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第3回アジア太平洋CBR会議

氏名 ファリダ・ヤスミン氏
国名 バングラデシュ
組織 障害者リハビリテーション研究学会(DRRA) DRRAは1996年から障害者のための活動を行っているバングラデシュの非政府組織です。DRRAはツイントラックアプローチを伴ったCBRマトリックスの全ての要素を組み込み、バングラデシュでCBRモデルを実践しています。現在、DRRAは国内にある25以上の地域で活動を行っています。障害者4万2千人がDRRAに直接参加しており、その大半が障害のある子どもや女性たちです。
タイトル 「シュンドリー蜂蜜」 – バングラデシュにおける障害のある女性の社会的ビジネスモデル
背景 サトキラはバングラデシュ南西部にある地域で、世界自然遺産に登録されている偉大なシュンドルボンにも部分的に面しています。この地域は地理的に気候変動や自然災害による大きな被害を受けています。貧困マップによると、この地域は経済的な面でも貧困ラインを下回っているといいます。しかし、全国家庭調査による障害者の割合は9.6%であるのに対し、その地域における障害者の割合は11.56%です。それらの地域がサイクロン「アイラ」による壊滅的な被害を受けてから、住民は浸水や塩水遡上の影響で失業しました。多くの住民が仕事を求めて別の地域に移住しました。しかし悲しいことに、障害者には十分な就職口が無いため、移住することができなかったのです。このような状況の中で、障害者リハビリテーション研究学会(DRRA)は地元の障害者団体と協力して活動を始め、市場分析とともに地域資源の図式化を行いました。これに基づき、多くの人々が蜂蜜採取や養蜂業で勤務できるという確固たる提言がなされました。第一段階として、障害のある女性30人が蜂蜜事業の開始に向けて団体を結成しました。DRRAは2011年、サトキラ地域のシャイアムナガーに蜂蜜加工工場を立ち上げました。障害のある女性は地元の市場で蜂蜜の採取、加工、販売までも担当することで、「シュンドリー蜂蜜」の全事業に携わっています。
写真1
アパラージタは主要な障害者団体であり、この社会的事業の運営や市場活動を行うため、政府からの登録を完了しています。嬉しいことに、独立行政法人国際協力機構(JICA)が蜂蜜の販売に向けて支援してくれており、蜂蜜の品質が日本の品質管理機関にも認められているため、「シュンドリー蜂蜜」が日本で販売されます。障害のある女性は現在、活動的にこの事業を行うことができており、注目すべきことに、彼女たちは自ら管理に携わることで楽しんで事業運営を行っています。
合理性 蜂蜜事業である理由
  • 蜂蜜の採取や生産に関する障害のある女性の能力を向上
  • 障害のある女性の雇用機会の創出
  • 地域資源の利用の強化
  • 障害者団体と社会的事業団体の中にある市場ネットワークの確立
アプローチ/モデル 社会的ビジネスモデル
サトキラが気候変動やサイクロンのアイラやシドルのような自然災害の影響で社会経済的に脆弱になっているので、このモデルはその地域における失業問題を扱っています。まず、障害者団体やDRRAは外部の支援を得て、資源の図式化を整理し、障害者が従事できる数件の事業を最終決定しました。それに基づき、DRRAは対象となる地域社会のための事業の上位3件を選出する目的で、市場評価とバリューチェーンの考察を行いました。しかし、最終的に、世界で最も広いマングローブ森林「シュンドルボン」を拠点としたオーガニックの蜂蜜の大きな生産源があるため、満場一致で蜂蜜事業を始めることに決定しました。さらに「シュンドルボン」産の蜂蜜は世界中で非常に有名です。この事業に携わる障害者は、過去数年以来行っているDRRAによる支援の継続状況、年齢、家族の蜂蜜採取の経験に基づいて選ばれました。地域資源の特定と利用のためにフォーカス・グループ・ディスカッションが障害のある女性と一緒に実施されました。蜂蜜の採取、加工、販売に関する技能開発訓練が選出された障害のある女性に行われました。蜂蜜工場が設立され、法的手続きを済ませ、バングラデシュ政府から品質証明を取得しました。広報活動も障害者によって地域レベルや国レベルで行われました。全国のテレビ放送が宣伝の放送に使用されています。BRACの姉妹会社であり、最大手のチェーン店「アロング」も、蜂蜜の品質が本当にとても良いと思っており、障害者のイニシアチブを向上させることにも賛同しているので、支援を進んで申し出ました。この写真で、10ミリリットル入りの蜂蜜がバングラデシュ中央銀行の総裁によって、いかに低価格で販売されているかがわかると思います。
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現在、障害のある女性70人とその家族を含む、障害者100人以上とその家族が蜂蜜の生産、加工、販売、採取、蜜蜂の捕獲の作業に携わっています。今、彼女たちはこの事業で収入を得ており、貧困ラインを超えて家族と一緒にとても幸せな生活を送っているので、彼女たちの生活は一変しました。障害者団体のトップらが「私たちは同情ではなく品質を売っている」という事業のスローガンを作ったため、DRRAは障害者団体のための品質検査部門を創設しました。その開始から2年後、JICAの代表はDRRAと直接連絡を取り、この事業の支援の可能性を探りました。地元企業のエクスチャージ株式会社と協力して、JICAはバングラデシュや日本とビジネスを行っています。DRRAが日本に蜂蜜のサンプルを送ったところ、その純粋さと品質の良さが認められました。今、障害のある女性はバングラデシュから日本に初めて「シュンドリー蜂蜜」を輸出できたことを誇りに思っています。DRRAは障害者団体による販売促進と日本への蜂蜜の輸出を支援するため、日本と覚書を取り交わしました。蜂蜜の輸出による収益は事業の拡大のために現在使われていますが、障害者は地元で生蜂蜜を販売することで収入を得ています。バングラデシュで、10グラム入りの少量パックや250グラムや500グラム入りの瓶の蜂蜜が地元の市場で販売されているので、初めて人々は蜂蜜をとても簡単に入手できるようになりました。彼女たちは、以前収入がありませんでしたが、今や75米ドル以上の月収を得ています。
写真3
教訓 蜂蜜事業モデルから得た教訓
  • 障害のある女性も他の障害者同様、適切な支援を受ければ、事業を運営することが可能
  • 財政的な支援とともに、地域レベルにおける非常に有益な事業の評価の必要性
  • 有益な販売計画とブランド化の支援
  • 品質訓練と事業計画のための長期的な支援
  • 他のビジネスモデルのように、3~5年の事業発展期間における助成金の必要性
結論 「シュンドリー蜂蜜モデル」、グリーティングカード作り、ロウソク作りが障害者にとっての唯一の選択肢ではないのです。障害者は工場を運営し、他の人のために唯一無二のモデルを開発できるということが示されたのです。バングラデシュには高品質な蜂蜜がありますが、通常、オーストラリアなどの外国から蜂蜜を輸入しています。「シュンドリー蜂蜜」は、障害のある女性のイニシアチブであり、それによってバングラデシュが初めて蜂蜜を外国へ輸出することになりましたが、バングラデシュの蜂蜜の輸出に向けて新たな境地を切り開く助けになるかもしれません。最後に、障害のある女性のイニシアチブにより私たちには新しい発見がありました。障害のある他の女性たちも、このイニシアチブに対する見方を変え、今は同じような事業の拡大に向けてバングラデシュの異なる6つの団体と一緒に活動するため、自身の事業を展開する計画を立てています。
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