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ともに生きる福祉社会をめざして NO.1

福井県第二次障害者福祉長期計画

福井祭り花火大会

平成6年3月

福井県

項目 内容
立案時期 平成6年3月

表紙の絵

道鎮幹夫(どうちんみきお)

昭和38年2月 福井市生まれ 療育手帳を所持
昭和56年3月 福井大学教育学部附属養護学校高等部を卒業
昭和56年4月 授産施設「梅の木授産所」に通所
平成4年4月 福祉工場「エフエフ福井」に勤務

 中学1年生の時に、学校の先生から色紙を細かくちぎって張り合わせるちぎり絵(はり絵)の指導を受け、独特の感性を活かした創作を続けている。
 「福井祭り花火大会」の作品は、毎年8月の第1金、土、日曜日の3日間、県都福井市で開催される福井フェニックスまつりのフィナーレを飾る花火大会の模様を描いたもので、1987年(昭和62年)8月に制作された。 はじめに

 福井県は、国際障害者年を契機として昭和58 年3月に第一次の「福井県障害者福祉長期計画」を策定し、障害者の福祉向上に努めてまいりました。
 この間、多くの県民の皆様の御協力により、障害者に対する理解が深まるとともに、障害者の社会活動への積極的な参加も着実に進んでいるところです。
 一方、障害者を取り巻く社会環境も大きく変化し、また、「国連・障害者の十年」が平成4年末をもって終了したため、国においても平成5年3月に「障害者対策に関する新長期計画」を策定するとともに、12月には「心身障害者対策基本法」を「障害者基本法」に改める法律を公布し、障害者の自立と社会参加を促進するための対策が積極的に進められているところです。
 福井県としても障害者や関係者の意識の変化に的確に対応するため、新しく第二次の「福井県障害者福祉長期計画」を策定しました。
 第二次計画では、県民一人ひとりが障害者に対する正しい福祉観を確立するとともに、社会環境におけるさまざまな障壁を除去し、障害者の社会活動への完全参加と平等という意識のもと、真の生きがいづくりを目標として、福祉教育の推進や障害者雇用の促進、早期療育体制の整備、住みよい福祉のまちづくりの推進等、来るべき21世紀に向けて「健康で生きがいのある福祉社会」を実感できるように、各種施策を展開することとしております。
 県民の皆様をはじめ市町村、関係者の一層の御理解と御協力を賜りますようお願い申し上げます。
 終わりに、この計画の策定に当たり、御尽力を賜りました県心身障害者対策協議会委員、幹事の皆様をはじめ、貴重な御意見をお寄せいただいた障害者関係団体や施設関係者、県民の方々に厚くお礼を申し上げます。

  平成6年3月

福井県知事 栗田幸雄

目次

◆ 第二次障害者福祉長期計画の施策体系

◆ 「障害者」等の定義

第一章 障害者福祉長期計画策定の背景と目的

第1節 障害者(児)数の現状

  1. 身体障害者の現状
  2. 知的発達障害者の現状
  3. 精神障害者の現状
  4. 障害者施設の現状

第2節 計画策定の背景

第3節 計画の目標
「完全参加と平等」の推進

第4節 計画の基本理念

第5節 計画の基本的視点

  1. 啓発・広報
  2. 住みよいまちづくりの推進
  3. 高齢化・重度化への対応
  4. 人間性の尊重と自立への支援
  5. リハビリテーション施策の推進

第二章 分野別施策の具体的方策■■

第1節 啓発・広報

  1. 基本的な考え方
  2. 啓発・広報の推進
  3. 福祉教育の推進
  4. ボランティア活動の推進

第2節 教育・育成

  1. 基本的な考え方
  2. 心身障害児の教育
  3. 障害児の育成
  4. 教員の研修・養成
  5. 後期中等教育
  6. 生涯学習の推進

第3節 雇用・就業

  1. 基本的な考え方
  2. 障害者の職業的自立を図るための施策
  3. 障害種類別雇用対策の推進
  4. 重度障害者雇用対策の推進

第4節 保健・医療

  1. 基本的な考え方
  2. 予防対策の充実
  3. 保健・医療の各種サービスの充実
  4. 保健・医療・福祉の連携

第5節 福祉サービス

  1. 基本的な考え方
  2. 生活安定のための施策充実
  3. 在宅福祉サービスの充実
  4. 施設福祉サービスの充実
  5. 福祉専門従事者の確保
  6. 福祉機器の啓発・普及

第6節 リハビリテーション

  1. 基本的な考え方
  2. リハビリテーション体系の確立
  3. 医学的リハビリテーション対策の推進
  4. 職業的リハビリテーション対策の推進
  5. 社会的リハビリテーション対策の推進
  6. 教育的リハビリテーション対策の推進

第7節 福祉のまちづくり

  1. 基本的な考え方
  2. 住みよいまちづくりの推進・普及
  3. まちづくりの推進体制の整備
  4. 建築物の整備の推進
  5. 移動・交通対策の推進
  6. 情報提供のコミュニケーション対策

第三章 施策推進のあり方■■■

  1. 啓発から行動へ
  2. 推進体制の確立
  3. 障害者基本法施行への対応
  4. 住民参加による推進
  5. 「アジア太平洋障害者の十年」への対応
  6. 計画の対応
  7. 福祉観の確立

◆ 障害者福祉に関する意識調査

◆ 障害福祉関係統計資料

  1. 年齢区分別人口の推移と将来推計
  2. 身体障害者手帳所持数の推移
  3. 知的発達障害者療育手帳所持者数の推移
  4. 精神病院患者数等の推移
  5. 特定疾患対象患者数の推移
  6. 身体障害者(児)関係施設位置図
  7. 知的発達障害者(児)関係施設位置図
  8. 身体障害者更生援護施設・知的発達障害者援護施設等の入所状況
  9. 精神病院の概況
  10. 精神病院等位置図
  11. 精神障害者社会復帰施設
  12. 18歳未満心身障害者就学数の推移
  13. 心身障害児特殊学級就学状況の推移
  14. 18歳未満特殊教育諸学校別就学者数の推移
  15. 盲・ろう・養護学校の推移
  16. 障害者の雇用状況(年度別推移)
  17. 障害年金受給権者異動状況
  18. 特別障害者手当等支給事業制度別受給者数
  19. 身体・知的発達障害者

第二次障害者福祉長期計画の施策体系

目標 理念 計画策定の基本的視点 施策部門
完全参加と平等の推進 ノーマライゼーション

リハビリテーション

啓発から行動へ

1 啓発・姫報

2 住みよいまちづくりの推進

3 重度化・重複化・高齢化への対応

4 人間性の尊重と自立への支援

5 リハビリテーション施策の推進

1 啓発・広報

2 教育・育成

3 雇用・就業

4 保健・医療

5 福祉サービス

6 リハビリテーション

7 福祉のまちづくり


本文中の「障害者」等の定義

【身体障害者】
 身体障害者福祉法第4条に規定された、同法の別表に掲げる身体上の障害がある18歳以上の者であって、都道府県知事から身体障害者手帳の交付を受けたものをいう。

【知的発達障害者】
 知的機能の障害が発達期(概ね18歳まで)にあらわれ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるものをいう。
 精神薄弱者福祉法の適用を受けるものであるが、第二次計画書中では、固有名詞を除き「知的発達障害者」の表現を使用した。

【精神障害者】
 精神保健法第3条の規定では、精神病者(中毒性精神病者を含む。)、知的発達障害者(精神薄弱者)および精神病質者をいうが、第二次計画書中では、知的発達障害者(精神薄弱者)を除くものとして表現した。

【心身障害児】
 身体障害児、知的発達障害児を合わせたものをいう。
 第2節の「教育・育成」では、学齢期にある身体障害児、知的発達障害児の他に、自閉症児や病弱虚弱児等も含めたものをいう。

【障害児】
 身体障害児、知的発達障害児および精神障害児を合わせたものをいう。

【障害者】
 身体障害者、知的発達障害者および精神障害者を合わせたものをいう。

第一章 障害者福祉長期計画策定の背景と目的

第1節 障害者(児)数の現状

1 身体障害者の現状

 福井県内には、平成5年4月1日現在、視覚障害者3,551人、聴覚障害者4,172人、音声・言語障害者242人、肢体障害者16,595人、内部障害者4,347人、合計28,907人の身体障害者手帳の交付を受けている人がおり、県人口825,046人の3.50%を占めている。
 第一次障害者福祉長期計画が策定された昭和58年当時は25,492人で、県人口805,277人の3.16%であったものが、この十年間に3,415人増加している。
 近年の特徴としては、脳血管障害や交通事故、労働災害等に起因する中途障害者や、心臓、腎臓の機能障害等に起因する内部障害者の増加とともに、65歳以上の高齢者が55%と高率になっていることが挙げられる。

2 知的発達障害者の現状

 療育手帳の交付を受けている人の数は、平成5年4月1日現在で2,936人であり、県人口825,046人の0.36%となっている。
 10年前に療育手帳の交付を受けていた人は1,704人で、県人口の0.21%であったものが、この間に1,232人増加している。
 これは各種の啓発活動や早期療育体制の整備等の施策を推進してきたことにより、県民の間に療育手帳の交付にかかわる知的発達障害者福祉の理解が浸透してきた現われと考えられる。

3 精神障害者の現状

 平成5年3月末現在の入院患者2,039人、同年3月1か月間の実通院患者6,424人であり、およそ8,500人程度の精神障害者がいるものと推定されており、その数は社会環境や人間関係の複雑化等が進行するストレス社会の中で、今後とも増加していくものと考えられる。
 これに対する医療の現状は、精神病院の数が13か所で、病床数は2,272床、精神科医師の数は47人となっている。

4 障害者施設の現状

 平成5年4月1日現在、身体障害者更生援護施設が15施設で、入所定員が880人、通所定員が74人であり、知的発達障害者援護施設は20施設、入所定員が867人、通所定員が255人で、児童福祉施設としては9施設、入所定員が405人、通所定員が90人となっている。
 昭和58年4月当時、身体障害者更生援護施設は13施設で、入所定員が790人、通所定員が35人であったが、この10年間に授産施設が1施設、療護施設が1施設、入所定員は90人、通所定員は39人それぞれ増加した。
 知的発達障害者援護施設は12施設で、入所定員が635人、通所定員が95人であったが、更生施設が3施設、授産施設が5施設、入所定員は222人、通所定員は160人それぞれ増加した。
 児童福祉施設は9施設で、入所定員が455人、通所定員が90人であったが、この十年間に施設の創設はなく入所定員が50人減少した。
 精神障害者社会復帰施設は、通所授産施設が平成5年に1施設創設された。

第2節 計画策定の背景

 福井県は、昭和56年(1981年)に、国際連合が決議をした国際障害者年の「完全参加と平等」の主旨を受け、福井県心身障害者対策協議会でまとめられた「福井県における障害者福祉の長期的あり方」を基本として、国が昭和57年3月に決定した「障害者対策に関する長期計画」を踏まえ、障害者が地域社会の中で人間としての尊厳を認められ、権利が等しく尊重される、いわゆる“ともに生きる福祉社会の実現”を目的として、昭和58年3月に『福井県の障害者福祉の方向―障害者福祉長期計画―』を策定し、福井県の障害者福祉対策の総合的かつ効果的な推進に努めてきたところである。
 国際連合では、新たに平成5年(1993年)から十年間を「アジア太平洋障害者の十年」と宣言し、引き続き障害者対策を推進することを決議し、また、国においても平成5年3月に「障害者対策に関する新長期計画-全員参加の社会づくりをめざして-」を策定し、引き続き障害者対策のなお一層の推進を宣言したことを受け、本県においても新たに長期的視点に立って、障害者を取り巻く社会環境や障害者の意識の変化に対応した計画を策定することとした。

第3節 計画の目標

「完全参加と平等」の推進

 県民の一人ひとりが正しい障害者福祉観を確立するとともに、障害者を取り巻く社会環境における様々な障壁を除去し、障害をもつ人ももたない人も「ともに生きる福祉社会づくり」を進め、障害者の社会活動への完全参加と真の生きがいづくりを実現できるように各種施策の展開を図る。

第4節 計画の基本理念

 福井県は、昭和58年3月に、障害者が地域社会のなかで人間としての尊厳を認められ、権利が等しく尊重される、障害をもつ人ももたない人もともに生きる福祉社会の実現、いわゆる「ノーマライゼーション」の理念の実現を目指して障害者福祉長期計画を策定した。
 この理念のもとで、福井県は障害者福祉の増進に取組み、障害者の社会参加、福祉施設の整備、障害者の雇用促進、早期療育体制の整備、住みよい福祉のまちづくり等の施策を着実に推進してきた結果、県民の間に障害者福祉に対する意識は著しく高まってきた。
 この十年間に、障害者を取り巻く社会環境や障害者の意識は大きく変化し、福井県としても二十一世紀に向けて、新たな障害者福祉長期計画を策定し、引続き各種施策を積極的に推進していくことが強く求められている。
 第二次計画は、前計画の理念や目標を受け継ぎながら、これまでの成果を発展させ、新たなニーズにも対応できるよう配慮するものであり、「完全参加と平等」の目標の実現に向けて、障害者が障害をもたない人とともに生活し、活動する社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念と、障害者が人間としての尊厳と生きがいをもって社会参加できることを目的とする「リハビリテーション」の理念のもと、今後およそ十年間にわたる各種施策の基本的方向を示すものである。
 なお、第二次計画の推進に当たっては、これまでの成果を踏まえ、「啓発から行動へ」のテーマに基づき、各種施策がより大きな実を結ぶように実施状況を適宜点検し、必要な調整を行うことによって広く県民の間に障害者福祉の理念が浸透することを目指すものである。

第5節 計画の基本的視点

1 啓発・広報

 障害者が地域社会のなかで人間としての尊厳を認められ、権利が等しく尊重され、障害をもつ人ももたない人も“ともに生きる福祉社会”を追求するため、県民の一人ひとりが「ノーマライゼーション」の理念を正しく理解し、認識を深め、積極的な行動を喚起するようにマスメディアを駆使し、幼少時から福祉教育を実施し、ボランティア活動の進展につながるような施策の推進に努める。

2 住みよいまちづくりの推進

 障害者を含むすべての県民が、安全かつ快適に生活できる福祉社会の実現を目指して、建築物、道路、交通機関等における物理的な障害を除去し、雪を考慮した市街地の整備を図る等障害者が利用しやすい施設環境の整備を行政、企業、県民が一体となって取り組むとともに、建築物の構造の改善、移動、交通対策、降雪期の居住環境に配慮し、安心して社会生活を送れるような施策の推進に努める。

3 高齢化・重度化への対応

 社会全体の高齢化が進んでおり、障害者についても同様に高齢化に対する施策の展開が求められている。障害者の高齢化・重度化が進むことによって、障害者の問題が一層複雑となっている。
 また、障害をもたない人であっても高齢化に伴って、障害が発生する者があり、高齢者の中に障害のある者の割合が非常に高くなってきているため、このような状況に応じた施策の展開に努める。

4 人間性の尊重と自立への支援

 障害者は特別な存在ではなく、基本的人権を有する一人の人間として、個性として最大限尊重されなければならない。
 このためには、その持てる能力が十分に発揮されることが必要である。
 すなわち、他の一般県民が受けているものと同等の権利を有し、また果たすべき義務を負い、責任ある個人として主体的に自身の生活を設計し、社会の発展に能動的に参加していくことが期待されており、障害者自身が主体性、自立性を確保し、社会へ積極的に参加していくよう努力することが必要である。
 同時に、その能力が十分発揮できるように各種施策を展開し、支援する。

5 リハビリテーション施策の推進

 リハビリテーションは、障害者が人間としての尊厳と生きがいをもって社会参加できるようにすることを目的とする理念と援助の体系の上に位置づけし、地域の中でライフステージの各段階を通じて必要なサービスが総合的に、かつ、有機的に提供されることが重要である。
 このため、医学的、職業的、社会的、教育的分野のリハビリテーションを総合的、体系的に展開していくために中核機関の設置等の基盤整備を図り、連携を深め、積極的な活動を推進する。

第二章 分野別施策の基本的方向と具体的方策

第1節 啓発・広報

1 基本的な考え方

 障害者を含むすべての県民が、安全かつ快適に生活できる平等な社会づくりを進めていくためには、社会を構成している県民の一人ひとりが障害者に対して十分に理解をし、認識を深め、これを行動に移すことが重要である。
 このため、啓発・広報の果たすべき役割は極めて大きく、「国際障害者年」以降、県民の間に生まれてきた障害者福祉に対する意識の高まりをさらに推進していかなければならない。
 今後とも積極的に啓発・広報活動を展開していくに当たっては、次の点を県民一人ひとりが十分理解することが必要である。

  1. 障害者も一人の人間として基本的人権を有しており、障害のない人と同じように地域社会のなかでともに生活し、活動することが当然のこととする障害者福祉観の確立に努めること。
  2. 2 障害者も大きな可能性を有しており、自立意識とこれに基づく努力が期待されていること。

2 啓発・広報の推進

 障害者福祉に関する意識調査の結果(別添資料参照)をみても、テレビ、新聞等のマスメディアによる啓発・広報は、大変効果的であり、県としても障害者の実態や活動状況等について、機会あるごとにマスメディアを利用して一層啓発・広報活動の展開に努める。
 「障害者の日」や「身体障害者福祉週間」、「人権週間」、「障害者雇用促進月間」、「精神薄弱福祉月間」、「精神保健普及運動」等をより有意義なものとするため、一般県民やボランティア団体等の参加を得た事業を展開し、障害者団体や福祉施設、民間団体等との連携の強化を図りながら、障害者福祉の理念が正しく理解されるよう啓発・広報に努める。

「障害者の日」 毎年12月9日
「身体障害者福祉週間」 毎年12月9日~12月15日
「人権週間」 毎年12月4日~12月10日
「障害者雇用促進月間」 毎年9月1日~9月30日
「精神薄弱福祉月間」 毎年9月1日~9月30日
「精神保健普及運動」 毎年11月初めの1週間

 県政の広報活動を、障害者にも関心と理解を深めてもらうため、「点字県政だより」やテレビ広報番組「県民サロン」に手話通訳を導入しているが、今後は、他の各種広報活動、公開資料等についても同様の手法が可能なものから積極的な導入を図り、障害者福祉の理念の普及に努める。
 県民の障害者への理解が深まるように、障害をもつ人ともたない人のふれあいの集いや、文化・スポーツ活動等の社会参加の様子について積極的な広報に努める。
 (社)福井県身体障害者福祉連合会や福井県心身障害児福祉団体連合会等の障害者団体や社会福祉協議会等の福祉団体の活動を通して、障害および障害者に関する情報を積極的に提供し、障害者福祉に対する県民の理解を深める。
 企業等の障害者雇用の責務および障害者雇用に関する各種制度の一層の周知を図り、障害者雇用意識の啓発を促進する。
 バリアフリー思想(建築物等の物理的な障壁、制度的な障壁、文化・情報における障壁、意識上の障壁等さまざまな障壁=バリアを除去する。)の普及・啓発を総合的に推進するため、住民に最も身近な市町村が、地域ぐるみで「住みよい福祉のまちづくり」事業等に積極的に取り組んでいくことが期待される。

3 福祉教育の推進

 障害者福祉の理念の普及・啓発を効果的に促進するためには、幼少時から障害者福祉に対する関心を喚起させる教育や啓発・広報が重要である。
 学校教育においては、道徳教育、特別活動をはじめ全教育活動の中に奉仕等体験学習、青少年赤十字活動、国連児童基金(ユニセフ)、交流活動を積極的に取り入れ、福祉の心を育てる教育を推進している。
 幼稚園・保育所、小・中学校、高等学校、大学等のそれぞれの段階において福祉副読本の配布、福祉姉妹校・福祉協力校の指定、障害者との交流教育、体験学習、福祉授業科目の設定等を継続的に取り組むことにより、障害者に対する理解を深める教育を実施するとともに、その活動状況を各種の広報媒体を利用して啓発・広報に努める。
 県民の障害者に関する意識を定着させるため、福祉講座や講演会の開催、ビデオテープ、映画、フィルム等のライブラリー充実等、県民の理解と認識を深める必要がある。
 啓発・広報の実施に当たっては、福祉事務所、総合福祉相談所、小児療育センター、児童相談所、保健所、精神保健センター、公共職業安定所、福祉施設等の福祉保健サービス機関、雇用機関等が連携して、地域の住民に対し具体的な活動を通して障害者福祉に対する理解と認識を深める必要がある。
 障害者に対する正しい理解と福祉意識の醸成を図るため、生涯学習センターにおけるカリキュラムの充実を図る。
 障害者の代表を海外に派遣し、海外での体験や交流の機会を設けることによって、障害者の社会参加と自立の向上を促進するとともに、他の障害者に対するはげみとなるよう広報に努める。

4 ボランティア活動の推進

 県民の障害者に対する理解を深めるためには、各種のボランティア活動にだれでも、いつでも、気軽にかつ積極的に参加できる環境整備が重要である。
 障害者福祉に関する意識調査の結果においても、75.5%の人が障害をもつ人たちともたない人たちとの交流に「参加してみたい」と、回答しており、このため、地域福祉活動の分野や学校教育、社会教育を始め生涯学習の幅広い分野において、県民のボランティア活動に対する理解が深まるように、また、その活動を支援するように努める。
 障害者も、ボランティア活動に参加し、社会に貢献していくことが重要であり、障害者の明るいくらし促進事業や精神薄弱者社会活動総合推進事業等に積極的に参加するなかで、啓発・広報に大きな役割を担うことが期待される。

第2節 教育・育成

1 基本的な考え方

 心身障害児の教育は、その可能性を最大限に伸ばし、将来社会的に自立して生活していくことができるよう、その基礎・基本を習得させることが最大の目的である。
 そのためには、心身障害児一人ひとりの障害の種類・程度、能力、適性等に応じた適切な教育を行うことが必要である。
 昭和54年度の養護学校の義務教育化に伴い、施設・設備の整備や教育内容・方法の充実および教職員定数の改善等が図られてきた。
 その結果、一人ひとりの障害児においては、障害の種類や程度により、盲、ろう、養護学校において、また、一般の小・中学校に設置された特殊学級や通級指導教室等で個に応じた教育を受けることができるようになった。
 しかし、最近、対象児の障害の種類・程度が重度化・多様化しており、教育環境の質的充実、社会的自立の推進等さまざまな課題が生じてきている。
 心身障害児の自己実現を図り、幸福な社会生活を営むためには、自身の障害の克服、改善に対する不断の努力と同時に、周囲の人たちの正しい理解・認識や支援がなければ真の社会的自立はありえない。
 これからの「全員参加の社会づくりをめざして」の精神に基づき、新しい学校教育の在り方を創造していかなければならない。
 また、心身障害児の育成は、障害の早期発見に引き続き、早期療育として適切な治療・訓練、教育等を行うことによって心身のよりよき発達を促す。
 障害を克服して社会生活への参加を図るためには、施設対策および在宅対策を総合的に推進し、心身障害児およびその家族のニーズに的確な対応を図ることが必要である。

2 心身障害児の教育

(1) 適正就学

 心身に何らかの障害を持つ一人ひとりの子供達の成長・発達を促すためには、それぞれの障害の程度や発達段階に応じた適切な教育の場が必要である。
 そのためには、教育(教育庁指導課、特殊教育センター)、医療(県立病院、小児療育センター等)、福祉(障害福祉課、児童家庭課、児童相談所等)などの各分野が一貫したシステムとして機能するよう、関係行政機関の緊密な連携を図るとともに、各市町村教育委員会等との一層の連携協力のもとに、適正就学指導の実現に努める。

(2) 早期教育・幼児教育

 心身障害児にとって、乳・幼児期において適切な対応を行うことにより、その後の望ましい成長や発達に著しい効果がみられる。
 そのため、特殊教育諸学校の幼稚部、特殊教育センターの一層の拡充と併せて、それぞれの地域社会の保育所、幼稚園における受入れ体制の充実と促進に努める必要がある。
 また、障害幼児の早期対応にあたっては、とりわけ、家庭の果たす役割が重要であることから、市町村の一歳六か月児検診や保健所の三歳児検診等関係機関との連携を図るなかで、特殊教育センター、小児療育センター、児童相談所、心身障害児関係施設等を中心として保護者に対する早期からの継続的養育相談・教育相談システムの整備に努める。

(3) 特殊教育諸学校の整備・充実

  • ア 養護学校の適正配置
     近年の特殊教育諸学校に就学する児童生徒の状況は、重度化・多様化が著しく進んでいるが、一方で、児童生徒・保護者は、特殊教育諸学校に可能な限り家庭からの通学を希望したり、地域の学校への通学を希望するケースが増えている。
     こうした中にあって、児童生徒の障害の種類や程度、通学距離等を考慮した養護学校の適正配置や通学に係る問題の検討が求められている。
  • イ 能力の開発
     児童生徒の実情に伴い、障害の特性に応じた多様な教育の展開を図るという観点から、教育内容・方法については、一人ひとりの発達を踏まえた指導計画・個別指導プログラム等の一層の改善、研究の充実、担当教職員の資質の向上など、その質的充実を図っていく必要がある。
     また、関係機関の協力のもと児童生徒の成長や発達の状況を的確に把握し、障害についての専門的知識を身につけるための教職員研修も重要である。
  • ウ 交流教育の充実
     心身障害児に対する教育は、学校だけで個々の能力の伸長が望めるものではない。
     心身障害児を取り巻く県民の理解と認識があってこそ発達が促され社会生活が可能となるのである。
     一方、心身障害児自身も、経験を広め、社会性を養い、好ましい人間関係を育てるためにも、学校の教育活動全体を通して、地域や小学校、中学校の児童生徒と活動をともにする機会を積極的に設ける必要がある。

(4) 特殊学級の充実

  • ア 校内における位置づけ
     小・中学校における特殊学級は、現在県内の26%の小・中学校に設置されているが、在籍している児童生徒数は、昭和54年の養護学校義務制以前のほぼ半分という状況にあり、特色ある教育の在り方が大きな課題である。
     特殊学級を設置している小・中学校の学校運営に当たっては、全教職員の理解と協力が不可欠で、学校全体の協力体制づくり、教育環境の整備、担当教員の適切な配置と資質の向上等に十分な配慮が必要である。
  • イ 特殊学級の運営
     特殊学級の運営に当たっては、対象児の入級指導が最も重要な課題となっている。
     入級指導に当たっては、保護者の理解を得ることが困難な場合もあり、児童生徒の障害の状況、将来の見通し等について日常の全教育活動を通して保護者との対話が必要である。
     また、特殊学級における教育の原則は、小・中学校の教育指導要領に沿って行われるが、児童生徒の心身の障害の実態に即して、一人ひとりに対し具体的な目標を設定し、適切な指導内容を選定するなどして、より効果的な指導の工夫が必要である。
     指導の場についても、特殊学級を特別な場と捉えることなく、「心身障害児は社会の中で育つ」という理念に立ち、学年や学校全体、地域社会の中でいろいろな人々との交流、豊かな体験を身に付けられるように配慮する必要がある。
  • ウ 通級指導の推進
     小・中学校の通常の学級における軽度心身障害児に対する通級による指導という新たな教育形態は、各教科等の教育は主として通常の学級で受けながら、心身の障害の状態等に応じた指導を計画的に、集中的に専任教員から受けるしくみで、この通級指導の拡充に当たっては、関係する教員相互の緊密な連携と学校全体として組織的に指導を行う必要がある。
     一方、この通級指導の対象となる軽度の心身障害児の就学指導体制の確立、施設整備の確保や専任教員の養成・研修の充実も急務である。

3 障害児の育成

(1) 適正療育

 心身障害児は、肢体不自由児から、重症心身障害児、知的発達障害児や自閉症児、病弱虚弱児等まで幅広く、その療育には、整形外科、精神科、小児科、耳鼻咽喉科、眼科、泌尿器科、歯科医療のほか心理学的療法も合わせた多面的な療育指導が必要である。
 また、児童のもつ障害をその乳・幼児期において早期に発見し、早期に療育を行うことは、その後の望ましい成長・発達に大きな効果があり、障害の予防にもつながることから、乳・幼児期の対応、学校卒業後の重度児の対応等、各段階に応じた適正な療育を展開するため、小児療育センターを中核に、児童相談所、保健所、福祉事務所、医療機関、特殊教育センター、養護学校、児童福祉施設等関係機関が密接に連携を図り、ネットワークを形成して、各種の相談事業や健康診断事業等により早期発見に努め、リハビリテーション教室事業や療育キャンプ事業等を通じて早期療育を推進する。

(2) 在宅における療育体制の整備

 心身障害児の育成には、障害の発見から早期治療・療育、教育、社会自立に至るまで、家庭の果たす役割が非常に大きい。
 障害児の生涯にわたる展望をもった地域における療育体制の整備を図り、小児療育センターを中心に、児童相談所、保健所、福祉事務所、医療機関、養護学校等関係機関が一体となって総合的なサービスを提供する必要がある。
 また、関係機関や各種障害児関係施設の適正配置、関係機関の連携体制の整備に努めるとともに、市町村の協力を得て、心身に障害のある幼児のための通園事業の整備や小規模通所訓練事業の積極的な取り組みを推進する。
 さらに、障害児施設のもつ機能を入所児だけでなく広く地域社会の心身障害児が利用できるよう、ショートステイ事業、療育キャンプ事業等の拡充に努める。

(3) 施設における療育機能の強化

 県内には、知的発達障害児施設が3か所(定員155名)、重症心身障害児施設が2か所(定員200名)、肢体不自由児入所施設が1か所(定員50名)、肢体不自由児通所施設が1か所(定員30名)、難聴幼児通園施設が1か所(定員30名)、知的発達障害児通園施設が1か所(定員30名)のほか、小規模通所施設が6か所(定員80名)となっている。
 今後は、それぞれの施設における児童の障害とその能力に応じた、適切でより効果的な療育が実施できるよう質的な条件整備を図るとともに、地域の身近なところで療育機能が確保されるよう施設の整備と機能強化の推進に努める。

4 教員の研修・養成

 特殊教育は、通常の小・中学校の一般的な教育課程による教育方法ではなく、障害に応じた内容や指導方法が必要であり、そのための教員一人ひとりの専門的資質の向上が求められる。
 教員の研修は、第一義的には一人ひとりの教員の不断の努力によるところが大きいが、今後の方向としては、地域ぐるみ学校ぐるみの研修が考えられ、実践や事例を踏まえた継続的な研修が必要である。
 また、特殊教育における教職員の役割の重要性に鑑み、教職員の養成・研修に当たっては、計画的・組織的な研修の機会を設け一層の充実を図る必要がある。
 一方、心身障害児の多様な教育を展開するという観点からすべての教員が、心身障害児について正しい理解と認識を持つようにするための方策、教員の人事配置の在り方について検討する必要がある。

5 後期中等教育

 義務教育終了後の心身障害児の進路は、特殊学級卒業者の40%、特殊教育諸学校卒業者の75%が高等部に進学する状況の中で、社会との接点となる高等部における職業教育の充実は極めて重要な課題となってきている。
 一人ひとりの生徒の社会自立を目指すためには、障害の種類や程度、適性や希望を踏まえ、地場産業や学校の特色を生かした職業教育の充実が求められている。
 また、一人ひとりに応じた進路指導を推進していくためには、作業所(授産所)、企業等での体験学習や現場実習を計画的に実施することが重要である。
 一方、一人ひとりの生徒の社会参加は、学校教育だけでは解決できないこともあり、普段から保護者の理解と協力を得る中で、現場実習等を通して公共職業安定所、障害者雇用促進協会、障害者職業センター等労働関係機関および各企業との連携を一層強化していく必要がある。

6 生涯学習の推進

(1) 学習の機会の充実

 障害者が人生のそれぞれの時期に、社会の変化に関わりを持ちながら生活の質を高め、自己の持つ多くの可能性を追及し、生きがいを創造していく学習ができるよう学習機会の充実を図ることが重要である。
 これまで、障害者施設では施設を中心に生活訓練、農作業の実習、陶芸、音楽、スポーツ等の学習活動が取り組まれているが、施設内に地域住民との交流スペースの整備を図り、地域との交流を深めながら、活発化していくことが必要である。
 また、在宅の障害者が日常生活のなかで文化・スポーツ活動に触れる機会を確保するために、各種文化・スポーツ教室や障害者スポーツ大会等が開催されており、これらの事業への参加と利活用を促進する。

(2) 学習支援体制の充実

 障害者を含むすべての人々が、ともに生きがいのある福祉社会を実現するためには、障害者に対する十分な理解と配慮が必要であり、そのための学習を促進する必要がある。
 このため、地域のまつり、文化祭、スポーツ行事等に障害者も積極的に参加できるように地域活動の取組みに努める。
 また、障害者の学習活動を促進する上で、学習ボランティアの果たす役割は重要である。現在、県内には手話や点訳等のボランティアグループがあり、これらグループ相互の交流を促進し、活動状況の情報を提供する体制を整え、ボランティア活動の拡大を図る。

(3) 学習の場の整備

 幼児期からの福祉活動の体験を通して、福祉の心や社会連帯の意識を育むことが重要であり、ボランティア活動についての学習を一層推進することが重要である。
 また、幼児期から高齢期にいたるまで生涯を通じた福祉教育、学習の機会を提供していく必要がある。
 このため、障害者が気軽に学習活動に参加できるように、生涯学習関連施設や青少年教育施設等において、障害者の利便性を配慮した施設設備の整備を進めることが必要であり、生涯学習センター、美術館、博物館、図書館等の文化施設、学習施設において、障害者も利用しやすい環境づくりに努める。

第3節 雇用・就業

1 基本的な考え方

 働く意欲と能力を有するすべての障害者がその適性と能力に応じ、雇用の場が確保され、健常者とともに自然に働けるような社会の実現を目指し、障害者の雇用の確保およびその職業の安定のための対策を総合的に推進する。
 また、一般雇用に就くことが困難な重度障害者については、雇用対策および福祉対策の緊密な連携のもとに福祉的就労の場を確保するとともに、自営業を含めた多様な就労形態での就業対策の推進に努める。

【一般雇用】

  •  働く意志と能力のある障害者が、その能力に適合する職業に就くことを通じて、その職業生活において自立を図るため事業主に雇用されていることをいう。

2 障害者の職業的自立を図るための施策

 障害者の職業的自立を図るため、「ノーマライゼーション」の理念の実現に向けて県民の認識が深まるよう一層の啓発・広報を進めるとともに、雇用、福祉および教育を中心に関係機関の緊密な連携を図りながら福祉、教育、生活環境面での諸条件を整えていく必要がある。
 障害者の雇用対策については、障害者が可能な限り一般雇用に就くことができるように、障害者の特性等に応じたきめ細かな対策を講じることを基本方針に障害者の就業ニーズなどを把握して、その雇用の場の確保に向けた施策を推進する。
 なお、障害者がその障害の特性に応じて就労できるよう、公共職業安定所および障害者職業センターは、適性検査や綿密な相談指導を通じて一人ひとりの障害者の適性と能力を把握し、(社)福井県障害者雇用促進協会等の関係機関と連携し、これに見合う職場や職業訓練機関の確保を図る。
 障害者の雇用を進めるため、いままでの雇用の実績や成功例と、今後の職域拡大について調査研究し、その成果の普及を推進する。
 また、重点公共職業安定所を中心に求人者、求職者それぞれのニーズに応じた情報を提供できる体制を強化するとともに、障害者の働きやすい職場環境づくりに向けて、事業主が労働組合その他の関係者の協力を得つつ、一体となって取り組んでいくことが重要であり、これら関係者の理解の促進に努める。
 現に雇用されている障害者については、身体障害者(知的発達障害者)職業相談員の充実や企業が選任する障害者職業生活相談員・障害者雇用推進者の育成に努めるなど、その雇用の実情を踏まえた雇用の継続を図るとともに、労働条件を含む職業生活の向上が図られるように努める。 さらに、障害者が職場において作業を容易に行えるよう、施設や設備を改善するため、事業主に障害者作業施設設置等助成金、重度障害者職場適応助成金等の助成制度の活用を指導する。
 これらの障害者の雇用を取り巻く社会環境の整備とあいまって、法定雇用率が達成されるよう雇用率制度を適正に運用する。特に、法定雇用率未達成の企業に対し雇用計画の作成等を指導するとともに、障害者雇用促進協会をはじめ、経営者団体を通じて雇用率制度を継続的に周知徹底する。

3 障害種類別雇用対策の推進

 障害者全般の雇用状況については、相当改善されてきているが、両上肢障害者、視覚障害者、脳性マヒ者等の身体障害者、知的発達障害者および精神障害者については、必ずしも十分に改善されていない状況にあり、重複障害の場合を含め、障害種類別の特性に応じたきめ細かな対策を推進する。

(1) 身体障害者雇用対策の推進

 身体障害者の職域を拡大するため、障害者用マイクロエレクトロニクス機器の開発が進められており、今後、これらを利用した機械設備の導入についても促進を図る。
 また、第3セクター方式による重度障害者雇用企業および重度障害者多数雇用事業所の設置を促進する。同時に労働市場の動向に対応し、障害者の特性に応じた効果的な職業能力開発のための職業訓練を実施する。
 視覚障害者については、従来よりあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の業務に従事している者が多いが、その就業の場が狭まっているなどの事情に鑑み、これら自営業等に就いている障害者の就業実態の把握に努め、必要な対策を検討する。
 コミュニケーションを図る上で困難を有する視覚障害者、聴覚障害者等に対しては、コミュニケーションの円滑化を図るための人的援助その他の援助措置の充実を図り、職域の拡大に努める。

(2) 知的発達障害者雇用対策の推進

 知的発達障害者の雇用の促進を図るため、今後とも障害者職業能力開発校や県内の公共職業能力開発校における職業訓練、企業における教育訓練の充実等各種対策を一層推進する。
 また、知的発達障害者の職域の拡大と職場における定着を図るとともに、社会生活面でのニーズに対応するため、グループホーム事業や生活支援事業の推進等、地域で生活する上で必要な人的援助等のソフト面からの支援体制の整備を図る。
 知的発達障害者の雇用の円滑化を図るために、企業に就労する前の段階の学校教育または障害者施設での指導訓練において、職業人として必要な基本的知識、技能、態度を身につけるための現場実習の充実を図る。
 授産施設と企業との連携による能力開発の充実等、知的発達障害者の特性に配慮した能力開発を推進する。

(3) 精神障害者雇用対策の推進

 精神障害者の雇用促進を図るため、勤務形態等の職能的諸条件や医療・福祉機関との連携の在り方等について検討を行い、必要な施策の充実に努める必要がある。
 精神障害者の雇用は、他の障害者に比べ、事業主をはじめ社会一般の理解が遅れていることを考慮して、その啓発を推進するとともに、社会復帰施設の整備など社会復帰対策の充実、保健所における通院患者リハビリテーション事業の充実、公共職業安定所におけるきめ細かな職業相談、職業指導を実施する体制の整備など生活面からの支援体制の充実を図る。

4 重度障害者雇用対策の推進

(1) 重度障害者の職業的自立の推進

 一般雇用に就くことが困難な重度障害者について、自営業等も含めた職域の開発、就業の場の拡大を進め、障害者の職業的自立を図る。
 重度障害者の雇用を促進し、職業の安定を図るために、事業主に対し「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づく重度障害者に対する雇用率制度および納付金制度の周知徹底を図るとともに、重度障害者の雇用にかかる助成金制度の有効な活用を推進して、重度障害者の雇用の促進と職業の安定を図る。
 重度障害者については、勤務形態に関して配慮を図ることが雇用の促進に効果的であることから、短時間勤務、在宅勤務、フレックスタイム制等の多様な勤務形態の活用を図る。
 第3セクター方式による重度障害者雇用企業の育成、重度障害者多数雇用事業所の設置を促進する。
 重度障害者の就労の場の確保については、できる限り授産施設と一般雇用の場との間に流動性を持たせるよう、授産施設と企業の連携による能力開発の充実を図るとともに、授産施設の柔軟な制度運営を促進することにより、一般雇用への就労の確保に努める。
 障害者が働きやすい施設・設備等の職場環境や通勤、住宅等の障害者の職業生活にかかわる社会環境を整備することによって、障害者の職業的自立を進めることが重要であり、そのための支援策の充実を図る。

(2) 一般雇用が困難な者に対する施策の推進

 一般雇用が困難な障害者については、障害の程度に応じた福祉的就労を行うことが重要である。
 このため、在宅福祉サービスとの連携を重視した通所型の授産施設および一般企業に就労できない障害者を雇用し、生活指導、健康管理等に配慮した環境のもとで社会的自立を促進する福祉工場を計画的に整備するとともに、適切な施設利用の確保、職住分離、生産性の向上等の施策を推進する。
 また、知的発達障害者については職親制度、精神障害者については社会適応訓練事業制度の充実を図る。

(3) 高齢化への対応

 一般雇用に就いている障害者も高齢化が進んでおり、高齢化した重度障害者のニーズに応じた勤務形態や退職後の生活の場について検討する必要がある。
 また、公共職業安定所、障害者雇用促進協会、高齢者無料職業紹介所等において、きめ細かな職業相談や求人開拓等により、就業機会の確保を図るなど総合的な雇用・就業対策を検討する。

第4節 保健・医療

1 基本的な考え方

 保健・医療については、障害の発生予防、早期発見、早期治療、研究および医療の推進が重要である。障害の原因究明のための各種研究の推進を図り、その成果を生かした発生予防、早期発見、早期治療、根本的治療のための各種対策の一層の充実が求められている。
 特に、障害を生じた初期の段階から、本人および家族に対して障害の軽減に係る各種サービスの紹介、精神的な支援等を行う相談指導など保健・医療サービス体制の充実を図る必要がある。
 また、保健・医療・福祉の各分野ごとの各種の施策についても、施策の実施において全体の効率性を高めるために、保健・医療・福祉の有機的連携を図っていくことが重要である。
 特に、近年、合併症を有する障害者、内部障害者等定期的な医学的管理を必要とする障害者が増加する傾向にあり、こうした状況に適切に対応するためにも、これら施策の有機的連携が必要である。

2 予防対策の充実

(1) 健康診査

 疾病や異常を早期に発見し障害を未然に予防するために、妊産婦、乳幼児の母子健康診査および学校、職域、老人保健のそれぞれの健康診査体制・内容の充実を図る。
(参考 福井県保健医療計画)

(2) 健康教育

 母体の健全育成についての正しい知識や理解を深めるための思春期健康教室やエイズ教育、婚前学級の充実を図るとともに、生活習慣が基礎となる成人病予防のため「自分の健康は自分でつくる」という意識の普及・啓発および健康教育、健康相談の拡充を図る。
 また、「寝たきりは防止できる」というリハビリテーションの知識を広く県民に普及する。さらに、心の健康づくりを推進するために、精神保健に関する知識の普及・啓発を行うとともに相談体制の充実を図る。

(3) 生活環境対策の推進

 交通事故や労働災害、スポーツ事故、高齢者の家庭内事故等の未然防止のため、これらの安全対策の徹底を図る。

3 保健・医療の各種サービスの充実・強化

(1) 障害児対策

 障害児には、障害に対する治療的な関わりと、発達を促すための教育的な関わりが不可欠である。このため、保健・医療・福祉・教育の有機的な連携による地域療育体制づくりを推進する。
 また、保健婦等による育児相談指導、母子保健推進員による育児アドバイス等、相談・指導体制の充実を図るとともに、悪性新生物等の小児慢性特定疾患についての治療研究の充実、育成医療の給付および補装具や日常生活用具の交付事業の普及を図る。

(2) 障害者対策

 在宅療養を選択する障害者が増加しつつある現在、機能訓練、訪問指導等による在宅療養支援体制を一層推進し、障害者への保健・医療サービスの充実を図る。
 また、更生医療の給付および重度心身障害者(児)医療無料化対策事業の利用促進について普及・啓発を図る。

(3) その他障害児(者)の対策

  • ア 歯科診療
     障害児(者)の歯科診療については、福井口腔保健センターの利用促進を図るとともに、市町村や保健所等関係機関を通じて歯の磨き方や歯を磨く習慣等、歯科衛生についての正しい知識の普及・啓発に努める。
  • イ 難病
     難病については、特定疾患の治療研究の推進、相談指導体制の充実、患者の療養環境の整備等総合的な施策を促進する。
  • ウ 腎不全
     腎不全については、腎不全治療についての理解を得るために、知識の普及・啓発および移植に係る腎臓提供者の登録をさらに推進する。
  • エ 精神障害
     精神障害対策については、精神保健センターの機能の充実強化を図るとともに、精神障害者に対する援助活動を一層推進し社会復帰の促進を図る。
     また、痴呆性老人に対しては、保健所において訪問指導や介護教育等の老人精神保健対策を推進する。

4 保健・医療・福祉の連携

(1) 人材の確保

 保健・医療の推進に当たっては、医療の高度化、障害の重度化・重複化に対応するために専門的技術を有する質の高い職員の確保が不可欠であり、人材の計画的育成を図っていく必要がある。
 引き続き、高度・特殊・専門的な研究を行う医療機関との連携のもとに保健婦、看護婦(士)、理学療法士、作業療法士、言語療法士、相談指導員等の養成に努めるとともに、知識・技術を高めるための研修体制の整備を図る。

(2) 連携の体制づくりの推進

 クオリティー・オブ・ライフ(生活の質)の向上に向けて増大かつ多様化する障害者のニーズに対応するためには、障害の発見段階からその後の生活指導・訓練の段階まで、生涯にわたり一貫した対策を進める必要がある。
 保健・医療・福祉など各種施策の有機的連携を図り施策の効率性を高めるとともに、医療機関、小児療育センター、精神保健センター、保健所、市町村、児童相談所、養護学校、各種施設が相互の連絡を密にして、障害者のニーズに柔軟に対応できる保健・医療・福祉体制の整備を図る。

第5節 福祉サービス

1 基本的な考え方

 人びとが生活する上で、家庭とそれを取り巻く地域社会は基本的な基盤であり、障害をもつ人も自立を志しながら家族と地域社会の中でともに生活することが自然の姿である。
 障害者の自立と社会参加を理念とする福祉サービスは、住み慣れた地域社会での暮らしを支援していくことを基本とする。
 この基本認識をもとに、今後は特に在宅福祉と施設福祉サービスを一元的かつ計画的に実施する体制の確立が不可欠である。
 また、障害者に最も身近な市町村の役割を重視した福祉サービスの充実を図っていくことが重要課題となっている。
 以上の視点に立って、次の事項を重点目標とした福祉の推進に努める。

  1. 所得の保障や経済的負担の軽減に配慮した生活安定のための施策の充実
  2. 地域での生活を支援するため、障害者のみならず障害者を介護している家庭援助を含む在宅福祉サービスの充実
  3. 家庭での介護が困難であったり、訓練等が必要な障害者の多様化するニーズに応じた各種施設サービスの充実
  4. 福祉専門従事者の養成

2 生活安定のための施策の充実

 障害を事由とする年金や手当は、障害者の生活を保障し、経済的自立を図る上で大きな役割を果たしており、各種制度の周知徹底を図る。保護者が死亡または重度障害者になったときに備えて、障害者に支給される心身障害者扶養共済制度の加入を促進する。
 また、障害者を介護する家庭に対する支援策として、介護負担を軽減する在宅福祉サービスの充実を図ることによって、障害者を含む家庭の生活安定確保に努める。
 なお、所得保障については、原則的に国において措置されるべきものであり、国へ働きかけていくこととするが、県として独自に対応すべきものについては、今後とも積極的に検討する。

3 在宅福祉サービスの充実

 近年、「国際障害者年」等を契機として、住みなれた地域社会での在宅生活を希望する障害者の増加に対処して、介護者も含めた在宅生活を支援する在宅福祉サービスの一層の充実が求められている。
 まず、障害の状態や生活実態に応じた適切な指導、相談体制を充実させていく必要がある。
 また、自立を促すために補装具や日常生活用具の給付や居住環境の整備を行い、障害者の日常生活への適応性を高めていくことも重要である。
 その上で、なお身辺処理等に介助、介護を要する障害者には、家庭状況等に応じた介護サービス対策が必要である。
 今後とも、人口構造の高齢化や核家族化の進行、扶養意識の変化による家庭機能の低下に伴い、福祉ニーズも多様化し拡大する傾向にある。
 このため、障害者やその家族の状況に応じて、地域住民である県民の参加と協力によって、きめ細かな在宅福祉サービスの充実を図ることが求められている。

(1) ホームヘルプサービス、ショートステイ、デイサービス事業

 在宅福祉サービスの基本となるものであり、全市町村で障害者のニーズに対応できるよう体制の整備を図る。
 ホームヘルプサービスについては、障害者対象ヘルパーを設置していない市町村にあっても、老人対象ヘルパーを活用し相互利用を図る。
 また、視覚障害者等の外出介護を行うガイドヘルパーは、14市町村において設置されているが、今後とも、未実施町村への取組みについて指導に努める。
 ショートステイについては、身体障害者更生援護施設と老人福祉施設との相互利用ができるよう国へ要望をしていく。
 デイサービスについては、三方町が地域福祉センターを設置し身体障害者デイサービスを実施している他、21市町村が老人デイサービスとの相互利用により身体障害者の利用に対応している。全市町村ができるだけ早期に実施体制を整備するように、未実施市町村への指導に努める。
 また、知的発達障害児のデイサービスについては、心身障害児通園事業を県内全域で利用できるよう、市町村の指導を積極的に進める。
 なお、重度の視力障害者と肢体不自由者については、住宅の改造費の助成を行っているが、今後とも事業の継続に努め必要に応じて制度の見直しを行う。

(2) コミュニケーション対策

 視覚や聴覚に障害をもつ人は、情報の入手や意志の伝達について制約があるため各種の施策を検討する必要がある。
 専門技術をもったボランティアである点訳、朗読および手話奉仕員等の養成事業ならびに手話奉仕員の派遣事業等については、障害者の要望に対応できる体制はおおむね確保されつつあるので、今後は、専門技術をより向上させるための講習・研修の充実や資格制度についての検討が必要である。
 また、中途失聴者等の手話の会得が困難な聴力障害者については、要約筆記奉仕員養成事業を実施し派遣体制を整備する。
 さらに、手話通訳者を設置する市町村について、積極的に支援するとともに、公共的な民間施設についても、手話通訳ができる職員の配置促進策を検討する必要がある。
 聴覚障害者情報提供施設については、関係団体の意向を踏まえてこの計画期間中の設置にむけて検討していく。

(3) 社会参加の促進

 この十年間に障害者の社会参加については、かなりの成果が挙がったと考えられる。
 特に、平成3年度に身体障害者社会参加促進センターを福井県身体障害者福祉連合会に設置して、障害者自らが主体的かつ効果的に社会参加促進事業を計画実施する体制を整備したところである。
 社会参加の促進に当たっては、生活環境の整備を促進するとともに、この社会参加促進センターと連携して、社会参加促進事業の拡充に努めていく。
 今後は、知的発達障害者や精神障害者をも含む社会参加を促進するための障害者総合センター等の整備が必要である。
 また、就労、社会参加等に際し、移動手段の確保は重要であり、JRをはじめとする私鉄およびバスの割引、有料道路の割引、自動車税の減免など各種障害者割引制度の周知を図るとともに、運転免許の取得や自動車の障害者用改造に対する助成制度を効果的に実施する。

(4) 文化、スポーツの振興

 障害者にとってのゆとりある生活や生きがいと潤いのある生活を確保するために、障害者団体等の協力を得て、各種の文化、スポーツ教室やスポーツ大会等の充実を図っていく。
 また、今後は、障害者スポーツの振興を一層促進するため、障害者自身が主体的にスポーツ教室やスポーツ大会等の企画、運営を行う障害者スポーツ協会の設立を検討する。
 さらに、生涯学習の機会確保のため、生涯学習施設や生涯学習事業の拡充とスタッフの養成等の施策を検討する。

(5) 相談、指導体制の充実

 地域での身近な相談相手として障害者相談員や民生児童委員の役割に大きな期待が寄せられているが、今後とも、研修等を実施して相談員等の資質の向上を図る。
 また、身体障害者および精神薄弱者更生相談所ならびに精神保健センターの相談、指導機能の充実を図るとともに市町村、保健所、障害者施設など関係機関とのネットワークを確立して、相談、指導体制の連携の強化に努める。

(6) 在宅知的発達障害者対策

 地域社会で生活する知的発達障害者に対し、福祉事務所、精神薄弱者更生相談所、施設等関係機関が一体となって、総合的なサービスを提供していくためのネットワークを構築し、地域療育拠点施設を指定して療育に関する相談や、地域療育事業を始めとした各種福祉サービスの提供・調整等を行うとともに、生活支援事業を推進することにより、その就労や地域社会での生活への支援体制の充実を図る。
 また、グループホームの整備については、現在、地域的に偏りがあるので、今後は、県内全域での整備を積極的に推進する。

(7) 在宅精神障害者対策

 精神障害者については、地域の中で「生活しながら」治療が受けられる体制づくりを整備することが、在宅生活が可能となる基本の一つである。
 その際、在宅福祉対策を総合的かつ体系的に整備していくことが重要であり、特に、社会復帰を促進し自立を支援するために、通所授産施設と共同住居(グループホーム)等の住居の整備が求められている。
 今後は、保健所や市町村等の連携を強化して小規模作業所の法人化への支援を行い、共同住居、福祉ホームなど対象者数や地域配置を考慮して整備を促進する。
 さらに、精神障害者を地域で支えるために患者家族会、ボランティアの拡充および地域社会が正しく理解し、認識するための一層の啓蒙・啓発の充実に努める。
 また、医師や保健婦や病院ケースワーカー等の連携の強化を図って、精神障害者とその家族を支援する体制を充実していくことも重要である。

(8) 障害者関係団体の活性化

 福祉の向上、障害者問題の啓発、親睦等を目的とした団体が、障害別や地域ブロック単位および県内全域を対象として組織されており、自主的活動として大会や研修会を開催している。
 身体障害者39団体による福井県身体障害者福祉連合会、心身障害児者13団体からなる福井県心身障害児者福祉団体連合会および各保健所単位に精神障害者家族会がある。
 また、身体障害者更生援護施設と知的発達障害者援護施設がそれぞれ連絡団体を組織して、職員研修や入所者処遇の検討会等を実施している。
 今後、障害者社会参加促進センターを中核として、各団体間の連携強化と活性化の方策を検討していく必要がある。
 特に、団体の活性化を図るためには、青年部を組織するなど、青年の参加を促進する工夫が求められる。

4 施設福祉サービスの充実

(1) 施設対策の推進

 施設は、これまで、家庭生活が困難であったり、社会生活への適応訓練等が必要な障害者を対象とした機関として考えられてきたが、今後は、ショートステイやデイサービス等の在宅福祉サービスの提供が、より一層求められている。
 また、施設の処遇技術を在宅福祉サービスに活用し、施設福祉サービスとの一体化を図ることは、障害者福祉全体の向上につながるとともに、地域社会との相互交流を促進するものと期待される。
 したがって、在宅と施設の両サービスが有機的連携を保ちつつ、相互に補完し合うことが求められている。
 施設の整備については、障害者のニーズの多様化に対応するため、現状の施設の実態や中途障害者をも含めた障害者の動向を十分把握し、障害者のライフステージや障害の程度に応じた体系の中で進めるとともに、地域的バランスを考慮して障害者が各地域で利用しやすい施設を整備する。
 特に、増加の傾向にある重度・重複障害者については、現実問題として、自立や社会参加について困難な点が多く、常時の援護や介護など入所処遇について、人間的な生活ができるような生活の質の向上に努めていく必要がある。
 さらに、障害者の高齢化が進んでおり、また、助齢者の中にも障害を有するものが多くなっているため、今後の施設整備に当たっては高齢化への対応策が重要である。

(2) 施設の整備状況

 身体障害者更生援護施設については、入所型が13施設で定員880人、通所型が4施設74人(内2施設24人は入所と併設型)で合計定員954人となっている。
 その他利用施設として点字図書館、身体障害者福祉センター、盲人ホームがそれぞれ1か所づつ設置されている。
 知的発達障害者援護施設については、入所型が13施設で定員867人、通所型が7施設定員255人で合計定員1,122人となっている。
 児童福祉施設については、入所型が6施設で定員405人、通所型が3施設定員90人で合計定員495人となっている。
 その他、心身障害児通園事業を敦賀市、武生市の2か所、小規模通所訓練事業を小浜市や勝山市等6か所実施している。
 なお、精神障害者社会復帰施設については、現在、通所授産施設が1か所で定員20人、小規模作業所が6か所120人で合計7施設定員140人となっている。

(3) 開かれた施設の推進

 施設は入所者のみを対象にしてその機能を活用するだけでなく、専門的諸機能の地域社会への開放を積極的に図り、ショートステイ、デイサービスの実施や地域社会へのボランティア活動等の役割が求められている。
 また、施設行事や地域行事へ相互に参加したり、ボランティアの受入れ等により、今後も一層地域社会、住民との交流促進に努め、互いの理解を図っていく必要がある。
 さらに、施設は職員に対して研修の機会を与えるとともに勤務条件の改善を進めるなど、魅力ある職場となるよう努めていく必要がある。

(4) 施設機能強化の推進

 入所期間の長期化や高齢化に応じた処遇についても、リハビリテーション機能の充実や在宅福祉サービスの受入れ等を整備するほか、更生相談所等と連携を取って、障害の程度や家庭状況を考慮した適切な処遇に努める必要がある。
 また、知的発達障害児(者)等で強度行動障害を示すものについて、特別処遇体制を整え、適切な指導訓練を行うこととする。

(5) 施設種類別の整備方針

  • ア 身体障害者更生援護施設
     入所者の高齢化に伴い、施設の中で重度障害者の占める割合が大きくなる傾向にあるため、今後、高齢者棟の整備について検討するとともに、老人福祉施設や療護施設への措置替え等、地域内で障害の程度に応じた適切な措置が受けられるように整備する。
  • イ 知的発達障害者援護施設
     嶺南地域における知的発達障害者入所および通所施設の整備を推進する。
  • ウ 児童福祉施設
     嶺南地域への小児療育センター機能を有する施設の整備を行うとともに、知的発達障害児施設については、今後のニーズに対応して整備を検討する。
  • エ 精神障害者施設
     地域バランスを考慮して授産施設、援護寮、福祉ホーム等の社会復帰施設の整備を促進する。
  • オ 授産施設等
     在宅福祉サービスとの連携を重視した通所型の授産施設については、地域バランスを考慮した整備を図るとともに、福祉工場の設置および小規模作業所の認可施設への転換促進を図る。
     また、授産事業の振興を図るため、自主製品の研究、開発、販路の拡大を行う拠点として、授産振興センターの設置を検討する。

(6) 老朽施設等の改築整備

 昭和40年代以前に建築された施設は、老朽化が一段と進み大きな課題となっていることから、これらの施設を計画的に整備する。
 また、入所者処遇改善や居住環境の向上を図るための施設の改造等についても計画的に進めていくことが重要である。
 県が設置する施設についても、民間施設の整備や老朽化施設の改築と併せて整備を図る。

5 人材の養成・確保

 障害者のニーズの多様化や障害の重度化に伴って、在宅および施設福祉サービスに従事するホームヘルパー、看護婦、理学療法士、介護福祉士等の介護・看護やリハビリテーションに従事する者の養成・確保が、今後ますます重要な課題となる。
 また、出生率の低下に伴い、労働力人口は西暦2000年以降減少をたどると予想されているが、中長期的視点に立って人材の養成・確保を図っていくことが必要である。
 なお、身体障害者福祉法等の改正によって、平成5年度から市町村が身体障害者福祉の援護を総合的に実施することになったことに伴い、担当職員に対する実務的研修を計画的に実施して資質向上を図ることが必要である。

(1) 人材の養成・確保、資質の向上

 福祉従事者に対する介護福祉士資格取得の促進、介護福祉士修学資金の充実、介護福祉士養成施設の整備等により、専門的知識や技術をもった従事者の養成・確保を図る。
 また、保健婦、看護婦等の養成と確保に努めるため、看護婦養成機関等の運営、設備の充実を図っていく。
 理学療法士等のリハビリテーションに従事する職員についても、今後の需要動向によって修学資金や養成施設等を検討していく。
 歯科衛生士についても、市町村における歯科疾患予防対策の充実強化等による需要を確保するため、潜在有資格者等の活用を検討する必要がある。
 障害者の重度化や高齢化、さらに福祉ニーズの多様化に対応していくため、福井県社会福祉研修所で実施されている施設職員やホームヘルパーなどを対象とした研修について、研修内容の充実を図り、従事者の資質の向上を図る。
 さらに、福祉先進国に障害者福祉施設等の職員を派遣して福祉制度や処遇技術についての研修を実施するとともに、今後は、アジアの一員としてアジア諸国からの福祉研修生の受け入れについても検討する。

(2) 就業の促進、定着化等

 社会福祉事業への就労の登録、斡旋等を行う福祉人材センターの機能の活用により、就業の促進、定着化を図っていくとともに、福祉機器やOA機器を活用した業務の省力化、労働時間や休日、福利厚生、育児休業制度の普及定着、保育対策の充実など従事者が働きやすい職場環境の整備を図る。
 また、意欲ある優秀な人材の参加を得るためには、社会福祉の仕事の意義と重要性について県民の認識を高めるとともに、福祉サービス従事者の社会的評価の向上を図ることが必要である。

6 福祉機器の啓発・普及

 補装具や日常生活用具等の福祉機器や介護用品は、障害者の自立、社会参加の可能性を高めるとともに、介護者の介護の労力を軽減するものであり、障害者には必要不可欠なものとなっている。
 近年の技術革新により高度な機能をもつ用具が開発され、障害の保持、代替をするという狭義な役割から、移動やコミュニケーションの確保、職場や住宅等の生活環境の改善等に果たす役割が拡大している。
 福祉機器等の障害者への情報提供については、市町村、関係機関との連携を緊密にして啓発・普及に努める。
 また、各種大会等を利用して福祉機器等の展示を行い、一層の啓発・普及に努めるとともに、福祉機器等の常設展示とその相談、指導を実施する機関について検討する。
 さらに、福祉機器等を必要とする障害者等に迅速に供給できるよう福祉機器等の再利用のシステム化や情報のネットワーク化を図るとともに、実施機関である市町村において、福祉機器等に関する情報の提供、相談窓口の整備等を検討する。

第6節 リハビリテーション

1 基本的な考え方

 障害者にとって、障害の除去や軽減および機能回復を図る医学的リハビリテーションの重要性は大きく認識されているが、“障害者が人間としての尊厳と生きがいをもって社会参加できるようにする”ことを目的とした理念と援助の体系として、リハビリテーションを位置づけ、今後は医学的、職業的、社会的、教育的リハビリテーションの各分野の充実と、それらを総合的かつ体系的に展開するとともに、基盤整備を図る必要がある。

2 リハビリテーション体系の確立

 障害者に対するリハビリテーションには、更生医療をはじめ理学療法等による機能の回復・維持および障害の発生予防の分野である医学的リハビリテーション、職業相談・指導や職業訓練および授産施設や福祉作業所の就労促進を図る職業的リハビリテーション、障害者の生活に直結した各種福祉サービスの充実、生活環境の改善整備を推進する社会的リハビリテーションならびに養護学校や小・中学校、高等学校等の学校教育の場で障害者の社会的自立を促す教育的リハビリテーションの4つの分野がある。
 これらの各分野のリハビリテーションが個々の分野を超えて、相互の連携をとり相談-判定-治療-訓練-指導-教育-授産-就労が体系化され、障害者が真に自立していくために、心理的リハビリテーションを含めた総合的なサービスを提供していくことが必要である。
 医療、職業、社会、教育の4分野のリハビリテーションが有機的に連携し、機能していくためには、総合リハビリテーションシステムの中核機関を整備することが必要である。
 このため、児童相談所、身体障害者更生相談所、精神薄弱者更生相談所、身体障害者更生指導所等が設置されている福井県総合福祉相談所を、県内全域にわたる総合相談、情報の収集・提供、研究開発、地域支援、施設援護等の機能を併せもつ「総合リハビリテーションセンター」として機能の充実を図る。
 また、精神障害者については、福井県精神保健センターにおいて、その施設および機能の見直し等を含めて整備充実を図り、保健所、市町村保健センター等と積極的に連携・協力して対応することとする。

3 医学的リハビリテーション対策の推進

 専門的なリハビリテーションを行う総合病院等の医療機関と地域社会で機能維持のためのリハビリテーションを行う一般病院等の医療機関、老人保健施設、市町村保健センター、老人デイサービスセンターなど医療機関相互の連携を強化するとともに、関係機関のネットワーク化を図り効率的な医学的リハビリテーションを提供できる体制が必要である。
 障害児に対する早期発見、早期療育は、障害の重度化を防ぎ、社会適応性を高めるのに重要であることから、市町村保健センター、医療機関、小児療育センター等の協力体制を強化する。
 原因が不明で治療方法が未確定であり、後遣症を残すおそれのある難病については、長期の療養を余儀なくされる場合があり、今後とも相談指導体制の充実、患者の療養環境の整備等を図り、総合的な医療リハビリテーション施策を推進する。
 腎不全等の対策については、広く県民の理解を得るための普及・啓発および移植にかかる提供者の登録をさらに推進する。
 リハビリテーション医療の充実を図るため、医療の高度化、多様化、専門化に対応できる医療体制の確立と併せて、理学療法士、作業療法士、言語療法士等の人材を計画的に養成し、在宅リハビリテーションに対処できる要員の確保に努める。
 精神保健については、地域における精神保健相談、訪問指導、社会復帰に対する支援、心の健康づくり等の地域精神保健対策事業を一層推進することとする。
 医学の進歩、疾病構造の変化に応じて、各種医療機関におけるリハビリテーション医療実施体制の整備を図る必要がある。特に、合併症を有する障害者、内部障害者等定期的な医学的管理を必要とする障害者が増加する傾向にあることから、保健-医療-福祉の有機的連携が望まれる。

4 職業的リハビリテーション対策の推進

 障害者の安定した就業のためには、その能力や障害の程度に応じた職業能力を開発することが重要であり、生活に密着した地域レベルで雇用部門と福祉さらには教育部門が連携・協力を図りながら、きめ細かな職業リハビリテーションを実施しなければならない。
 職業リハビリテーションは、健常者と一緒に訓練を受けられる者については、一般の公共職業能力開発施設への入所を促進し、その他の障害者については、障害者職業センター、身体障害者更生指導所等の利用を促進し、公的職業訓練機関での職業リハビリテーションの推進を図る。
 障害の重度化に伴い職業リハビリテーションは、高度かつきめ細かなサービスが求められているところであり、これにかかる実践的研究や就労を支援する機器の普及を図る。
 福祉的就労の場である授産施設、福祉作業所、福祉工場の計画的整備を促進する。
 また、障害者の自立を援助し一般企業への就職を促進するため、通勤寮や福祉ホーム、グループホームの整備を図る。
 障害者の職場定着を図るため、障害者雇用にかかる助成金制度の活用や事業主への協力要請、障害者に対する職場適応指導等に努める。
 また、障害者雇用相談員や教員、施設職員の指導充実を図ることによって、職業リハビリテーションのネットワークづくりを積極的に推進する。

5 社会的リハビリテーション対策の推進

 家庭での介護が困難な障害者や社会復帰のための訓練が必要な障害者にとって、施設の役割は大きい。
 医師、保母、指導員など施設職員のチームワークのとれた処遇の充実が望まれる。
 また、施設と学校、労働機関、訓練機関との連携を十分にとりあい、障害者の社会参加と自立に向けての処遇の充実を促進する。
 施設は、在宅福祉サービスの拠点としての役割が高く求められており、施設の機能を活用しながら多様化する障害者ニーズに対応して、コーディネーターを中核とするリハビリネットワークづくりの拠点としての有効利用を促進する。
 障害および障害者に対する偏見をなくし、ともに生きる福祉社会を築くために、障害者が安心して暮らし、外出のできる生活環境を整備する必要がある。
 このため、障害者に配慮した住みよいまちづくりを推進する。
 障害者が地域社会で生活するうえで気軽に相談できる支援体制づくりが必要であり、障害者相談員、民生児童委員をはじめ各相談機関における専門職員(社会福祉士、臨床心理士、介護福祉士等)の充実を図るとともに、市町村にリハビリ支援センターを設置し、在宅生活を支えるリハビリサービス体制を整えて、総合リハビリテーションセンターとの連携を強化する。

6 教育的リハビリテーション対策の推進

 障害児に対する就学指導の重要性を認識し、特殊教育センター、小児療育センター、児童相談所等が緊密な連携をとって、保護者の意見を尊重しながら障害児にとって一貫した就学指導となるよう、教育相談・指導の充実を図る。
 障害の重度化・重複化の傾向に対応し、医療機関や福祉機関と連携をとり、障害の程度に応じた教育が受けられるような配慮が必要である。
 障害児の学校卒業後の進路指導には、能力や適性を十分に把握し、学校と職業センターおよび施設等と連携をとって適切な進路指導に努める。
 障害者の生涯学習参加を促進するため、情報の提供、学習相談の充実、カリキュラムの編成などに障害者の参加について配慮し、障害者にも学習の場が提供されるよう努める。
 特に、視聴覚障害者のコミュニケーションを確保するため手話、朗読、点訳、要約筆記奉仕員の養成、派遣等の支援体制づくりが重要である。 総合リハビリテーション・システム

総合リハビリテーション・システム図

第7節 福祉のまちづくり

1 基本的な考え方

 建築物、道路、交通機関等における物理的な障害の除去および情報収集、コミュニケーションにおけるハンデイキャップの軽減を図る等の生活環境面についての各種の改善は、障害者の自立と社会参加を促進するための基本的な条件であり、こうした生活環境面での改善は、国、地方公共団体、民間事業者、県民が一体となって取り組むべき課題である。
 また、障害者の利用に配慮した施設・設備整備等に対する各種の措置が普遍的に講じられていくためには、これらの措置が障害者のために特別に行われる福祉的措置として講じられるのではなく、一般的な措置がそもそも障害者に対する配慮を前提として行われるべきである。
 こうした視点に立って、次の事項を重点目標とした福祉のまちづくりの推進に努める。

  1. 住みよいまちづくりの推進・普及
  2. まちづくり推進体制の整備
  3. 建築物の整備の推進
  4. 移動・交通対策の推進
  5. 情報提供のコミュニケーション対策

2 住みよいまちづくりの推進・普及

 住みよいまちづくりは、障害者や高齢者等ハンディキャップをもつ人たちを含めたすべての県民の日常生活を保証するものであり、地域住民の思いやりとふれあいに支えられながら、安全で快適な生活ができるように、物心両面にわたる生活環境づくりを推進していくことが重要な課題である。
 障害者等の利用に配慮した施設・設備等生活環境面での改善を促進するには、民間事業者にとって経済的な負担増となり、整備が進まない原因となっているが、民間事業者だけで負担することは困難である。
 しかし、国、地方公共団体の補助金のみで賄うことも財政上の制約があり、限定的な福祉的措置とならざるを得ず、その普遍的な整備を図ることは困難である。
 こうした費用は社会全体で負担することが必要であり、民間事業者、県民が社会連帯の意識に基づき負担するよう啓発に努めるとともに、これらの事業を支援する具体的措置を検討する。
 まちづくり事業の取り組みとしては、厚生省の「住みよい福祉のまちづくり事業」、建設省の「福祉の街づくりモデル事業」、自治省の「地域福祉推進特別対策事業」等があるが、各市町村の意向を反映しながら計画的に実施していく。

3 まちづくりの推進体制の整備

 やさしいまちづくりを目指して、平成5年3月に「福井県福祉環境整備指針」が策定された。この指針は、公共的建築物をはじめ道路、公園、公共交通機関を新たに整備したり、改善を行う際のガイドラインである。
 この指針に基づく総合的、計画的なまちづくりを推進するため、官民の各関係機関の代表者で構成する「まちづくり推進協議会」を設置するものとする。各市町村に支部組織を設けて地域性のあるまちづくりを全体的に協議しながら推進する。この基盤づくりをもとに、将来的には福祉のまちづくり条例制定に向けて検討していく必要がある。
 また、各市町村を単位とする地域の住みよいまちづくり事業を計画的に推進するため、モデル地域を設定し、地域の環境や特性を考慮したモデルまちづくりを中核として促進していく。

4 建築物の整備の推進

 建築物における障害者等の利用を配慮した構造や設備の整備は、障害者等の自立と社会参加を促進する上で不可欠である。ノーマライゼーションの理念のもとに、障害者等の利用を十分可能にするという方針に基づいた施策を進める。

(1) 公共的建築物の整備

 「福井県福祉環境整備指針」により対象施設および整備適用箇所を定め、整備標準を示した。この対象施設には、官公庁施設をはじめとする不特定多数の人が利用する公共性の高い建物はすべて含まれている。
 また、整備適用箇所についてはアプローチ、駐車場、玄関スロープ、便所等23項目にわたり細かい整備標準を定めた。これは、建物等を新築したり改善したりする際の標準を示したもので、ガイドライン的性格のものであるが、この指針の啓蒙、普及を効果的に推進する方法として「福井県福祉環境整備推進計画」を策定することとしている。
 この推進計画は県有建物の整備および民間、市町村等の公共的建築物の整備を促進するための指導・誘導策を定めた実施計画であり、今後、この計画を定期的に見直しすることにより整備の継続性を確保する。
 また、障害者等の安全上の視点から特に公共性の高い建物について、出入り口のスロープの設置、廊下等の手すりの設置および障害者用便所の設置等の整備基準を示して規制誘導する建築基準条例化についても検討する必要がある。 福井県福祉環境整備指針による対象施設および適用箇所

対象施設 整備適用箇所
公共的建築物
  • 官公庁施設
  • 医療施設
  • 社会福祉施設
  • 商業施設
  • 娯楽施設
  • 文化施設
  • 体育施設
  • 業務施設
  • 宿泊施設
  • 教育施設
  1. アプローチ
  2. 駐車場
  3. 玄関
  4. スロープ
  5. 出入口
  6. 廊下
  7. 手すり
  8. 階段
  9. 便所(車椅子用)
  10. 便所(その他用)
  11. 洗面所
  12. 浴室
  1. シャワー室・更衣室
  2. 客室・寝室
  3. 観覧席・客席
  4. エレベーター
  5. エスカレーター
  6. カウンター・記載台
  7. 公衆電話
  8. 自動販売機・券売機
  9. コンセント・スイッチ
  10. 標示・誘導設備
  11. 緊急時の設備

(2) 障害者等に対応した住宅の整備

 障害者や身体機能の低下した高齢者に対応した公的住宅の確保が必要である。
 床の段差解消、共用階段、浴室、便所への手すりの設置、中層公営住宅へのエレベーターの設置のほか、高齢者が自立し安全で快適な生活ができるケアシステム付き公営住宅を計画的に整備する。
 また、障害者等が玄関、台所、便所、浴室等を住宅改造する場合の助成制度および障害者同居住宅を増改築する場合の助成制度等の拡充を図る。

5 移動・交通対策の推進

 障害者の社会参加の機会増大や行動範囲の拡大に伴い、障害者の移動におけるハンディキャップの軽減を図ることが重要な課題となっている。

(1) 歩道等の整備

 地域の交通事情に対応した幅の広い歩道の整備、歩道の段差切り下げ、視覚障害者誘導用ブロックの敷設等ハード面の整備・改善に併せて、誘導ブロック上への自転車放置の防止、道路上の障害物の排除等県民の理解と協力を得て、障害者が安全で快適に歩行できる空間の確保に努める。
 さらに、降積雪を考慮した市街地の歩行者空間の創出および除雪体制の強化を図る等、雪に強いまちづくりを推進し障害者の移動の確保に努める。
 また、交通信号機の音響式視覚障害者用付加装置など交通安全施設を計画的に整備する。

(2) 公共交通機関の整備

 公共交通ターミナルの整備については、従来より、エレベーター、エスカレーターの設置など障害者の利用に対する配慮が行なわれてきたが、既存施設については、スペースの確保など改善が困難な状態にある。また、リフト付きバスの運行等の配慮が望まれるが、障害者の利用状況、交通事業者の経営実態等を総合的に勘案し、計画的に進める必要がある。
 障害者に配慮した公共交通ターミナルにおけるガイドラインの見直しを必要とする中で、特に視聴覚障害者の安全確保や音声による誘導に十分配慮するとともに、バスにおける障害者への配慮も必要となる。また、駅員による適切な対応や介護体制の充実に努めるなど、今後、関係機関の理解と協力を得る必要がある。

(3) 移動支援体制の充実

 社会参加を促進するためのリフト付き福祉バス、リフト付きタクシーの設置を推進する。また、障害者の就労等に際し自家用自動車を改造する経費および免許取得経費の一部を助成する制度の効果的な実施ならびに視覚障害者等の外出介護を行うガイドヘルパー派遣の充実を図る。

6 情報提供のコミュニケーション対策

 障害者、特に視聴覚障害者は、その障害により情報の収集、コミュニケーション確保に大きなハンディキャップがある。的確かつ十分な情報の収集やコミュニケーションの確保は、障害者の能力を生かし、自立と社会参加を促進するために不可欠である。

(1) 視覚障害者のコミュニケーション対策

 視覚障害者の情報伝達には点字と聴覚による方法がある。この伝達手段の充実を図るため、点訳および朗読奉仕員の養成確保の拡大に努め、点字図書、テープレコーダー、タイプライター等の普及を促進するとともに、公共サービスにおける情報や広報については、点字や録音テープにより行うよう努める。

(2) 聴覚障害者のコミュニケーション対策

 聴覚障害者の情報伝達には手話や筆談等による方法があるが、この伝達方法の充実を図るため、手話通訳者および要約筆記者の養成確保の拡大に努める。
 また、円滑な意志の伝達が必要な場合の手話奉仕員や要約筆記者の派遣制度を充実するとともに、字幕付きビデオ、ファックス、屋内信号装置等の普及を促進する。
 さらに、病院等の特に利用度の高い公共施設の窓口には手話通訳のできる職員の配置および伝達手段のきめ細かな配慮が講じられるように努める。


主題:
ともに生きる福祉社会をめざして 1頁~40頁

発行者:
福井県

発行年月:
1994年6月

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