北九州市障害者施策推進基本計画
№1
平成8年4月
北九州市
項目 | 内容 |
---|---|
立案時期 | 平成8年度 |
計画期間 | 平成8年度~平成17年度(10年間) |
「北九州市障害者施策推進基本計画」の策定にあたって
この度、北九州市では、「北九州市障害者施策推進基本計画」を策定いたしました。
21世紀を間近に控え、私たちを取り巻く社会的・経済的環境は大きく変動しています。本市におきましても、人口の高齢化は全国平均を上回る早さで進行し、また、長引く経済不況からの脱却は容易なことではありません。こうした中で、私は二つの理由で「北九州市障害者施策推進基本計画」の策定を決意しました。
一つは、障害者施策を巡る最近の国の動向です。平成5年に「障害者基本法」が成立し、障害のある市民のあらゆる分野での社会参加の促進を目指した総合的・計画的な施策推進の方向性が定められました。同じ年に、国の障害者基本計画が策定され、昨年12月には、その重点施策実施計画として「障害者プラン(ノーマライゼイション7か年戦略)」が策定され、数値目標を含む具体的な施策目標が示されています。
もう一つは、本市に現在約6万2千人の障害のある市民が生活されており、障害の状況は一人ひとり様々ですが、「だれもが安心して暮らせる社会にしたい」という共通の願いがあることです。これが最大の理由であり、今回の計画においても、その基本的な理念は、「障害があっても地域で生活できることが当たり前の社会の実現」となっています。
本市では、平成6年に「高齢化社会対策総合計画」が、平成7年には「保育5か年プラン」スタートしています。そして、今年4月からこの「障害者施策推進基本計画」がスタートします。これらを実施していくためには大きな財源を必要としますが、できる限り効率的な実施を工夫し、組織や施策の見直しも行いながら、ニーズに的確に応えられるよう、着実な取組みを進めていきたいと決意を新たにしています。
最後になりますが、「北九州市障害者施策推進協議会」及び「北九州市障害者基本計画策定委員会」の委員の皆様には、精力的に計画案のご審議をいただきましてありがとうございました。また、中間報告に対するご意見をはじめとして、計画案の策定に関して貴重なご意見やご提案、ご協力をいただいた多くの市民の皆様、関係団体の皆様、市議会の皆様に厚くお礼申し上げます。
平成8年4月
北九州市長 末吉 興一
【目次】
- 目指すべき地域社会
- 北九州市のこれまでの取組みと本計画策定の必要性
- (1) 身体障害者
- (2) 知的障害者(精神薄弱者)
- (3) 精神障害者
- (4) 難病患者
- (5) 全体状況
- (1)ケアマネジメントを行う相談窓口
-
- 基本的方向
- (仮称)年長・障害者相談コーナー
- (仮称)障害者地域生活支援センター
- 在宅介護支援センター
- 職員の資質の向上
- ケアマネジメント手法の研究等
- (2)就学前の早期発見・療育・保育
-
- 基本的方向
- 早期発見
- 療育・保育
- 各相談機関における相談・支援
- (3)教育
-
- 基本的方向
- 教育相談・就学指導
- 教育内容
- 後期中等教育
- 福祉教育
- 教職員の資質の向上
- 教育環境の整備
- 社会教育等
- (4)地域社会の理解と協力
-
- 基本的方向
- 市民啓発
- 区推進協議会
- ふれあいネットワーク活動
- 市民福祉センター
- (5)地域における住まい
-
- 基本的方向
- 公共賃貸住宅
- 保証人の確保
- グループホーム
- 身体障害者福祉ホーム
- 暮らしやすい住宅
- (6)一般就労の支援
-
- 基本的方向
- 就労訓練
- 企業内授産、企業内分場
- 地域の障害者に対する就労支援
- 職親制度等
- 市からの仕事の発注
- 福祉分野での就労の可能性
- 知的障害者福祉工場
- (7)卒業後等の地域での活動の場
-
- 基本的方向
- (仮称)地域活動センター
- 小規模作業所
- (仮称)地域活動センター・小規模作業所の総合利用システム
- 社会就労の振興
- (8)リハビリテーション・医療
-
- 基本的方向
- 移転後の障害福祉センター
- テクノエイドセンター
- 医療
- (9)在宅介護サービス
-
- 基本的方向
- ホームヘルプサービス
- ガイドヘルパー派遣
- 心身障害児(者)介護人派遣
- 心身障害児(者)家庭訪問指導員派遣
- 訪問看護
- ショートステイ
- デイサービス
- 訪問給食サービス
- 入浴サービス
- 補装具・日常生活用具
- 手話通訳・要約筆記サービス
- 緊急通報システム
- (10)精神障害者の地域生活の支援
-
- 基本的方向
- 身体障害者・知的障害者と共通する相談・支援の体制
- 精神障害者を支援する関係者のネットワーク
- 精神保健福祉センター
- 福祉サービスの提供
- 市立施設の利用料等
- 救急システムの整備
- (11)てんかん、自閉症又は難病に起因する障害のある人に対する支援
-
- 基本的方向
- 共通する取組み
- てんかんを有する人についての取組み
- 自閉症を有する人についての取組み
- 難病に起因する障害を有する人についての取組み
- (12)入所施設
-
- 基本的方向
- 新たに整備する入所施設の機能等
- 入所者の処遇の向上
- (13)移動の確保・建築物の容易な利用
-
- 基本的方向
- 移動の確保
- ボランティア活動による送迎サービス
- 盲導犬
- 多目的トイレ
- 福祉のまちづくり
- (14)障害者当事者活動の支援
-
- 基本的方向
- 障害者団体の取組みの支援
- 自立生活推進活動、当事者活動
- 情報基地
- (15)スポーツ、芸術・文化、レクリエーション等
-
- 基本的方向
- スポーツ
- 芸術・文化
- レクリエーション
- 情報提供、設備改善
- (16)その他
-
- ボランティア活動振興
- 点字図書館、ビデオライブラリー
- 国際交流
- 災害時の対応
- 手続き等の改善
- サービスの広報
- サービス利用に関する適正な費用負担
- 障害者福祉行政の組織
- 適切な表現
◆ 障害者の地域生活の支援
資料編
- 統計資料
- 審議状況
- 用語解説
- 参考資料
北九州市障害者施策推進基本計画
1 はじめに
[目指すべき地域社会]
- ○ 先天的な障害のほか、疾病や事故等を原因とした身体的な面、知的な面又は精神的な面での障害は、誰にでも生じうる。
- ○ すべての人は、障害のあるなしにかかわらず個人としての尊厳が重んじられる権利を有しており、障害が生じた際の社会生活上の様々な不便は、社会的な支援、住民相互の支援及び当事者自身の取組みによって、可能な限り解消されなければならない。
- ○ こうした過程を通じて、最終的には、
- 障害があっても、またその程度が重くても、地域の中で地域の一員として暮らすことが当たり前の社会
- 障害のあるなしにかかわらず、社会を構成し社会を支える一人の人間として、自尊心と自立心を持って暮らすことのできる社会の実現を目指す。
[北九州市のこれまでの取組みと本計画策定の必要性]
- ○ 行政面では、
- 昭和48年の「身体障害者福祉モデル都市宣言」
- 昭和58年の「北九州市障害者福祉に関する長期計画」の策定
- 平成元年度から「北九州市ルネッサンス構想」に基づく各種障害者施策の実施等の取組みが行われている。
- ○ また、民間レベルでは、各種の当事者団体、関係施設を設置運営する社会福祉法人、その他市民団体や個人によって、障害者福祉の向上に向け様々な福祉活動やボランティア活動が行われている。
- ○ 障害があっても地域で生活できることが当たり前の社会の実現は、不断の努力が必要な長い道のりであり、これまでの取組みや現状を踏まえた上で、総合的かつ長期的な視野に立った各種施策の計画的な実施が必要である。
こうした視点に立って、本計画を策定する。
2 北九州市障害者施策推進基本計画の性格
○ 「北九州市ルネッサンス構想」の部門別計画として、今後(計画期間内)の本市の障害者施策の指針とする。
○ 計画期間は、平成8(1996)年度から平成17(2005)年度までの10年間とする。
○ 本計画において「障害者」とは、身体障害、知的障害(精神薄弱)又は精神障害があるため日常生活又は社会生活に制限を受ける人(てんかん及び自閉症を有する人並びに難病に起因する身体又は精神上の障害を有する人を含む。)をいう。
○ 高齢(概ね65歳以上)の障害者については、「北九州市高齢化社会対策総合計画」(平成5年度~平成17年度)に基づく諸施策の対象でもあり、本計画は、「北九州市高齢化社会対策総合計画」と整合を図りつつその補完的な役割を果たす。
高齢でない障害者については、本計画に基づき諸施策の展開を進める。計画関連図
3 北九州市の障害者の状況
(1)身体障害者
- ○ 身体障害者手帳の交付数は、平成6年度末で、48,131人(人口比4.7%)であり、ここ10年で平均3.6%の増加率となっている。(なお、実数は、手帳の交付数より1~2割程度少ない可能性がある。)
- ○ 程度別にみると、平成6年度末で、重度(1・2級)36.1%、中度(3・4級)38.8%、軽度(5・6級)25.1%の内訳となっている。ここ10年では、重度と中度の増加率が高く、軽度は微増している。
- ○ 障害種別にみると、平成6年度末で、肢体不自由52.9%、内部障害19.0%、視覚障害13.1%、聴覚・平衡機能障害13.1%、音声・言語・そしゃく機能障害1.8%の内訳となっており、ここ10年では肢体不自由と内部障害が増加している。これは、脳血管疾患による肢体のマヒや心臓疾患、人工透析等の内部障害の増加を主な原因とし、人口の高齢化に伴うものとみられる。
- ○ 年齢別にみると、平成5年度に実施された「障害者ニーズ調査」によると、65歳以上の身体障害者は37.2%、60歳以上では53.3%となっている。今後、この比率はますます高まり、身体障害者の半数以上が高齢者という状況になると見込まれる。
- ○ 養護学校の在学生徒の状況をみると、重症心身障害(身体障害者手帳1・2級かつ療育手帳Aの重度重複障害)児の数が増加傾向にあり、将来、重症心身障害者が増加すると予想される。
(2)知的障害者(精神薄弱者)
- ○ 療育手帳の交付数は、平成6年度末で、5,988人(人口比0.6%)であり、ここ10年で平均4.7%の増加率となっている。(なお、実数は、手帳の交付数より1~2割程度少ない可能性がある。)
- ○ 程度別にみると、平成6年度末で、A(重度)49.2%、B(中度~軽度)50.8%の内訳となっている。ここ10年では、A、B共に増加している。
- ○ 年齢別にみると、平成5年度に実施された「障害者ニーズ調査」によると、65歳以上の知的障害者は1.8%、60歳以上では3.6%となっているが、知的障害者についても長寿化が進んでおり、今後高齢者の比率が高まると予想される。
(3)精神障害者
- ○ 平成6年度末で、精神病院に入院している患者数5,154人、公費負担による通院治療者数3,142人の、計8,296人。ここ数年は、入院が減少し、通院が増加する傾向にある。(なお、公費負担による通院以外の通院治療者数については統計資料がないが、公費負担による通院治療者の3倍程度いると推測されている。)
- ○ 平成5年に実施した「精神疾患を有する者の実態調査」によると、入院患者のうち3人に1人が10年以上の長期入院者であり、入院者の高齢化が進行している。また、条件が整えば退院可能な者が4人に1人いる。
- ○ 上記調査によると、病名は、入院患者については、精神分裂病49.7%、痴呆性疾患16.9%;病院外来患者については、精神分裂病39.4%、躁鬱病16.4%;診療所患者については、神経症圏50.5%、精神分裂病15.9%の内訳となっている。
- ○ 平成7年10月より交付が始まった精神障害者保健福祉手帳の交付者数は、平成8年3月末で、1級67人、2級122人、3級32人の計221人となっている。
(4)難病患者
- ○ 医療費の助成対象となる特定疾患(平成6年度末時点で36疾患)の患者数は、2,382人。(難病に起因する身体又は精神上の障害を有する人の数は不明。)
- ○ 特定疾患が毎年1つづつ追加されていること等から、特定疾患患者数は年々増加している。
(5)全体状況
- ○ (1)~(4)の手帳交付数等を基にした本市の障害者数は、平成6年度末時点で、全市人口約101万6千人のうち、約6万2千人である。
- ○ このうち、身体障害者が占める割合が最も高く77.1%、次いで、精神障害者13.3%、知的障害者9.6%となっている。(例えば、身体障害と知的障害等の重複障害を有している人については、それぞれの障害者の中にカウントされている。)
4 今後の10年間の基本目標
○ 今後10年間の各種の障害者施策の立案及び実施に当たっては、1サービスの利用者を常に中心に据えて考えること、2民間・行政を越えたネットワークづくりを進めること、3地域づくりに貢献することを大切にしつつ、以下の諸点を基本目標とする。
- すべての障害者が、特別視されることなく、周囲の理解と助け合いのもと、一人の人間として、その権利が擁護されつつ、可能な限り地域の中で生活を送ることができるようにする。
- 障害者施策、高齢者施策等の縦割り行政の弊害をなくし、障害に伴う必要なニーズがある人は、誰でも、保健・医療・福祉・教育その他関係分野の連携による適切なサービスが受けられるようにする。
- 自らの人生は、障害者本人が決定するものであり、障害者の自立に向かう取組みを支援する。
- 就労を希望する人については、可能な限り、様々な場における就労の機会が得られるようにする。
- 芸術・文化、スポーツ、趣味、レクリエーション、生涯教育、人的交流など様々な自己実現の機会を拡大する。
- 幼い頃から障害のある人とない人がお互いに理解し、認め合う機会を拡大する。
- ハード及びソフトの両面で福祉のまちづくりを推進し、障害があっても外出しやすい環境を整える。また、災害時の安全体制を確保する。
- 地域生活の支援体制を整えてなお施設への入所が必要なときには、入所できるようにする。
- 福祉の社会資源を有効かつ公平に利用できるよう、利用者の適正負担、高齢者施策の活用、サービスの重点化・効率化を進める。
5 課題解決に向けた具体的取組み
○ 今後10年間の基本目標を実現するため、次の体系図に位置づけられる諸施策に重点的に取組む。
- 教育課程終了時までの支援体制
- (1)ケアマネジメントを行う相談窓口
※II~IVにも関連 - (2)就学前の早期発見・療育・保育
- (3)教育
- (1)ケアマネジメントを行う相談窓口
- 卒業後等の地域生活の推進
- (4)地域社会の理解と協力
- (5)地域における住まい
- (6)一般就労の支援
- (7)卒業後等の地域での活動の場
- 保健・医療・福祉サービスの充実
- (8)リハビリテーション・医療
- (9)在宅介護サービス
- (10)精神障害者の地域生活の支援
- (11)てんかん、自閉症又は難病に起因する障害のある人に対する支援
- (12)入所施設
- 社会参加の促進・豊かな社会生活
- (13)移動の確保、建築物の容易な利用
- (14)障害者当事者活動の支援
- (15)スポーツ、芸術・文化、レクリエーション等
- (16)その他(ボランティア活動振興、災害時の対応等)
[基本的方向]
○ 個々の障害者の状況(本人と本人を取り巻く状況)に応じた適切な生活支援を提供するためには、状況把握、ケアプランの作成、サービスの実施・調整、フォローアップ等のケアマネジメント(一連の支援)を行う相談窓口が必要である。
○ こうした相談窓口を行政内に設けるとともに、行政と連携して活動する障害者団体等民間主体の相談窓口の設置を支援する。行政の相談窓口は、民間主体の相談窓口からの情報を積極的に受け入れ、その活用を図る。
[(仮称)年長・障害者相談コーナー]
○ 障害者の高齢化、障害のある高齢者の増加、サービスメニューの重複等の状況を踏まえ、障害のある人のケアマネジメントを行う行政の相談窓口を、各区保健福祉センターの年長者相談コーナーを拡充することにより設ける((仮称)年長・障害者相談コーナー)。
- 身体障害、知的障害又は精神障害の障害種別を問わない相談窓口とする。
- 障害者施策においても出前主義を確立する。
○ (仮称)年長・障害者相談コーナーは、障害のある人のケアマネジメントを行う中核として、民間の他のケアマネジメント機関をはじめ、新障害福祉センター((8)参照)、精神保健福祉センター((10)参照)、児童相談所、医療機関、社会福祉施設、社会福祉協議会、養護学校・学級、公共職業安定所(ハローワーク)等の各種関係機関とのネットワークを構築する。
○ 保健福祉センターの地域担当の保健婦は、(仮称)年長・障害者相談コーナーと相互に密接に連携しつつ、訪問対象として、障害のある人(特に、精神障害のある人、難病を原因とする障害のある人、障害のある乳幼児、濃厚な医療ケアの必要な障害のある人等)に一層の重点を置く。
○ 障害のある児童に関する相談については、児童相談所との密接な連携を図る。
○ 精神障害に関する相談については、保健福祉センターの精神保健福祉相談員と(仮称)年長・障害者相談コーナーが相互に密接に連携し、一体的に対応する。
[(仮称)障害者地域生活支援センター]
○ 障害種別・年齢を問わず、障害のある人の生活全般に関して、本人や家族等からの相談に応じるとともに、ケアマネジメントの実施や行政((仮称)年長・障害者相談コーナー等)への協力を行う民間の障害者団体の活動拠点として、(仮称)障害者地域生活支援センターを設ける。
- (仮称)障害者地域生活支援センターは、このほか、 (仮称)地域活動センター((7)参照)との連絡・調整や、ホームヘルプサービス等の各種サービスを利用した障害者や家族等からのサービスに関する苦情等の相談・調整、知的障害者等の「本人たちの会」の支援などの機能を果たす。
- 当面、北九州市手をつなぐ育成会(平成8年4月に従前の「北九州市精神薄弱者育成会」から名称変更)及び北九州あゆみの会のコーディネーターや家庭訪問指導員等を核として開始し、ノウハウや実績を積みながら、他の障害者団体に拡大していく。
- 精神障害者に関しては、病院や診療所が医療のみならず生活面を含めた支援を行っている場合もあることから、本人、家族及び医療機関が共に(仮称)障害者地域生活支援センターの運営に参画する方向で検討する。
[在宅介護支援センター]
○ 高齢者施策において制度化され、高齢者の在宅介護についての相談や24時間体制での対応等を行う在宅介護支援センター(平成8年3月時点で市内7か所)について、今後ますます増加が予想される高齢の障害者や濃厚な医療ケアを必要とする障害者((8)参照)を中心に、障害者についてもケアマネジメントの機能を果たせるようにする。
○ 高齢者に対するケアマネジメントについての在宅介護支援センターの今後の取組みの状況を踏まえつつ、障害者に対するケアマネジメントについても、(仮称)年長・障害者相談コーナー等との連携を通して、ノウハウ等の面での支援を行う。
[職員の資質の向上]
○ (仮称)年長・障害者相談コーナーや児童相談所等の行政相談窓口への福祉職の職員の配置や事例研究会の開催等により、職員の資質の向上に努める。
[ケアマネジメント手法の研究等]
○ 高齢者のケアマネジメントの手法については、現在全国ベースで検討が進められている。
ここでの検討の成果を一つの参考として、障害種別ごとのそれぞれの特性にも配慮した障害者のケアマネジメントの手法を検討していく。- 障害者団体、施設・医療機関、行政をはじめとする幅広い関係者のノウハウを結集し、本市における障害者のケアマネジメントの手法の研究を行う。
- 研究成果を試行しながら、徐々に改善を図っていく。
○ ケアマネジメントの手法の研究と併せ、乳幼児期から成人・高齢期までの本人の状況、利用したサービスの状況等を簡潔に記録し、本人又は保護者が所持するいわば「記録ノート」的なものの在り方を研究する。
- 本人又は保護者が障害の状況や利用したサービスに関する基本的な情報を長期的に把握することができる。
- 保健・医療・福祉・教育等の関係者がサービスの提供に当たり、これまでの経緯を含めた対象者の状況を短時間に把握することができる。
- プライバシーの保護の点に十分留意し、本人又は保護者の了解の下に作成・利用を行うようにする。
[基本的方向]
○ 障害の早期発見、療育、保育等の各場面で、保健・医療・福祉・教育等の関係分野が連携し、本人や家族の個々の状況に応じた適切なサービスを提供できるようにする。
[早期発見]
○ 障害の早期発見の主要な契機である乳幼児健診(4か月、7か月、1歳6か月及び3歳児)について、健診率を向上させる。
[療育・保育]
○ 乳幼児健診や医療機関の診察等により、乳幼児や児童について障害や発達遅滞のおそれが発見された場合には、児童相談所、保健福祉センター及び(仮称)障害者地域生活支援センターの各相談機関と、医療機関、障害児福祉施設、保育所等が連携して、療育・保育をはじめとする必要なサービスを提供する。
- 総合療育センター
- 医師、看護婦、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)、聴能言語療法士(ST)、臨床心理士等の専門職種を配し、本市の障害児療育の拠点となっている総合療育センターについて、その機能を充実させるとともに、外部に開かれた活動を推進する。また、大人の障害者に対しても、障害の治療や訓練等に関するサービスを提供する。
- ア 他の障害児通園施設や統合保育を行う保育所・幼稚園に対し、PT、OT、ST等を派遣し、専門的な指導や支援を行う。
- イ 必要があると認められる場合には、(仮称)年長・障害者相談コーナー等の要請により、PT、OT、ST等の在宅訪問を行う。
- ウ 東棟を建て替え(平成11年度中の竣工を目指して進行中)、重症心身障害児・者の入所及び通園を拡充するほか、障害児・者のためのショートステイ専用床を設ける。
- エ 医療面での障害の特性等に関する知識や経験について、外部への伝播に努める。
- オ 口唇口蓋裂の乳児について実施している、本市市内及び周辺地域の産婦人科医療機関等と連携した出生直後からの早期治療と多専門職種によるカウンセリング・訓練を引き続き推進する。
- カ 障害児・者に関する地域歯科保健体制の整備を目指して実施している、外部の歯科衛生士等に対する専門講座の開催等の取組みを引き続き推進する。
- 障害児通園施設
- 知的障害児通園施設は、国における制度見直しの動向を踏まえつつ、総合療育センターからの専門的な協力(PT、OT、ST等の派遣等)を受けることにより障害種別を問わない総合通園施設に転換することを検討する。
- 上記に併せ、障害児通園施設は、統合保育等を行う保育所・幼稚園に対する専門的な指導や支援、地域の障害児療育相談に関する機能の強化を図る。
- 保育所・幼稚園
- 総合療育センターや障害児通園施設による指導・支援機能を強化することにより、地域の保育所・幼稚園での障害の種類や程度に応じた障害児の受入れを促進する。
[各相談機関における相談・支援]
○ 身体障害児や重症心身障害児の多くは、保護者にとって障害のあることが認識しやすいため比較的早期に療育が開始される傾向があるが、知的障害児や知的発達障害のおそれがある乳幼児・児童については、療育の取組みが遅くなる場合がある。
児童相談所、保健福祉センター及び(仮称)障害者地域生活支援センターの各相談機関は、相談を受ける中でこうした保護者に対する支援を行うとともに、総合療育センターや障害児通園施設等と共に適切な療育の場を検討し提供する。○ 障害児の保護者が障害を受け入れること(障害の受容)がなかなかできず、思い悩んでいる場合がある。こうした場合には、必要に応じ、保健福祉センターの保健婦や(仮称)障害者地域生活支援センターの家庭訪問指導員が家庭を訪問して相談に乗ったり、同じような障害のある乳幼児・児童を育てた経験のある親の紹介などを行う。
○ 療育の場の提供や障害児世帯に対する保健婦による訪問指導、かかりつけ医の紹介、ホームヘルパー派遣等に関し、各相談機関は相互に緊密に連携をとる。
[基本的方向]
○ 心身に障害のある子どもに対する教育の在り方については、学校教育とりわけ義務教育については、憲法・教育基本法に基づき、国においてその制度の詳細を定め、これに基づいて行財政制度が確立されていることを踏まえて、心身の障害の種類や程度、特性等に応じて、社会参加・自立を目指す学校教育の充実を図る。
○ 障害を固定的な概念としてとらえるのではなく、心身に障害のある児童生徒は発達段階にあることを十分認識し、児童生徒の発達を可能な限り促進させることにより、自立に向け障害を克服しようとする意欲の向上や障害の軽減を目指す教育の推進を図る。
[教育相談・就学指導]
○ 保護者に養護教育に関する情報の提供をしたり、保護者からの意見も聴き、児童生徒の障害の種類、程度等に応じて適正な就学指導を推進するため、就学相談の一層の充実を図る。
○ 各関係機関と連携を密にし、養護教育センター等の教育相談を一層充実するとともに養護学校、養護学級及び通級指導教室の教育相談機能を高め、養護教育に関する情報提供など保護者に対する支援体制の整備に努める。
[教育内容]
○ 児童生徒の調和的発達の基盤を培うため、医療機関との連携を深め、一人ひとりにある障害及び障害に起因する二次的障害を科学的に分析し継続して適切な指導が推進できるよう、養護・訓練の指導の充実を図る。
○ 養護学校、養護学級及び通級指導教室において児童生徒に適切な教育を行うため、個別指導計画のもとに一人ひとりに応じたきめ細かな教育の推進を図る。
○ 卒業生の進路を円滑にするため、養護学校や養護学級と、保健福祉・雇用の関係機関や企業との連携を強化し、職場実習の充実や職域の拡大を図るなど、進路指導の充実を図る。
○ 病院に入院している児童生徒を含む病気療養児の学習空白を補うため、病院内訪問教育の一層の充実を図る。
○ 児童生徒の社会経験を広め社会性を養い、好ましい人間関係を醸成するため、「養護学校と小・中学校等の交流」「養護学校間の交流」「養護学級と通常学級との校内交流」や、養護学校(学級)の児童生徒と在住する地域の学校の児童生徒が交流する「地域における交流促進事業」など、多様な交流教育・活動を展開しその充実を図る。
○ 通常学級に在籍している難聴、弱視、言語障害等、軽度の障害のある児童生徒への専門的な指導を行う通級による指導の充実を図る。
○ 学習障害等学習に困難を示す児童生徒に対し調査研究を行い、教育課題を明確にするとともに、適切な教育的対応を図る。
[後期中等教育]
○ 市内養護学校及び中学校養護学級の卒業に当たり、後期中等教育への進学希望が多く十分希望を満たしているとはいえない。そのため、本市養護学校高等部の一層の充実を図る。
[福祉教育]
○ 小・中学校の全教育活動を通じて、生命を尊重し、他人を思いやる心を育み、高齢者や障害のある人をはじめ、だれもが安心して生活できる福祉社会の担い手としての児童生徒の育成のために、発達段階や学校・地域の実態に応じた体験的な活動を計画・実施し、福祉教育の推進を図る。
[教職員の資質の向上]
○ 養護教育センターを中心に、ライフステージに沿った教職員の研修を実施し、養護教育に関する理解や認識を深められるよう小・中学校の教員への研修の機会を確保するとともに、養護学校・養護学級教員の専門性の向上を図る。
[教育環境の整備]
○ 養護学校や養護学級の児童生徒数の推移や養護学級設置校の位置等を検討し、適切な配置に努める。
○ 養護学校や養護学級の児童生徒の障害の重度化・多様化に応じ、教育課題に対応できる施設設備の整備と充実に努める。
[社会教育等]
○ 公民館などで開催される各種講座を障害のある人も受講できるように配慮する。
○ 公民館講座等を通じて障害のある人をはじめ要援護者の理解を促し、「福祉のまちづくり」をソフト面から推進する。
○ 各種のイベントや文化事業、各種講座等の情報を障害のある人が確実に得られるよう、障害者情報発信基地((14)参照)への情報の集約に配慮する。
○ 日祭日や土曜日などの養護学校が休みとなる時や放課後の時間を利用した児童生徒の余暇活動について、ボランティアの協力等により推進する。
[基本的方向]
○ 今後多くの障害のある人が地域社会の一員として地域の中で生活していくためには、一層の地域社会の理解と協力が不可欠である。
○ 障害とそれによる生じる社会的不利(ハンディキャップ)等について広く市民に啓発を行うとともに、民生委員・児童委員や区推進協議会、社会福祉協議会等の活動を通じ、障害のある人もない人も共に社会の一員としてお互いに繋がりをもって暮らせるような地域づくりを進める。また、福祉の心づくりを進める。
[市民啓発]
○ 幼い頃から障害がある人とない人とがお互いを知り合う機会が拡大するよう、障害児・者が主体的に参加できるスポーツ、レクリエーション等の活動やボランティア活動を振興するとともに、福祉読本(「ふくしの輪」)等を活用した福祉教育の推進を図る。
- 障害者施策の新しい動向等を踏まえた「ふくしの輪」の改訂を検討する。
○ 講演会や市民講座、市の出版物、テレビ放映等を通じて、日常的に、また「障害者の日」(12月9日)等の機会をとらえて、市民に対する障害や障害者についての理解と啓発の促進を図る。
特に、精神障害者に関して、身体障害者・知的障害者と比較して社会的な偏見がいまだ強く残っており、重点的な取組みを要する。例えば、ビデオ等を活用し、精神障害者の地域での暮らしぶり等を分かりやすく伝えていく。○ 障害者団体や障害者福祉施設による市民や地域住民に対する啓発活動を推進する。
○ 地域の住民が障害のある人の地域生活を理解し、支えようとする実際の場面では、民生委員・児童委員が重要な役割を果たす場合がある。
民生委員・児童委員に対する障害者に関する研修及び情報提供の充実を図る。[区推進協議会]
○ 医師会や医療機関、社会福祉協議会、自治会、婦人会、行政機関等で構成される区推進協議会について、障害者世帯を含む要援護世帯の在宅生活を支援するためのネットワークづくり等の諸活動の一層の充実を図る。
[ふれあいネットワーク活動]
○ 民生委員・児童委員、福祉協力員、ニーズ対応チームによるきめ細かな地域福祉の実践として、校(地)区社会福祉協議会による「ふれあいネットワーク活動」が推進されつつある。専門的なサービスとは別に、障害者世帯を含む要援護世帯に対して行われているこの互助の仕組みづくりを引き続き支援していく。
[市民福祉センター]
○ 今後小学校区単位に整備が進められる市民福祉センターにおいて、在宅の障害者や家族等に対する相談、地域での啓発活動等を行う。
[基本的方向]
○ 自立をしようとする障害者、あるいは親等の保護者がいなくなった後の障害者にとって、地域での住まいの確保は重要な問題である。このため、自宅や公営住宅の活用のほか、グループホーム、福祉ホーム等の公的な制度の拡充を進める。
[公共賃貸住宅]
○ 今後新設する公共賃貸住宅については、段差の解消等身体機能の低下に配慮した仕様とする。また、改善の際にもできる限り同様の仕様とする。
○ 公営住宅では、居住する障害のある人の希望により手摺の設置等の改善を行う。また、公営住宅の募集の際に特別の枠を設け、優先して入居できるように配慮する。
○ 国における公営住宅制度改正の動きを踏まえつつ、公営住宅の知的障害者や精神障害者のグループホームへの活用等を検討する。
[保証人の確保]
○ 地域生活をしようとする知的障害者や精神障害者が保証人が見付からず、民間アパート等の賃借を断念せざるを得ない場合がある。不動産取引上の慣習等も関連し保証人の確保は容易に解決できる課題ではないが、幅広い視点から検討していく。
[グループホーム]
○ グループホームの一層の推進を図るため、設置の際の助成を検討する。
○ 一般就労していない障害者のグループホームの利用も促進する。
○ 知的障害者のグループホームについて、現在の知的障害者通勤寮のほか、知的障害者入所施設、(仮称)地域活動センター等においてもバックアップ施設としての機能を担うこととする。
[身体障害者福祉ホーム]
○ 身体障害者用のケア付きバリアフリーの住居として、身体障害者福祉ホームを整備する。
[暮らしやすい住宅]
○ (仮称)年長・障害者相談コーナーにおいて、「北九州市すこやか住宅推進協議会」所属の建築士による身体障害のある人等についての住宅改造の相談事業を行うとともに、必要に応じて、リフォームヘルパー(建築士、OT、PT、保健婦)を障害者等の自宅まで派遣し、住宅改造等に関するアドバイスを行う。
○ 住宅改造については、融資(低利融資)による支援を行うほか、住宅改造によって在宅生活が可能となり、また、家族やヘルパー等に頼らず自立できるようになる効果があることから、一層の促進策として住宅改造助成制度を創設する。
○ 新築の住宅についてバリアフリーの設計が進むようなPR等の方策を検討する。
[基本的方向]
○ 一般就労の可能性のある障害者の就労を促進するため、地域のハローワークと連携を密にしながら、訓練の提供、就労先の開拓、就労中のフォローアップ、Uターンの受入れ等一連の取組みを行う。
[就労訓練]
○ (仮称)地域活動センター((7)参照)において、利用者の状況に応じて、就労に向けた生活訓練や作業訓練を行う。
○ (仮称)地域活動センターの整備が図られた時点で、市内の知的障害者通所授産施設の一部について、養護学校・学級を卒業した直後等で一般就労ができなかった知的障害者が一般就労に向けた生活訓練や作業訓練を受けるための通過型の通所施設に転換する。
- 数年程度の有期限の利用とする。
- ここを利用して就労した知的障害者の生活相談等のフォローアップや就労を中止した場合の一時的なUターン受入れも行う。
[企業内授産、企業内分場]
○ 授産施設から企業への一般就労を促進するため、企業内授産(授産施設の利用者と指導員が提携した企業に赴いて、その企業の中で生産等の活動を授産活動として行う)及び企業内分場(提携した企業の敷地内に授産施設の分場を設け、そこで授産活動を行う)の利用・設置を促進する。
- 企業内授産等を活用することにより、1障害者の社会活動の機会の拡大、2障害者と雇用者との接点の創出、3障害者の雇用機会の拡大を図る。
- 企業に対して、企業内授産等の仕組みや実例を紹介するとともに、障害者雇用についての一層の取組みを働きかける。
[地域の障害者に対する就労支援]
○ (仮称)障害者地域生活支援センターにおいて、相談等を通じて、障害がある人の就労に関する支援を行う。
- 脳卒中等の後遺症による身体障害や、精神障害のある人等の就労に関しては、医療機関との密接な連携を図る。
○ 通過型の就労訓練施設及び知的障害者通勤寮においては、施設利用者に限らず地域で生活する知的障害者に対しても就労に関する支援を行う。
- 当該施設の利用者であるか否かにかかわらず、地域の障害者について就労に関する相談やアドバイス、就労先の新たな開拓、就労先での作業中の指導(ジョブコーチ的役割)、関係機関(就労先やハローワーク、障害者職業センター、保健福祉センター等)との連絡・調整等を行う。
[職親制度等]
○ 精神障害者の社会復帰を促進するため、職親制度(社会適応訓練事業)の活用を進める。
○ 知的障害者を雇用する事業主の組織である「北九州市精神薄弱者職親協議会」による職域拡大を目指した諸活動に対して支援を行う。
[市からの仕事の発注]
○ 障害者の福祉施設や団体等に対する業務の委託や作業の発注に関し、市は率先的な取組みに努める。
[福祉分野での就労の可能性]
○ 社会福祉施設内での介助やホームヘルプサービス等福祉分野での知的障害者や精神障害者の就労促進や企業内授産の可能性を検討する。
[知的障害者福祉工場]
○ 知的障害者が雇用され、缶・ビンのリサイクルを行う福祉工場を新たに西部地区(八幡西区洞北町)にも整備する。
[基本的方向]
○ 養護学校・学級を卒業した後の知的障害者や重症心身障害者、あるいは精神障害者等を中心に、障害のある人がそれぞれの状況に応じて適切に地域の中で昼間に活動する場が不足している。
障害種別・程度を問わず、障害のある人が地域で生涯にわたり活動できる場の整備を進める。○ 地域での活動の場の確保等のために、保護者等が自主的に設置・運営を行う法定外の作業所(いわゆる「小規模作業所」)は、財政面や作業等の肉体面で保護者等の負担が大きい。また、給与等の待遇が十分にできず、適切な指導員の継続的な確保が難しいという状況にある。
こうした法定通所施設の非利用者と利用者との間の不公平感の解消に配慮しつつ、希望をする者全員が地域での活動の場の利用の機会を得られるようにする。[(仮称)地域活動センター]
○ 障害のある人が地域で活動する拠点として、(仮称)地域活動センターを通所施設の新設及び既存施設の転換により設置を進める。
- (仮称)地域活動センターは、それ自体が地域で活動するための一つの場となるほか、(仮称)障害者地域生活支援センターや保健福祉センター等と連携をとりつつ、地域の障害者世帯のニーズを把握し、それに適した対応を検討・実施する家族支援の拠点ともなる。
- 障害種別・程度を問わず利用できるものとする。ただし、処遇に際しては、適宜、種別・程度等によってグループ分けを行う。
- 重度の障害者の利用を受け入れることから、処遇の困難性に応じた介助体制の強化を図る。この場合、高齢者の雇用の促進等の観点から、高齢者や障害者のマンパワーとしての活用を検討する。
- 個々人の状況に応じたケアプログラムを作成する。障害が特に重い利用者等については、レクリエーションなどの訓練や作業にとらわれない処遇を行う。
- 法律上の施設種別は、デイサービス施設を併設した通所授産施設として設置するが、企業内や分場での活動、小規模作業所との連携など施設外での活動にも積極的に取り組むとともに、必要に応じ、グループホームのバックアップ、宿泊体験、ナイトケアなど従来の通所施設にない役割を果たす。
- 必要な利用者に対して送迎サービスを提供できるよう、様々な工夫を検討する。
[小規模作業所]
○ 小規模作業所は、障害者の地域での活動を支える場の一つとして、引き続き運営費助成の充実を図る。特に、初度設備に対する助成制度を創設するなどにより、その設置を促進する。
○ 法定の通所授産施設の分場化が可能な小規模作業所については分場化し、運営の安定化を図る。
○ 小規模作業所について、情報の提供や行事への参加の働きかけ等に関し、法定施設と同様の扱いとすることを基本とする。
[(仮称)地域活動センター・小規模作業所の総合利用システム]
○ 現在の法定の通所施設の非利用者と利用者間の不公平感を解消しつつ、希望する者全員が地域での活動の場の利用の機会が得られるようにするため、例えば、別区のような、法定の通所施設である(仮称)地域活動センターと法定外の施設である小規模作業所との総合利用システムを検討する。
[社会就労の振興]
○ 授産施設や小規模作業所等において行われている授産活動は、福祉的就労(社会就労)という就労の一つの形態としてとらえることができる。全国授産施設協議会におけるCI運動(「授産施設」から「社会就労センター(SELP)」への名称変更等)の動き等を踏まえつつ、社会就労の振興を図る。
- 授産施設や小規模作業所等に対する製品開発のアドバイス、製品カタログの作成・配布、常設・臨時の共同販売店の設置、工場その他の企業からの作業の受注、市役所等の公的機関や企業等に対する製品の販売促進活動等を推進する。
(別図)
[基本的方向]
○ 障害をもって入院している医療機関から在宅に戻る際に、生活面でのリハビリテーション等の支援が円滑に行われるようにする。
○ 先天性の重度障害者を含め障害のある人が日常に必要な医療は、できる限り近くの通常の医療機関で受けられるようにする。
[移転後の障害福祉センター]
○ 法律に基づく身体障害者更生相談所及び精神薄弱者更生相談所として位置づけられている障害福祉センターは、平成11年度開設予定の(仮称)総合保健リハビリテーションセンター内に移転する予定となっている。
移転後の障害福祉センター(以下仮に「新障害福祉センター」という。)においては、障害者及び要援護高齢者の主に生活面でのリハビリテーションに関して、企画・調整、保健福祉センターに対する指導等を行い、障害者及び要援護高齢者の在宅生活を支援する機能を強化する。(主な在宅生活支援機能)
- 新障害福祉センターから各保健福祉センターにPT又はOTを派遣し常駐させ、(仮称)年長・障害者相談コーナーと一体的になって、主に、家庭介護指導、機能回復・維持訓練、補装具・日常生活用具の利用、住宅改良等の観点から、障害者及び要援護高齢者のケアマネジメントに参加する。また、ケースに応じて、医師(障害に係る医学的評価・診断・指導の観点)、ST(言語療法の観点)、本所所属のPT又はOTもケアマネジメントに参加する。
- 脳卒中等の疾患を原因とする入院患者などの在宅生活への円滑な移行のための仕組みづくりや関係者のネットワークづくりをはじめとする、医療面での濃厚なケアを要する身体障害者に対する支援方策を検討する。
- 中途失明者等に対する生活訓練、その他肢体不自由者等に対するグループ又は個別の生活リハビリテーションを行う。
- テクノエイドセンターの企画・運営を行う。
- 弁護士等の専門家の協力の下で、(仮称)年長・障害者相談コーナーと連携して障害者の権利擁護に関する相談や調整等を行うことを検討する。
○ 上記のほか、補装具や更生医療の要否判定、施設入所・通所判定、療育手帳交付判定等の更生相談所の業務を引き続き行う。
全体を通じ、訪ねやすい雰囲気づくりを工夫する。[テクノエイドセンター]
○ (仮称)総合保健リハビリテーションセンター内に、適切な福祉用具の利用及び住宅の改造を推進するため、「テクノエイドセンター」を設ける。
○ テクノエイドセンターは、障害者及び要援護者高齢者の生活面でのリハビリテーションについての高い効果が得られるよう、単なる各種用具等の展示のみでなく、それらを実際に在宅等で適切に使用できるところまで関わりを持つようにする。
このため、PT,OT等の専門職種による相談や指導を受けられるよう、新障害福祉センターと一体的な運営を図る。○ 具体的な主な機能として、1福祉用具及び住宅改造の展示等、2福祉用具及び住宅改造に関する相談、指導及び情報提供、3工房の運営、4福祉用具技術等に関する産・学・官のネットワークづくりについての連絡・調整等を担う。
[医療]
○ どこの医療機関でどのような種別の障害者の利用が円滑にできるか等、障害者が医療機関を利用する上で役に立つ情報を、医師会及び歯科医師会等との連携により整備する。
こうしたことを通じて、障害のある人が地域のかかりつけ医を持つことを促進する。○ 先天性の障害児・者等について、障害の治療や訓練等の担当している総合療育センター等の専門の医療機関は、(仮称)年長・障害者相談コーナーにかかりつけ医の紹介を依頼したり、かかりつけ医等からの求めに応じ障害者の状況に関する情報を提供したりする等、他の医療機関との連携を密にする。また、二次障害(例えば、脳性麻痺を原因とする肢体不自由者の長年の不随意運動による頸髄障害等)の予防や軽環に留意する。
○ 疾病や事故による中途障害(例:脳卒中後遺症による肢体不自由・知的障害、糖尿病の合併症による失明、腎不全による人工透析、直腸手術によるストマ装着、交通事故による頸髄損傷など)や難病、進行性又は慢性疾患(例:パーキンソン病、筋ジストロフィー症、慢性関節リウマチなど)に起因する障害のある人は、疾病の治療や療養のため、医療機関との関わりが深い場合が多い。
こうした障害者に対し幅広く日常生活上の支援が行えるよう、関係機関のネットワーク化を進めるとともに、福祉サービスに関する情報提供と活用、当事者活動(セルフヘルプグループ活動)の推進等を図る。- 上記の疾病に伴う医療面での濃厚なケアを要する障害者については、一般にあまり組織化されていないため、福祉面等でのニーズが表に出にくく、また、その数やADL・QOLの状況がほとんど把握されていない。医療機関等との協力の下に、実態把握に努める。
- 医療との深い関わりを必要とすることから、福祉サービスの提供・調整に関しては、医師会等の運営による在宅介護支援センターや訪問看護ステーションが有効な機能を果たしうると見込まれる。医療機関からの情報提供の方法を含め、(仮称)年長・障害者相談コーナーや新障害福祉センター等と連携した支援体制の構築を検討する。
- 希少難病患者等に関して、専門医とかかりつけ医との連携を特に密にし、適切な役割分担の構築を図る。
- 財団法人北九州市身体障害者福祉協会や新障害福祉センター等を中心に、医療機関の協力を得つつ、こうした身体障害のある人のセルフヘルプグループ活動の推進方策について検討する。
○精神科の医療機関は、患者の生活面を含めた支援を行っている場合があり、保健福祉センター、(仮称)障害者地域生活支援センター等福祉サービスを担う関係機関との連携を密にする。
[基本的方向]
○ 障害のある人の在宅・地域生活を支えるため、ホームヘルプサービス等各種の在宅サービスを充実させる。
○ 在宅サービスの充実に当たっては、障害に特有の処遇上の専門的な知識と技術が必要な場合があることにも配慮しつつ、高齢者施策における在宅サービスもできる限り活用する。
○ 18歳以後に発症した知的な障害(脳卒中、交通事故の後遺症等)のある人については、現行の障害者福祉の法体系の対象から漏れている。
また、身体障害者については、身体障害者手帳の有無・等級の程度によってサービスの提供を受けられるか否かが決まり、例えば心因性の若年の寝たきりのケースは手帳の交付対象に該当せず、福祉サービスの提供を受けられない状況にある。
こうした人の深刻なニーズの状況を踏まえ、国等に対し問題状況の提示と要望を行うとともに、在宅サービスをはじめとする必要なサービスを提供できるよう検討する。[ホームヘルプサービス]
○ 身体障害者及び知的障害者に関するホームヘルプサービスは、高齢者に対するものと一体の事業として実施されており、高齢化社会対策総合計画の実施計画(平成11年度末ホームヘルパー数2,275人)に沿って充実させる。
○ 障害のある人への処遇(特に、知的障害者、重症心身障害者、全身性身体障害者について、それぞれの特性を踏まえた処遇)に関するホームヘルパーの研修を充実する。
○ できる限り同性による介護が行えるよう、男性のホームヘルパーの募集・養成に努める。
○ 地域で自立生活する全身性身体障害者等の高頻度の介護が必要な障害者に対するホームヘルプサービスについて、派遣量や派遣時間帯等の拡大を検討する。
○ (仮称)障害者地域生活支援センターの活用によるホームヘルプサービスの提供体制の多様化を検討する。
○ 自立していく上で様々なニーズ(例えば、部屋の掃除や買物等)があることから、精神障害者世帯に派遣されるホームヘルパーの配置を検討する。派遣に際して必要がある場合には、保健婦等が同行する。
○ 一律に障害程度等級で判断せずに、個別のニーズに着目して派遣対象とするよう検討する。
[ガイドヘルパー派遣]
○ ガイドヘルパーの派遣について、派遣理由や派遣時間帯の拡大を検討する。また、派遣対象として知的障害者の追加を検討する。
[心身障害児(者)介護人派遣]
○ 心身障害児(者)介護人派遣制度は、本人が自らサービスの提供者を探せることから、保護者相互による介護や男性の場合の同性のホームヘルパーの確保等の点で、ホームヘルプサービスを補完する役割を果たしている。派遣時間帯や派遣日の拡大を検討する。
[心身障害児(者)家庭訪問指導員派遣]
○ 心身障害児(者)家庭訪問指導員派遣制度は、外で活動する機会の少ない重度の肢体不自由児・者や知的障害児・者がいる世帯に赴き、相談や指導、レクリエーション等を行うことにより、本人とその家族に対して精神面を含めた支援を行うとともに、社会参加を促す役割を果たしている。
(仮称)障害者地域生活支援センターの機能を支えるマンパワーとして、国の補助制度の活用等による今後の展開を検討する。[訪問看護]
○ 平成6年10月より、障害者(精神障害者を含む)についても制度の対象となり、高齢者に対するものと一体の事業として実施されるようになった。高齢化社会対策総合計画の実施計画(平成11年度末訪問看護婦数270人)に沿って充実させる。
○ ホームヘルプサービスとのサービス内容の相違点等を含め、制度の周知を図る。
[ショートステイ]
○ 障害者のショートステイ事業については、平成7年4月より、中軽度の知的障害者が対象に加えられ、また、私的事由の場合の利用も可能となっている。
ショートステイ事業の供給量の拡大を図るため、今後整備される障害者の入所施設については、原則としてショートステイ専用床の整備を行う。○ 障害者のショートステイ事業に関しても、高齢者における事業と同様に、直接施設への利用申込みが可能となるよう、利用証方式の導入を検討する。
○ 重症心身障害者や重度の知的障害者等については、施設に入所した際の不適応が深刻な問題となる場合がある。こうした不適応を防止するため、在宅生活時からの定期的なショートステイの利用を推進する。
○ 送迎がなければ利用が困難と認められる世帯については、ショートステイ事業の一部として、できる限り受入れを行う入所施設において送迎を行うようにする。
[デイサービス]
○ 障害者の様々なニーズに幅広く対応できるよう、今後新たに整備する(仮称)地域活動センターや入所施設には原則として障害者デイサービス施設を併設するようにするなど、デイサービス事業の拡大を図る。
○ 今後身近な地域での高齢者デイサービスの整備が進められた時点で、障害者の共同利用の促進について検討する。
[訪問給食サービス]
○ 現在モデル事業として実施されている訪問給食サービスは、高齢者世帯だけでなく一人暮らしの障害者世帯も配食の対象となっており、引き続き事業の拡大を図る。
[入浴サービス]
○ 重度身体障害者に関する移動入浴車派遣等の入浴サービスは、高齢者に対するものと一体の事業として実施されており、高齢化社会対策総合計画の実施計画に定められたサービス水準(平成10年度末月3~4回)の確保を図る。
[補装具・日常生活用具]
○ テクノエイドセンターにおいて、補装具、日常生活用具を含めた福祉用具の展示、相談、作成、研究等を行う。
○ 新障害福祉センターから各保健福祉センターに派遣されたPT又はOTが、障害者個人個人の身体や住環境の状況等を踏まえた補装具や日常生活用具の利用、住宅の改良についての適切なアドバイスを行う。
○ 日常生活用具の取扱対象となる機種の範囲を拡大する。
[手話通訳・要約筆記サービス]
○ 聴覚障害者のコミュニケーションを支える重要なサービスとして、手話通訳・要約筆記サービスに関する助成を引き続き行う。
[緊急通報システム]
○ 消防が直接受信する緊急通報システムについて、高齢者世帯だけでなく、ひとり暮らしの重度障害者世帯における設置の普及促進を図る。
[基本的方向]
○ 精神障害者に関する施策については、これまで保健面と医療面での取組みが中心であったが、平成7年の精神保健法の改正(法律の名称も「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」に改正)により初めて福祉施策が法律上位置付けられた。
また、平成8年4月に、精神保健医療福祉に関するほとんどの事務が府県から政令指定都市に委譲された。○ こうした状況を踏まえ、これまでの福岡県の精神保健医療の事務を円滑かつ適切に引き継ぐとともに、福祉分野での取組みを創設・拡充していく。
こうした過程を通じて、精神病院の入院者のうち4人に1人といわれる退院可能な人ができる限り退院して地域で暮らせるようにする。○ 福祉分野の取組みに関しては、当面、身体障害者・知的障害者に関する施策に「追い付く」ことを目標とし、可能な限り身体障害者・知的障害者施策との統合化・共通化を図る。
○ 施策の立案・実施に当たっては、住宅、日常生活、家族関係対人交流等の各分野で、平成7年3月に北九州市精神保健推進委員会ネットワーク部会で整理された諸課題があることに留意する。
[身体障害者・知的障害者と共通する相談・支援の体制]
○ 身体障害者・知的障害者と共通し、精神障害者の地域生活を支援するための相談・支援体制に関する取組みとして、1(仮称)年長・障害者相談コーナー、2(仮称)障害者地域生活支援センター、3(仮称)地域活動センターの整備を進める。
○ これらの機関又は施設は、相互に連携を図るとともに、医療機関をはじめとする他の関係機関との連携を密にする。
○ (仮称)障害者地域生活支援センター及び(仮称)地域活動センターは、基本的には障害者団体が運営主体となるものであるが、精神障害者福祉に関しては、本人や家族会が関係の病院及び診療所の協力を求めつつ、運営を担い得る母体の整備・強化を図る。
[精神障害者を支援する関係者のネットワーク]
○ 精神障害者は、身体障害者・知的障害者と比較して、福祉面での施策が遅れており、また、社会的な理解も進んでない。
こうしたことの解決に向けた取組みを強力に推進していくためには、本人のほか、直接的に精神障害者を支援する立場にある家族会、病院・診療所といった医療機関(医師、看護婦、OT、ソーシャルワーカー等)及び行政が緊密に相互の情報交換その他連絡・調整を行い、同じ方向に向かって協力することが不可欠である。このためのネットワークづくりを進める。[精神保健福祉センター]
○ 平成8年4月からの権限委譲を踏まえ、精神保健福祉行政を推進していくための組織体制を整えるため、できるだけ早期に、市立デイ・ケアセンターを精神保健及び精神障害者福祉に関する法律に規定される精神保健福祉センターに改組し、(仮称)総合保健リハビリテーションセンター開設時には、同センター内の精神保健福祉部門に移行する。
○ 精神保健福祉センターは、精神保健福祉に関する知識の普及、調査研究及び専門的な相談・指導を行うほか、保健福祉センター、(仮称)障害者地域生活支援センター等に支援(対応が難しいケースについての同伴訪問を含めた相談等)、職親等の開拓・育成、関連する社会資源のネットワークづくり等を行う。
[福祉サービスの提供]
○ 今後の国の精神障害者福祉施策の動向も踏まえつつ、当面、次のメニューを実施する。さらに、関係機関との連携の強化と人材の育成を図りつつ、精神障害者の地域生活を支援するための施策を充実させていく。
- ホームヘルプサービス、訪問看護
- 小規模作業所への助成(身体障害者・知的障害者の小規模作業所と同等の内容とする。)
- 国のメニュー事業である地域精神保健福祉対策促進事業を活用した諸事業(職親に対する支援、就労支援、精神障害者による自助活動に対する支援等の充実に取り組む。)
○ 生活訓練施設、福祉ホーム及びグループホームは、ニーズの状況を踏まえ、必要な整備を進める。
[市立施設の利用料等]
○ 精神障害者保健福祉手帳制度の導入に伴い、他の障害者手帳制度と同様に、市立施設の利用料の減免等を実施する。
○ リフトバス(しろはと号)、障害者福祉会館及び障害者スポーツセンターの利用対象者を精神障害者にも拡大する。
○ 市営交通機関の運賃制度については、国等の動向を踏まえながら検討を進める。
[救急システムの整備]
○ 精神病の回復期にあっても急激に病状が変化するケースもあることから、地域での生活支援のメニューの充実と併せて、精神科救急システムの整備を進める。
(11)てんかん、自閉症又は難病に起因する障害のある人に対する支援
[基本的方向]
○ 障害者基本法の制定の際の附帯決議において、「てんかん及び自閉症を有する者並びに難病に起因する身体又は精神上の障害を有する者であって長期にわたり生活上の支障があるものは、この法律の障害者の範囲に含まれるものであり、これらの者に対する施策をきめ細かく推進するよう努めること」とされている。
てんかん、自閉症又は難病に起因する障害のある人に対しても、こうした観点に立った施策の推進を図る。[共通する取組み]
○ 患者団体(日本てんかん協会福岡県支部、福岡県難病団体連絡会北九州市支部)における情報交換、相談等の会員支援活動を支援する。また、患者団体と行政機関の連絡を密にする。
○ 保健福祉センターの地域担当の保健婦による訪問指導を推進する。
○ 医師会の協力の下、専門医に関する情報収集・提供、専門医とかかりつけ医との連携方策を検討する。
○ 医療に関する情報のほか、生活や福祉に関する情報を積極的に広報する。
[てんかんを有する人についての取組み]
○ てんかんについては、障害者基本法の制定の際に示された法解釈により、精神障害と位置づけられた。
てんかんを有する人特有のニーズや問題状況に留意しつつ、精神障害者に関する諸施策の対象にはてんかんを有する人も含むものとして取組みを行う。○ 現実には知的障害とてんかんが重複している場合も多いことから、施設利用等の面で、知的障害者施策においても留意する。
[自閉症を有する人についての取組み]
○ 自閉症については、障害者基本法の制定の際に示された法解釈により、知的障害と位置づけられた。
自閉症を有する人特有のニーズや問題状況に留意しつつ、知的障害者に関する諸施策の対象には自閉症を有する人も含むものとして取組みを行う。[難病に起因する障害を有する人についての取組み]
○ 難病に起因する身体又は精神上の障害を有する人については、その特有のニーズや問題状況に留意しつつ、身体障害者又は精神障害者に関する諸施策の対象に含まれるものとして取組みを行う。
○ 法律上の身体障害者又は精神障害者に該当しない難病患者で、ホームヘルプサービス、日常生活用具等の福祉サービスを必要とする場合については、国における制度化の動きを踏まえつつ、できる限りサービスの提供を行う。
○ 国が(財)難病医学研究財団に委託して設置する予定の難病情報センターを活用し、積極的に各種情報を得る。
[基本的方向]
○ 障害があってもできる限り地域の中で過ごすことを基本とし、やむを得ない場合に入所施設への入所措置を行うようにする。また、各区保健福祉センターが集まって、本人・家族や希望する施設の状況等を踏まえた入所措置の決定を行うようにし、必要なときには入所できるようにする。
○ 入所施設の整備は、今後の地域生活支援策の充実による需要の動向を踏まえた上でその必要性を検討する。
ただし、現在多くの入所待機者があり、また今後とも入所需要に応えることができないと見込まれる知的障害者、重症心身障害者、重度肢体不自由者については、需要の範囲内での新たな施設整備を行う。○ 入所施設についても、障害者の地域生活を支援する機能の充実を進める。
[新たに整備する入所施設の機能等]
○ 新たに整備する入所施設については、ショートステイ専用床の整備、重症心身障害者通園事業の実施、知的障害者の自立生活訓練棟の設置、在宅者の生活訓練のための短期の有期限入所、入所者の地域生活への移行に向けた指導・支援など、地域生活を支える拠点としての機能の充実を図る。
- 既存の入所施設についても、こうした機能の充実に向けた取組みを支援する。
○ 新たに整備する知的障害者入所施設については、高齢者専用の居住棟の設置を検討する。
○ 市が整備する障害者福祉施設については、障害者団体の育成の観点やこれまでの運営実績から、障害者団体への運営委託を基本とする。
[入所者の処遇の向上]
○ 入所施設等の障害者福祉施設等において、より一層、各人のプライバシーの確保、本人の意思の尊重等個人としての尊厳を踏まえた処遇、一人一人の状況に応じた処遇が図られるようにする。
- 各入所者(通所施設利用者も含む)の状況に応じた適切な処遇を提供できるよう、施設における入所者のケアプログラムのマニュアルを作成し、その活用の促進を図る。
- 入所者による自治会活動の育成等により、施設と入所者との意見交換を図るようにする。
- 新たに整備する入所施設については、必要に応じ個室化の推進等生活の質の向上を図る。
○ 救護施設は生活保護法上の施設であるが、現実には多くの障害者が入所している。こうした状況を踏まえ、救護施設についても、障害者福祉施設に準ずるものとして関連する情報の提供や連絡・調整を行うようにする。
[基本的方向]
○ 車いすの使用者、視覚障害者等にとって、公共交通機関等による移動の確保、安全な歩行空間の整備、公共的建築物の容易な利用は、今後社会参加を促進していく上で、必須の条件である。
○ 福祉的な施策として、現在、タクシー乗車運賃助成が実施されているが、すべての公共交通機関が車いす等でも利用しやすくすることが、最終的な目指すべき方向である。
例えば、本市のバスについては、民営・市営ともに超低床・スロープ付きのバスの導入が進んでおり、こうした取組みの一層の進展が求められる。○ 公立・民立を問わず公共的建築物については、車いす使用者も使用可能なトイレやエレベーター、視覚障害者誘導用ブロック、スロープの設置・改善等を推進する。
○ 特に市営の交通機関や市立の建築物に関しては、率先して、障害者を含むすべての市民が移動・利用しやすい構造による整備を推進する。
[移動の確保]
○ 障害のある人も快適に利用できる幅の広い歩道の整備や、歩道の段差解消、視覚障害者誘導用ブロックの設置等を推進する。
また、歩道に自転車の放置や車の乗上げ等が行われないようにするためのPR等の取組みを推進する。○ 関係交通事業者に対し、「公共交通ターミナルにおける高齢者・障害者等のための施設整備ガイド」等に基づく施設整備や、超低床・スロープ付きのバスの路線拡大等を働きかける。
[ボランティア活動による送迎サービス]
○ 公共交通機関のバリアフリー化が求められる一方、実際には、北九州あゆみの会等の民間のボランティア活動による障害者の送迎サービスが重要な役割を果たしており、移動の確保対策に関しては、こうした組織的なボランティア活動が不可欠である。
運転ボランティアの協力の拡大、リフト付き車両の確保等により、こうしたボランティア活動の支援の強化を図る。○ また、人工透析患者や難病患者等については、その病状や疲労のために通院が難しい場合がある。
ホームヘルプサービスの活用を図るほか、こうした切実なニーズに対応できる送迎ボランティア活動の育成・振興を図る。○ 外出が困難な虚弱高齢者を対象に、北九州市ボランティアセンターが連合福岡北九州地域協議会等の協力を得て実施している送迎サービス(シルバーひまわりサービス)について、障害者への対象拡大を検討する。
[盲導犬]
○ 財団法人福岡県盲導犬協会への助成等を通じ盲導犬の普及を図る。あわせて、視覚障害者に対する利用促進の広報及び市民に対する啓発を進める。
[多目的トイレ]
○ 車いす使用者やおむつの使用者が気軽に外出できるかどうかを決定する最も大きな要因の一つは、トイレである。
○ 街中で安全に、できれば24時間使用できる場所に、車いすでも使用できるトイレの設置が進められるよう働きかける。
○ 車いすでも使用できるトイレの普及に際しては、できれば車いすだけでなく、乳幼児を連れた保護者やおむつを使用する障害児・者も利用できるよう、簡易なベッドを備え付けたいわば「多目的トイレ」とすることを推奨する。
○ 車いすでも使用できるトイレや多目的トイレがある場所についての情報の収集・提供及び表示の促進を図る。
[福祉のまちづくり]
○ 福祉のまちづくりの実現を目指して昭和56年に制定された「北九州市福祉都市環境整備要綱」が十分な効果を発揮しておらず、身体に障害のある人等にとって必ずしも利用しやすい建築物等の整備が確保されている状況ではない。
○ 「北九州市福祉都市環境整備要綱」の中に定められた建築物、道路、公園、駐車場等の整備基準の見直しを行い、市の施設については基準を遵守した整備を確実に行うようにするとともに、民間の施設については基準の遵守についての理解と協力を求めるよう積極的な広報・普及を行う。
○ 建築物については、要綱の運用と併せて、「ハートビル法」(高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律)による積極的な指導を行う。また、要綱の整備基準の見直しの際にハートビル法との関係を整理する。
○ 上記と並行して、福祉のまちづくり検討小委員会における福祉のまちづくり条例の調査・研究を引き続き推進する。
○ ハード面の整備と併せ、市民の意識啓発や福祉の心づくりなどソフト面の取組みを推進する。
[基本的方向]
○ 情報交換や障害受容の一助、更には積極的な社会参加の促進、自己決定の尊重等の観点から、障害者本人及びその家族による当事者活動は極めて重要な役割を果たしており、今後とも積極的に支援する。
[障害者団体の取組みの支援]
○ 障害者(本人、家族)団体による相互の情報提供、相談等の取組みを支援する。
○ 東部障害者福祉会館について、障害者団体の活動拠点としての利用の促進を図るため整備を進める。
[自立生活推進活動、当事者活動]
○ 自立を目指す障害者同士のピアカウンセリングをはじめとする自立生活推進のための諸活動を支援する。
○ 団体や小集団(グループ)による相談等の当事者活動を支援する。また、(仮称)障害者地域生活支援センターや新障害福祉センター等は、当事者のグループづくりとその活動に対するアドバイスその他の協力を行うとともに、必要に応じて、障害者本人や家族等に対し、こうした当事者活動を紹介する。
○ 知的障害者や精神障害者本人による意見表明の機会が広がるよう配慮する。
また、北九州市精神薄弱者育成会等における知的障害者の「本人たちの会」結成の動きを支援し、自立促進を図る。○ 身体障害者相談員及び精神薄弱者相談員について、研修の充実や(仮称)障害者地域生活支援センターとの連携等により、活動の充実を図る。
また、中途障害等に関する相談にも適切に応じられるようにする。[情報基地]
○ 障害者当事者が主体的に運営に参加する情報の収集・発信基地の設置を支援する。
- 市行政とも連携しながら、障害者福祉行政や障害者が主体的に参加できる行事イベント、ボランティア募集、生活案内等に関する様々な情報を収集し、発信する。
- 国が(財)日本障害者リハビリテーション協会に委託して開始する予定の障害者情報ネットワークに参加する。
[基本的方向]
○ スポーツ、芸術・文化、レクリエーション等は、自らの楽しみとなるほか、仲間づくり(障害のある人同士の場合、障害のある人とない人を交えた場合)、健康づくり等の点で生活の幅を広げるとともに、人によっては人生の重要な部分を占めることもある。
また、障害のある人と障害のない人を交えた仲間づくりは、最も効果的な市民啓発である。○ こうしたことを踏まえ、障害のある人がスポーツ、芸術・文化、レクリエーション等を実践できる機会を拡充する。
またその際、こうした分野におけるボランティアの創造性や活力をできる限り活かせる方向を目指す。[スポーツ]
○ 北九州市障害者体育大会その他の各種のスポーツ大会の実施や参加に対し、引き続き助成その他の支援を行う。また、精神障害者の参加を促進する。
○ 障害者スポーツセンターの体育館やプール、卓球室などについて、障害者の利用の促進を図るため、今後の在り方について検討する。
[芸術・文化]
○「北九州国際障害者芸術祭」や「こころのふれあいコンサート」等の実績を踏まえつつ、障害のある人が積極的に参加する芸術祭やコンサートの開催を支援し、その振興を図る。
○ 東部・西部障害者福祉会館での芸術・文化活動を充実させるとともに、障害者福祉施設での音楽等の活動の振興を図る。
また、入所施設の入所者が施設外での芸術・文化をはじめとする種々の活動に参加することを奨励する。[レクリエーション]
○ 民間団体による障害児・者が積極的に参加できる屋外活動その他のレクリエーション活動を支援するとともに、乗馬や市民農園を活用したレクリエーションの可能性を検討する。
[情報提供、設備改善]
○ スポーツ、芸術・文化、レクリエーションや生涯教育(公民館活動等)に関する情報を幅広く(14)の情報基地において収集し、関係機関の協力を得て、印刷物やコンピュータ通信、電話等により、障害者やボランティア活動希望者等に情報提供を行う。
○ 身体の不自由な人(個人又は団体)が容易に利用できるよう、体育施設、芸術・文化施設、青少年教育施設、公民館、図書館等において、スロープやエレベーターの設置、段差の解消、トイレの改善など、設備の改善を進める。
[ボランティア活動振興]
○ ボランティア活動は、多くの市民にとって主体的に福祉に関わることの出来る最も身近な機会であるとともに、福祉サービスを厚くする役割を果たしている。
ボランティアに関する各種養成講座の開催等を通じて、日常的なボランティア活動への参加のきっかけづくりやより専門性の高い技能の習得の場の提供が行われるようにする。
また、企業等への働きかけ等により、ボランティアの裾野の拡大を図る。(ボランティア養成の取組みの例)
- 北九州市ボランティアセンターにおけるボランティア入門・養成講座
- 北九州市社会福祉ボランティア大学校におけるリーダー養成
- 東部・西部障害者福祉会館における点訳・朗読奉仕員、手話奉仕員、要約筆記奉仕員等の専門性の高い各種ボランティアの養成講座
○ 北九州市ボランティアセンター及び北九州市障害福祉ボランティア協会におけるコーディネート機能の充実を図る。
○ 障害者団体や障害者福祉施設においても、ボランティアとの協働について理解を深め、ボランティア養成等の実践の促進を図る。
[点字図書館、ビデオライブラリー]
○ 西部障害者福祉会館内にある点字図書館、ビデオライブラリーについて、視覚障害者及び聴覚障害者の情報基地として充実を図る。
○ 点字図書館等における点訳サービスに関しては、パソコンを用いた点訳方法の普及を図る。
[国際交流]
○ 障害者施策に関する情報交換や市民への啓発等のため、障害者相互のアジア諸国を中心とした国際交流を推進する。
[災害時の対応]
○ 平成7年1月の阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、北九州市地域防災計画の見直しの中で、大規模災害時における障害者等のいわゆる災害弱者の防災対策の再点検を行う。
(再点検の主な事項)
- 災害情報の伝達
- 安否の確認
- 人工透析患者、てんかんを有する人等特別な支援を必要とする人の把握・支援
- 二次的な避難所の確保
[手続き等の改善]
○ 出前主義の実践を進める((1)参照)ほか、手続きの簡略化(住民票添付の廃止、前年所得証明提出の廃止等)、プライバシーに配慮した様式の設定(身体障害者手帳の様式改正等)、点字化の推進(身体障害者手帳、母子健康手帳の点字化等)、窓口での手話通訳の充実(テレビ電話の活用等)、適時のサービス提供(身体障害者手帳の退院前交付等)など、行政手続き等の改善を進める。
[サービスの広報]
○ 障害者についての各種サービスは、種類も多く、障害のある人やその家族に知られていない場合がある。
説明会や市政だより、小冊子(「福祉ガイド」)、(仮称)年長・障害者相談コーナー、各種障害者団体等様々なルートを通じて積極的な広報を行う。[サービス利用に関する適正な費用負担]
○ 施設や在宅サービスの利用に関して、国の基準等を踏まえつつ、負担能力や受益の程度に応じた適正な利用者負担の実施を図る。
[障害者福祉行政の組織]
○ 精神障害者施策における福祉施策の取組み強化、障害者施策の統合化を踏まえた市本庁における障害者福祉行政の組織の見直しを検討する。
[適切な表現]
○ 障害をある個人の特徴の一つに過ぎないととらえると、「障害者」という表現よりも「障害のある人」という表現が適切であると考えられる。一方、法律上は「障害者」や「身体障害者」等の表現が用いられており、また、文章の流れの中では「障害者」の方が納まりがよく聞こえる場合がある。
こうした状況にかんがみ、当面、行政上使用する場合には、あまり厳格にする必要はないが、なるべく「障害のある~」等の表現を用いる。○ 知的な障害がある人については、従来法律で用いられている「精神薄弱者」という表現が一般的であったが、不快感を与える等の理由により、最近は「知的障害者」という表現が増えてきている。
行政上使用する場合には、原則として「知的な障害がある人」又は「知的障害者」という表現を用いる。○ そのほか、当事者の意見等を参考し、より適切な表現の実践に努める。
6 北九州市障害者施策推進基本計画の推進方策
○ 本計画が確実に実施されるよう、本計画の実施のための手順を定めるとともに、推進状況を定期的にフォローアップする。また、本計画のフォローアップに関し、毎年、北九州市障害者施策推進協議会等に報告するとともに、専門的な立場からの意見を聴く。
○ 本市での精神障害者に関する取組みは、県からの権限委譲により、平成8年度から始まるものであり、また、今後国において障害者施策に関する様々な制度の改正が行われる可能性がある。
こうした点を含め、障害者施策を巡る諸情勢の変化があった場合等には、必要に応じ本計画の中間見直しを行う。障害者の地域生活の支援
主題:
北九州市障害者施策推進基本計画 №1 1頁~44頁
発行者:
北九州市
発行年月:
1996年04月
文献に関する問い合わせ先:
北九州市保健福祉局障害福祉課
北九州市小倉北区城内1番1号
TEL 582-2424
FAX 582-2425