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第3回アジア太平洋CBR会議

エンパワーされたコミュニティ:
バングラデシュの「開発における障害センター」(CDD)の事例

2015年7月
CDD事務局長
A.H.M.ノーマン・カーン

CBRは過去40年間にわたり進化してきた戦略であり、コミュニティを全体としてエンパワーし、全てのコミュニティにおいて障害のある人々が声を上げ、意見を表明することを積極的に促進するような、インクルーシブな環境を作るため努力してきた。現在のCBRマトリックスでは、障害のある人々とともにコミュニティ全体がエンパワーされ、インクルーシブな社会を作ることが強調されている。CBRの全てのコンポーネントと項目は、国レベル、地方レベルからコミュニティレベルまでの全ての関係者における権利促進と行動を伴うものである。

バングラデシュについて:

バングラデシュは南アジアにある開発途上国であり、近年は低位の中所得国とされている。人口密度は高く、4万4千平方キロメートルの国土に1億5千2百万人が住んでいる。いまだに貧困が広がっており、人口の24%が貧困ライン以下の生活をしている。現在の一人当たりGDPは1300米ドルあまりである(2013-2014年)。保健や教育、社会保障、雇用といった必要不可欠なサービスはいまだ不十分であり、特に人口の8割が住む農村部ではとくにそうである。様々な自然災害の頻発は国民の苦難にさらに追い打ちをかけている。

障害における開発センター(CDD)について:

CDD(Centre for Disability in Development、開発における障害センター)は、過去20年間にわたり「開発における障害へのコミュニティ・アプローチ」に沿って、バングラデシュという文脈においてCBRを確立するため、インクルーシブな社会をつくることに深く関心をもってきた。そのためには、国の政策の改革、実施機関の能力向を目指す国レベルの取組みから、コミュニティレベルの体系的な活動の促進を目指すコミュニティレベルの取組みまで、国、地方、コミュニティの各レベルにおいて数多くの取り組みが必要である。CDDのビジョンは、生活の全ての面における障害のある人々の機会平等と完全参加を達成することである。その使命は、障害のある人々が平等な機会と完全な参加が得られるよう、障害を開発の主流に含めることである。

全ての開発関係者が開発の主流に障害を位置づけ、彼らの組織環境と事業に障害を含めなければならない、というのがCDDの信念である。社会で障害のある人々の包摂を制限するような障壁は除去されなければならない。障害のある人々は、保健やリハビリ、教育、生計、社会的その他の基本的なサービス全てを利用することができなければならず。それがコミュニティを障害の問題に取り組むべくエンパワーすることになる。このことが障害のある人々の社会への参加を促し、彼らが権利と名誉を高く掲げながら有意義で尊厳ある人生を送れるようになるのである。CDDは国や国以外の開発関係者の能力を高め、開発プログラムに障害のある人々を含めるよう確保することで、これを行っている。CDDはネットワーキングを促進し、開発組織、企業部門、及び、最も重要な関係者としてバングラデシュ政府との間でつながりを作っている。

このような中、CDDはCBRに照らして、市民の熟慮した取り組みを推進してきた。人々の権利や尊厳、多様性が尊重され実現されるよう、障害のある人々の自助グループを育成し、それらがコミュニティ開発のプロセスに積極的に参加できるよう支援してきた。CDDは最近、CBMの支援を得て、CBRガイドラインに沿ってCBRを国内に広げるプロジェクトを始めたところである。

CBRにおけるエンパワーされたコミュニティ

「エンパワメント」のコンポーネントは、障害のある人々とその家族、コミュニティが障害を各分野で主流化し、全ての人々にとって権利へのアクセスが確保されるよう、エンパワーすることに焦点を当てている。(CBRガイドラインからの引用)

エンパワメントは、他の全てのコンポーネントのシステマティックな実施と達成との間で相互依存の関係にある。そして個人に焦点を当てるだけでなくむしろ障害の問題に関して最大限に理解するような環境を作り出し、障害のある人々の権利へのアクセスを作り出すことにも焦点を当てる。これは、草の根レベルから最上位のレベルまで、全ての人間開発の取り組みで障害の問題をシステマティックに巻き込み、主流化することによってのみ可能である。

障害のある人々の排除の背後にある要素

意識と受容:障害のある人々が開発から取り残されている主な原因は、開発事業をデザインし実施する人々の意識が欠けていること、障害のある人々に対する一般の人々の否定的な態度、支援資源が少ないこと、開発プログラムにおいて障害のある人々のニーズへの対応の仕方に関し知識や技能が欠けていること、である。

障害のある人々はバングラデシュの恵まれない人々の中でも最も脆弱なグループの一つである。彼らのほとんどは開発援助をほとんどあるいはまったく受けていない。治療サービスや利用できる支援機器も極めて限られている。

リハビリテーションサービスの欠如:支援資源に限界があることにより、多くの団体がリハビリテーションその他のサービスの提供や拡大をできずにいる。この分野での政府の取り組みも不十分である。国内においてリハビリテーション従事者養成機関のキャパシティは不十分である。支援機器はコミュニティのレベルでは利用できない。貧困のため障害のある人々の多くは、サービス提供者のところにはるばる行ってサービスを受けるだけの余裕がない。国内で理学療法士、作業療法士などの専門職の数は少なく、彼らは大都市で職を見つけることができることから、地方部ではいないに等しい。障害のある人々の主たる介護者は母親か女性の家族であるが、彼女らは障害のある人を介護するために必要な最も基本的なスキルさえ持っていない。

障害のある人々は社会の主流から排除され、発展の機会へのアクセスを奪われている。その理由としては、障害のある人々の数が多いこと、貧困が広がっていること、75%が遠隔地の農村コミュニティに住んでいること、障害関連サービスが存在しないこと、が挙げられる。

社会によって作り出された障壁:家族の中で障害が与える影響はそれぞれ異なるかもしれないが、共通の現象は経験される。両親は自分の子の障害を認識することが極めて難しい。障害のある子の将来は全く又はほとんどなく、家族に対して貢献することはできないという理解のもと、障害のある子は通常家族の負担と見なされる。このことが障害のある子どもに与える影響は非常にネガティブなものである。彼又は彼女は他の子どもや家族から無視され、差別されるかもしれない。家族の中で基本的な必需品を受け取るのが最後になるかもしれない。家族は障害のある子を発達プロセスから取り残すことさえするかもしれない。突然障害をもつことになった大人の家族の状況もまたはかばかしいものとは言えない。彼又は彼女は家族のことから外されるかもしれない。彼又は彼女の地位は下がるかもしれず、経済的に以前ほど貢献できず、他の家族から非常に疎外されるかもしれない。彼らはしばしば過度の同情をもってみられるか、無視される。彼らは社会的なことや活動から疎外される。彼らは不活発、神罰、恐怖、憎悪などと結び付けられ、社会的な活動や集まりでは見えない存在とされてしまいがちである。

開発における障害の包摂のためのCDDの主な取り組み

  • 保健とリハビリテーション:啓発、特定、調査、コミュニティに根差した治療サービス、船やバンによる訪問リハビリテーションキャンプサービス、人工装具や矯正器具、支援機器の製作や配布、等
  • 教育:インクルーシブなノンフォーマル及びフォーマルの初等教育、教育や学習のための教材、教師の研修、政策改革のための支援、等
  • 生計と就労:技能訓練、所得創出のための支援資源の動員、企業その他の雇用分野における就業支援、等
  • 災害と気候変動:障害インクルーシブな災害リスク軽減パイロット訓練、様々なレベルでの障害インクルーシブな政策の促進、等
  • 権利とエンパワメント:コミュニティの意識啓発、障害のある人々の自助グループや頂点組織を作るための能力向上、地方政府組織における市民としての参加、全てのレベルでの政策支援

エンパワーされたコミュニティに向けての特定の取り組み:

CDDは、障害のある人々がよりよく他の人々と意思疎通でき関わることができるよう、それによって彼ら自身が権利を主張することができるようになるよう、障害のある人々との協働を強く推進している。CDDは、障害のある人々のニーズや権利や直面する事項について地域のコミュニティと関わり、意識啓発を行うことにより人々を動かしている。CDDは、障害のある人々が集まって情報共有や共通の問題の課題を行う自助グループの結成及び活動を支援し、リーダーに対するリーダーシップ研修も実施している。CDDは、そのパートナー組織、自助グループ及び頂点機関が障害のある人々、特に障害のある女性や子どもに対する虐待や権利侵害について問題提起することを支援している。

障害インクルーシブな地域ガバナンスはCDDの主な焦点の一つである。地方政府機関の役割は障害のある人々の持続的な開発を確保するために非常に重要である。農村部人口の社会経済開発のために行う中央政府の活動やサービスのほとんどは、地方政府機関を通して行われる。しかしながら、社会において持続的な開発を確保するためには、開発プロセスにおいて障害のある人々を含めることが不可欠である。

CDDのエンパワメントとインクルーシブ開発のための取り組みからの主要な学び

障害のある人々が活発な参加しコミュニティ開発プロセスにおいて建設的な関わりができるよう、彼らの能力や自信を向上させるためには、全ての障壁とそれを克服する適切な方法に焦点を当てた、全てのコンポ―ネントと項目における同時的な取り組みが求められる。

  • 国、地域及びコミュニティの各レベルでの全ての取り組みにおいて、人間開発の事業におけるインクルーシブ開発が確実に重視されるためには、CBRの国家政策が不可欠である。
  • 全ての関係政府機関、省庁はそれぞれインクルーシブな政策とそれを実施するための行動計画を持つべきである。
  • CBRガイドラインの地元言語版及び一般向けの版があることは、CBRの考え方や全てのレベルでの実施プロセスをより理解するのに役立つ。
  • 政府機関と非政府組織がインクルーシブな開発事業の実施に当たり協力することにより、CBRの全てのコンポーネントや項目において包括的な取り組みを行うに当たって知識やスキル、資源の点でのギャップや食い違いがある場合に、それを克服するための障壁を最小化できる。
  • コミュニティをベースとする居宅サービスを提供することは必須である。というのも、障害のある多くの人々にとって、彼らの機能障害のレベルを軽減するためにリハビリテーションサービスを利用することは大変だからである。センターのサービスを受けるためにはるばる遠いところまで行くのは難しい。
  • 取組の全てのコンポーネントにおいて、特別のニーズに対する戦略、方法、ツールや材料についての知識やスキルを適切に共有することは、関係者に積極的に関わってもらうことに役立つ。
  • 障害のある人々は政府や民間部門での様々な機会を探すように促されなければならない。彼らは時として長々とした手続きを恐れたり、搾取されることを恐れたりする結果消極的になってしまう。
  • 障害のある人々がコミュニティの開発プロセスに積極的参加し建設的な役割を果たせるようその能力や自信を高めるためには、障害のある人々による自助グループや集合的なフォーラムを育成する必要がある。
  • 障害のある人々に加え、他の様々な疎外された人々に関する基本的な知識を持つことも重要である。これによって、様々な疎外された人々のグループの中で障害のある人々に対応することも可能になる。
  • 社会的説明責任の戦略やツールがあることにより、市民の関わりが向上し、障害のある人々とコミュニティ、責任者又は当局、選挙で選ばれた代表との間に懸け橋ができ、透明性と説明責任の強化につながり、サービス提供が改善される。
  • 意思決定過程において障害のある人々が主導的な役割を果たしたり、参画したりすることは、参加や尊厳などの点で彼らの生活を変えるだけでなく、コミュニティの人たちに障害のある人たちの潜在的可能性や能力に気づかせることになる。
  • 障害のある女性たちが対処しなければならない困難は、男性よりもより深刻である。障害のある男性とのジェンダー研修を行うことは、排除を引き起こすようなジェンダーに基づく要素に対処するに当たってプラスに影響する。
  • 障害のある人々がリーダーシップに関して訓練され、リーダーシップを発揮する地位に就く機会を与えられることは、絶対に必須である。自身で様々な文脈に直面し対処することによってのみ、彼らに自信がつき、スキルが高まる。

結び:

障害のある人々をエンパワメントできるかどうかは、権利に基づきエンパワーされたコミュニティを作れるかどうかにかかっている。そのようなコミュニティでは、健康の向上と機能の改善のための対処がなされ、質の良い教育とインクルーシブな環境が作り出され、生計サービスと社会的保護が利用しやすくなり、障害のある人々が家族とコミュニティの中で社会的に意義のある役割と責任を持つ。協力した包括的な努力がエンパワーされたコミュニティづくりにつながる。そのようなコミュニティでは、障害のある人々とその家族の人々が自身で決定することができ、彼ら自身が自分たちの生活を変える責任を持つことになる。


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