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海部町障害者計画

No.1

平成10年3月

徳島県海部町

項目 内容
立案時期 平成10年3月
計画期間 平成10年度~平成14年度(5年間)

第1章 基本的事項

  1. 計画策定の趣旨
  2. 計画の目的
  3. 障害者施策の基本理念
  4. 計画の期間

第2章 障害者の動向

  1. 身体障害者(児)の状況
  2. 知的障害者(児)の状況
  3. 精神障害者(児)の状況
  4. 特定疾患(難病)患者の状況
  5. 障害者の生活状況

第3章 計画の各論

  1. 広報啓発活動
  2. 保健・医療の充実
  3. 福祉サービスの充実
  4. 雇用・就労の促進
  5. 教育
  6. 生活環境の整備
  7. 社会参加・スポーツ活動の促進

参考資料

第1章 基本的事項

1. 計画策定の趣旨

 近年、障害者をめぐる社会情勢は、世界的に大きく変わろうとしている。
 過去において、画一的であった建築物等のハード面における整備も、障害者の障害に応じたものへと、その方向性が修正されつつあり、また、ハード面に比べその遅れが指摘されていた、障害者の精神的・文化的自立を支援する事業についても、積極的に推進されるようになってきている。これは、日本を始めとする先進各国において、高齢化・少子化問題に対する重要な施策として、障害者福祉を含めた「すべての人にやさしいまちづくり」の基本理念が大きくクローズアップされたこと、また、障害者自身の意識改革がよりいっそう進んだことによる。
 障害者福祉に関する動きを世界的に見ると、昭和56年の国際障害者年を契機に、翌昭和57年の国連総会で「障害者に関する世界行動計画」が採択され、その履行を推進するための「国連・障害者の10年(1983~1992)」が宣言された。この世界行動計画では、目標達成のため加盟各国に国レベルでの長期計画を作成することを強く要望している。
 こうした動向の中、我が国では平成5年に最初の障害者施策についての計画となる「障害者対策に関する長期計画」を決定し、都道府県、政令指定都市においても国の長期計画に準じた計画が策定された。
 「国連・障害者の10年」の最終年に当たる平成4年に、今後の障害者施策のあり方について検討を重ね、平成5年3月に新たな長期的視点に立った「障害者対策に関する新長期計画」を策定した。また、平成5年11月には「障害者基本法」が成立し、この法律により、障害者の定義・年次報告の国会提出等障害者に関する規定がされている。そして、同法の第7条の2で「障害者基本計画」の策定が、都道府県・市町村に努力義務として課せられた。この規定が置かれた背景には、高齢者の保健福祉サービスの計画的推進のため、「老人福祉法」で国・地方公共団体における「老人保健福祉計画」の策定を定めたこと、障害者の保健福祉サービスの分野でも、住民に最も身近な行政主体である市町村の役割が重要視されたことによる。
 徳島県においても、昭和57年3月に「徳島県心身障害者対策基本構想」を策定し、「完全参加と平等」の実現に向けて障害者施策を総合的に推進してきた。また、その理念と成果を継承・発展させた「ともに生きる・ぬくもりのある福祉社会」をめざして、平成7年3月に「徳島県障害者施策長期計画」を策定しているが、それ以後、平成7年7月に「精神保健法」に代る「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」が施行され、国の障害者プランの策定など、障害者をめぐる社会環境の大きな変革にともない、平成10年3月徳島県において新たに「徳島県障害者プラン」が策定されたところである。
 このような情勢の中、海部町においても住民に最も身近な行政主体として、地域の実情や障害者の具体的なニーズに応じた障害者施策を推進するため、国及び県の計画を踏まえ、ここに海部町障害者計画を策定し、障害者が地域の中で共に暮らす社会、だれもが平等に安心して暮らせる社会の実現をめざすものである。

2. 計画の目的

  1. この計画は、障害者基本法第7条の2第3項に基づき、海部町における障害者の状況等を踏まえ、徳島県障害者施策長期計画を基本として策定する。
  2. 「障害者アンケート調査(平成9年8月実施)」の結果に基づき、ニーズに応じた事業の計画及び目標水準を設定する。

3. 障害者施策の基本理念

 障害者施策の充実は、障害を持つ人も持たない人も含めた社会全体の問題である。
 本計画は「完全参加と平等」のテーマのもと、「ノーマライゼーション」の理念に基づき、安心して住みやすい町を目指すものであり、次のような理念を掲げるものとする。

  1. すべての人にやさしいまちづくりの実現
  2. 障害者の自立と社会参加の実現
  3. ノーマライゼーション社会の実現

4. 計画の期間

 徳島県障害者施策長期計画との整合性を図るため、平成14年度を目標年次とし、社会・経済情勢また、平成12年度より実施される介護保険制度の施行後の実施状況を見ながら、必要な見直しを行うものとする。

第2章 障害者の動向

1. 身体障害者(児)の状況

 海部町において身体障害者手帳を有する者は、平成9年4月1日現在153人となっている。年齢別に見ると、65歳以上が103人と全体の67.3%を占めており、18歳~64歳は47人、30.7%、18歳未満は3人、2%となっており、高齢化対策の必要性が考えられる。
 また、身体障害者手帳所有者の内1級が28人、2級が21人となっており重度の身体障害者は全体の32%を占めている。
 最近の障害者の動向を見ると、障害者の高齢化や若年層の重度障害者の増加がみられる。また、高齢者の病弱化に伴う障害化の傾向がみられる。

表1 身体障害者手帳所有者数の推移
(平成9年4月1日現在・単位:人)
平成3年度 平成5年度 平成7年度 平成9年度
18歳未満 4 2 3 3
18~64歳 59 50 53 47
65歳以上 109 117 101 103
172 169 157 153
表2 身体障害者手帳所有者の高齢化比率の推移
(平成9年4月1日現在・単位:%)
平成3年度 平成5年度 平成7年度 平成9年度
人口比 63.4% 69.2% 56.7% 67.3%
 障害別に見た数字では、肢体不自由が最も多く87人、続いて聴覚障害24人、内部障害22人となっている。
表3 身体障害者手帳所有者の推移
(平成9年4月1日現在・単位:人)
平成3年度 平成5年度 平成7年度 平成9年度
視覚障害 24 18 21 18
聴覚障害 32 30 25 24
言語障害 1 2 3 2
肢体不自由 100 100 85 87
内部障害 15 19 23 22
172 169 157 153

2. 知的障害者(児)の状況

 療育手帳所有者の状況を見ると、平成9年4月1日現在14人であり、A1(最重度)9人、A2(重度)1人、B1(中度)4人となっている。

表4 寮育手帳所有者数の推移
(平成9年4月1日現在・単位:人)
平成3年度 平成5年度 平成7年度 平成9年度
18歳未満 A1 2 3 3 2
A2
B1 1
B2
18歳以上 A1 6 6 6 7
A2 1 1
B1 3 3 2 3
B2
11 12 12 14
表5 精神薄弱者援護施設入所者数
(平成9年4月1日現在・単位:人)
種別 更生施設 授産施設 通勤・寮 グループホーム
入所者数 4 4

3. 精神障害者の状況

 平成9年4月1日現在、海部町における精神病患者のうち、措置入院者はいないが、医療保護入院者は6人、通院医療公費負担患者も6人となっている。また、精神障害者保健福祉手帳の所有者数は1級が1人で、2級・3級はいない。
 精神障害者については、任意で病院にかかっている場合もあり、すべてを把握することは難しいが、一般的には、住民の約1パーセントの人がなんらかの精神科治療を受けていると言われている。

4. 特定疾患(難病)患者の状況

 特定疾患(難病)とは、原因不明で、治療方法も確立されておらず、後遺症を残すおそれの少なくない病気である。
 平成9年4月1日現在、医療給付の対象とされている38特定疾患(難病)患者は、海部郡全体で133人、このうち97.7%の人が在宅で療養している。海部町では14人となっており、うち65歳以上は7人となっている。
 特定疾患(難病)患者のうち身体障害者手帳の交付を受けているのは4人となっている。

5. 障害者の生活状況

(1) 住んでいるところ

 障害者アンケート調査の結果による住んでいる場所は、身体障害者では「自分の家」がほとんどであり87.6%、「福祉施設・福祉ホーム」・「借家」がそれぞれ2.8%となっている。一方、知的障害者では「自分の家」が2人、18.2%、「福祉施設・福祉ホーム」が7人、63.6%となっている。また、精神障害者については、入院の患者も少なくないが、入院期間の短期化や自宅治療も高くなっている。

表6 心身障害者の住んでいるところ(単位:%)
身体障害者 知的障害者
1.自分の家 87.6% 18.2%
2.借家 2.9% 0.0%
3.県営・町営住宅 0.9% 9.1%
4.社宅・官公社 0.0% 0.0%
5.福祉施設・福祉ホーム 2.9% 63.6%
6.その他 0.0% 9.1%
7.無回答 5.7% 0.0%

(2) 行政に対する要望

 行政に対する要望を障害者アンケート調査結果から見ると、身体障害者では「公的年金・手当の増額など」が33.3%、「社会が、障害者に理解と関心をもつ」32.4%、「道路・乗り物を利用しやすく整備する」19.0%、「ホームヘルプサービスなど在宅福祉の充実」17.1%となっている。
 一方、知的障害者では、「入所施設の建設や施設運営の改善」が54.5%、「道路・建物が障害者に配慮されたまちづくり」・「ボランティア活動など障害者理解や障害者との交流」がそれぞれ36.4%となっている。
 精神障害者については、海部郡全体で行ったアンケート調査結果で見ると、小規模作業所・生活訓練施設やグループホーム・地域生活支援センターを利用したい(必要)と希望する声が多く、地域で生活するための施策が望まれている。
 特定疾患(難病)患者については、身体障害者福祉法にも老人福祉法にも該当しない難病認定患者が海部郡全体で57.9%を占めており、十分な福祉サービスを受けられない状況にあるため、地域の保健所と連携を密にし、特定疾患(難病)患者の的確なニーズの把握に努めなければならない

表7 行政に対する要望
1位 2位 3位 4位
身体障害者 公的年金・手当の増額など
33.3%
社会が障害者に理解と関心を持つ
32.4%
道路・乗物をを利用しやすく整備
19.0%
ホームヘルパーなど在宅福祉の充実
17.1%
知的障害者 入所施設の建設や施設運営の改善
54.5%
道路・建物が障害者に配慮されたまちづくり
36.4%
ボランティア活動など障害者理解と交流
36.4%
情報の提供・相談窓口の充実
27.3%

第3章 計画の各論

1. 広報啓発活動

 障害者が一般社会の中で普通の生活を送るという「ノーマライゼーション」の理念や、それをより具体化した、障害者の行動や社会参加の障壁を取り除こうとする「バリアフリー」という理念を実現するためには、まず、「心の壁」を取り除き、「ともに生きる社会」を形成することが必要不可欠である。
 障害者に対する「心の壁」を取り除くための広報啓発活動は、障害者施策の重要な柱であり、障害者や障害児教育の理解の促進、障害者雇用の推進等を図るためにも、啓発活動の重要性が見直されているところである。また、障害者自身が障害者問題についての知識を深めることは勿論、すべての町民が、自らの課題として受け止め、障害者や障害者施策に対する理解と積極的な参加を促進していくことが重要であり、現在の障害者福祉に強く求められている。
 町民を対象に実施したアンケート調査では、「障害者福祉について関心をもっていますか」との問いに対し、約85%の方が「障害者福祉に関心をもっている」と答えている。一方、「日ごろ、福祉関係の情報を何から得ていますか」との問いに対して、「テレビ・ラジオ」が21.9%、「新聞」が20.9%、「町・社協の広報誌」16.2%、となっており、あらゆる広報手段により情報を得ていることがわかる。
 海部町でも障害者問題について周知するため、広報誌・パンフレット・課内情報誌等あらゆる機会、広報手段を通じて、広く町民に対する啓発に努める必要がある。

日ごろ、福祉関係の情報を何から得ていますか。
(身体障害者)
項目 人数
県や市町村の窓口 32 23.9%
身体障害者相談員・精神薄弱者相談所 9 6.7%
民生児童委員 3 2.2%
障害者の団体や親の会 4 3.0%
テレビや新聞 40 29.9%
町の広報誌などのお知らせ 22 16.4%
友人・知人 16 11.9%
その他 3 2.2%
情報を得る所がない 5 3.7%
合計 134
日ごろ、福祉関係の情報を何から得ていますか。(一般)
項目 人数
テレビ・ラジオ 316 21.9%
新聞 301 20.9%
雑誌・本 141 9.8%
町・社協の広報誌 233 16.2%
国・県のパンフレット・チラシ 177 12.3%
友人・知人からの話 129 9.0%
障害者団体などからの話 49 3.4%
家族からの話 76 5.3%
その他 19 1.3%
合計 1,441
表8 広報啓発活動に関する施策
施策 施策の課題と目標
障害者の日(12月9日)の周知 障害者基本法では、12月9日を「障害者の日」と定めており、広く町民に障害者福祉に関しての理解と認識を高めてもらうため、広報などの活動を実施するとともに、県が開催する「障害者の集い県民大会」や平成6年度から海部郡内で開催している「障害者のつどい」への参加を呼びかける。
障害者福祉に関する教育の推進 障害者にとって暮らしやすい「まち」をつくっていくために、継続的な交流教育の推進を図るともに、町民の理解を深めるための講演会や福祉講座の開催を充実する。
その他 役場窓口、社会福祉協議会等関係施設に障害者施策の広報誌や理解を進めるパンフレットを備える。
リェクリェーションなどの交流事業の充実や各種イベントの周知を徹底する。

2. 保健・医療の充実

(1) 保健・医療サービスの充実

 障害の発生には、先天的な障害と、疾病や交通事故、労働災害などの後遺症による後天的な障害がある。
 先天的な障害の発生を防ぐためには、障害の原因となる疾病の予防や早期発見が重要となる。また、障害の進んでいく可能性が大きい乳幼児期に適切な治療と指導訓練を実施することは、障害の軽減と基本的な生活能力の向上を図り、将来の社会参加につなげていく上で効果が大きいと見込まれる。そのため、保健所や各種医療機関と連携を取りながら、妊産婦に対する家庭訪問、健康診査、乳幼児健康診査、1歳6ヶ月児健康診査、3歳児健康診査などを実施することにより、障害を早期に発見し、治療や療育の適切な時期を失することの無いように努める必要がある。
 また、その後の成長過程においても、それぞれの障害に応じたよりきめ細やかな保健指導や医療相談を行うことにより、障害児が自分の持つ能力を生涯にわたって十分発揮でき、地域社会において充実した生活が送れるようにしていくことも重要である。
 後天的障害の発生は、脳卒中、あるいは骨折などに起因することが多く、その原因となるのは、高血圧症・心臓病・糖尿病・骨粗しょう症などの生活習慣病(成人病)であり、それらの疾病を予防するための保健指導、健康相談、健康診査などを定期的に実施しているが、今後よりいっそうの保健指導・相談の充実を図る必要がある。また、特定疾患(難病)患者についても後天的な障害が残ることが多く、障害の見極めと適切な保健指導を実施する必要がある。
 障害者にとっての医療サービスの充実は、病気の治癒だけでなく障害の軽減を図り、社会自立を促進するためには不可欠であり、定期的な医学管理を必要とする障害者の増加や、障害に伴う二次障害の発生予防に対応するためにも、障害者の健康管理や医療の充実を図るための施策を展開する必要がある。
 そのためにも、更生医療の給付、訪問診査、更生相談、補装具の交付・修理、日常生活用具の給付など制度の充実を図り、高齢者対策と一体となった施策を展開しなければならない。

(2) 情報・相談体制の整備

 障害者やその家族にとって、地域での身近な相談窓口が重要な役割を果たす。障害の種別や年齢を問わず、本人や家族に対する一時的窓口機能、保健・医療・福祉に関するサービスのコーディネート(調整)、専門的な機関への紹介などの機能を備えた総合相談体制の充実を図る。
 また、点訳・朗読・手話に必要な技術の取得などの指導を行い、各種ボランティアの養成・派遣、手話通訳者の設置を重点的に実施するとともに、点字広報の発行、字幕入りビデオカセットライブラリー(図書)の貸し出しなどのサービスを充実し、視覚障害者や聴覚障害者に対する情報提供のための手段の確保を行う。
 さらに、情報化社会の進展に伴い、コミュニケーションの手段としてインターネットなどを利用する障害者や福祉関係者が増えることが予想されるため、情報提供の場として、インターネットなどを積極的に活用することを検討する必要がある。

(3) 保健・医療に関する施策

1.母子保健事業
(ア) 施策
(1)生命の尊厳・思いやりの醸成
思春期体験学習・福祉体験学習・広報活動
(2)相談支援体制の充実
子どもにやさしい町づくり推進会議・保健衛生連絡会議・母子保健推進員活動・仲間づくり子育て教室
(3)母子保健サービスの充実
青少年の健康づくり
思春期講演会
妊産婦の健康づくり
母子健康手帳の交付・母親教室・妊産婦訪問指導・健康診査(一般・B型肝炎・35歳以上の超音波検査)
乳幼児の健康づくり
母子相談(乳幼児)・健康診査(乳幼児・1・6歳児・3歳児)・訪問指導(新生児・未熟児・乳幼児)・子育て教室・栄養教室(離乳食・幼児食・その他)・予防接種
歯科保健対策
幼児歯科健診(1.6歳児・3歳児)・幼児歯科相談(乳幼児)・むし歯予防教室(幼・小・中学校)
障害のある子への対策
発達相談支援事業(県)・心身障害児の会(県)
(イ) 課題と目標
小子・高齢化、核家族化、共働き、情報の氾濫などにより、家庭や地域での子育て機能の低下が課題となる中で、
  1. 妊娠から出産までが安全にでき、みんなで子育ての支援ができる。
  2. 子どもの健康状態(疾病や障害)に応じた支援を行う。
  3. 心豊かな子育てを目標に充実を図る。
2.成人・高齢者保健事業
(ア) 施策
(1)疾病予防と健康づくり
健康手帳の交付・健康相談・栄養相談・栄養指導・健康教育・健康診査・訪問指導
(2)寝たきりゼロのまちをめざして
機能訓練教室・訪問リハビリ・意識啓発
(3)高齢者や家族が安心して暮らせるために
訪問指導・痴呆性老人への支援・在宅ケア体制の整備(配食サービス・訪問入浴等)・イベント(健康まつり)等における健康意識の啓発・高齢者サービス調整会議
(イ) 課題と目標
 急速な高齢化と健康阻害が多様化する中で、人それぞれの価値観を尊重しながら、すべての町民が健康で生活できるよう住みよい町づくりの充実を図る。
3.医療事業
(ア) 施策
(1)医療サービスの充実
在宅医療の充実・周産期医療体制の整備(県)
(2)医療給付・助成の充実
乳幼児医療費の給付・老人保健法による医療費の給付・重度心身障害者医療費補助・更生医療・育成医療(県)・未熟児養育医療(県)
(3)福祉用具の給付
補装具、日常生活用具の給付
(イ) 課題と目標
 適切な医療が受けられるとともに、補装具による自立の促進、介護負担の軽減を図り、生活しやすい環境づくりをおこなう。
開業医との連携強化、情報交換をおこなう。
4.その他の保健活動
(ア) 施策
環境衛生・献血事業・精神保健福祉・感染予防
(イ) 課題と目標
 人の命の問題と合わせて、環境問題が大きくクローズアップされるなか、安心して生活できる環境づくりに努める。
町民の心の問題に対応するとともに支えるシステムを形成していく。

3. 福祉サービスの充実

 ノーマライゼーションの理念に照らし、障害者が可能な限り地域の中で普通の暮らしができること。さらに、社会的に自立し、積極的に社会参加するなど生きがいのある生活を営むために、障害者福祉に関しての体制づくりを推進することが重要である。特に、在宅福祉サービス・施設福祉サービスの充実については、障害者のニーズも増大しており、きめ細かなサービスを実施する必要がある。また、公的サービスと併せて、ボランティア活動をはじめとした民間福祉活動の活性化を図り、地域に密着したサービスの推進体制を整備することが望まれている。

(1) 在宅福祉サービス

 住み慣れた家庭や地域で生活する障害者の支援という観点から、在宅福祉サービスの重点的な充実を図る必要がある。ニーズがあってもその対象とならないために、サービスを受けられない若年の障害者もいる。そうした障害者も同じようにサービスが受けられる在宅福祉の整備を推進していく。

1.デイ・サービス事業

 現在、高齢の障害者については、「老人デイ・サービス運営事業」により必要なサービスを受けているが、今後は老人福祉の対象とならない若年の身体障害者についても、「老人デイ・サービス運営事業」の対象者としてサービスを開始することを考えなければならない。また、身体障害者以外の障害者についても、早急なサービスの提供を実現させるための整備を推進しなければならない。

2.ホームヘルプサービス事業

 障害者の高齢化と若年層の重度障害者の増加により、老人福祉との連携によるサービス提供の検討、障害者専任ヘルパーの確保が重要な課題となる。

3.ショート・ステイ事業

 介護者の高齢化や社会的事由等により、一時的に介護ができない状態になったときのショートステイ事業(専用居室)は、今後一層必要になってくることが見込まれるため、制度の充実を急がなければならない。

4.リハビリテーション事業

 現在、老人保健事業の一環として、機能回復訓練を中心としたリハビリテーションを行っているがアンケート調査を見ると「もっと回数を増やしてほしい」45%、「自宅近くで受けたい」30%との要望があり、今後はこういったニーズにも応えるべき、実施について検討する。

(2) 施設サービス

 施設サービスの種類として、1.障害者の社会的自立を目標として、在宅で生活することが困難な重度の障害者に介護を提供し、安心して生活してもらう生活施設、2.リハビリテーションや職業訓練を行う更生施設、3.雇用が困難な障害者に入所または通所により就業の機会を提供する作業施設に分類できる。
 現在、海部郡内の更生施設などは22ページの表10のとおりとなっており、知的障害者に対するアンケート調査結果を見ると、今後「行政にもっとしてほしいこと」として、「入所(通所)施設の建設の促進や施設運営の改善」に対する要望が最も高く24.0%を占めており、県の広域的な計画を踏まえ海部郡の広域事業として、こうした施設の充実、整備に努めていく必要がある。
 現在、海部町にはこれらの施設が1カ所もなく、海部郡内においても、精神薄弱児施設1カ所、精神薄弱者更生施設1カ所、精神障害者小規模作業所1カ所、養護学校1カ所だけであり、こういった施設は、上灘地域にだけ設置されている。
 今後は、関係機関との連携により、南部第2サブ障害保健福祉圏(海部郡)内に、精神薄弱者(児)グループホームを2カ所、精神障害者社会復帰施設1カ所を設置し、障害者のニーズに応えていかなければならない。

(3) ボランティア活動

 阪神淡路大震災を契機に、災害時などにおけるボランティア意識が、一部の人だけのものから、青少年、女性、高齢者など幅広い層へと広がってきている。それにともない、豊かで潤いのある地域社会の形成に重要な役割を持つ、地域活動としてのボランティア活動が見直されつつある。
 障害者施策の分野でも、点訳ボランティア、手話通訳、障害者移送サービスなどボランティア活動は重要な役割を占めており、そのマンパワーの養成と確保が必要となっている。そのため、地域住民や障害者自身がボランティア活動に、気軽に参加できるような活動支援策を、社会福祉協議会と連携して推進する必要がある。
 町民を対象としたアンケート調査のボランティア活動への参加の可否については、「ぜひ参加したい」・「機会があれば参加したい」を合わせると約8割の方が参加したいと答えている。
 なお、平成9年度より実施している市町村ボランティア活動事業については、補助対象期間が平成11年度までとなっているが、本計画策定目標年次である平成14年度までの補助対象となるよう県に働きかける。

表9 福祉サービスに関する施策
施策 施策の課題と目標
生活基盤の充実 各種障害者手当(特別障害者手当・生活福祉資金など)の周知徹底及び利用の促進を図り、国・県に対して制度の充実を働きかける
在宅福祉サービスの充実 ホームヘルプサービス・デイサービス・ショートステイの3本柱を中心に、住宅改造・リハビリテーションの充実も含め、障害者のニーズに合わせたサービスの提供と質の向上を図る。
施設福祉サービスの充実 県の計画に伴い、海部郡内広域で検討し、施設設備の充実強化に努力する。
ボランティア活動の充実 ボランティアに関する情報を提供し、マンパワーの養成及び登録制度の充実を図る。

4. 雇用・就労の促進

 地域社会において生きがいのある生活を送るため、障害者がその適正と能力に応じた職業に就き、職業を通じて社会経済活動に参加することは、大変有益なことである。そのため、就労意志のある障害者が可能な限り雇用の場に就くことができるようにすることが重要である。
 障害者に対するアンケート調査では、「あなたは仕事をしていますか」との問に対し、「仕事をしている」と答えた人は身体障害者で31.4%、知的障害者で22.2%となっている。また、「以前仕事をしていた」方を含めると身体障害者、知的障害者でそれぞれ74.3%、22.2%となっている。また、「現在仕事を探している人」は6.1%となっており、身体障害者のうち65歳以上の方が74.3%を占めているため就労に対する要望は低くなっている。

(1) 雇用の促進

 近年、雇用される障害者の数は着実に増加しており、平成6年6月1日現在県下の民間企業における実雇用率は、1.77%で、法定雇用率1.60%を上回っている。しかし、一般企業等に雇用される障害者は、軽度の身体障害者がほとんどであり、重度の身体障害者や知的障害者の雇用については、まだまだ少ないのが現状である。
 こうしたことから、町職員の採用については特別枠の障害者の採用・雇用率の目標設定などにより雇用機会の拡大を図り、民間企業についても、その活力とノウハウをいかし、重度障害者や知的障害者の雇用機会の拡大を図る必要がある。また、ひとつの成功した具体例として、県内でも障害者の運営する店が実現しているが、障害者にとっては社会復帰に向けて大きな自信となる。そのため、公共職業安定所(ハローワーク)等関係機関との連携を強化し、各種制度についての周知と積極的な活用をはたらきかける。

(2) 就労の促進

 就労意欲を有しながら、一般雇用されることの困難な障害者に対して、授産施設及び小規模作業所は重要な役割を果たしている。しかし、こうした施設は海部町単独での設置が難しいことから、海部郡全体の広域事業として促進を図る必要がある。また、施設の設置が上灘地域に偏っているため、通所者は不便を感じており、公共施設や民家を借りて運営できる小規模共同作業所については、海南町・海部町・宍喰町3町でその設置に向けて、協力しながら取り組む必要がある。
 南部第2サブ障害保健福祉圏域(海部郡)内での心身障害者小規模作業所を1カ所、精神障害者小規模作業所をもう1カ所設置できるよう、関係機関と連携しその実現に向け努力していく。

表10 施設の状況及び福祉的就労の場の状況
(海部郡:現在ある施設)
施設種別 箇所 定員(人) 備考
精神薄弱児施設 1 40 ひわさ学園
精神薄弱者更生施設 1 40 ひわさ育成苑
精神障害者小規模作業所 1 うみがめ作業所
養護学校分校 1 阿南養護学校
表10-2 施設の状況及び福祉的就労の場の状況
(今後設置予定施設)
施設種別 設置場所等
心身障害者小規模作業所 郡内広域事業として1カ所の設置を検討
精神障害者社会福祉施設 郡内広域事業として1カ所の設置を検討
精神障害者小規模作業所 下灘3町で1カ所の設置を検討
精神薄弱児施設(グループホーム) 郡内広域事業として1カ所の設置を検討
表11 雇用・就労の促進に関する施策
施策 施策の課題と目標
雇用機会の拡大と就労の場の確保 就労の意志を持つ障害者の雇用機会の拡大を図る。また、作業施設の充実により、一般雇用の困難な障害者に就労の場を提供する。

5.教育

(1) 就学前教育

 障害を持つ子どもと持たない子どもが、発達段階に合わせた集団の中で、ともに保育を受けることは、障害を持つ子どもにとって家庭生活では得られない経験をするとともに、社会性を育むよい機会となるため、保育所においては、障害を持つ子どもの発達・成長に応じた適切な保育が実施できるような、知識・経験を有する保母を必要に応じて配置し、その専門性を高めるための研修を行う。また、障害を持つ子どもの障害に応じた施設を整備するなど、受け入れ体制の充実を図っていく。

(2) 就学時教育

 障害を持つ子どもが、将来的にその個性に応じた自立をするためには、義務教育段階における学校生活や地域社会とのかかわりが重要となってくるため、障害を持つ子どもの実態を的確に把握するとともに、保護者や本人の考えを尊重した適切な就学指導を行う体制づくりをすることが必要である。また、具体的な情報の提供により、保護者の疑問や不安を取り除くことに努め、障害児教育に対し、理解と協力を得るための教育相談を充実させなければならない。そのため、就学指導関係者は各種研修会に参加するなど専門的知識を身につけ、その経験を生かした指導を行うとともに、学校内における連携を図るため、学校内就学指導体制を整備する。

(3) 障害児に対する交流教育の充実

 障害のある子どもが、充実した地域生活を送るためには、障害を持つ子どもやその家族だけではなく、障害を持たない子どもやその保護者も、障害を持つ子どもに対する正しい理解や認識を持つことが重要である。そのため、より一層の広報啓発活動を行い、障害を持つ子どもが障害を持たない児童・生徒や地域社会の人々と活動を共にする、交流教育を積極的に推進していく必要がある。

表12 教育に関する施策
施策 施策の課題と目標
教育相談・就学指導体制の整備 就学前、就学時を通して障害を持つ子どもの家族の支援となる教育相談を実施し、適正な就学指導を行う体制づくりを推進する。
交流教育の充実 交流教育を積極的に実施し、障害を持つ子どもに対する正しい理解や認識の啓発を推進する。

6. 生活基盤の整備

(1) 障害者にやさしいまちづくり

 高齢社会の到来や少子化が社会問題として大きく取り上げられている現在、「すべての人にやさしいまちづくり」の実現は、障害者福祉にとってだけではなく、あらゆる面において強く望まれている。そのため最も身近な市町村において、障害者の自立と社会参加の促進を図る「住みよい福祉のまちづくり」については関心も高く、徳島県においても平成8年に「徳島県人にやさしいまちづくり条例」を制定している。
 バリアフリーの理念を推進するため、公共施設や不特定多数の人が利用する民間建築物について、「ひとにやさしいまちづくり」の広報に努め、歩道や出入口の段差を解消するとともに、身体障害者用トイレや洋式トイレを設置するなど、障害者に配慮したまちづくりを計画し、公共施設のエレベーター設置についても整備を推進しなければならない。
 また、住宅整備については、将来において公営住宅を新築・改造する場合、障害者や高齢者に配慮した設計とし、障害者用住宅を確保するなど、障害者が地域社会で生活できる環境の整備充実を図る。
 一方、個人住宅の改造については、徳島県が実施している「リホームヘルパー派遣事業」や、海部町で実施している「海部町障害者住宅改造費助成事業」の周知に努め、住宅の整備を促進する。また、知的障害者、精神障害者については、近年ニーズの高まっているグループホームなど、利用できる小規模な居住空間の確保に努める。
 住宅の中で、新設したり特別に改造したところについて、身体障害者に対するアンケート調査結果から見ると、トイレが25.7%と最も多く、ついで風呂が17.4%、階段が7.3%となっている。今後、特別に改造を必要とするところは、トイレが20.8%、風呂が14.2%、住宅内の段差の解消が11.3%とまだまだ改善するところが多い。

(2) 福祉機器リサイクル事業

 障害者を取り巻く社会情勢の変化などに伴い、障害者福祉に対するニーズは多様化しており、福祉機器に対する期待も膨らんできている。また、高齢化の見られる介護者の労力を軽減するうえでも、福祉機器の利用は重要なものであり、その普及に対する要望は年々高まっている。
 海部町では、以前から不用になった福祉機器については、これらを必要とする人に斡旋する事業を社会福祉協議会で実施している。リサイクル可能な福祉機器のうち、車椅子や介護ベットなどの需要がある。
 福祉機器がリサイクルで活用されるには、需要と供給の的確な把握が必要であり、広報などで周知を図るとともに、機器の使用方法について、斡旋時に十分な指導を行うことも重要である。

表13 生活環境に関する施策
施策 施策の課題と目標
障害者や高齢者にやさしいまちづくり 公共施設・道路の整備、改良の推進
障害者が住宅を改造する場合の補助制度の拡充
障害者に配慮した公営住宅の整備 公営住宅の建て替えや新築にあたっては、障害者対策を図るとともに安全性を確保する。
福祉機器リサイクル 不用になった福祉機器について、広報などにより広く周知し、これを必要とする人に斡旋する。
身体障害者自動車操作訓練費の助成 身体障害者の自立と積極的な社会参加を促進するため、制度の利用周知を図る。
身体障害者自動車改造助成制度 重度の身体障害者が社会参加のために、自動車を改造する場合の制度の周知を図る。

7. 社会参加・スポーツ活動の促進

(1) 移動・交通手段の整備

 障害者が必要な医療を受けるためや積極的に社会参加をするためには、安全かつ、身体的・経済的負担の少ない方法で移動できるよう整備する必要がある。
 道路交通環境については、障害者が快適に通行するための歩道の整備や段差の解消、スロープ、エレベーターの設置などを整備し、障害者に配慮した道路交通環境の実現を積極的に推進していく必要がある。

(2) スポーツ活動の推進

 障害者のスポーツに対する関心は、年々深まっており、現在では全国的に各種スポーツ大会が開催されている。徳島県でも、平成5年に「全国身体障害者スポーツ大会」が開催されたのを契機に、県民の障害者スポーツに対する理解は高まっている。海部郡内でも「身体障害者スポーツフェスティバル」を毎年開催しているが、障害者がスポーツ活動に参加することは、自立と社会参加を促進するだけでなく、スポーツを通じて障害者同士の連帯感を養ううえで大変重要である。また、大会に参加する障害のない人々が、障害者に対しての理解を深めることにもなり、障害を持たない人たちに対する積極的な参加の呼びかけも必要となる。
 そのため、海部町でも身体障害者のスポーツの振興と身体障害者のスポーツへの積極的な参加を図るため、身体障害者スポーツ大会・教室の開催について、啓発を実施しているが、今後はより一層の推進と、身体障害者スポーツ指導員の養成についても充実させるよう取り組まなければならない。
 また、知的障害者についても、スポーツへの取り組みに対する支援を行い、スポーツ大会を身体障害者と共同で開催するなど、スポーツ活動への参加を積極的に呼びかけていく。

表14 生活環境に関する施策
施策 施策の課題と目標
移動・交通手段の整備 障害者の自立や社会参加の妨げになっている道路交通環境を整備する。
障害者スポーツの振興 障害者が、安全に楽しくスポーツ活動に参加できるよう配慮し、健康の保持・増進・機能回復の向上を図る。
障害のない人が、各種障害者スポーツ大会に障害者とともに参加することにより、相互理解を深めることができるよう、積極的な参加を呼びかける。

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主題:
海部町障害者計画 No.1
1頁~28頁

発行者:
徳島県海部町

発行年月:
平成10年3月

文献に関する問い合わせ先:
徳島県海部町