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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2014年3月号

平成26年度障害保健福祉関係予算(案)について

厚生労働省障害保健福祉部企画課

平成26年度障害保健福祉部関係予算については、対前年度7.4%増の1兆5,019億円を計上しており、障害児・障害者の社会参加の機会の確保及び地域社会における共生を支援するため、障害福祉サービスの充実や地域生活支援事業の着実な実施、就労支援、精神障害者や発達障害者などへの支援施策の推進を図ることとしています。

平成26年度障害保健福祉関係予算(案)の主な内容は、次のとおりです。

1 障害福祉サービスの確保、地域生活支援等

(1)良質な障害福祉サービス等の確保 9,072億円

障害児・障害者が地域や住み慣れた場所で暮らすために必要なホームヘルプ、グループホーム、就労移行支援等の障害福祉サービスを総合的に推進します。

また、サービス等利用計画の作成及び地域生活への移行が着実に進むよう、相談支援に必要な経費を確保します。

(2)障害児の発達を支援するための給付費などの確保 897億円

障害のある児童が、できるだけ身近な地域で、障害の特性に応じた療育等の支援を受けられるよう、必要な経費を確保するとともに、障害児通所支援の利用者負担について、多子軽減措置を導入します。

(3)地域生活支援事業の着実な実施 462億円

移動支援や意思疎通支援など障害児・障害者の地域生活を支援する事業について、市町村等での事業を着実に実施します。

(4)障害児・障害者への福祉サービス提供体制の基盤整備 30億円

障害者の社会参加支援や地域生活支援を更に推進するため、就労移行支援、就労継続支援事業所等の日中活動系サービス事業所やグループホーム等の整備促進を図ります。

また、障害児支援の充実を図るため、地域の障害児支援の拠点となる児童発達支援センター等の整備や小規模な形態によるきめ細やかな支援体制の整備を推進します。

(参考)

【平成25年度補正予算案】

○障害者施設等の防災対策等の推進 148億円

障害者施設等の防災対策等を推進するため、耐震化やスプリンクラーの設置等に要する費用に対して補助を行います。

(5)障害児・障害者への良質かつ適切な医療の提供 2,217億円

心身の障害の状態の軽減を図る自立支援医療(精神通院医療、身体障害者のための更生医療、身体障害児のための育成医療)を提供します。

(6)特別児童扶養手当、特別障害者手当等 1,502億円

特別児童扶養手当、特別障害者手当等について、必要な経費を確保します。

(7)障害児・障害者虐待防止などに関する総合的な施策の推進

1.障害者虐待防止の推進 地域生活支援事業(462億円)の内数

都道府県や市町村で障害児・障害者虐待の未然防止や早期発見、迅速な対応、その後の適切な支援を行うため、地域の関係機関の協力体制の整備、家庭訪問、関係機関職員への研修等を実施するとともに、障害児・障害者虐待の通報義務等の制度の周知を図ることにより、支援体制の強化を図ります。

2.障害児・障害者虐待防止・権利擁護に関する人材養成の推進 4百万円

国において、障害児・障害者の虐待防止や権利擁護に関して各都道府県で指導的役割を担う者を養成するための研修を実施します。

(8)重度訪問介護などの利用促進に係る市町村支援事業 22億円

重度障害者の地域生活を支援するため、重度障害者の割合が著しく高いこと等により訪問系サービスの給付額が国庫負担基準を超えている市町村に対し、人口規模等を踏まえた重点的な財政支援を行います。

(9)強度行動障害を有する者への職員の育成 地域生活支援事業(462億円)の内数

強度行動障害を有する者に対応する職員の研修に専門研修を設け、適切な個別支援計画を作成可能な職員の育成を図ります。

(10)障害者自立支援機器の開発の促進 1.5億円

ロボット技術を利用した機器が、障害者の自立や生活支援に活かされるよう、企業が行う開発を更に促進するためのシーズとニーズのマッチング等を行います。

(11)芸術活動の支援の推進 1.3億円

芸術活動に取り組む障害者への支援として、出展機会や著作権等の権利保護等に関する相談支援などを行うモデル事業等を実施します。

(12)障害児・障害者の社会参加の促進 26億円

視覚障害者に対する点字情報等の提供、手話通訳技術の向上、盲ろう者向け通訳者養成等を支援し、障害児・障害者の社会参加の促進を図ります。

障害福祉サービス等予算の推移
図 障害福祉サービス等予算の推移拡大図・テキスト

2 地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策の推進 232億円

(1)高齢・長期入院の精神障害者の地域移行・地域定着支援の推進
1.2億円及び地域生活支援事業(462億円)の内数

「入院医療中心から地域生活中心へ」という基本理念に基づき、都道府県等において、精神障害者の地域移行支援に係る体制整備のための広域調整及び関係機関との連携等を図ります。

また、入院患者の約半数を占める高齢入院患者に対して、退院に向けた包括的な地域支援プログラムによる治療や支援等を行い、精神障害者の退院促進や地域定着を支援するとともに、難治性患者に対して専門的な治療を実施するために、医療機関間のネットワークの構築等による支援体制のモデル事業を行います。

(2)精神科救急医療体制の整備 19億円

精神疾患のある救急患者が地域で適切に救急医療を受けられるよう体制の充実に取り組むとともに、身体疾患を合併している患者に対応できる病床の確保や救急搬送受入体制の強化等により、精神科救急医療体制の整備を推進していきます。

(3)地域で生活する精神障害者へのアウトリーチ(多職種チームによる訪問支援)体制の整備
地域生活支援事業(462億円)の内数

精神障害者の地域移行・地域生活支援の一環として、保健所等において、ひきこもり等の精神障害者を医療へつなげるための支援及び関係機関との調整を行うなど、アウトリーチ(多職種チームによる訪問支援)を円滑に実施するための支援体制を確保します。

(4)認知行動療法の普及の推進 1億円

うつ病の治療で有効性が認められている認知行動療法の普及を図るため、従事者の養成を実施するとともに、平成26年度から新たに心理職等の医療関連職種に対する研修事業を追加し実施します。

(5)摂食障害治療体制の整備 0.2億円

「摂食障害治療支援センター」を設置して、急性期の摂食障害患者への適切な対応、医療機関等との連携を図るなど摂食障害治療の体制整備を支援します。

(6)災害時心のケア支援体制の整備 0.5億円
及び地域生活支援事業(462億円)の内数

近年必要性が高まっている心的外傷後ストレス障害(PTSD)対策を中心とした事故・災害等の被害者への心のケアの対策を推進するため、各都道府県で災害派遣精神医療チーム(DPAT)や緊急危機対応チームの定期的連絡会議を開催するなど、日常的な相談体制の強化や事故・災害等発生時の緊急対応体制の強化を図ります。

また、大規模自然災害発生時の心のケア対応として、平成23年に国立精神・神経医療研究センターに設置された「災害時こころの情報支援センター」で、DPAT派遣に係る迅速かつ適切な連絡調整業務や、各都道府県等で実施される心のケア活動への技術的指導を行い、東日本大震災被災者への継続的な対応や、今後の災害発生に備えた都道府県等の体制整備を支援します。

(7)心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に関する医療提供体制の整備の推進 208億円

心神喪失者等医療観察法を円滑に運用し、対象者の社会復帰の促進を図るため、指定入院医療機関の確保及び通院医療を含む継続的な医療提供体制の整備に努めるとともに、指定医療機関の医療従事者を対象とした研修や指定医療機関相互の技術交流等により、医療の質の向上を図ります。

(8)相談支援事業所等(地域援助事業者)における退院支援体制確保【新規】
地域生活支援事業(462億円)の内数

医療保護入院者の地域生活への移行を促進する観点から、相談支援事業所等における退院支援の体制整備を支援します。

3 発達障害児・発達障害者の支援施策の推進 2.1億円

(1)発達障害児・発達障害者の地域支援機能の強化 地域生活支援事業(462億円)の内数

発達障害の乳幼児期から成人期までの一貫した支援体制の整備及び発達障害児・発達障害者の社会参加を促す観点から、地域の中核である発達障害者支援センターに「発達障害者地域支援マネジャー」を配置し、市町村や事業所等への支援、医療機関との連携や困難ケースへの対応等の機能の強化等を図ります。

(2)発達障害児・発達障害者の支援手法の開発や支援に携わる人材の育成など 2億円

1.支援手法の開発、人材の育成 1.5億円

発達障害児・発達障害者等を支援するための支援手法の開発を行うとともに、関係する分野との協働による支援や切れ目のない支援等を推進するためのモデル事業を実施します。

また、国立障害者リハビリテーションセンターで、発達障害者の就労支援に関する支援手法の開発に取り組むとともに、発達障害児・発達障害者支援に携わる人に対する研修を行い、人材の専門性の向上に取組みます。

2.発達障害に関する理解の促進 0.5億円

全国の発達障害者支援センターの中核拠点としての役割を担う、国立障害者リハビリテーションセンターに設置された「発達障害情報・支援センター」において、発達障害に関する各種情報を発信し、支援手法の普及や国民の理解の促進を図ります。

また、「世界自閉症啓発デー」(4月2日)など、自閉症をはじめとする発達障害に関する正しい知識の浸透を図るための普及啓発を行います。

(3)発達障害の早期支援 地域生活支援事業(462億円)の内数

市町村において、発達障害等に関して知識を有する専門員が保育所等を巡回し、施設のスタッフや親に対し、障害の早期発見・早期対応のための助言等の支援を行います。

4 障害者に対する就労支援の推進 11億円

(1)工賃向上のための取り組みの推進 3.1億円

一般就労が困難な障害者の地域での自立した生活を支援する観点から、経営改善や商品開発、市場開拓等に対する支援を行うことにより、就労継続支援B型事業所の利用者の工賃向上を図ります。

また、特に支援効果が高く、さらに障害者優先調達推進法の促進にも資する共同受注窓口の体制整備を重点的に実施します。

(2)障害者就業・生活支援センター事業の推進 7.9億円
及び地域生活支援事業(462億円)の内数

1.センター設置による就労支援の強化推進

就業に伴う日常生活面の支援を必要とする障害者に対し、窓口での相談や職場・家庭訪問等による生活面の支援などを実施します。

2.就労系サービスの利用に関するモデル事業の推進

就労系障害福祉サービスの利用にあたってのアセスメントについて、精神障害や発達障害にも対応できるアセスメントツール等を作成するほか、障害福祉サービス事業所における就労後の定着支援(フォローアップ)を検証するため、自立訓練(生活訓練)による就労定着支援の実証研究などの支援モデルを検証します。

また、加齢や重度化による一般就労から就労継続事業の利用への移行なども想定した、関係機関の連携による就労支援モデルの検証を行います。

(3)就労支援の充実強化 地域生活支援事業(462億円)の内数

就労支援を行う事業所のノウハウの充実を図り、企業等での就労を希望する障害者への支援を強化するとともに、企業等で働く障害者のための交流や生活面の相談支援の場の提供等により障害者の就労支援を推進します。

5 自殺・うつ病対策の推進 4.4億円

(1)地域での効果的な自殺対策の推進と民間団体の取組支援、普及啓発の推進 3億円

都道府県・指定都市に設置されている「地域自殺予防情報センター」での専門相談の実施のほか、関係機関のネットワーク化等により、うつ病対策、依存症対策等の精神保健的な取組を行うとともに、地域の保健所と職域の産業医、産業保健師等との連携の強化による自殺対策の向上を図ります。

また、自殺未遂者等へのケアに当たる人材を育成するための研修を行うとともに、全国的または先進的な自殺対策を行っている民間団体に対し支援を行います。

(2)自殺予防に向けた相談体制の充実と人材育成 地域生活支援事業(462億円)の内数

うつ病の早期発見・早期治療につなげるため、一般内科医、小児科医、ケースワーカー等の地域で活動する方々に対するうつ病の基礎知識、診断、治療等に関する研修や、地域におけるメンタルヘルスを担う従事者に対する精神保健等に関する研修を行うこと等により、地域における各種相談機関と精神保健医療体制の連携強化を図ります。

図 平成26年度障害保健福祉部予算案について拡大図・テキスト