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CBRを通したミレニアム開発目標の達成

CBRガイドラインは過去20年間において、CBRの活動がどのようにそれぞれのミレニアム開発目標に取り組んできたかを示している。様々な資料から、いくつかの例をここに引用する。

貧困の削減

2004年のジョイント・ポジション・ペーパーは、貧困と障害の連鎖についての理解の下、貧困削減のための戦略としてCBRに焦点を当てた。CBRプログラムは障害者とその家族の能力を、技術訓練、公式・非公式経済においての生計の機会の促進、自助グループを通じたクレジットへのアクセス、潜在的な雇い主の意識改革、政府そして主流開発局の貧困削減プログラムへの障害者のインクルージョンを主張することを通じて築いてきた。

2008年のILOの刊行物には、CBRと雇用の良い実践例を、スキル開発、自営、求人市場へのアクセスの実用的な提案と共に提示している。

マラウィでは、障害者のための機会均等化政策の優先政策エリア7(経済のエンパワメント)の鍵となる目的の1つは、男女の障害をもつ人の貸付とクレジットを利用する機会を改善することである。この目標を達成するため、NADに支援されているマラウィ政府のCBRプログラムは、障害をもつ人が、中小企業の事業融資を受けることができるよう、インクルーシブなメカニズムの実施を促進している。融資は、障害者とその地域の他の人で構成されるグループ(クラブに組織される)に与えられる。このために鍵となった点の1つは、マラウィ政府が新しく設立した地方開発資金の導入に責任を持つ委員会に、障害者の代表を含めたことである。基金を通じて、地方の貧困層に対する低金利貸付が可能となる。障害者の代表の役割は、CBRと連携して、増えつつある資格を有する融資を利用することができる障害者を特定することである。代表者は又、将来融資を受ける可能性のある人に基本的な経営管理スキルの訓練が必ず受けられるよう、CBRのプログラムと協働する。必要な時は、CBRと基金と連携して、代表者は返済予定を変更する。入手可能な統計によると、28地区の内18地区の75グループ、合計490人の障害者が基金から融資を受けており、金額は85,000米ドル相当になっている。大半は高収益なビジネスベンチャーを運営しており、自分と家族の生活にプラスになる多大な影響をもたらしている。

出典:IDDC(2012)、地域に根ざしたリハビリテーションと障害者の権利条約、ブリュッセル ベルギー、12ページ


「サバイバルヤード」プログラムは 、“Projet de Réadaptation à Base Communautaire des Aveugles et Autres Handicapés” ニジェール、CBMと地域コミュニティの協力の結果である。プロジェクトは地域の食料不足に呼応して始まり、一年を通して、障害者と拡大家族に食料を保障する。障害者とその家族は、25m四方のサバイバルヤードと井戸と簡単な水路を作る。境界に植えられた低木は、庭をサハラ砂漠の荒い風から保護する微気候の環境を作り出す。庭で食用、販売用、家畜の飼料となる野菜や果実が収穫でき、薪もとれ、 暑い季節にさえ茂り続ける。並行して、障害者とその家族を対象に、障害インクルーシブ教育、健康と栄養、水、公衆衛生についての教育、予防接種、出産前後のケア、学校教育、リハビリテーション・サービスの利用、簡易便所及び木材を効率的に燃やすストーブの製作、市場参入への道筋、収入創出のためのロバの荷車と動物の貸付を含むパッケージサービスが提供される。結果として、食物へのより良いアクセス、収入増、衛生面の改善、そして地域の一員である障害者に対する態度が改善された事等が報告された。

出典:IDDC(2012)地域に根ざしたリハビリテーションと障害者の権利条約 ブリュッセル ベルギー、12-13ページ


中国の黒竜江省では、中国障害者連盟(China Disabled Persons’ Federation(CDPF))がメインストリームの研修センターやプログラムに障害のある人の参加を義務付ける政策を採用するよう、省政府に働きかけ、成功した。その結果、グリーン証明書(Green Certificate)と呼ばれる主要な農業訓練イニシアティブが多くの障害のある人に訓練とビジネス開発サービスを提供している。また、リハビリテーション基金(中国の障害者雇用率制度に基づいたもの)から提供された資金で多くの障害のある人が自分のビジネスを始めた。

出典:CBRガイドライン、生計コンポーネント、34ページ


インド、デリーの6つのスラム地域で活動しているNGOであるChetanalyaは、障害のある人を含む貧しい人々が自助グループを立ち上げるよう促している。自助グループを通じて生み出された資本の規模や額は、多くの貧しい人々の生活に大きな違いをもたらしている。Chetanalyaは、プログラムのある6つの地域に578の自助グループを持ち、その貯蓄は相当量ある。典型的なグループによる1年に渡る貯蓄は、家の改修、借金の返済、光熱費、教育、旅行、結婚、事業、車修理、医療費、葬式代、人力車購入、祭りの費用、小さな店の開店、銀行口座開設、ガスボンベ・教科書・テレビの購入のために使われた。
このプログラムでは、障害のある人や障害のある子どもの母親は、メインストリームの自助グループに統合され、自分たちの自助グループは作らない。障害のある会員の割合は約6パーセントである。

出典:CBRガイドライン、生計コンポーネント、53ページ


教育

障害のある子どもに対する教育活動はプログラムを開始した当初からCBRの一部であった。インクルーシブ教育を支援するCBR活動には、障害のある子どもの就学支援、学校当局への障害児の受け入れ提唱、障害児をサポートする教師への支援促進、教師の研修の実施、学校のアクセス改善、支援機器や教育学習教材の提供、そして学校・家庭・地域をつなげること等である。

国によってはCBRが学校に通えない子ども達の家庭での教育も支援しており、家庭と行政と連携して、障害児の地域に根ざしたデイケアセンターの設立にも一役買っている。

スリランカのハンバントータ県では、学習障害のある幼稚園児が多く把握されている。その地区で利用可能なサービスを調査する過程で、幼稚園プログラムを実施している国際的なNGOがあることが分かった。このNGOは、幼稚園に障害のある子どもを入れることに興味を示したが、教員は障害のある子どもの扱いに精通していなかった。CBRプログラムは、スリランカ内のインクルーシブ教育に関する訓練を提供しているところを見つけ、NGOの幼稚園教員が参加できるようにスポンサーになった。訓練の後、教員とCBRの職員は親と子どもに面会し、一緒にインクルーシブ教育のための計画を策定した。成功に導くため親に責任を与える等、親がインクルージョンの過程の一部になるよう多大な努力が払われた。既に幼稚園に通っていた子どもたちとその親も、障害に関する問題を啓発され、インクルージョンの過程に参加した。

出典:CBRガイドライン、教育コンポーネント、24ページ


障害のある生徒がネパールの中等教育を開始すると、彼らは最初にリソース学級に配置される。ここで彼らは通常の授業に出席するために必要な移動と社会的スキルや基本的な教育の訓練を受ける。学習のスピードによるが、通常、リソース学級は1年間で、その後、普通学級おいて、クラス担任と仲間と合流する。特別な訓練を受けた教員が、点字の翻訳を含め、児童に合った本を入手するために障害のある生徒の支援を続ける。そして、場合によっては後方支援や通常教育において彼らを指導する支援をする。支援教員は同時に、障害のある生徒が直面する問題を解決するために、正規のクラス担任と連携する。

出典:CBRガイドライン、教育コンポーネント、53ページ


保健

障害に関する世界報告書(2011)は、一般保健の3章の中で、低所得国及び低位中所得国における障害者と家族の保健サービスへのアクセスの促進に対してのCBRの役割を認識している。

4章 リハビリテーションでは、報告書は、資金力がなく制約の多い状況では、二次的サービスによって補完される地域に根ざしたリハビリテーションを通じて、サービスの供給を加速することに焦点を絞るべきである、と薦めている。この章は、コミュニティレベルでの発見、照会、フォローアップ、コミュニティレベルでの簡単なリハビリテーション・セラピーの提供、障害者及びその家族のための個人あるいはグループベースの地域を巻き込んだ教育的・心理学的及び感情的サポートの提供等のCBRの手段を例証する 。

医療とリハビリテーション・サービスへのアクセス以外に、CBRプログラムは、HIV/AIDS、マラリア、その他の病気についての意識を向上させること(ミレニアム開発目標 6)を含む健康増進、そして障害をもたらす可能性のある環境の質を向上させること(ミレニアム開発目標 7)においても活発に取り組んでいる。

地域活動
          地域活動

インドの最貧地区の一つであるカルナタカ州にあるチャーマラージャナガルでは、生活の質が非常に低く、特に障害のある人の場合は顕著である。その中で、NGOであるMobility India(MI)によるCBRプロジェクトがイギリスのDisability and Development Partnersの支援のもとに行われ、地域の多くの人々が基本的な衛生設備を利用できていないことが判明した。多くは家から遠く離れた空き地へ足を運んでいた。これは障害のある人にとって、更に障害のある女性には過酷な状況であった。インド政府は各家庭へトイレ完備のための補助金を提供し、MIがチャーマラージャナガルに住む障害のある人とその家族に対しアクセシブルなトイレの設営を手助けした。MIは、既存の地域ネットワーク及び自助グループ(SHG)にこの新しいプロジェクトを手助けしてもらい、衛生観念や健康問題予防のための正しい衛生設備の使用への意識を高めるため、路上での寸劇や壁画制作を企画した。人々が興味や意欲を示し始めた中、MIは基本的な衛生設備の利用を促すために彼らと協働することに同意した。1つのトイレを作るための費用はおよそ150米ドルと見積もられた。インド政府が各家庭に対し補助金を提供したとはいえ、残金の負担をすることは多くの人々にとって、特に障害のある人にとっては困難であった。スイスのMIBLOUと地域からの資金援助により、50の良質でアクセシブルなトイレの設営が可能となった。自助グループのメンバーは、トイレの必要性が非常に高い障害のある人がいる家庭を選出することを依頼された。彼らはまた、家族と協力して建設作業を調整し資金の適切な使用を保障した。
障害のある多くの人はトイレへ行くために長い距離を背負われたり這って移動する必要がなくなった。彼らは自立し、そして、重要なことに、彼らは尊厳を取り戻すことができた。彼らの衛生設備の不備に起因する健康状態悪化のリスクは明白に減少した。MIプロジェクトの成功を目にすることでインド政府は補助金を増額し、地方当局にこれらの補助金を迅速に配るように指示した。障害のある人々もそうでない人々もこのプロジェクトにより恩恵を受け、徐々に地域レベルのプロジェクトへと拡大している。そしてチャーマラージャナガルは、家庭内にまたは少なくとも家の近くに、トイレのある地域へと間もなく変貌する。

出典:CBRガイドライン、保健コンポーネント、22ページ


内反足または先天的な足の変形は、低所得国ではしばしば障害の原因となる先天的なものである。ベリーズのThe Community Agency for Rehabilitation and Education of Persons with Disabilities (CARE-Belize)は、これがベリーズの子どもにとって重大な問題であると認識した。The International Hospital for Childrenや保健省と協力して、CARE-Belizeは内反足のある子どもの早期発見と治療を確実にするためのプログラムを開発した。
地元の医師、療法士、そしてリハビリテーション分野の担当者が、丁寧な療法やギプスや添え木の継続的使用により、発達の早い段階で内反足変形を矯正する非外科的方法であるポンセティ法の訓練を受けた。CBRワーカーを通し、CARE-Belizeは非常に早い段階で子どもを発見し、内反足矯正のための医療サービスセンターへ照会した。これは、地域のNGOが主体的に始めたものであったが、この成功は国家レベルの内反足プログラムの発達に大きく寄与した。

出典:CBRガイドライン、保健コンポーネント、42ページ


インドネシアの南スラウェシのCBRプログラムは、村の保健ワーカー、小学校の先生、そして地域ボランティア等、多くの障害のある人や家族を含んだ分野横断的なチームを形成している。CBRチームは、保健システムの全レベルの関係者と一緒に定期的な訓練勉強会を実施している。これらの勉強会は、ネットワークづくり、障害のある人のメディカルケア・ニーズの促進、そしてCBRの役割やメディカルケア・サービスの促進のための良い機会を提供している。

出典:CBRガイドライン、保健コンポーネント、44ページ


男女不平等

「誰かが排除されている状況で、特に障害のある女性が含まれていないと、CBRの目標は達成されない。これらのプログラムは誰かを排除することを意図していないが、現実には、主として偏見の結果ではなく、一部の特定の人々、特に女性障害者が直面する現実に対する無知による結果として排除が行われている。」(アクラムほか(2010))

著者たちは、無知、医療の不足、食料や関連物資へのアクセスの不足により障害のある女児の死亡率が高くなる結果を招いている、と言及している。そして、ユニセフのネパールにおける研究によると、ポリオにかかる男女の数は同じなのに、ポリオにかかってから数年後の男児の生存率は女児の2倍になっていることが判明した。

著者たちは、CBRプログラムに対して、「最も重要なのは、ピアカウンセリングを通して、障害のある女性のピアカウンセラーは、同じ立場の女性に自分たちの経験を共有し、全ての人が自立した生活ができると確信をもたせることによって、問題に向き合う事を支援することができるのではないだろうか。ピアカウンセラー自身が同じ経験を持ち、同じ問題に挑んできた障害者なので、これは大きな意味を持つ。ピアカウンセリングは助けを必要とする人と、サービス提供者とを繋ぐロールモデルと、他の誰も経験したことのない独自の体験を数多く知ることができる機会を提供できる」と提案している。

CBRプログラムは、例えば、矯正器具の技術者を含めた女性労働者の教育のほか、主流の女性グループに障害のある女性も含めるよう提唱したり、障害のある女性にもリーダーシップスキルを与えたりと、全てのCBR活動に障害をもつ女性と女児を含めることを保障するという女性障害者のニーズに対応する努力を行ってきた。
インドのバンガロールでは、いくつかのCBRプログラムが障害のある10人の若い女性グループを把握した。彼女たちは全員、貧しく、教育を受けておらず、女性であり、障害をもっているという理由で不利な立場におかれ、差別を受けており、家族や地域の厄介者と見られていた。1998年、この10人の女性達が支援機器の技術者としての訓練を受け、商業的なワークショップを開くために、あるCBRプログラムから融資を受けた。事業(Rehabilitation Aids Workshop by Women with Disabilities)を始めたときからこの女性たちの生活は一変した。ワークショップは2年目から利益を出すようになり、4年目の終わりには全てのローンを返済した。彼女たちは、支援機器や医療品を製造する大会社の代理店になり、また市内の民間病院と連携を築くことで事業を拡大した。今では、良い収入を稼ぎ、良い生活をし、地域への活発な貢献者と見られている。彼女達は結婚し、家族にとっての財産となり、障害をもつ多くの人のロールモデルとなっている。

出典:CBRガイドライン、保健コンポーネント、68ページ


子どもの死亡率を抑止する早期発見

早期発見と介入は、CBRプログラムが様々な国で開始された当初から対応してきた分野である。CBR担当者は家族や地域に、病気や障害、健康促進そして障害の原因の予防についての認識を高める活動を行っている。

ベトナムではある州で、早期発見と照会のCBR活動が、保険スタッフの能力を築くことで既存のプライマリーヘルスケアの構造とシステムに組み込まれている。

南スーダンの西部赤道地域には、てんかんと「うなずき病」と呼ばれるてんかん関連の病気が流行しており、この病気をもつ子どもは、てんかん関連の発作を起こし、これが知的能力の低下を引き起こし、処置を受けなければ死に至る。てんかん医療の供給はしばしば中断され、子ども達の病状をより一層悪化させ、そのため医療のシステムへの信頼も失われた。CBRプロジェクトにからめ、地元のNGOであるSEMは、地域の病院と協力して、子どもをより良くモニタリングし、てんかん用薬品が定期的に与えられるよう、てんかんクリニックを設立した。「うなずき病」とてんかんをもつ子どもの親の会は、子ども達の適切な処置と権利を陳情するために結成された。南スーダンは新興の発展途上国であるため、医薬品の定期的な供給は再び中断され、医療システムを再び機能させるための奮闘がまた始まる。

IDDC(2012)地域に根ざしたリハビリテーションと障害者の権利条約 ブリュッセル ベルギー、11ページ


グローバルパートナーシップ

CBRガイドラインの策定は、国連関連機関、各国政府、ドナー機関、DPO及び他の国内、国際的な非政府組織を含む市民社会組織の間のグローバルなパートナーシップの一例である。

地域及びグローバルなCBRネットワークの設立は、CBRを通してインクルーシブ開発を促進するパートナーシップの別例である。

国際ミーティング
      CBR地域及び国際会議とミーティング