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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2017年11月号

霞が関BOX

補装具費支給制度の動向

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課自立支援振興室福祉用具専門官 秋山仁

1 はじめに

義肢、装具、車椅子といった補装具は、障害のある方が日常生活や社会生活を送る上で欠かすことのできない重要な用具です。身体障害者福祉法(昭和25年)、児童福祉法改正(昭和26年)で制度化されて以来、身体に障害のある方の自立と社会参加を支援するための重要な柱となってきました。障害者自立支援法施行により自立支援給付に位置付けられ現在は障害者総合支援法に基づき運用されています。ここで、補装具費支給制度の概要と、今後の方向性について説明します。

2 補装具とは

補装具費支給制度は、補装具の購入又は修理に要する費用の一部を支給する制度です。対象となる用具は、障害者総合支援法で規定されており、具体的な基準として、同法施行規則で以下の3点が規定されています。

1.障害者等の身体機能を補完し、又は代替し、かつその身体への適合を図るように製作されたものであること。

2.障害者等の身体に装着することにより、その日常生活において又は就労若しくは就学のために、同一の製品につき長期間に渡り継続して使用されるものであること。

3.医師等による専門的な知識に基づく意見又は診断に基づき使用されることが必要とされるものであること。

さらに、詳細な種目、名称、型式、基本構造、上限額等の具体的な事項については、厚生労働省告示で定められています。

3 補装具費支給制度の概要(図1)

図1
図1拡大図・テキスト

(1)申請

補装具費支給制度は、各市町村が行う自治事務であり、実施主体は市町村となります。補装具の購入を希望する方は、専門的な医師等による意見書等、必要書類と一緒に、居住地である市町村に申請します。意見書を作成する医師は、専門的な知識・経験を有することが求められており、身体障害者福祉法第15条第1項に基づく指定医や、国立障害者リハビリテーションセンターで実施する補装具関係の適合判定医師研修会を修了していること等が求められます。

(2)支給決定

申請を受けた市町村は、身体障害者更生相談所等の判定・意見等を参考に、必要性を個別に判断し支給決定を行います。支給決定にあたっては、申請した身体障害児者の個々の状況に応じて判断することとしています。また、障害の現症、生活環境その他真にやむを得ない事情により、告示に定める種目に該当し、名称、型式、基本構造等によることができない補装具は、「特例補装具」として、補装具費の支給対象となります。

支給決定においては、必ず希望する補装具が認められることではなく、申請者のご希望をよく伺った上で、申請者の身体状況はもちろん、生活状況、環境因子等を把握して総合的に判断した上で、支給決定されるものと理解していただきたいと思います。

身体障害者更生相談所は、補装具費支給制度における技術的中枢機関及び市町村等の支援機関として、補装具の専門的な直接判定の他、市町村への技術的支援、補装具費の支給申請に係る医師意見書を作成する医師に対する指導等を行います。市町村が適切に支給決定を行うことができるよう、技術的な側面から判定を行うことが、身体障害者更生相談所の役割です。

身体障害児の補装具に関する判定を行う場合は、申請書や指定自立支援医療機関又は保健所の医師が作成した補装具費支給意見書により、市町村が判断することとしています。市町村は、支給決定に際し、補装具の構造、機能等に関することで技術的な助言を必要とする場合は身体障害者更生相談所に助言を求めることとしています。

難病患者等の補装具に関する判定を行う場合は、障害児者の手続きに準じますが、申請を受け付けるにあたり、障害者総合支援法施行令に規定する疾患に該当することを、難病医療拠点病院等の専門の医師による診断書等により確認することとしています。

(3)補装具費の支給

支給決定後、補装具製作業者は必要に応じて身体障害者更生相談所による製作指導を受けながら、申請者に合った補装具を製作します。製作された補装具は、身体障害者更生相談所等により、決定内容や申請者の身体状況と適合しているかどうかを確認(適合判定)した上で、申請者に引き渡されます。法の規定により、購入又は修理に要する費用の額の原則1割を申請者が負担することになります。利用者負担額については、所得に応じた負担上限月額が設定されているとともに、一定以上の高額所得者がいる世帯は補装具費の支給対象外とされています。また、市町村民税非課税世帯の障害者等については補装具費の利用者負担額を無料としたり、障害福祉サービスと合算して高額障害福祉サービスの対象としたりする等、負担軽減が図られています。

4 借受けの導入について

「障害者総合支援法施行3年後の見直しについて」(平成27年12月14日 社会保障審議会障害者部会報告書)において、補装具について、「購入を基本とする原則を堅持しつつ、成長に伴って短期間で取り替えなければならない障害児の場合など、個々の状態に応じて、貸与の活用も可能とすること」と提言されました。これを受け、平成28年5月に成立した改正障害者総合支援法においては、借受けによることが適当である場合に限り、借受けを補装具費の対象とする改正が行われたところであり、平成30年4月の施行に向け準備を進めているところです。

「借受けによることが適当である場合」は、同法施行規則で定めることとされており、 1.身体の成長に伴い、補装具の短期間での交換が必要であると認められる場合 2.障害の進行により、補装具の短期間の利用が想定される場合 3.補装具の購入に先立ち、比較検討が必要であると認められる場合 と規定される予定です。

「これまでのオーダーメイドされている補装具が今後は支給されなくなるのは困る」「レンタルが基本になるのか」といったご意見やご質問を頂戴しますが、身体状況に応じたオーダーメイドを基本とする現在の制度や支給決定プロセスを大きく変えるものではありません。また、申請者の意思により短期間で次々に要求できるというものではなく、身体障害者更生相談所等による専門的な判断により必要性が認められた場合に限られるものと想定しています。借受けの導入により、市町村の支給決定や身体障害者更生相談所等の判定のクオリティーが向上し、身体に適合した補装具が製作されるようになることを期待しています。

現時点で想定している種目は、図2のとおりです。当面は図のような種目を対象としますが、将来的な対象種目等については引き続き検討していくこととしています。また、基準額等、具体的な事項については、年度内に告示や通知等でお伝えしていく予定です。借受けの導入は新しい取り組みであり、混乱が生じないようにする必要があると考えています。そのため、障害者総合福祉推進事業において、「補装具費支給制度における借受け導入に向けた研修等のあり方に関する調査研究」を行い、制度の効果的な利用を促すツールとしてガイドブックを作成する予定です。市町村や身体障害者更生相談所等の関係機関において、各種通知等やガイドブックを活用していただくことで制度を円滑に運用できるよう、準備を進めてまいります。

図2
図2拡大図・テキスト

(あきやまひとし)