音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

CBRガイドライン・補足

CBRと人道上の危機

はじめに

人道上の危機の状況とは、武力紛争や自然災害、疫病や飢餓といった出来事、または一連の出来事が、コミュニティやその他の大きな人々の集団の保健、安全、治安やウェルビーイングに影響を及ぼすことである。被害を受けたコミュニティは、自分たちでは問題解決ができなくなり、外部の支援を必要とするようになる(1)

人道上の危機は負傷、死亡など人々に大きな影響を与える。また、被災者たちの食料、水、シェルター、衛生などの基本的なニーズを満たす能力を低下させる。さらに、例えばインフラ、収穫、家屋が損なわれ、被災者の失業も増えるなどの経済的な打撃もある。(2)。これらの人道上の危機は障害分野や地域に根ざしたリハビリテーション(CBR:Community-based rehabilitation)と密接な関係にある。なぜなら、障害のある人々は不釣り合いなほどに影響を受ける可能性があるし、災害が新たに支援や援助を必要とする障害のある人を生み出すこともあるからだ(3)

人道的分野においては過去数年の間に、その活動や対応をより効果的、効率的にするべく多くの変革が見られた。補足冊子のこのセクションは、これらの変革に焦点を当て、人道的活動の分野におけるCBRプログラムの役割を考察する。また、障害のある人やその家族の人道的活動へのインクルージョンおよび参加を保証するために、何をすれば良いかを提案する。

BOX21 スリランカ

万人にアクセスを(Access for All)

「万人にアクセスを(Access for All)」のキャンペーンは2004年12月26日、大津波がスリランカの沿岸の大部分を襲った直後に開始された。このキャンペーンは、被災地の18の障害者団体が属する国レベルの共同組織体ジョイントフロント(Disability Organizations Joint Front)、脊椎損傷協会、モティベーション(Motivation)、CBM、ジョン・グルームス(John Grooms)、ハンディキャップ・インターナショナル(Handicap International)とスリランカ保健省の青少年・高齢者・障害者・難民ユニット(Youth Elderly Disabled and Displaced Persons Unit)によって設立された。

このキャンペーンの目的は、津波被災後の救援と復旧・復興の活動に、障害のある人がインクルージョンされ、そのニーズが組み込まれるよう促すことにあった。特に、アクセシブルなスリランカの再建、すなわち公共の建物、交通手段、職場、サービスやインフラなどがすべて障害のある人にアクセシブルであることが重視された。津波以前のスリランカでは、障害のある人のアクセスは容易ではなかった。しかし、津波後は、大規模な再建が必要となり、これは障害のある人のニーズに対応するための良い機会となった。

「万人にアクセスを」キャンペーン委員会は、津波の2週間後には、政府当局、国際的な非政府組織(NGO:Non-Governmental Organization)、国内NGOや公的部門を含む、復興と再建の担当者たちを諸会議に招待した。これらの会議の目的は、参加者全員に障害のある人のアクセシビリティのニーズ(アクセシブルな配給に関するものと、一時的な避難所のアクセシビリティのニーズ)についての見識を深めてもらうことであった。また、アクセシビリティに関する技術的なアドバイスやリソース、支援を提供することでもあった。

このキャンペーンのおかげで、再建や復旧に関わっている組織の中から障害のある人の問題を受け入れ、それに対応する意向を示すものが多く見られた。アクセシビリティに関する規則も作られ、新たに建てられる建造物は障害のある人のアクセスを考慮すること、そして、バリアのある建物は規定された一定の期間の間にバリアフリーにすることなどが決められた。この「万人にアクセスを」の動きはスリランカではその後も継続され、現時点では、障害のある人の権利と、教育や雇用の分野での機会均等の促進を通してさらに幅広い分野における障害のある人のインクルージョンに重点的に取り組んでいる。

出典:(4)

目標

障害のある人とその家族が、災害への備え、緊急時の対策、災害後の再建など、人道的な支援活動全般に参加し、組み込まれている。

CBRの役割

CBRの役割は、まず(1)障害のある人とその家族、コミュニティに対して、起こりうる災害に備えての準備を支援すること、(2)人道的な対応や再建活動への障害のある人のインクルージョンを保証すること、(3)障害のある人とその家族を人道的な手段を通じたサービスや支援活動に結びつけることである。

望ましい成果

  • 障害のある人とその家族が、人道上の危機に際し対応できるよう備えができている。
  • 人道的な活動の際には、障害のある人とその家族の存在が認識され、彼らのニーズに対応する。
  • 人道的支援や復興活動計画やその実施に障害のある人が含まれている。
  • 人道上の危機のあとに続いて再建されるインフラは、障害のある人にも物理的にアクセシブルである。
  • 被災後に再実施されたり、策定されるサービスや支援は、障害のある人にもアクセシブルであり、障害のある人のニーズに対応している。

主要概念

障害と人道上の危機

障害のある人は人道上の危機において、もっとも危機にさらされているグループの1つである(5)。障害のある人は以下の要因のためにより脆弱な状況に置かれる。

排除-コミュニティや人道的支援や介入を提供することに関わっている諸機関の不適切な政策や慣行によって障害のある人が排除される結果となる場合がある(6)(7)

啓発不足-災害や危機に関する情報、まもなく災害がやってくることを知らせる警告、災害中・災害後の行動に関するアドバイスなどは、障害のある人が認知できるようなアクセシブルな情報として提供されていない。そのため、障害のある人は、警告の信号を自分の目で見たり、「何をすべきなのか、どこに行けば良いのか、どこに行けば援助を受けることができるのか」といったことについて理解したり、指示に従うことが難しいことがある(7)

社会的な支援ネットワークの崩壊-障害のある人にとって、社会的なネットワークは特に大切である。障害のある人は援助や支援に関して、家族や友人たち、近所の人たちに頼る傾向が強い(社会:パーソナルアシスタンス参照)。災害の際には、これらのネットワークは影響を受けることが多い。つまり、災害の際には、障害のある人は介助者から引き離されたり、介助者自身が怪我をしたり、死亡する可能性もある。

物理的なバリア-災害時には物理的な環境が変わってしまったり、既存のバリアがさらに悪化したり、障害のある人にとって新しいバリアが作られてしまうことがよく起きる。多くの障害のある人たちは義肢、松葉杖、補聴器、眼鏡といった支援機器を失う可能性がある(4)。その結果、障害のある人は、危機的状況の中で支援や補助を求めるのにより多くの困難に直面することとなる。つまり、障害のある人は、食料、水、シェルター、トイレや保健ケアサービスにアクセスできなくなることがある(4)

人道的活動における障害のある人のインクルージョン

災害の際、障害のある人が不釣り合いなまでに被害を受ける証拠が示されているにもかかわらず、彼らは人道的支援活動から排除されている (8)(9)。「障害者権利条約」の11条で焦点を当てられているように、障害の問題は、すべての人道的支援活動において適切に対応されるべきである。

11条には、「締約国は、国際法(国際人道法及び国際人権法を含む。)に基づく自国の義務に従い、危険な状況(武力紛争、人道上の緊急事態及び自然災害の発生を含む。)において障害者の保護及び安全を確保するための全ての必要な措置をとる。」と記載されている (10)

被災者の参加は人道上の危機時における大切な側面でもある(5)。ここで大切なのは、障害のある人や彼らを代表する団体が単に緊急支援の対象者として受身に参加するのではなく、人道的な活動と対応におけるパートナーとしても参加することである。これは、障害のある人が支援活動の事前調査、計画、実施、モニタリング、支援後の評価に関与することを意味する。

クラスターアプローチ

2005年より災害に対する国際的な人道支援活動の効率性を向上させようとする努力が始まった。全体的な目的は、総合的な、ニーズに即した救済と保護がもっとも効率的にかつ素早く対象者に届くようにすることである。人道的な対策分野における最大の変革の1つは、クラスターアプローチの策定と実施である。

このクラスターアプローチは、保健、教育、緊急のシェルターといった分野別に分かれている人道援助を、災害時のそれぞれの活動の役割と責任を明確に定義することによって、各分野内、また分野間の活動の全体の調整を強化することである。このクラスターアプローチの目的は、国際的な人道支援コミュニティをさらに組織化し、責任あるものにし、また専門的にすることで、政府、地方当局や地域の市民団体の良きパートナーとなるようにすることである。

国際的には、11のクラスター(集合体)が存在する(表1を参照)。それぞれのクラスターは、1つの機関の指揮下にある。例としては、地球規模の保健クラスターは、世界保健機関(WHO:World Health Organization)が率いている。WHOは、この分野の基準や政策を作ったり、対応能力を構築したり、また、活動の支援を提供したりする。個々のクラスターの中にも多くの諸機関があり、これらは人道上の危機に際して、協調して対応できるよう連携する。例えば、地球規模の保健分野のクラスターは、ユニセフ(UNICEF:United Nations Children’s Fund)、国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC:International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies)、ハンディキャップ・インターナショナルなど30以上の組織からなる。

国家レベルにおいては、人道上の危機状況にあっては、これらのクラスターの一部、あるいは全部が活動を開始する可能性がある。ただし、クラスターは別名、例えばセクターなどと呼ばれる可能性があり、異なる機関によって率いられる可能性もある。国家レベルの構成状況も、ドナーも含む被災地での支援やサービス提供をするすべての当事者が参加できるような仕組みとなっている。国家レベルでは、各クラスターは、以下の事項が可能になるようインクルーシブで効率的な調整を保証することに責任をもつ必要がある。

  • ニーズのアセスメントと分析
  • 緊急時に対する備え
  • 計画と戦略の策定
  • 基準の採用
  • モニタリングと報告
  • アドボカシーとリソース動員
  • トレーニングと能力開発

クラスターアプローチは、人道上の危機状況を経験している地域でCBRプログラムを提供する際に重要である。CBRは、障害のある人やその家族にもインクルーシブでアクセシブルであることを保証するような保健、教育、生計、社会など多くのさまざまな開発分野に焦点を当てている。CBRプログラムの役割は人道上の危機の際も変わらない。しかし、国家、地域・コミュニティレベルにおいても、障害のある人とその家族のニーズに適切に対応することを保証できるよう、CBRプログラムは個々の人道的クラスター・セクターと協力して活動することに焦点を当てる必要がある。また、クラスターアプローチは、災害時において障害のある人を支援したいと思っている時に、資金や技術的なリソースなど、追加のリソースへのアクセス機会をCBRプログラムに提供してくれる。

表1

クラスター・領域 対応する組織
技術的な分野  
保健クラスター 世界保健機関
栄養クラスター ユニセフ
水、衛生クラスター(WASH:Water, sanitation, and hygiene cluster) ユニセフ
緊急シェルターと非食料クラスター 紛争に関しては国難民高等弁務官事務所(UNHCR:Office of the United Nations High Commissioner for Refugees)、災害においては国際赤十字・赤新月社連盟
教育クラスター ユニセフとセーブ・ザ・チルドレン
農業クラスター 国連食糧農業機関(FAO:Food and Agriculture Organization of the United Nations)
横断的領域  
キャンプ調整及び運営クラスター 国連難民高等弁務官事務所と国際移住機関(IOM:International Organization for Migration)
保護クラスター 国連難民高等弁務官事務所
早期復旧クラスター 国連開発計画(UNDP:United Nations Development Programme)
一般的なサービス分野  
輸送クラスター 国連世界食糧計画(WFP:World Food Programme)
緊急通信クラスター 国連人道問題調整事務所(OCHA:Office for the Coordination of Humanitarian Affairs)、ユニセフ、国連世界食糧計画

災害の緊急支援から長期的な開発への移行

人道上の危機の際、多くの外部の支援団体が殺到するので、結果的に障害のある人の中には、実際以前よりも良いサービスを受けることができたように思える人たちもいる(7)。しかし、障害は長期的な開発課題である。したがって、外部の団体はコミュニティと協力して、外部団体が立ち去った後も、長期的、持続的な開発を継続できるようにコミュニティの能力を確実に開発することが重要である。CBRプログラムはコミュニティを基盤としたインクルーシブな開発戦略であるので、この点に関して重要な役割を果たす。

推奨される活動

以下の活動は、大きく分けて、災害への備え活動(起こりうる災害の影響を抑えるために事前に講じる方策や活動)、緊急の対応(災害の際に、生命の保護や被災者の基本的な生存のためのニーズを満たすための支援活動)と復興活動(生活状況を被災前の状態に戻したり、改善したりするための活動)の3つの分野を中心に組み立てられている。

災害への備え活動

障害のある人やその家族やコミュニティが、自然災害のような起こりうる危機的状況に備えるために、CBRプログラムが実施できる活動は数多い。以下のものがそれに含まれる。

  • 障害のある人を準備活動に組み込むことの重要性について啓発する。地元の役人や、災害対策委員会、緊急支援担当者やコミュニティの人々を対象に障害に関する意識向上研修を実施する。
  • 障害のある人を対象に、コミュニティでの災害に対応するための事前の準備計画のプロセスを理解させ、災害対策委員会などの活動にも参加するよう促す。
  • コミュニティ内の障害のある人を把握・登録する。その際、どこに住んでいて、災害が起こった場合どのような支援が必要かも記録する。
  • 災害時にはしばしば情報が失われるので、上記のデータベースをいくつかの異なった場所に保存する(例えば本部や協力団体事務所のような場所に保存)。
  • 障害のある人たちにコミュニティで行われる防災活動の情報を提供し、緊急避難訓練活動などに参加するよう促す。
  • 関係当事者に災害対策を障害のある人にもアクセシブルにするようにアドバイスする。例としては、緊急警報システムや避難方法、避難所などをアクセシブルにするように勧告する。
  • 障害のある人やその家族が家の中でも十分な備えをするよう促す。
    • 緊急の際にも支援をしてくれる信頼できる人を探し出す。
    • 薬(例えばてんかんをもった人のための薬)や機器・用具(脊椎損傷者のための尿バッグや支援機器)の予備を用意しておく。
    • 個々の障害のある人のニーズ、例えば薬や情報伝達のニーズについて更新された最新の情報を記録しておく。
    • 避難の手順を練習しておく、つまり、避難所までの避難路を利用する練習をしておく。

緊急対応を障害のある人にインクルーシブなものにする

コミュニティの現状を把握する

  • 障害のある人のデータベースを更新し、緊急対応の関係当事者が入手できるようにする。
  • 災害前にコミュニティに存在していたサービスが利用可能かどうか見極める。

新しい人道支援関係者との協力体制を構築する

  • コミュニティに入ってきた新しい人道支援関係者を特定し、関係を結ぶ。
  • これらの関係者の役割と責任、また、彼らがどのような援助やリソースを提供できるのか見極めておく。
  • 現場の状況と特に障害のある人に的を絞った現状に関する情報を提供する。
  • 人道支援関係者がコミュニティ、特に障害のある人のニーズを把握し、分析するのを支援する。
  • 人道支援関係者がコミュニティ、特に障害のある人の能力を把握し、分析するのを支援する。
  • 彼らにCBRプログラムの能力、例えばインフラ関係、人材、パートナーシップ、活動内容などの情報を提供する。
  • 障害のある人をサービス・支援をつなぎやすくするために紹会メカニズムを作成する。
  • 人道支援関係者とCBR活動の可能性について話し合い、適切なクラスターやセクターを通してリソースにアクセスするための提案書を彼らに提出する。

障害のある人とその家族たちに確実に情報が届くようにする

  • 障害のある人のための支援活動を行い、彼らが現状に関する情報を把握し、最新の情報を得られていることを確認する。
  • もし可能なら、コミュニティの中に情報を提供するアクセシブルな場を設け、障害のある人とその家族に利用可能な実施中の救援活動や支援の情報を提供する。
  • 障害のある人自身が重要な情報やメッセージの発信、伝達に参加できるよう保証する。
  • すべての情報や伝達手段がアクセシブルであるよう保証する。

個別のクラスター・セクターに関する推奨される活動

CBRプログラムは、障害のある人やその家族とともに、地域レベル、国レベル、国際レベルにおける関係者が、彼らのニーズを考慮し、彼らが災害支援活動の計画・実施に包摂されるようにすることができる。それぞれのクラスター・セクターに適切な推奨されるCBRプログラムの活動には、以下のものが含まれる。

保健クラスター・セクター

  • どのような人たちが保健サービス(例えば、トラウマへのケアや基本的な応急措置)を必要とするのか優先順位をつけ、適切なサービスを調べる。
  • 障害のある人がパーソナルアシスタンスを必要とする際は、医療サービス機関に同行する。
  • 紛失したり壊れたりした支援機器を取り替える手はずを整え、災害により怪我や障害を負うことになった人には新しい機器を提供する。
  • 怪我人や障害のある人に経過観察、基本的ケア、リハビリテーションを提供する。

栄養と輸送クラスター・セクター

  • 食料の配給が障害のある人の手元に届くようにボランティアを配置する。
  • 人道支援関係者に食料配給が障害のある人にアクセシブルであるようにするためのアドバイスや支援を提供する。アドバイスとしては、例えば配給所で別の列を用意すること、障害のある人用の食料配給所を設けること、配給所に仮設スロープをつけるなど。
  • 特別なニーズのある障害のある人に合った食料が配給されるように配慮する。例えば、噛んだり、飲み込んだりが難しい人には、潰したりピューレ状にしやすい食物などを配給する。

緊急シェルターや非食料クラスター・セクター

  • 緊急時の一時的な避難所が障害のある人にとってアクセシブルになるよう人道支援関係者にアドバイスや支援を提供する。
  • 毛布、防水シート、公衆衛生用品、衣服、衛生用品に障害のある人がアクセスできるよう、人道支援関係者に適当なアドバイスと支援を提供する。
  • 必要な場合には、障害のある人やその家族に直接物資を持っていく。

WASHクラスター・セクター

  • 仮設の野外トイレやトイレ設備を障害のある人に適したものにするため、人道支援関係者にアドバイスと支援を提供する。
  • 水の供給所、井戸や手動ポンプを障害のある人にとってアクセシブルにするため、人道支援関係者にアドバイスと支援を提供する。
  • 障害のある人やその家族に、いつどこで水や衛生設備が提供されるかの情報を提供する。
  • 水や衛生面に関する疾病の予防についての情報をアクセシブルな形で提供する。

教育クラスター・セクター

  • 教育プログラムが障害児にとってインクルーシブなものであることを保証する。
  • 教師たちや支援活動のリーダーたちが障害児を活動に組み込むように支援する。

保護活動クラスター・セクター

  • 人道支援関係者を対象に、障害と保護に関する問題への意識を向上させる。これらには、障害のある人、特に知的障害のある人や障害をもつ女児や女性に対する暴力、搾取、虐待、差別からの保護に関するものが含まれる。
  • 一時的な緊急避難所で、障害のある人の安全を最大化するようアドバイスや支援を提供する。例えば、安全ではないところには柵を設け、十分明かりをともし、なるべく早く障害のある人を家族や介助者と再会できるようにする。
  • 子どもたちにやさしい場所を見つけ出し、その他の保護対策も立てる。その際、障害児も包摂するように促す。
  • 障害のある人同士の活動や障害のある人の自助グループを作る手助けをする(エンパワメント:自助グループを参照)。
  • 心理社会的な支援の提供をするサービスを特定し、これらが障害のある人やその家族にとってもインクルーシブでアクセシブルであるようにする。

早期復旧・農業・保護クラスター・セクター

  • 被災者がなるべく早く自立して、生計をたてられるよう適当な器具や資本を提供する。

障害のある人が復興段階で生活の質を回復し、改善するために障害のある人を支援する

人道上の危機が落ち着き始めると、次第にインフラが再建され、通常のプロセスやルートを通じてサービスの提供が再開される。この再開発の過程に関する限り、災害は開発への新たな可能性であるともいえる(11)。CBRプログラムもこの機会を逃がさず、再開発の段階で、確実にインクルーシブなコミュニティが「再建」されるようにすべきである。CBRプログラムは、以下の活動をすることが推奨される。

  • 被災(再建)コミュニティの関係者、つまり地域社会の当局や主流の開発団体に障害や障害のある人やその家族のニーズについて継続的に啓蒙する。
  • 再建に関わっている関係者に、家屋、水や衛生関係、学校、公共の建築物、交通機関などのアクセシビリティ問題に関する情報やリソースを提供する。アクセシビリティの最低限の基準、実施面でのガイドライン、優れた実践例、ユニバーサルデザインの概念などは役に立つと思われる。
  • 教育セクターと協力し、障害のある児童が学校に戻れるようにする(教育コンポーネント参照)。
  • 関係者と協力し、障害のある人やその家族が以前のように生計を立てられるようにする、また、必要ならば、新しい生計の道を探す手助けをする(生計コンポーネント参照)。
  • 関係者と協力し、障害のある人やその家族が、家族や友人たちとの人間関係を再建するための社会的な支援が受けられるようにし、コミュニティの活動に参加できるようにする(社会コンポーネント参照)。
  • 被災経験のある障害のある人の自助グループを支援する(エンパワメント:自助グループ参照)。

BOX22

協同組合を通して就業の機会を創り出す

インドネシアの悲惨な地震災害の後、多くの被災者が障害を負ったり、心的外傷後ストレス障害(PTSD:post-traumatic stress disorder)を引き起こしたり、生計の糧を失ったりした。被災者は、団結し、協力してこのような状況を変えようと決めた。CBRプログラムの援助によって、彼らは協同組合を設立した。NGOがこの団体に資金や技術協力を提供した。協同組合は、会員に融資したり、企業に関わっているメンバーにビジネス(例えば、レンガ作り、バッティックの布作りや食べ物売りなど)に関するアドバイスを提供したりした。共同組合はそのコミュニティ内で職業機会を徐々に拡大し、会員の収入を向上させるに至った。


<参考文献>

1. Inter-agency field manual on reproductive health in humanitarian settings. Inter-agency Working Group on Reproductive Health in Crises, 2010 (www.iawg.net/IAFM%202010.pdf, accessed 30 March 2010).

2. Disaster statistics 1991–2005. United Nations International Strategy for Disaster Reduction (ISDR), 2006 (www.unisdr.org/we/inform/disaster-statistics, accessed 12 April 2018).

3. Disasters, disability and rehabilitation. World Health Organization, 2005 (www.who.int/violence_injury_prevention/other_injury/en/disaster_disability.pdf, accessed 30 March 2010).

4. Adapted from: CBM (undated) (www.cbm.org/en/general/CBM_EV_EN_general_article_75271.html, accessed 30 March 2010).

5. Humanitarian charter and minimum standards in disaster response. Sphere Project, 2004 (www.sphereproject.org/handbook/, accessed 12 April 2018).

6. Protecting persons affected by natural disasters – IASC operational guidelines on human rights and natural disasters. Inter-Agency Standing Committee (IASC), 2006 (www.brookings.edu/reports/2006/11_natural_disasters.aspx, accessed 30 March 2010).

7. World disasters report 2007 – Focus on discrimination. International Federation of Red Cross and Red Crescent Societies (IFRC), 2007 (www.ifrc.org/publicat/wdr2007/summaries.asp, accessed 15 June 2010).

8. Disability and early tsunami relief efforts in India, Indonesia and Thailand. Center for International Rehabilitation/International Disability Rights Monitor, 2005 (http://idrmnet.org/pdfs/CIR_IDRM_Asia_05.pdf, accessed 30 March 2010).

9. Kett M et al., for International Disability and Development Consortium. Disability in conflict and emergency situations: focus on tsunami-affected areas. 2005 (www.iddcconsortium.net/joomla/index.php/conflict-and-emergencies/key-resources, accessed 30 March 2010).

10. Convention on the Rights of Persons with Disabilities. New York, United Nations, 2006 (www.un.org/development/desa/disabilities/convention-on-the-rights-of-persons-with-disabilities.html, accessed 12 April 2018).

11. How to include disability issues in disaster management, following floods 2004 in Bangladesh. Handicap International, 2005 (www.handicap-international.fr/documentation-presse, accessed 30 March 2010).

<推奨される文献>

Accessibility for the disabled. A design manual for a barrier free environment. New York, United Nations, 2004b (www.un.org/esa/socdev/enable/designm/, accessed 30 March 2010).

Building an inclusive society. CBM, 2009 (www.cbm.org/en/general/downloads/48197/CBM_Profile_2009.pdf, accessed 30 March 2010).

Disaster preparedness for people with disabilities, American Red Cross (undated) (www.redcross.org/wwwfiles/Documents/pdf/Preparedness/Fast%20Facts/Disaster_Preparedness_for_PwD-English.pdf, accessed 30 March 2010).

Disaster psychological response: handbook for community counsellor trainers. Geneva, Academy for Disaster Management Education Planning and Training (ADEPT), 2005 (www.preventionweb.net/educational/view/7708, accessed 12 April 2018).

E-discussion: disabled and other vulnerable people in natural disasters. Washington, DC, World Bank, 2006 (http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/TOPICS/EXTSOCIALPROTECTION/EXTDISABILITY/0,,contentMDK:20922979~pagePK:210058~piPK:210062~theSitePK:282699,00.html, accessed 30 March 2010).

Guidance note on using the cluster approach to strengthen humanitarian response. Inter-agency Standing Committee (IASC), 2006 (www.humanitarianreform.org/humanitarianreform/Portals/1/Resources%20&%20tools/IASCGUIDANCENOTECLUSTERAPPROACH.pdf, accessed 30 March 2010).

Health cluster guide: a practical guide for country-level implementation of the health cluster. Geneva, World Health Organization, 2009 (www.who.int/health-cluster/resources/publications/hc-guide/en/, accessed 12 April 2018).

Hyogo framework for action 2005–2015. Geneva, International Strategy for Disaster Reduction, 2005 (www.unisdr.org/we/coordinate/hfa, accessed 12 April 2018).

Older people in disasters and humanitarian crises: Guidelines for best practice. HelpAge International, 2005 (www.helpage.org/Resources/Manuals, accessed 30 March 2010).

Older people’s associations in community disaster risk reduction. HelpAge International, 2007 (www.helpage.org/Resources/Manuals, accessed 30 March 2010).

Oxfam GB/Emergency Capacity Building Project. Impact, measurement and accountability in emergencies: the good enough guide. Oxfam, Oxfam GB, 2007 (http://publications.oxfam.org.uk/oxfam/display.asp?isbn=0855985941, accessed 30 March 2010).

Promoting access to the built environment – guidelines. CBM, 2008 (www.cbm.org.au/documents/Be%20Active/Access%20to%20built%20environment%20guidlines%20-%20CBM.pdf, accessed 30 March 2010).

Scherrer V. Disability in emergency: accessing general assistance and addressing specific needs. Voice Out Loud Newsletter, No.5, May 2007 (http://60gp.ovh.net/~ngovoice/documents/VOICE%20out%20loud%205_final.pdf, accessed 30 March 2010).

Scherrer V et al. Towards a disability-inclusive emergency response: saving lives and livelihoods for development. Journal for Disability and International Development, 2006,1:3–21 (www.ineesite.org/toolkit/docs/Journal_for_Disability_MSEE.pdf, accessed 30 March 2010).