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第3回アジア太平洋CBR会議

アジアのポーテージ:
日本ポーテージ協会(JPA)の活動とポーテージ早期教育プログラムについて

認定NPO法人日本ポーテージ協会
(email:jpa@a-net.email.ne.jp; http://japan-portage.org)

〈JPAとは〉

日本ポーテージ協会はポーテージ早期教育プログラムを日本全国とアジア地域に普及させるために、1985年に創立されました。ポーテージ早期教育プログラムは、発達の遅れた子どもたちの0歳からの早期教育とその親・家族支援を行うために作成されました。ポーテージ早期教育プログラムは、1972年にアメリカ合衆国ウィスコンシン州ポーテージのCESA5で『ポーテージ早期教育ガイド(PGEE)』として開発されました。日本においては、1980年から日本文化に適合させる研究が始められました。1983年に日本版『ポーテージ乳幼児教育プログラム』が刊行されました。2005年には、それまでの20年以上の経験を取り入れて、日本の文化と社会に合うように『新版ポーテージ早期教育プログラム』を出版しました。

今日では、ポーテージ早期教育プログラムは世界中の数多くの国で、ことに発展途上国のCBR活動のなかで広く使われています。JPAは全国に50支部があり、約1,000人の会員が活動をしています。

〈ポーテージ早期教育プログラムとは〉

特 徴

以下のような特徴があります。

  • 一人ひとりの発達に合わせて計画する個別プログラムである。
  • 家庭や日常場面において、親が中心になって指導を行う。
  • 指導の目標と結果の正確な記録をもとに、 応用行動分析の原理をもとに指導を行う。

構 成

ポーテージ早期教育プログラムは、6つの発達領域(「乳児期の発達」「社会性」「言語」「身辺自立」「認知」「運動」)から成る、チェックリストにあげられた各発達領域の総数576の行動目標は、発達の順序性・系列性にしたがって0歳から6歳の順に配列され、発達領域ごとに色分けされています。そして行動目標ごとに1枚に記載されて、カードファイルに入っています。それぞれの活動カードには、活動示唆や援助の仕方、援助の例などが書かれています。発達経過表はチェックリストのなかに入っていて、それをみることによって子どもの進歩が明確に分かるようになっています。

チェックリスト、活動カード、発達経過表については、『新版早期教育プログラム』の手引書を読めばそれらの使い方が分かります。

指導方法

指導はチェックリストを使って、子どもの発達水準を正確にアセスメントすることから始めます。アセスメントにもとづいて、ポーテージ相談員は、親と話し合って行動目標を選び出します。行動目標は各発達領域から選び出します。子どもの発達水準にしたがって、子どもの行動目標は、子どもがステップに従って課題が達成できるように細分することもあります。ポーテージ相談員は、次の面接までに家庭で親が子どもに実施する課題を親に渡します。1週間とか1月とか一定期間の指導の後に、ポーテージ相談員はその課題の達成をアセスメントします。ポーテージ相談員は、子どもを直接指導することはありません。親が子どもを指導します。ポーテージ相談員は指導の技術を親に教えます。このような“親中心指導”が、ポーテージ早期教育プログラムの大きな特徴です。

指導技法

チェックリストから選び出した行動目標は、子どもの発達水準に合わせて、達成できるように分析して細分します。これを“課題分析”と言います。課題分析の過程には適切な援助が必要です。それらの援助には、身体的援助、視覚的援助、言語的援助およびそれらを組み合わせる援助があります。これらの援助を用いる際に、適切な援助を与える“プロンプト”や援助をしだいに減らしていく“フェイディング”、あるいはさらに複雑な行動を作るために行動を“繋ぐ”“チェイニング”という応用行動分析からもらされた技法とともに使います。望ましい行動が起こったらほめる強化の原理や望ましくない行動を無視する消去の原理も使います。

ポーテージ指導と親支援の3つの部分

ポーテージ指導は3つの部分から成っています。一つは、チェックリストを使ったアセスメントと指導を行う部分で、二つめは達成した行動目標を日常場面に般化・維持させる部分です。三つめは家庭指導が円滑に進められるように親を支援する部分です。ポーテージ相談員は、親の抱える問題や心配を前向きに受け止めて解決を図ります。親のよきパートナーになることが求められます。

〈JPAのいくつかの活動〉

研修セミナー

JPAは、ポーテージ相談員を養成するためにポーテージプログラムの3日間の初級研修セミナー、中級研修セミナーなどを開催しています。認定相談員の資格も取得できます。研修セミナーには様々な職種の方が参加します。障害のある子どもを育てた親にも、ポーテージ相談員になる人もいます。

国際活動:CBR活動してのポーテージプログラム

JPAは、1988年に創立された国際ポーテージ協会の一員です。1986年以来、国際ポーテージ会議が2年ごとに開催されています。日本は1988年に東京で、1998年に広島で主催しました。

JPAはまた、フィリピン、バングラデッシュ、中国、インド、ネパールなどアジア地域でポーテージプログラム・ワークショップセミナーを開催してきました。ポーテージ早期プログラムは、発達水準が0歳から6歳までの子どもたちに家庭で親や家族によって指導ができる家庭中心プログラムなので、CBR活動のなかで適用できるもっとも有効な早期対応プログラムと言えます。

〈ネパールにおけるポーテージプログラム・ワークショップセミナー〉

ネパールポーテージ・リハビリテーション協会(PRAN)とネパールポーテージ協会(NPP)は、発達に障害があったり発達が遅れたり偏ったりしているネパールの子どもたちに対して、ポーテージ早期教育プログラムを用いたサービスをネパール全国に普及させようとする計画を実行するために、JPAの経験をもとにした技術協力をJPAに要請しました。JPAはこの要請に応えて、これまでに2012年と2014年にバネパで、2015年にはバグルングで、ポーテージプログラム・ワークショップセミナーを開催してきました。