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CBRガイドライン・社会コンポーネント

パーソナルアシスタンス

はじめに

障害のある人の中には、家庭やコミュニティでの完全なインクルージョンと参加を促進するためにパーソナルアシスタンスの必要な人もいるであろう。パーソナルアシスタンスは環境因子(例えば、環境がアクセシブルでないときなど)によって必要になることもあろうし、障害のある人が自力で活動や仕事を実行することを妨げる機能障害や機能不全をもつために必要となることもあろう。

パーソナルアシスタンスによって、障害者自身が望むときに起床したり床に就いたりすることが可能になり、食べたいときに食べたいものを食べ、家事をやり遂げ、家庭外の社交行事に参加し、教育にアクセスし、収入を得、そして、家族の世話をするといったことも可能になるであろう。

パーソナルアシスタンスは、例えば家族や友人のような非公式な手段を通して提供されることもあるし、民間の従業員や社会福祉のような公式な手段を通して提供されることもある。低・中所得の環境条件では多くの場合、公式な支援システムの財源は限られている。一方、ブラジル、インド、南アフリカ、そして最近ではバングラデシュなどのように、社会保護計画の開発を進めている国も増えている。こうしたシステムの発展に伴い、障害のある人がパーソナルアシスタンスを利用することを支援するCBRプログラムの機会も拡大されることが期待されている(生計コンポーネント:社会保護参照)。

BOX3

障害者権利条約第19条 自立した生活及び地域社会への包容(2)

この条約の締約国は、全ての障害者が他の者と平等の選択の機会をもって地域社会で生活する平等の権利を有することを認めるものとし、障害者が、この権利を完全に享受し、並びに地域社会に完全に包容され、及び参加することを容易にするための効果的かつ適当な措置をとる。この措置には、次のことを確保することによるものを含む。

(a) 障害者が、他の者との平等を基礎として、居住地を選択し、及びどこで誰と生活するかを選択する機会を有すること並びに特定の生活施設で生活する義務を負わないこと。

(b) 地域社会における生活及び地域社会への包容を支援し、並びに地域社会からの孤立及び隔離を防止するために必要な在宅サービス、居住サービスその他の地域社会支援サービス(個別の支援を含む。)を障害者が利用する機会を有すること。

(c) 一般住民向けの地域社会サービス及び施設が、障害者にとって他の者との平等を基礎として利用可能であり、かつ、障害者のニーズに対応していること。

BOX4 大韓民国

必要に応じた支援

ジェファンは韓国・ソウル出身の13歳の少年である。祖母、姉(または妹)、2人のいとこと同居している。4歳の時に筋ジストロフィーと診断された。9歳になる頃には自力で歩けなくなり、通学できなくなって、抑うつ的になっていた。

キム・ジェファンは13歳の時、初めてCBRプログラムに出会った。そしてプログラムを通し、国立リハビリテーション病院を紹介され、医学的なリハビリテーションとセラピーを利用することができた。同時に、支援技術研究支援センター(ATRAC:Assistive Technology Research and Assistance Centre)から特別な座位保持装置の付いた電動車いすを手に入れた。状態が安定すると、ジェファンは復学を希望した。しかし、パーソナルアシスタンスなしでの復学は困難だった。

国立リハビリテーション病院のソーシャルワーカーが、ある大学のボランティアをジェファンに紹介し、このボランティアがジェファンに小学校のカリキュラムを修了するための支援を提供した。ジェファンはまた、地域の非政府組織(NGO:Non-Governmental Organization)ともつながりをもち、その団体が手配したボランティアが毎週一緒に本を読んだり、絵やスケッチを描くのを手伝ったりした。家庭環境を改善する支援も提供され、車いすでも生活できる家になった。また、ジェファンの祖母を支援するためにもボランティアが定期的に派遣され、掃除などの家事を手伝った。ジェファンはさらに、韓国筋ジストロフィー協会(KMDF:Korea Muscular Dystrophy Foundation)が運営する自助グループのメンバーになった。

ジェファンの状況は、CBRプログラム、国立リハビリテーション病院、KMDF、ATRAC、そして地域のその他のNGOの連携によって改善された。同時に、ソーシャルワーカーや地域のボランティアはジェファンが必要なパーソナルアシスタンスを受けることを可能にするにあたり、重要な役割を果たした。

目標

障害のある人がパーソナルアシスタンスを利用することができ、それによって、自身のニーズを満たし、積極的で充実した生活を送ることができるようになる。

CBRの役割

CBRプログラムの役割は、障害のある人が自己決定と尊厳のある生活を送るために必要なパーソナルアシスタンスを利用し、能動的に管理できるように支援することである。

望ましい成果

  • CBRプログラムと障害当事者団体が、地域社会の中で適切な質と水準のパーソナルアシスタンスの選択肢が利用可能となるよう協働する。
  • 障害のある人が適切な個別支援計画をもっている。
  • 障害のある人がパーソナルアシスタンスに対するニーズを自己管理できるようになるためのトレーニングを利用できる。
  • 公式なパーソナルアシスタント、非公式なパーソナルアシスタントの両方の利用のためのトレーニングが提供される。
  • 非公式なやり方でパーソナルアシスタンスを行う家族への支援がある。
  • 危機的状況に対応し、障害のある人が施設に入所させられることを防ぐ適切なメカニズムが家庭や地域の中にある。
  • 地域社会が障害のある人のための地域に根ざしたパーソナルアシスタンスの選択肢を支援し提供する。

主要概念

施設ケアと自立生活

数十年にわたり、高所得国では「施設ケア」から「自立生活」へと障害のある人の生活が移行していった。自立した生活とは、障害のある人が自分たち自身ですべてを行うということを意味しているのではない。障害のない人たちと同様の選択権をもち、自己管理された生活を送ることを意味している。障害のある人は自身のニーズに対して一番熟知しており、したがって他のすべての人々と同様に、自分の生活を管理し、自分で考え発言するべきである。パーソナルアシスタンスは障害のある人が施設ケアから自立した生活に移行する際の鍵の1つである。

パーソナルアシスタンス

BOX5

自立生活のためのパーソナルアシスタンス

自立生活運動(ILM:Independent Living Movement)は国際的な運動であり、障害のある人が、その属する文化の中で、障害のない兄弟姉妹、友人、隣人と同程度の相互依存性を家庭内で享受する必要性を提唱している。これは、生きていくために日常生活行為の面で他者の実際的な手助けに依存している高度な支援を必要とする人たちに特に適用される。なお、ここでいう日常生活行為とは、更衣、排泄、食事、コミュニケーションや1日の活動の予定を立てることなどを指す。

「パーソナルアシスタンス」という用語はILMによって前述のような活動のために用いられる。ただしそれは、どの仕事が、誰に委任されるべきか、そして、いつ、どのように実行されるべきかを決定する力を個々のユーザーがもっている場合に限られる。また、このようなことを管理できるのは、ユーザーが自分の選択したサービス提供者からサービスを購入する経済的手段をもっている場合、またはパーソナルアシスタントとして自分の選択した人(家族を含む)を雇用できる場合のみである。概して障害のある人やその家族は必要な経済的手段をもっていないことが多いので、政府による拠出が必要になる。人によっては、例えば障害児や知的障害のある人の場合は、このようなことを管理するために支援が必要になるだろう。

パーソナルアシスタントの役割

パーソナルアシスタンスは、私的で個人的な行為を支援することのみを指すものではない。パーソナルアシスタンスはさまざまな環境で多様な活動の支援も行う。つまり、家庭(子育てや介助の仕事の支援)、学校、職場、地域社会(旅行、買い物、銀行取引)、そして救急・レスパイトサービスなどの場面での支援である。公式な手段、非公式な手段のいずれを通してパーソナルアシスタンスが提供されるかに関わりなく、障害のある人が家庭や地域での生活に尊厳をもって完全参加することを適切に支援できるような質と量のパーソナルアシスタンスであることが重要である。

パーソナルアシスタンスの「個別性」を理解すること

パーソナルアシスタンスの「パーソナル」という言葉は、人間1人1人が異なっていて、独自のニーズをもっているということを反映するために使われている。パーソナルアシスタンスとはその個人にふさわしい解決策を見つけることである。さまざまなレベルの介助(介助なし、一部介助、あるいは全介助)がさまざまな作業で、かつさまざまなタイミングで必要とされるだろう。というのは、ニーズは個人的な環境に応じて変化するものだからである。例えばそれは、社会的役割に伴う変化であったり、健康状態に伴う変化であったりする。重要なのは個々人にとって適切なバランスがとられることである。

自分で管理することの重要性

パーソナルアシスタンスはしばしば、障害のある人に対して、障害のある人のために行われるものとみなされる。つまり、障害のある人は受動的な受け手になるとみなされている。このような考え方はもはや受け入れがたいものである。昨今では、障害のある人は、自身の人生の方向性を決定する自由をもつべきであり、したがって、自身のパーソナルアシスタンスに対するニーズを決定する際の主体であるべきだ、と理解されている(BOX5参照)。

支援の選択肢

非公式なパーソナルアシスタンス

世界的に見て、障害のある人への支援のほとんどは非公式なパーソナルアシスタンスの形をとっている(3)。家族、友人、隣人またはボランティアがこの非公式なパーソナルアシスタンスを実施している。

公式なパーソナルアシスタンス

パーソナルアシスタンスは公式な手段を通して提供されることもある。高所得国では、さまざまなタイプの公式な支援サービスが提供されており、また低所得国でも増加傾向にある(3)。これらのサービスは政府機関、NGOそして民間企業によって提供される。より多くの国家予算が地方に分散されるにつれ、支援サービスの財源が社会福祉省などの地方当局を通して利用可能になるであろう。障害年金のような手当、保護者給付金、介助手当などがパーソナルアシスタンスの財源として利用可能になるであろう。

問題点

低所得国における限定された選択肢

高所得国や低所得国でのパーソナルアシスタンスの供給に関連する問題はさまざまある。低所得国において障害のある人がパーソナルアシスタンスの選択肢を利用できるようにしようと試みるとき、CBRプログラムは次のような問題に直面することがある。

  • 障害のある人やその家族、そして障害当事者団体による、パーソナルアシスタンスについての意識、また要求がほとんどないこと。
  • パーソナルアシスタントへのトレーニングや支援を提供するプログラムの乏しさ。
  • パーソナルアシスタンスを支援する適切な社会保護政策やプログラムの不在。例えば、障害者手当、助成金、年金など(少数の低所得国でのみ存在する)。
  • 国家的に合意されたパーソナルアシスタンスに関する定義や基準、モニタリング手続きがほとんど存在しないこと。

危機的状況

支援システムが崩壊した時、障害のある人は危機的状況に直面することになる。場合によっては、障害のある人が、その意思に反して入所施設に送られることを意味する。パーソナルアシスタンスのほとんどを家族が担っている低所得国では、支援が崩壊する理由には事欠かない。例えば、もし家族の誰かが亡くなってしまったら、家族内で対立が起こったり、経済的な問題が発生したりする可能性がある。場合によっては、支援やトレーニングがほとんどない中でパーソナルアシスタンスを実施し続けることの負担やストレスによって、家族が大変疲弊してしまうこともあるだろう。障害のある人への非公式な支援の役割と、多くの文化において家族が中心的な地位を占めることから、障害のある人がいる家族に提供されるサービスは極めて重要である(3)

脆弱性と虐待の危険性

人生のどの時点においても、支援サービスを必要とする人たちは通常、支援サービスが必要でない人に比べて脆弱である(3)。虐待者が介助者でもある場合、被虐待者にとって虐待を誰かに伝えたり状況を変えたりすることは特に難しい(社会:交友関係・結婚・家族参照)。

推奨される活動

障害当事者団体との協働

多くの場合、パーソナルアシスタンスに対するニーズを満たすための主張を、障害のある人自身が行うことは困難であろう。しかし、障害のある人が集団となって活動すれば、変化をもたらすことはしばしばより簡単である。パーソナルアシスタンスの選択肢を確立することにおける障害当事者団体の役割をCBRプログラムが認識し、以下の点で彼らと協働することが重要である。

  • 広く合意されたパーソナルアシスタンスの基準の推進・開発。
  • パーソナルアシスタンスの選択肢に関する地域情報が障害のある人にとって入手可能であることの保証。
  • 地域内にサービスが存在しない場合におけるパーソナルアシスタンスの選択肢の創出。
  • 障害のある人のための適切なパーソナルアシスタンスサービスの開発とモニタリングの支援。
  • 障害のある人、特に重度障害のある人や重複障害のある人が、障害当事者団体や自助グループとつながりをもつことの保証。

BOX6 セルビア

オーダーメイドのパーソナルアシスタンスで生活を変える

セルビアでは、初めて利用者によって管理されるパーソナルアシスタンスサービスが確立されてから、多くの人々の生活が個人レベルで変化し、障害者は集団で行動するように動員されるようになった。このサービスの成果の1つとして、例えば、あるユーザーは活動的な障害者リーダーのとなった。以前の彼の生活は、たまに外出する以外は家で本を読んでいるだけだったが、今やパーソナルアシスタントの支援によって、週3回外出して、ある障害当事者団体の企画や活動を指導している。この団体では障害者の自立生活のための地方事務所の設置を提唱しコミュニティを動かすことに成功した。この事務所のスペースは地方政府によって提供された。

障害者の個別支援計画作成を支援する

パーソナルアシスタンスが、その社会や文化に照らし適切なものであり、ジェンダーや年齢に関するニーズに敏感であるようにすることは重要である。CBRプログラムにおいては、以下のような点で障害者支援が可能である。

  • 仮定による決めつけをしないよう配慮しながら、どの活動に支援が必要かを認識する。
  • その地域で利用可能なさまざまなパーソナルアシスタンスの選択肢を吟味する。どれがもっとも合っているかを知るためにさまざまな選択肢を試行すると良いだろう。
  • パーソナルアシスタントに、どの活動に支援が必要か、その活動はいつ完了する必要があるか、そしてどのように遂行すべきかを伝える。
  • パーソナルアシスタントが有給のスタッフかボランティアかに関わらず、同意書を必ず準備する。
  • 定期的にパーソナルアシスタンスに対するニーズを見直し、健康状態や日常活動や環境などに変化がある場合は計画を修正する。

BOX7 フィリピン

パーソナルアシスタンスの計画

フィリピンでは、全国レベルの障害当事者団体が教育省や障害のある子どもをもつ親の団体と協働して、多部門を巻き込むプログラムを開発した。このプログラムの主な役割は、重度障害のある子どもたちが地域の一般の小学校に通学するためのパーソナルアシスタンスの提供に関するトレーニングを、保護者と教員向けに実施することである。このプログラムは農村部の13,000人以上の子どもたちを対象としており、それぞれの子どもに合う支援計画を策定するため、未就学児、保護者そして教員に対して合同トレーニングのワークショップを実施している。このプログラムは、同級生と一緒に一般の小学校に通えるよう、高い支援ニーズのある子どもたちを準備させ、受け入れてもらうことに成功した。

トレーニング機会の支援

障害者がパーソナルアシスタンスに対するニーズを認識し、管理する技術と自信を身につけるためのトレーニングを必要とする場合がある。また、パーソナルアシスタントがその役割と責任を果たすための技術の向上を支援するようなトレーニングを必要とする場合もある。

障害者に向けて

質の良いパーソナルアシスタンスの提供を確保するため、障害者はそのニーズと期待を表現できることが必要である。CBRプログラムは以下のような点で障害者を支援することができる。

  • コミュニケーションと自己表現の技術を習得するための適切なトレーニングへの参加(エンパワメント:アドボカシーとコミュニケーション参照)。
  • パーソナルアシスタンスに関する情報の入手。
  • パーソナルアシスタンスに関する要求事項を認識・調整・管理する最善の方法の学習。
  • 家庭、地域社会、学校、職場などでパーソナルアシスタンスに対するニーズについて効果的に交渉する方法の学習。

トレーニングの機会は障害当事者団体、地方行政サービス、トレーニング機関、NGO、CBRプログラム、経験豊富なパーソナルアシスタントなど多くの手段を通して利用可能である。障害当事者団体や自助グループは多くの場合、パーソナルアシスタンスを管理することに関しての支援や情報、そして障害者のトレーニングにおいて最善の源泉である。障害当事者団体や自助グループが地域に存在しない場合は、CBRプログラムを通して障害者やその家族を同じような境遇にある他の人々と結びつけることが有用である。

パーソナルアシスタントに向けて

パーソナルアシスタントはその役割と責任において自信があり、かつ有能であることが重要である。多くの場合、特に非公式な形で支援を提供しているパーソナルアシスタントは任務についてのトレーニングを受けていない。以下のような点でのトレーニングがパーソナルアシスタントには重要である。

  • 役割の重要性を理解すること。
  • 仕事の領域の認識を養うこと。
  • パーソナルアシスタントを利用している人のニーズを効果的に聴取し対応すること。
  • 依頼された仕事を実行するにあたって必要な技術を習得すること。
  • 時間と仕事の管理(特に他に役割や責任をもっている場合)。

障害者にはそのパーソナルアシスタントのトレーニングに際し支援が必要な場合があるが、CBRプログラムや障害当事者団体や自助グループが良いリソースとなり得る。その他のトレーニングプログラムも地域の中に存在することがあるので、調査する必要がある。

パーソナルアシスタントの役割を担う家族が支援されることを保証する

パーソナルアシスタンスを行っている家族が、他にも役割や責任を担っていることはしばしばある。このような状況では、その家族が自分自身のために使う時間がほとんどなく、疲弊を招くことがよくある。また多くの場合、家族は自分自身を支援する手段を何らもっていない。CBRプログラムでは以下のような手段を通して、障害者の家族へ支援を提供することが可能である。

  • 危機的状況でのバックアップやレスパイトサービスの選択肢の特定。
  • 同じような状況にある家族同士のつながりを作る。例えば、自助グループ、障害当事者団体、親の会または家族会など。
  • 家族の困りごとについて聴取し話し合う。そして、家族がパーソナルアシスタントの役割をより良く果たすための対応策を見出すためにともに働く。
  • トレーニングの機会に家族を参加させ、対処方法を学べるようにする。
  • パーソナルアシスタントの役割を担う年少の家族メンバーの通学や気分転換が可能となるよう保証する。

危機的状況へ向けた準備と管理

支援体制が崩壊するときも障害者のニーズの充足は継続されなければならない。CBRプログラムが危機への対応が確実に準備できているよう、他の関係者とともに事前に計画を立てておくことが不可欠である。地域社会は豊かな支援資源であり、特に危機的状況にある間、リソースと柔軟な選択肢を提供することができる。地域による解決は通常、即時的にも長期的にも、もっとも適切かつ有効なものとなるだろう。CBR管理者が、事前に障害当事者団体や地方自治体当局者と危機管理対策について合意することは有効である。危機が起こる前に検討すべき可能性のある選択肢は以下のとおりである。

  • 招集できる対応チームは存在するか? この対応チームのメンバーには地方自治体当局のソーシャルワーカー、障害当事者団体のトレーニングを受けた代表者、地方の警察官、そして、CBRのスタッフが考えられる。
  • 一時的に利用可能な施設が地域の中に存在するか? レスパイトサービスやリハビリテーションを提供している施設に利用可能な選択肢がある場合もある。
  • 性的虐待やドメスティックバイオレンスを経験した女性・女子児童を支援するための安全な生活施設が地域内に存在するか? 障害のある女性・女子児童が必ず利用できるように、必要に応じてこれらの設備は改良される必要がある。
  • 危機的状況にある家族を支援するソーシャルワーカーは、障害に関してもトレーニングを受けているか? もし受けていない場合、障害当事者団体やCBRプログラムがこのトレーニングを支援することはできるか?
  • 長期的解決策が見つかるまで親族の誰かが短期間の支援を提供することは可能か?
  • 障害当事者団体やCBRプログラムを通して、危機的状況にある家族に対して支援・保護を提供する意思のある他の家族を見つけだすことができるか?
  • 障害者とその家族が利用できる自助グループは存在するか?

危機的状況にある間、家族や障害者は外部のファシリテーターの支援・支持を必要とすることもあろう。障害当事者団体や自助グループ、社会福祉プログラムとのつながりを作ることで、CBRプログラムが直接的にあるいは間接的にこの役割を果たすことが可能である。合意できる解決が見出せない場合、そして特に、誰かが個人的な危機に陥る恐れがある場合、危機を打開し他の生活解決策を見つけることが重要である。

施設ケアに頼らないパーソナルアシスタンスの促進

従来、高いパーソナルアシスタンスに対するニーズをもつ障害者は入所施設に送られた。このような状況は変わりつつあるが、多くの国でそうした施設はいまだに存在し、障害者によっては彼らの唯一の選択肢となっている場合もある。CBRプログラムと障害当事者団体がこれらの施設や関係政府機関と協働し、障害者にとって最善の将来の選択肢を探ることは重要である。

施設ケアに頼らないことを目指す国々では以下のような代替施設への移行に成功している。

  • 職業訓練・支援センター
  • リハビリテーションセンター
  • 障害者が必要に応じて利用可能な支援を受けながら自立生活を送ることのできる、自立型住宅
  • 家族がパーソナルアシスタントの役割を一時的に休む間、障害者が短期間利用できるレスパイト施設
  • 障害者だけでなく、暴力の対象になりやすい地域住民すべてのための緊急時宿泊施設