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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2008年3月号

障害者自立支援法の抜本的な見直しに向けた緊急措置

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課

障害者自立支援法については、改革に伴う軋みに丁寧に対応するため、平成18年12月に国費1,200億円の「障害者自立支援法円滑施行特別対策」を決定し、平成18年度から20年度までの3年間にわたり、利用者負担の更なる軽減や事業者に対する激変緩和措置などを実施しているところです。

こうした状況の下、与党連立政権合意において「障害者自立支援法について抜本的な見直しを検討するとともに、障害者福祉基盤の充実を図る」とされたことを受けて、与党障害者自立支援に関するプロジェクトチームが報告書をとりまとめています。この報告書の中で、9つの項目について抜本的な見直しに向けた基本的な課題とその方向性が提言されています。

このうち、当事者や事業者の置かれている状況を踏まえ、特に必要な事項については、平成20年度予算と「特別対策」で造成した基金を活用して緊急措置を講ずることとしています(資料1)。

資料1 障害者自立支援法の抜本的な見直しに向けた緊急措置
図 障害者自立支援法の抜本的な見直しに向けた緊急措置拡大図・テキスト

【緊急措置】

[20年度予算:130億円]

  1. 利用者負担の見直し 70億円
  2. 事業者の経営基盤の強化 30億円(「特別対策」の基金の活用:150億円)
  3. グループホーム等の整備促進 30億円

1 利用者負担の見直し

利用者負担の見直しについては、

  1. 低所得世帯を中心とした利用者負担の軽減【障害者・障害児】
  2. 軽減対象となる課税世帯の範囲の拡大【障害児】
  3. 個人単位を基本とした所得段階区分への見直し【障害者】

を平成20年7月から実施します。

障害者の利用者負担については、「特別対策」が、利用者負担の軽減に大きな役割を果たしている一方、障害者自立支援法施行前には低所得者の居宅・通所サービスに利用者負担がほとんど無かったことなどに比べると、なお負担感が存在するとの指摘があります。これに対応するため、低所得1及び2(非課税世帯)の障害者の居宅・通所サービスに係る負担上限額を更に軽減します。

さらに、障害福祉サービスの負担上限額を算定する際の所得段階区分については、現在住民票上の世帯全体の所得によって判断しているため、障害者本人の所得が低くても、父母等の所得が高い場合には、負担上限額は高い区分になりますが、障害者本人の自立に対する父母等の意向が強いことを踏まえ、成人の障害者について、負担上限額を算定する際の所得段階区分を、「個人単位」を基本として見直し、本人と配偶者のみの所得で判断します。この結果、父母等の所得が高くても、本人と配偶者の所得が市町村民税の課税基準に満たない場合は、低所得世帯の負担上限額が適用されることになります(資料2参考1)。

資料2 利用者負担の見直し1〔障害者〕
図 利用者負担の見直し1〔障害者〕拡大図・テキスト

参考1 障害福祉サービスに係る利用者負担の比較(障害者(大人)の場合)
図 障害福祉サービスに係る利用者負担の比較(障害者(大人)の場合)拡大図・テキスト

障害児については、その保護者が利用者負担を支払うことになりますが、課税世帯の割合は約8割となっており、「特別対策」実施後もその効果が行き届かない世帯が多いなど、障害児のいる世帯の負担感は依然として強く、さらに子育てを支援する観点も含めた支援の必要性も指摘されていることから、「特別対策」による負担軽減措置の対象となる課税世帯の範囲を「年収600万円程度まで(市町村民税所得割額16万円未満)」から「年収890万円程度まで(市町村民税所得割額28万円未満)」に拡大します(3人世帯の場合)。この結果、障害児のいる世帯の8割以上が軽減措置の対象となります。

さらに、年収890万円程度までの世帯について、居宅・通所・入所サービスに共通して1月当たりの負担上限額を更に軽減します(資料3参考2)。

資料3 利用者負担の見直し2〔障害児〕
図 利用者負担の見直し2〔障害児〕拡大図・テキスト

参考2 障害福祉サービスに係る利用者負担の比較(障害児の場合)
図 障害福祉サービスに係る利用者負担の比較(障害児の場合)拡大図・テキスト

2 事業者の経営基盤の強化

事業者の経営基盤の強化については、「特別対策」による従前収入の9割保障に加えて、1.通所サービスに係る単価の引上げ、2.通所サービスにおける定員を超えた受入れの更なる弾力化、3.入所サービスにおける入院・外泊時支援の拡充を平成20年4月から実施します(資料4)。

資料4 事業者の経営基盤の強化1
図 事業者の経営基盤の強化1拡大図・テキスト

障害者自立支援法においては、利用者本位のサービス提供を行う観点から、利用者が自らサービスを選択し、複数のサービスを組み合わせて利用することができるよう、サービスの利用実績に応じて報酬を支払う日額払い方式としており、報酬単価の設定に当たり、利用率を加味して一定の欠員等にも配慮するとともに、支援等に応じた加算措置を設けるほか、平成20年度までの間、従前の報酬額の9割を保障する激変緩和措置を実施しています。しかし、依然として事業運営に不安を訴える意見もあることから、日額払い方式の影響が大きい通所サービスについて、報酬単価の設定に係る「利用率」を見直すことにより単価を約4%引き上げます(別紙1)。

別紙1 通所サービスに係る報酬単価の見直し
図 通所サービスに係る報酬単価の見直し拡大図・テキスト

また、利用者の利用促進を図り、事業者の経営基盤を安定させるため、通所サービスの受入れ可能人数について更なる弾力化を実施します(別紙2)。

別紙2 通所サービスにおける定員を超えた受入の更なる弾力化
図 通所サービスにおける定員を超えた受入の更なる弾力化拡大図・テキスト

  • 1日当たりで定員の120%まで→150%まで
  • 過去3か月平均で定員の110%→125%まで

このほか、障害福祉サービス費用の額(報酬)の改定を平成21年4月に実施することとしていますが、それまでの間の事業者を取り巻くさまざまな状況に対応するため、「特別対策」により各都道府県に造成された基金の使途や事業の実施基準を見直すことにより、次のような支援も実施します(資料5)。

資料5 事業者の経営基盤の強化2
図 事業者の経営基盤の強化2拡大図・テキスト

(1)就労支援を行う事業者への支援

一般就労への移行等を促進するため、就労継続支援事業者が、企業等での作業を通じた支援を行った場合などに助成。

(2)重度障害者への対応

1.ケアホームにおける対応

ケアホームに重度障害者を受け入れた場合に助成。併せて、ケアホームにおいて特例的にホームヘルプを利用できる者の範囲を拡大。

2.重度訪問介護における対応

現行の基金事業において、ホームヘルパーの資質の向上や求人広告に要する費用等も助成対象となることを明確化。

(3)児童デイサービス事業への支援

就学前児童の受入れが少ない児童デイサービス事業所が、職員を加配した上で個別支援に取り組む場合に助成。

(4)相談支援事業の拡充

社会福祉法人等が、障害者等に対する障害福祉サービスについての説明会・相談会やサービスを利用していない障害者等の自宅訪問などの事業を行った場合に助成。

(5)地域における施設の拠点機能に着目した事業への支援

障害者に対する地域住民の理解や支援力を高めるなど、施設の拠点機能を高めるための活動に助成。

(6)諸物価の高騰等への対応

諸物価高騰によるコストの増加分や事務処理コストの増加分について、事業者に対し助成。

(7)小規模作業所の移行促進

新体系への移行を促進するなど、小規模作業所への支援。

(8)視覚障害者移動支援従事者の資質の向上

視覚障害者移動支援従事者の資質の確保のため実施する研修等に助成。

(9)その他

3 グループホーム等の整備促進

障害者の居住の場を確保するため、グループホーム等の整備に対する助成事業を創設します。

今後は、今回の緊急措置の着実な実施を図るとともに、与党プロジェクトチームの報告書を踏まえながら、障害者自立支援法の抜本的見直しに向けて、制度全体にわたる検討を進めていきます。