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第3回アジア太平洋CBR会議

知的障害者作業所による「6次産業分野」参入への新たな取り組み

常葉大学保健医療学部 渡邊雅行
中村俊彦
復泉会 KuRuMix 峰野和仁

1.背景

静岡県浜松市は、首都圏と関西圏のほぼ中間に位置し、北は赤石山系、東は天竜川、南は遠州灘、西は浜名湖に囲まれた面積1,558.06km2の自然豊かな政令指定都市である。そして、都市機能や先端技術産業が集積する都市部、都市近郊型農業が盛んな平野部、豊富な水産資源に恵まれた沿岸部、広大な森林資源を擁する中山間地域からなる。浜松市の人口は、2015年4月1日現在で808,959人である。

浜松市の特産には、みかん、米、茶、うなぎ、とらふぐ、スッポン、しらすなどがある。また、スズキやホンダの輸送機器、ヤマハ、カワイ、ローランドの楽器工業もある。しかしながら、第二次産業の多くは、線維、楽器、自動車・オートバイ関連の下請け工場であり、近年では工場再編計画で厳しい状況が続いている。特に、リーマンショック以降では浜松市の製造出荷額は2007年のピーク時には約3兆2千億あったのが、近年では約2兆円となっている。

浜松市の障害者の統計に関して、2012年4月1日現在では、身体障害者手帳所持者は26,664人、療育手帳は5,223人、精神障害者保健福祉手帳は3,963人の合計35,850人で、浜松市人口816,848人の4.39%に相当する。

2.6次産業

このような景気状況のなか、静岡県浜松市で知的障害者作業所を運営している社会福祉法人復泉会が、近年、地域社会の資源を活用し、6次産業として新たな取り組みを実施したので報告する。

6次産業とは、第一次産業の農産物の生産だけでなく、第二次産業の食品加工、第三次産業の流通、販売にも主体的かつ総合的に関わることである。その結果、加工賃や流通マージンなどの付加価値が、単なる寄せ集め(足し算)ではなく有機的・総合的に結びついた掛け算で得られるとも言われている。

3.復泉会

復泉会の母体となった「くるみ共同作業所」は1977年当時在宅障害者といわれた人たちの生活の場としての作業所、ならびに、行き場のない人達の共同住宅を開設したことに始まる。その後、くるみをささえる会が結成され、側面からさまざまな支援を受けている。2014年4月1日現在、復泉会の職員数は87人で、作業所、相談支援事業所、心身障害者生活寮、グループホームを運営し、就労161人、居宅32人の知的障害者が利用している。

このように知的障害者の相談、生活、就労に関する事業を運営し拡大発展する過程で、地域社会との連携を重視してきた。障害者が作る製品を通じて地域の農家、企業、大学、公的機関等との連携を図り、そして、秋穫祭など地域社会の人々が楽しめるイベント等も開催してきた。

4.遠州夢プロジェクト・浜松フルーツミュージアム

2011年には、遠州夢プロジェクトを開始し、「浜松フルーツミュージアム」を開催した。遠州夢プロジェクトでは、静岡県西部の酒店、酒問屋のグループの遠州夢倶楽部を協働で、三方原ポテトチップスの原料である浜松のジャガイモ「三方原男爵芋」を栽培した。「浜松フルーツミュージアム」は、浜松市内のホテルにおいて、将来の事業展開につながるネットワークの構築を目的とした見本市として開催した。そこでは静岡県内の企業など15ブースが出展し、フルーツ・野菜加工品の試食が提供され、地産地消の意義も打ち出した。また同時に、『「福祉×デザイン+地域」~障害のある人の働く仕事力と6次産業の可能性~』というテーマの講演会で、オリジナリティに富む商品を産み出すためには、地場産品の特性と従来の技法の融合が強調された。そして、翌2012年にも地域の農家、自治会、企業、福祉団体、大学が連携し、「浜松フルーツミュージアム KuRuMix in Hamamatsu」を開催した。

5.KuRuMix

浜松フルーツミュージアムで経験を積んだ後、2013年に果実飲料を中心としたKuRuMixというオリジナルブランドを立ち上げた。KuRuMixはこの地域の農産物を加工販売するという方針で、6次産業を促進している。商品には、みかんやトマトの新鮮なジュース、浜松米「やら米(まい)か」を原料としたポンせん、遠州綿紬や手漉き和紙などがある。KuRUMの果実飲料工場棟には、展示・販売スペースや飲食スペースがあり、地域の人たちが気軽に集えるようなしくみがある。

「くるみ?地域力=∞(無限大)」のロゴが示すように、地域の素材を生かして障害者支援という実践を通して社会貢献をしている。

6.結語

復泉会は、社会の産業構造の変化にいち早く対応し、障害者を人材(人財)としてとらえている。作業所を「仕事の場」として位置付けることで、実際の就労場面と同じような環境作りをし、就労を通した障害者の社会参加を実現している。また、浜松地域には、これまで農業・果樹園芸・畜産等における障害者の就労実績があることも、6次産業が成長する素地が整っている。今後も医療・福祉・農業・工業など、産業構造を超えた連携を目指している。


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