としていることが日常になることを目指している。つまり、多様な個人や組織が重層的に支援当事者の暮らしに関わっているのである。支援を受ける当事者の想いを受け止め、インフォーマルサービスなども大切にしながらその人らしいオリジナルな暮らしを送る。「人の数だけ支援の形」があるのである。

◆発表内容

むそうは、かたくなにノーマライゼーションを地域で実現させることにこだわってきた。「いつでもすきな場所でくらし、大切な人としたいことのできる街をつくる」ことを理念として活動を展開してきた。

具体的には、「育む」、「働く」、「住む」、「経験する」この4つを基本的な支援の軸とし、「必要な時に・必要な人に・必要なサービスを」をモットーとした支援を提供してきた。大規模で画一的な支援ではなく、一人ひとりの想いに寄り添った小規模で多機能な事業展開を、愛知県半田市を中心に行ってきた。拠点・事業づくりの基本は、建物に利用者をあわせるのではなく、利用者の活動・暮らしに建物や環境を合わせること、つまり利用者のニーズに寄り添っていることである。むそうでは、1拠点に活動する利用者は5名程度にしてきた。それは「障害者のみなさん」ではなく、地域住民の方たちに、彼ら一人ひとりの顔と名前を憶えてもらうことが大事だと考えてきたからである。その上で、むそうの拠点や事業が、その地域にとっても必要な機能であり、住民の皆さんの暮らしにも影響していることが肝心である。例えば、サービス実施で雇用と資金流動が生じ地域が活性化するとか、ラーメンを食べに行ったら障害のある人が働いていたという出会いにすることといった類のことが、地域のなかで日常的に起こっていることが大事だと考えてきた。まさに「ノーマライゼーション」を地域のなかで実現させていくというプロセスこそが、むそうの実践であった。1人の方の暮らしを豊かなものにしていくためには、その人だけでなく周りの人や地域・社会が、障害のことを自分事として捉え、障害のある人たちのことを受け止めていく必要がある。そのためにも、施設のお祭りに来てもらうのではなく、地域のお祭りに参加すること。それも祭りのなかで自分たちの役割を創りだし、地域の一員として認知されるように働きかけていくことが大事だと思ってやってきた。例えば、自治会や町内会に働きかけて、地域の夏の盆踊り祭りで、むそうが金魚すくいやかき氷などの出店を出させてもらえるようにしてきた。最初はなかなか理解してもらえなかったが、数年後には高齢者ばかりの静かな盆踊り祭りが、子どもも楽しめる賑やかな祭りと変わった。そこでは障害のある方も一緒に盆踊りを踊ったり、店主をやったりして参加し、いろんな人がいることが自然な地域となった。また、研究事業の実施や国や県に対しての政策提案なども行ってきた。近年では、国土交通省より補助金を受け、行動障害のある方の住いの改修事業とその支援についての研究を行った。その中で地域の建物を活用し障害のある方の住いの場をつくるときの制度の不具合を感じ、愛知県と協議を重ね規制緩和にむけて動きだすことができた。毎年開催している「ふわりんクルージョン」というフォーラムでは、政治家、行政、福祉・医療・教育関係者などを招き「明るく楽しい社会包摂」をテーマに議論を重ねてきた。そこでは他分野他業種の方と関わるなかでむそうの理念を日本中に発信してきた。

地域で生活をする場合の11個の支援パーツ

① 育む:持って生まれた障害特性や身体状況に配慮された療育や環境整備:児童発達支援事業・訪問系サービスなど

② 経験する:自己実現に向けた社会経験や働く、住むに繋がる経験への支援:訪問系サービス・移動支援サービスなど

③ 働く:生きがい作りも含む自己の存在意義を社会化するための労働的活動:日中活動系サービス・企業就労など

④ 住む:親亡き後の生活支援だけでなく、若年時の自立体験を含む居住支援:住宅入居等支援事業(居住サポート事業)・共同生活援助など

⑤ 所得補償:地域格差はあるが、障害者年金と合わせて約10万円/月ほどの収入があると地域生活が安定する。年金+就労支援の工賃収入で所得補償を考える:日中活動系サービス・企業就労など

⑥ 権利擁護:サービスへの第三者評価や支援当事者個人への成年後見制度の活用(財産管理、身上監護)、差別を起こさせない施策の実施など:成年後見センターの設置・障害者理解のための施策や条例制定など

⑦ 医療保障:疾病などの通院や入院とともに、継続的に医療的な対応が必要になった人への医療的対応:訪問看護・訪問リハ・往診など

⑧ 家族援助:家族の障害理解への支援から、両親など主たる介助者へのレスパイト、障害のある人がいる家庭の兄弟の育ちへの支援:様々な制度活用・私的契約サービスなど

⑨ 相談支援:支援当事者や家族のメンタルケアをピアカウンセリングや障害者相談支援従事者などが行い、併せて、支援当事者の障害特性の理解とその対応をレクチャーし、必要なサービス利用をインフォーマルサービスも大事にしながら計画:当事者団体ピアカウンセラー・障害者相談支援事業など

⑩ 地域の意識変革:グループホームなど社会資源を作る度に反対運動が起こるようでは地域生活は進まない。様々な広報啓発や社会教育を行い、障害者への理解を促進する:メディアの活用やイベント開催による広報啓発・各種団体による社会教育プログラムの実施・地域の様々な活動への当事者団体、福祉団体の主体的参加など

⑪ 人材育成:前述までの10個の地域生活のための支援を力強く質量ともに支える人材養成のシステム:ヘルパー講座の開催・地域支援の人材獲得や育成をする機関を地域の事業所協働で作るなど

私たちは、ノーマライゼーションの理念に実直にこだわり、それを戦略的継続的に地域展開してきた。私たちの取り組みの特徴は4点に整理出来る。

第一に「社会資源開発」が優れて先駆的であること。現在、むそうでは居住支援・就労支援、余暇支援・社会参加など13拠点、19事業を展開している。これらの事業の成り立ちは、どれも当事者のニーズから出発していること。その開発の過程に多様な人たちが参画することで、事業所としての事業拡大ではなく、地域づくりという側面が達成できている。全ての企画が成功しているわけではないが、失敗の経験も含めてそれを記録し、蓄積していることが、独創的な資源開発のノウハウにつながっている。

第二に、利用者支援の視点から「ソーシャルアクション」を展開してきたこと。国の研究事業やモデル事業を積極的に受託し、その成果をもとに地元半田市の障害福祉施策はもとより、愛知県や厚労省に対して具体的な政策提案をしてきた。この近隣の町内会から国のレベルまで、むそうでは広く視野に入れて、利用者本位の生活を創り出すことを試みてきた。

第三に、重度障害者のニーズを基軸とした包括ケアシステムのあり方を構築してきたこと。重度障害児・者の育ちから看取りまでを、地域で支援すること。その過程のなかで、福祉だけではなく教育や医療・保健、ヒューマンケアを統合し、生涯にわたる支援として展開するマネジメントが確立されていること。同時にそれを標準化し、他の地域でも展開できるような実践知を発信してきたこと。

そして第四としては、運営の根底に「参加」を大事にしてきたこと。当事者参加を大切にして、事業拡大や生活の場づくりを丁寧にしてきた。地域のイベントに率先して参加する。地域のなかで役割を担い、まちの活性化につながっている。また新しい事業展開をする際には、近隣の住民とのワークショップを重視する。地域のニーズや言い分も踏まえた上で、地域にとってもメリットがある事業展開をしてきた。

こうした取り組みを通して、むそうでは、0-100歳までを地域で支える地域支援体制を構想している。さまざまなサービスが縦割りにならずに、本人や家族に寄り添いながら支援ができること。そのことを通して、その地域が変わっていくこと。しかしそのためには、そうした全体像(グランドビジョン)を描き、関係者が合意形成をおこない、実現していくことが必要である。


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