第3回アジア太平洋CBR会議
中国の農村部における地域に根差したインクルーシブな開発(CBID)を支えるプラットフォームとしての障害のある人々の村落協会
背景
中国における障害
現在、中国には8500万人(人口の6.8%)の障害のある人々がおり1、その75%が農村部に住んでいる。彼らはもっとも脆弱な層の一つであり、障害のある人々のためのサービス及び一般のサービスの利用に当たって、また社会の発展に貢献するに当たって、いくつもの障壁に直面している。これらの物理的な障壁の除去、さらに重要なこととして人々の考え方の障壁の除去は、障害のある人々の権利を保護するに当たって決定的に重要である。近年、中国政府は状況を改善するための一連の政策及びプログラムを実施に移している。地域に根差したリハビリテーション(CBR)は、1990年代から中国政府の5か年計画における障害関連プログラムに含まれる、カギとなる戦略の一つである。中央集権的でトップダウンのシステムは資源の集約やサービスの開発の観点からは効率的であり、障害のある人々の生活状況の改善に重要な貢献をしてきた。にもかかわらず、政策とその実施とのギャップは、特にへき地や農村部において依然として大きい。障がいのある人々が自ら状況を変えられるようにするための支援及びエンパワメントは依然として弱い。意思決定や行動に当たって障害のある人々が中心となるよう確保することは不可欠であるにもかかわらず、十分には実施されていない。
中国障害者連合会(CDPF)と障害のある人々の村落協会(「VAD」)
中国障害者連合会(CDPF)は、障害のある人々のニーズに対応する準政府組織である。CDPFには、その使命を達成するため3つの方法が公的に与えられている。即ち、①障害のある人々の権利を代表すること、②障害のある人々にサービスを提供すること、③政府に代わって障害に関係する事項を調整し、監督することである。CDPFは国レベルから郷鎮レベルまで活動するピラミッド状のシステムである。VADはDPF(障害者連合会)の農村コミュニティにおける公式な代表である。VADはCDPFの政策によって定義されており、村落委員会のリーダーシップと郷鎮レベルのDPFの指導の下にある、障害のある人々の草の根組織である。VDAは、地域における動員と連携を通じ、障害のある人々のニーズとサービスや既存の資源とをつなぐものとされている。しかしながら、今日多くのVADは、使命を達成するための能力と戦略を欠いているため、しばしば抜け殻のようになっている。
雲南省におけるハンディキャップ・インターナショナル(HI)・CDPF・CBRと社会的包摂プロジェクト
HIとCDPFは2011年から雲南省の2つの県で、CBRと社会的包摂に関するパイロットプロジェクトを共同で実施している。このプロジェクトは、雲南省障害者連合会の直接の監督の下、パイロットサイトとなっている2つの県の地元の障害者連合会によって実施されており、CDPFは全体的な総務及び調整の支援を行っている。ハンディキャップ・インターナショナルの役割は、必要な技術的支援を提供し、プロジェクト全体の質を担保することである。プロジェクトはまた、リハビリテーションや補装具といった既存のサービスへのアクセスを確保するとともに、教育や職業訓練、就労などへの包摂を確保するため、他の関係する部門・構成要素とも連携している。
VADの活性化に向けて:得られた教訓(雲南省)
役割を果たすために構成された組織
障害のある人々の村落協会(VAD)は、明確な組織規程、運営委員会、作業方針と手続きを備えたものとして再活性化され、現在では、その役割及び障害のある人々によって表明されたニーズに従った活動計画の作成も行っている。VADは、①障害のある人とその家族に対し、彼らが情報を得た上で決定ができ、コミュニティにおける彼らの発展のために責任を果たすことができるよう、情報を提供し、②会員に対して、共通する関心事項や課題を議論し解決策を探し出すプラットフォームを作り出し、障害のある人々が自分たちのニーズについて声を上げる機会を提供し、③障害のある人々のニーズをシステマチックに調査、報告し、障害のある人々を関係者につなぐため、障害コミッショナー(DC:村落レベルで活動する、DPFのフォーカルポイントとなる人)やコミュニティの関係者(村長、村の医師、女性連合会の代表者など)を動員する。
統合アプローチから包摂アプローチへ
法律により、VADは村の直接の管理下にあり、村長が会長に就くこととされている。しかしながら、障害のある会員たちも管理運営責任を果たすことが求められるであろう。VDAは、障害問題について村長が理解することを促し、既存のサービスが障害のある人々のニーズを組み込むためのよいプラットフォームを提供する。徐々に障害に関するニーズがより目に見えるものとなり、村落・コミュニティが障害のある人々に配慮するようになり、障害のある人々の地域の施策づくりへの参加が促される。
障害のある人々の参加を通じてVDAの説明責任が高まる
VDAで活動する者は、参加型の方法に慣れた。これらの方法を用いることにより、障害のある人々のために決めるのではなく、障害のある人々自身と相談しながら、VDAの鍵となる活動を考え出すことができる。活動は文化、レジャーやスポーツ関係であることもある。これらの活動により、障害のある人々及びその家族とコミュニティの他のメンバーやグループとの間に、より前向きで友好的かつ敬意ある関係が促進される。VDAが依然として取り組まなければならない課題は、障害のあるすべての人々、特に最も脆弱なグループからの参加である。
VADに関係する重要な人々の能力向上
VADは、カギとなる人々(障害コミッショナー、村長、女性連合会代表、自助グループのリーダーなど)が互いに連携し、活動の実施に向けて調整するに当たってカギとなる役割を果たす。プロジェクトはこれら特定された関係者の能力の向上を図った。これらの人々のうち、障害コミッショナーは障害のある人々に寄り添うスキルを高めた。これらの人々は、障害、包摂、CBRの戦略、PSSA(個別的な社会的支援のアプローチ)、コミュニケーションやファシリテーションの技能、意識啓発や権利擁護などについて、プロジェクトで研修を受けた。彼らの障害に対する認識や態度は変わり、障害のある人々にとっても、他の関係者にとっても、フォーカルポイントとなった。彼らは他の関係者とともに、障害のある人々の参加を高めるためのニーズや方法について検討するようになった。
個人のエンパワメントからグループのエンパワメントへ
PSSAは、障害コミッショナーが障害のある人々に寄り添い、彼ら自身のニーズを特定し、彼らの発展のために責任を負うに当たって用いている大変効果的なアプローチである。障害のある人々は、行動の中心に位置し、プロセスを通じて包括的に支援を受ける。彼らは自身でプロジェクトを特定し、実施している間により自信を持つようになる。そのような個人に対する支援に加え、VADは、障害のある人々が集まり、共通の関心や発展ニーズに応じてビジョンと目的を持つ自助グループを作る可能性も提供している。自助グループは活動を組織し、共有し、学び合い、助け合う。芸術団や伝統スポーツ、レクリエーション活動や職業訓練課程など様々な社会的活動への障害のある人々の参加が高まることにより、障害のある人々はコミュニティで可視化され、尊敬されるようになる。
事例:師宗県彩云鎮ウーロン村のVAD
ウーロン村のVADは2000年代のある年に設立されたが、特段何の活動もしていなかった。2012年、プロジェクトによる調査活動と動員活動の後、ウーロン村は公式にVADを再活性化させた。障害のある人々119名(男性99名、女性20名)がVADの会員となった。障害のある人々によって運営員会が選ばれ、障害のある人が副会長として任命された(会長は村長。)。カギとなる政策(規約及び会計規則)とウーロン村VAD戦略が検討され、運営委員会によって承認された。そして活動計画が立てられた。ウーロン村では活動計画に従い、障害のある人々の参加と包摂を改善するため、カギとなる活動が以下の通り実施された。
- 2013年、村落委員会はVDAに対し、定期的な活動と会合のための事務所を提供した。
- 2014年から2015年にかけて、地元の役所の支援を得てコミュニティ・リハビリテーション・サービス・ステーションが設置された。このステーションでは、障害のある人々に地域に根差したリハビリ療法、相談支援、余暇やレクリエーション活動が提供されるとともに、必要な補装具の貸し出しが行われる。
- 2014年、VADの調査と報告により、最低生活費扶助を受給する障害のある人々の割合が、当該支援を必要とする人々の30%から90%に増加した。
- 障害のある人々13名が彼らの個別プロジェクトを完遂し、さらに10名が実施中である。
- 障害のある人々2名が党と村落委員会のメンバーとなり、村の開発に関する重要事項についての意思決定過程に参加することとなった。
- 障害のある人々3名が、地元の村の文化芸術団のメンバーとなった。
- スポーツ・芸術・レクリエーション活動が、女性や子ども、高齢者など他のグループと共同して定期的に開催されるようになった。
- 特別な祭りの機会に、一連の意識啓発活動が実施された。
- 特別な又は一般のサービス(リハビリテーション、補装具、保健、職業訓練、教育、生計など)に障害のある人々をつなぐ紹介が、件数にして100件以上可能となった。
1 2000年、中国障害者連合会による。
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