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ミレニアム開発目標と障害

それぞれのミレニアム開発目標における障害者のインクルージョンに関する課題の論理的根拠は世界銀行により、以下の通り詳細に説明されている。

目標 1: 極度の貧困と飢餓の撲滅

障害と貧困は密接に関連している。実際、障害をもつ人は発展途上国においてより貧しく、障害をもたない人に比べるとさらに貧しいことを定性的証拠が示唆している。障害者の多くは、教育や仕事の面で受入れられず、障害によっては、長期的な医療を必要とする場合もあり、不十分な家計をますます消耗してしまう。世界の貧困層の実に1/5は、障害者によって構成されている。栄養不良は、発育不良、全盲及び糖尿等の多くの障害の原因となる。

目標 2:普遍的な初等教育の達成

タイ王国憲法B.E 2550(2007)は、人は国があまねく、かつ良質に整備する12年以上の基礎教育を平等に受ける権利を有する、と唱っている。現在22,722の公立、私立学校が障害のある児童に門戸を開いており、72の大学が障害をもつ学生に、福祉機器、補助器具、手話通訳者や個別指導というサービスをもって、学士から博士号課程に至る教育を提供している。特別な職業教育も又、9つの公立職業訓練校と、いくつかの民間研究機関において提供されている。

スロープ学校にスロープを設置

目標 3:ジェンダーの平等の推進と女性のエンパワメント

障害をもつ女性は、より性的虐待の被害者になりやすい。女性に対する暴力は心理的障害を引き起こす。とりわけ、産科フィスチュラのような障害はスティグマの対象となっている。障害者のためのコミュニティへのアクセスやサービスの不足が、女性や女子の就学や就職の機会の妨げとなっている。

目標 4:小児死亡率の引き下げ

障害をもつ子ども達は、医療的条件のためだけでなく、公共サービスへのアクセスの不足と彼らの身内からでさえ受ける厳しいスティグマにより、より高い死亡リスクを抱えている。
早期発見、治療及び教育が生存率を引き上げ、その後の障害による影響を最小限に留める。

目標 5: 妊産婦の健康状態の改善

障害をもつ女性は、公衆衛生情報へのアクセスが限られており、暴力と性的虐待の対象となるリスクが高いため、予期せぬ妊娠やHIV/AIDSのリスクもより高い。また、障害をもつ女性は、強制的な不妊手術を受けさせられる可能性も高い。特に少女及び若い女性の妊娠は、結果として障害につながることがある。

目標 6: HIV/エイズ、マラリア、その他の疾病のまん延防止

HIV/AIDSや他の伝染病は、それら自体が障害を引き起こす。しかしながら最も問題なのは、その感染を防ぐための努力に障害者が含まれていないため、障害者がそういった疾病に対して、高い感染リスクを持っていることだ。障害者にも平等の権利を保証するため、HIV/AIDS及び他の伝染病についての情報は、アクセシブルなフォーマットで入手可能であるべきである。

目標 7: 環境の持続可能性の確保

環境の危険は、多くの種類の障害を引き起こす。例えば、汚染物質の中には、多くの障害をもたらすものがある。道路の設計は、歩行者の安全に大きく関わっており、障害をもたらすかも知れないような路上衝突を防ぎ、障害者を交通事故から守ることもできる。隔絶された環境は障害をもつ人を経済及び社会的な活動に参加することを妨げる。環境を改善する場合のコストは、最初から環境がすべてのユーザーのために設計され、建設され、維持される場合より高く、成果は満足のいくものではない。都市計画及び急速な高齢化社会に対応するために、ユニバーサルデザインを考慮することは特に重要である。

目標 8:  開発のためのグローバル・パートナーシップの構築

- 開発のためのグローバル・パートナーシップ

障害者権利条約(CRPD)は、「国際協力が、障害者を包容し、かつ、障害者にとって利用しやすいものであることを確保する」という国際協力(第32条)に関する具体的な条文を含んでいる。

「パートナーシップはインクルージョンを伴う。それはすべての人を意味している。」

英国国際開発省(DFID)は、障害、貧困及びミレニアム開発目標についての議論の先頭に立っている。2005年、DFIDの製作プロジェクトのリポート、「障害知識及び研究プログラム(トーマス、2005)」は以下のように述べている。

「全体として、このプログラムの製作プロジェクトがまとめた研究の結論は、特にカンボジア、ルワンダ及びインドの国家レベルの調査によると、貧困削減とミレニアム開発目標の達成に対する障害の関連性は明白である。」

国際障害者の日における活動国際障害者の日における活動

  • 障害者は、概して最貧困層に含まれている。彼らはより強烈な貧困を味わっており、非障害者に比べ、貧困から脱するための機会が少ない。
  • 障害者の大部分は表に出てこないので、認知されず、開発の主流から取り残されてしまう。
  • 障害は、すべての社会とグループに拡散している。最も貧しく、最も除外されている者が最も障害のリスクが高い。最も除外された、最貧困層の中でも、女性の障害者、少数民族の障害者、不可触賎民や部族の障害者が最も取り残されている。
  • DFIDは、障害者問題を解決する具体的な努力をしない限り、社会的排除に取り組み、貧困層を削減するために効果的に働いているとは言えない。

- ミレニアム開発目標への障害のインクルージョン

その後、ミレニアム開発目標に障害者を含めるようにという声が、地方の、また全国的、国際的障害者団体(DPO)の種々の関係当事者からますます上がった。これが、国連の「障害のある人々のためのミレニアム開発目標の実現」に関する決議(A/RES/64/131)に初めて反映された。(http://www.un.org/disabilities/documents/gadocs/a_res_64_131.doc

2008年、UNESCAPは「開発補足目標とミレニアム開発目標進行強化のためのソーシャルインクルージョン、人口、ジェンダーの平等、健康増進指標に関する専門家グループ会合」を開催した。その会合の中で、障害者に関わる具体的目標及び指標が策定された。

2009年、世界保健機関(WHO)及び国連経済社会局(DESA)は、「ミレニアム開発目標の政策、プロセス及びメカニズムにおける障害問題の主流化に関する国連専門家グループ:すべての人のための開発」を組織し、刊行物のタイトルを「障害とミレニアム開発目標:ミレニアム開発目標達成努力におけるミレニアム開発目標プロセスと戦略の障害インクルージョン問題に関する考察」とし、後に2011年に国連から発行した。

2010年、ミレニアム開発目標の進捗報告に、「ゴール2:非就学障害児童の教育について」という特記事項として初めて障害が含められた。APCD、CBM、レオナルド・チェシャー・ディスアビリティ及び国際障害同盟(IDA)等の国際機関は、ポスト2015ミレニアム開発目標の中に障害を含めるという自らの立場を明言した。

ミレニアム開発目標のゴールとターゲットに障害問題が明確には含まれていなかったが、開発と貧困削減政策プロセスへの障害者のインクルージョンと参加について他の手段による対応が限定的であると憶測するのは間違っている。障害者のためのインクルーシブ開発を推進する戦略である「地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)」がその顕著な例である。

APCDでの研修APCDでの研修
APCDでの地域に根ざしたインクルーシブな開発の研修