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CBRガイドライン・保健コンポーネント

支援機器

はじめに

支援機器とは、ある特定の目的を果たすために人間を補助するよう設計、製造、調整された外部の器具である。障害のある多くの人は、日常生活と地域生活への活動的かつ生産的な参加の実現を支援機器に依存している。

「国連障害者権利条約」の第4条、20条、26条では各国に適切な機器と移動補助具の入手の促進と、利用できる補助具についての情報提供を求めている(2)。「障害者の機会均等化に関する標準規則」でも、各国が支援機器や器具の開発、生産、流通、保守点検と、それらに関する知識の普及を支援することを呼びかけている(23)

多くの低中所得国では、支援機器や補助技術を必要とするわずか5~15パーセントの人のみがそれらを利用できている(34)。これらの国々では、支援機器の生産量は低く、質には限界があり、トレーニングを受けたスタッフはほとんどなく、料金は法外なものになりうる。

支援機器の入手は障害のある多くの人にとって必要不可欠であり、開発戦略の重要な一部でもある。支援機器がなければ、障害のある人は教育を受けられず、また就労できないということがあるので、貧困サイクルが継続することになる。また、支援機器の効果は高齢者の健康増進と疾病予防の戦略としてもますます評価されてきている。

BOX31 ネパール

再び働けること

CBRビラートナガル(CBRB:Community Based Rehabilitation Biratnagar)は1990年からネパールの東部地域で活動している非政府組織(NGO:Non-Governmental Organization)である。現在、モラン郡とビラートナガルの41村で活動し、3,000人以上の障害のある子どもや大人にリハビリテーションサービスを提供している。

CBRBは、障害のある多くの人が支援機器の修理のために首都や隣のインドまで行かなければならなかったため、1997年、簡単な修理をする目的で小さな整形外科工房を始めた。長い時間をかけ、CBRBは完璧に設備の整った整形外科工房の設立を目指して努力した。そしてネパールのハンディキャップ・インターナショナル(Handicap International)と協力することで、支援機器の製作、提供、修理を含む包括的なサービスを開発した。地元の人々(女性も男性も、障害のある人もない人も)がネパールとインドで技術者としてのトレーニングを受け、既存のCBRBチームに統合された。現在、CBRBは質の良い装具(例:下肢装具、装具、副子)、義肢(例:義足と義手)、移動補助具(例:松葉杖、手動三輪車、車いす)を東ネパールの16郡に住む障害のある人に提供している。CBRスタッフ、療法士、工房の技術者は皆、障害のある人の生活の質を高めるために一致協力して働いている。

整形外科工房のおかげで助かった1人にチャンデシュワルがいる。彼は怪我で左脚を切断するまで一生懸命力車引きとして働いていた。彼は、もはや力車引きとして働けなくなったので収入がなくなり、治療費を払わなければならなかったので貯金を失った。村で活動していたCBRBチームはチャンデシュワルに気づき、彼に義足を与えた。また、義足でしっかりと歩き、力車を再びこぐためのリハビリテーションを提供した。チャンデシュワルは現在、ビラートナガルの混雑した通りで力車をこぎ、それなりの生活をしている。

チャンデシュワルのような成功例を見て、CBRBの代表は次のように言っている。「私たちは長年、CBRを実施してきたが、質の良い支援機器を提供し始めてから、我々の活動はさらに効果的になった。そのおかげで我々の信頼性は増し、今では地域に非常に受け入れてもらっている」

目標

障害のある人が家庭、職場、地域生活への参加を可能にする、良質で適切な支援機器を入手することができる。

CBRの役割

CBRの役割は障害のある人や家族と協力し、支援機器に関する彼らのニーズを判断し、支援機器の利用を促進し、必要なときに支援機器のメンテナンス、修理、交換を保証することである。

望ましい成果

  • CBRスタッフが、支援機器に精通する。この中には、入手可能な支援機器のタイプ、その機能と対象となる利用者、基本的な製作法、地域での入手と特別な支援機器の照会方法などの知識が含まれる。
  • 障害のある人と家族が支援機器に精通し、情報に基づいて支援機器の入手と使用の決定をする。
  • 支援機器の適切な使用と管理ができるよう障害のある人と家族に指導、教育、フォローアップを提供する。
  • 障害のある人と家族を含む地域住民が基本的な支援機器を作成でき、簡単な修理と管理ができる。
  • 不十分な情報、財政的制約、都市部のみでのサービス提供など、支援機器の入手を妨げる障壁が減少する。
  • 支援機器が必要とされるどのような場所でも、それが使えるように環境要因が対処される。

主要概念

一般的な支援機器のタイプ

支援機器はシンプルで低技術のものから(例:歩行用杖、介護用コップ)複雑で高度な技術を駆使したもの(例:特殊コンピューターソフト・ハードウェア、電動車いす)と幅がある。さまざまな種類の中で多種多様な支援機器を検討することは有用である。

移動補助具

移動補助具は人の歩行や移動を助け、以下のようなものが含まれる。

  • 車いす
  • 手動三輪車
  • 松葉杖
  • 歩行杖・ステッキ
  • 固定型歩行器・キャスター付歩行器

移動補助具は使用者のニーズに対応するために特別な機能が付加されることもある。例えば、脳性麻痺のある人は、適切な座位姿勢を確実に維持できるように体幹・頭部保持装置付車いすを必要とする場合がある。世界保健機構(WHO:World Health Organization)のガイドラインProvision of manual wheelchairs in less resourced settings (35)は、車いすの設計、製造、配布に関わる人には有効な資料である。

姿勢保持装置

身体機能に障害がある人は、機能的活動のための臥位、立位、座位姿勢の維持にしばしば困難を感じ、不良肢位を原因とする変形の危険にさらされている。以下の補助具は、このような問題を克服するために役に立つであろう。

  • ウエッジ
  • 椅子(コーナーチェア・座位保持装置)
  • 立位保持装置

義肢装具、装具および整形靴

これらは通常、身体の一部と置き換わるか、または支持、矯正をする特注の機器である。これらはトレーニングを受けた義肢装具士がいる工房またはセンターで設計、製造、調整される。以下のようなものが含まれる。

  • 義肢、例えば義足、義手
  • 装具、例えば、体幹装具、ハンドスプリント、軟性装具、キャリパー
  • 整形靴

日常生活用具

日常生活用具は障害のある人が日常生活活動(例:食事、入浴、更衣、排泄、家事)をこなせるようにする。このような道具はたくさんあり、以下のようなものが含まれる。

  • 介護用フォーク、スプーン、コップ
  • シャワーチェアーとシャワースツール
  • 便座と洋式トイレ用フレーム
  • ポータブルトイレ
  • リーチャー

視覚補助具

弱視と全盲は、重要な日常生活活動の実施能力に大きな影響を及ぼす。さまざまな補助具(簡単なものから複雑なものまで)が社会参加と自立を最大限にするために利用される。以下のようなものが含まれる。

  • 大活字本
  • 拡大鏡
  • 眼鏡
  • 白杖
  • 点字
  • オーディオ装置(ラジオ、オーディオブック、携帯電話)
  • スクリーンリーダー 例:JAWS(Job Access with Speech)はコンピューター画面読み上げソフトウェアである。

聴覚補助具

難聴はコミュニケーション能力や他者との交流に影響を及ぼし、発話と言語などさまざまな分野の発達に影響し、教育と就業の機会を制限し、結果として社会的差別や孤立につながる可能性がある。補助具には以下のものが含まれる。

  • 補聴器
  • テレビ視聴用ヘッドホン
  • 電話音量増幅器
  • テレタイプライター・聴覚障害者用通信機器
  • 屋内信号装置 例:ドアチャイムを光で知らせる装置

BOX32 パプアニューギニア

クラスで1番

アンナはパプアニューギニアの東セピック州に住む母親である。娘コリスは聴覚障害をもって生まれた。アンナは娘を学校に行かせることを固く心に決め、全国NGOのカラン障害者サービス(Callan Services for Disabled Persons)にトレーニングされたCBRワーカーを通じて、アンナは聴覚障害児の養護学校を知るようになった。学校に行く前に、カラン障害者サービスは補聴器の入手を手配した。コリスの耳の型が取られ、補聴器調整の準備ができてから、コリスはポートモレスビーの言語聴覚士に送られた。コリスは学校に行き始め、手話を学んだ。補聴器と先生たちのおかげで、コリスはまもなくクラスで1番の生徒の1人になった。

コミュニケーション補助具

拡大・代替コミュニケーション補助具は言葉の理解や発話に困難がある人を支援する。これにより発話が補われたり(拡大)、発話の代わりとなる(代替)。補助具は以下のようなものを含む。

  • 絵、シンボルマーク、文字のあるコミュニケーションボード
  • リクエストカード
  • 音声話出力装置
  • 特殊機器とプログラムを搭載したコンピューター

認知補助具

認知は情報を理解し処理する能力である。脳の精神機能のことをいい、記憶やプランニング、問題解決能力などである。脳損傷、知的障害、認知症、精神疾患は個人の認知機能に影響する多くの状態の1つである。以下の補助具は重要な仕事や行事の記憶、時間管理、活動の準備を補助するものである。

  • リスト
  • 日記
  • カレンダー
  • スケジュール帳
  • 電子機器、例えば、携帯電話、ポケットベル、電子手帳

支援機器の選択

適正技術

多くの種類の技術は農村や遠隔地、低所得国には適さない。しかし、「適正技術」は地域と個人に影響を及ぼす環境的、文化的、社会的、経済的要素を考慮して設計されている。適正技術は人々のニーズを満たし、その土地の技術、道具、材料を使用し、簡便で、効果的であり、買いやすく、ユーザーに受け入れられやすい。支援機器はこれらの基準を確実に満たすように慎重に設計、製造、選択された技術である。

BOX33 インド

同じサンダルを履いて

インドのアーンドラ・プラデーシュ州で行われたアッシジハンセン病CBRプログラムでは、足部の感覚を失い足部潰瘍の危険があるハンセン病の人に黒いマイクロセルラーゴム製のサンダルを提供した。しかしサンダルをもらった多くの人たちはサンダルを履かないことが明らかになった。彼らと話をしてわかったことは、そのサンダルを履くことによって彼らがスティグマにさらされるということである。その地域では、黒サンダルを履いているのは、ハンセン病の人だけだと容易に識別できてしまうたのである。そのためプログラムは、地域の市場で手に入るサンダルをハンセン病の人のニーズに合うように調整した。他の人のサンダルとほとんど違いがわからなくなったので、ハンセン病の人は、新しいサンダルを履くようになった。

評価

支援機器は使用者のニーズを確実に満たすために、注意深く選択し、しばしば特別に製作し調整することが必要である。不適切な選択と設計は、欲求不満、不快感、2次的疾患などの問題につながりかねない。例えば、大規模に寄贈車いすや中古車いすの支給を一般的に行っている国がある。これは良い面もある一方で、同時に利用者に害を及ぼす危険もはらんでいる。一例として、脊髄損傷の人にクッションを付けずに車いすを支給することは、生命を脅かしかねない褥創を引き起こす可能性がある(保健:原因の予防参照)。

支援機器が利用者のニーズを確実に満たすために、家庭、学校、職場、地域の環境下の包括的評価が必要不可欠である。包括的評価には、病歴、現在の機能のまとめ、利用者のゴール、既存の支援機器の評価、身体機能の評価が含まれる。評価の方法は可能な限り多分野に渡るべきで、障害のある当事者、その家族、療法士、技術者、教師、CBRスタッフなどできるだけ幅広い分野の人が参加した方が良い。

支援機器の使用

バリアフリー環境

多くの人が異なる環境下で支援機器を使うので、利用者が最大限の機能と自立を達成するためにすべての環境が確実にバリアフリーであることが大切である。例えば、車いすを使用している若い女性は、車いすで家への出入り、家の中での自由な移動、重要な場所(例:トイレ)へ行くことができ、地域内の移動や通勤ができなければならない。

物理的環境の適合や改造は、段差へのスロープの設置、間口の拡張、移動スペース確保のための家具の配置換えを含む。支援機器の使用に影響する他の環境要素、例えば周囲の意識や支援制度を考慮することも重要である。例えば、話さずにコミュニケーションボードを使う少年は家と学校の両方でボードが必要となる。したがって、家族や先生、友達が前向きで協力的であり、さらに少年と一緒に機器を使うことができることが大切である。

環境修正を、特に地域で考えると、ユニバーサルデザインが役に立つ。ユニバーサルデザインは、障害のある人もない人も、あらゆる人が利用できるように設計された製品、環境、プログラム、サービスである(2)

BOX34 ベトナム

地域の橋渡し

ベトナムのタイビン省のある村でCBRボランティアが地域の橋を改善するよう村人に働きかけた結果、車いす使用者も他の人と同じように快適に橋を渡れるようになった。

推奨される活動

CBR人材をトレーニングする

CBR人材には、適切な情報、照会、教育が確実に提供できるようになるための支援機器に関するトレーニングが必要である。トレーニングは支援機器に特定したものか、リハビリテーションコースの一部として行われる。CBR人材には次のような知識が必要である。

  • 一般的な支援機器。
  • 支援機器の目的と機能。
  • どの基本的な機器が地元で手に入るか。例:松葉杖
  • どこで特別な機器が入手可能か。例:義肢、補聴器
  • 特別な機器を入手するための照会制度。
  • 支援機器を購入することができない人のための資金調達制度。

実習も不可欠であり、特に農村や遠隔地で働くCBR人材にとっては、支援機器の基本的な製作でき、機器を必要とする人と直接働くための技術と自信が向上するようになることが重要である。例えば、CBR人材は、次のような技術を必要とする。

  • バランス能力の乏しい子どもがしっかり体を起こして座れるようにストラップ付木製椅子の作り方を家族に教える。
  • 自宅での歩行練習用の平行棒の作り方を家族に教える。
  • 脳卒中から回復した人の歩行補助用の簡単な杖の作り方を家族に教える。
  • 脳性麻痺で、喋れず、手の協調性がない子どもに、目を使った絵付コミュニケーションボードの使い方を教える。
  • 視覚障害者に白杖の使い方を教える。

BOX35 インドネシア

必要とされる情報

インドネシア、南スラウェシ州のCBRプログラムでは、支援機器の提供と修理ができる州内の主なサービス提供者を載せた支援機器支給リストを用意した。このリストはCBRスタッフ全員に配布され、村の障害のある人が常に確実に正確な情報が得られるようにした。

個人と家族の能力開発

CBRスタッフは、以下の状態を成し遂げるために障害のある人と家族と密接に協力する必要がある。

  • 障害のある人と家族がさまざまな種類の支援機器を知り、それらがどのように自立や社会参加の達成に役に立つか理解している。
  • 障害のある人と家族が支援機器の選択と設計の決定に参加する。彼らが支援機器を実際に見て、試す機会を提供することは、情報に基づいた決定をするために役に立つ。
  • 障害のある人と家族が自分の支援機器を適切かつ安全に使用することができ、長期間、確実に使用するために修理とメンテナンスができる。
  • 障害のある人と家族は照会機関に自分が経験した問題をフィードバックすることができ、支援機器の調整や交換が可能である。

この保健コンポーネントでは、自助グループがメンバーの有益な情報や技能、経験を共有できるという事実を強調している。リハビリテーションワーカーの活用が制限されている場合、自助グループは特に有効となる。自助グループはメンバーに対して、支援機器の取り扱いやメンテナンスについて教育することで、新しく入手した支援機器に慣れさせるためのサポートができ、2次的合併症予防や最善の機能の獲得の仕方など自己管理についてのアドバイスを提供することができる。

地元職人の養成

地方在住の人が支援機器の修理のために都市まで出かけるというのは現実的ではない。多くの人は問題が発生すると支援機器の使用を中止してしまう。装具のストラップやねじ、リベットの交換など、装具、義肢、車いすのような支援機器の簡易な修理ができるように地元の職人をトレーニングすることはできる。CBRプログラムは地元職人を把握し、技術者と協力してこのトレーニングを促進することができる。

杖、松葉杖、歩行器、立位補助具、基本的な座位保持具のような支援機器も、地元で入手できる材料を使って簡単に製作できるので、地元の職人も製作可能である。CBRプログラムはこのような支援機器の製作に関心のある職人を見つけ、トレーニングすることができる。

BOX36 モンゴル

支援機器製作の習得

2000年、モンゴルの国立CBRプログラムは、ウランバートルの国立整形外科研究所で働くスタッフにトレーニングコースを企画し、地元の材料と適正技術による簡便な副子、座位保持具、移動補助具の作り方を指導した。現在では、モンゴルの他の県でCBRプログラムが始まるときはいつも、2名の地元職人が国立整形外科研究所に派遣され、トレーニングを受ける。

支援機器入手の促進

支援機器の入手機会は、不十分な情報、貧困、距離、都市部のみでのサービスが原因で制限される場合がある。CBRスタッフは、以下の方法で補助具の入手を円滑にするために障害のある人や家族と密接に働く必要がある。

  • 地元、地域、国レベルで基本的な支援機器から特注品まで幅広い支援機器を扱う製造者と供給者を知る。
  • 各サービス提供者について、照会システム、費用と手続などの詳細な情報をまとめておく。例えば、登録手続、評価方法、採寸とフィッティングに必要な訪問回数、製造期間など。
  • この情報が適切な形式で利用できるようにし、障害のある人とその家族に確実に周知する。
  • 支援機器の費用を負担できない人のための資金調達法を知っておく。CBRプログラムは現存の政府またはNGOの事業計画の利用を促したり、自分たちで資金を集めたり、地域に寄付を働きかけることができる。
  • 障害者手帳を手に入れるための適切な登録手続を支援する。多くの国では障害者手帳を保持していると、無料で支援機器が入手できる。
  • 移動施設のように地方へのサービス提供を検討するために照会センター、地域の行政当局、その他の団体と提携する。
  • 照会センターと事前に確実な調整を行ってから、農村や遠隔地の小グループが照会センターまで行くための移動手段を提供する。
  • 農村や遠隔地に住む人のために、家庭または地域での修理サービスを提供する。例えば、支援機器の修理が必要な人のために、移動サービスを確立したり、修理のために定期的に集まれる場所を地域に設置する。

BOX37 レバノン

支援機器の入手

レバノンの国立障害者団体が車いすや杖、歩行器、トイレットチェア、整形靴、座位保持装置などの支援機器の製造部門を始めた。また、流通、修理、メンテナンスを行うワークショップを国内に5カ所つくり支援機器の利用を促している。製造部門とワークショップでは、障害のある人たちが働いている。またこの団体は支援機器のための十分な国の予算を確保した。CBRプログラムは、今では支援機器を必要とする人に、これらのセンターを照会することができる。

小規模ワークショップの設立

照会制度が利用できないときや、費用や距離の問題が克服できないとき、CBRプログラムは地域でのニーズを満たすために小規模ワークショップの設立や支援を検討することができる。簡易な支援機器は地元で研修を受けた人が製作できる。『CBRマニュアル』(32)とDisabled village children(33)は地元の材料で支援機器を作るための情報を提供している。

BOX38 ギニアビザウ

地元の解決策を見出す

ギニアビザウのクムーラ病院には支援機器の小さなワークショップがあり、障害のある2人が整形外科技術者としてここで働くためにトレーニングを受けた。適した材料が見つからないことはよくあり、輸入品は大変高価なので、技術者たちは他のワークショップから設計に関する地元の解決策を見つけようと努力している。例えば、下垂足の人のために革とプラスチックを使用した副子を製作し始めた。

障害のある人を支援機器が製作できるようにトレーニングすることもできる。こうすることにより、彼らは収入を得、地域の積極的な貢献者として認識されるようになる。これがさらに地域社会のネットワークの発展につながり、最終的にはエンパワメントへつながっていく。

BOX39 インド

小規模事業の開始

インドのバンガロールでは、いくつかのCBRプログラムが障害のある10人の若い女性グループを把握した。彼らは全員、貧しく、教育を受けておらず、助成であり、障害をもっているという理由で不利な立場におかれ、差別を受けており、家族や地域の厄介者と見られていた。1998年、この10人の女性たちが支援機器の技術者としてトレーニングを受け、商業的なワークショップを開くために、あるCBRプログラムから融資を受けた。女性障害者による支援機器製作所(Rehabilitation Aids Workshop by Women with Disabilities)を始めたときからこの女性たちの生活は一変した。ワークショップは2年目から利益を出すようになり、4年目の終わりにはすべてのローンを返済した。彼女たちは、支援機器や医療品を製造する大会社の代理店になり、また市内の民間病院と連携を築くことで事業を拡大した。今では、良い収入を稼ぎ、良い生活をし、地域への活発な貢献者と見られている。彼女たちは結婚し、家族にとっての財産となり、障害をもつ多くの人のロールモデルとなっている。

ネットワークと協力

多様な支援機器の提供ができるサービスを始められない国もある。これは政府の優先度や限られたリソース、少ない人口が原因である場合がある。しかし、多くの支援機器は近隣諸国から入手可能で、高所得国から輸入するよりも安く簡単に入手できる。CBRプログラムはどのようなリソースが近隣諸国から入手できるかを判断し、可能であればその国と協働する必要がある。さらにCBRプログラムは支援機器の製造や提供に積極的に取り組み、持続的なサービス提供の発展を視野に入れた国際および国内NGOと強く連携する必要がある。

環境の障壁への対処

家庭、学校、職場や地域の環境には、支援機器の使用を困難にする障壁が多く見られる。CBRスタッフには、本人や家族、コミュニティや地方当局と協力して障壁を特定し対処するために、これらの障壁に対する実用的な知識が求められる。


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Promoting independence following a stroke: a guide for therapists and professionals working in primary health care. Geneva, World Health Organization, 1999 (www.who.int/disabilities/publications/care/en/, accessed 30 May 2010).

Promoting the development of infants and young children with spina bifida and hydrocephalus: a guide for mid-level rehabilitation workers. Geneva, World Health Organization, 1996 (www.who.int/disabilities/publications/care/en/, accessed 30 May 2010).

Promoting the development of young children with cerebral palsy: a guide for mid-level rehabilitation workers. Geneva, World Health Organization, 1993 (www.who.int/disabilities/publications/care/en/, accessed 30 May 2010).

Rehabilitation for persons with traumatic brain injuries. Geneva, World Health Organization, 2004 (www.who.int/disabilities/publications/care/en/, accessed 30 May 2010).

Where there is no doctor. Berkeley, CA, Hesperian Foundation, 1992 (www.hesperian.org/publications_download.php, accessed 30 May 2010).

The relationship between prosthetics and orthotics services and community based rehabilitation (CBR): a joint ISPO/WHO statement. Geneva, WHO/International Society for Prosthetics and Orthotics (ISPO), 2003 (www.who.int/disabilities/technology/po_services_cbr.pdf, accessed 30 May 2010).