特集/教育リハビリテーションの諸問題 精神遅滞を伴う脳性マヒ児の行動測定基準

特集/教育リハビリテーションの諸問題

精神遅滞を伴う脳性マヒ児の行動測定基準

Activity Level of Retarded Cerebral Palsied Children

Katharine Banham*

武田 洋訳*

 この幼児と就学前の児童に対しての、行動測定規準はNorth Carolina Cerebral Palsy Hospitalにおけるリハビリテーション計画の中で、脳性マヒの幼児を心理的に評価するために役だてようと考案されたものである。これは二つの内容に分かれている。一つは2才以下の幼児に応用できるものであり、もう一つは2才から5才までに応用できるものである。測定は心理学者によって行われるようになっていて、個人別用の知能テストの標準である45分から60分間、あるいはそれを単位として継続して行われるようになっている。

 行動は10に分類され、それぞれで5点の得点ができるようになっている。それぞれの行動に対して、1点から5点が与えられるようになっているわけである。10の分類というのは次のようなものである。(a)身体的行動、(b)注意の集中、(c)探究行動、(d)社会的反応行動、(e)発音と会話、(f)逃避行動、(g)微笑と笑い、(h)号泣とすすり泣き、(i)永続的な努力、(j)がんこな反抗を含む、攻撃的で独断的な行動。

 2人の心理学者が精神遅滞を伴う56人と正常知能の12人の脳性マヒ児を、ほぼ6か月間、くり返し測定を行った。精神遅滞を伴う者のうち33人が30か月未満であり、23人が30か月から60か月で平均52か月であった。のちに2人の心理学者間の信頼性が高いものであることがわかった。r=.98であったからである。障害をもたない子どもを対象とする20の保育所の子どもたちも、学生の助手によって測定され、Duke University Preschool Laboratoryの比較規準で評価された。

 その比較は、行動規準の得点、知能、発達程度について行われ、Cattell Infant Intelligence Scaleと、Stanford-Binet Intelligence Scale(Form L-M)と、Quick Screening Scale of Mental Developementが用いられた。また幼児と就学前児童の二つの年齢グループ、さらに脳性マヒ児と普通児のグループの間で、10に分類された行動の得点の分布が比較された。

 一般的な行動については、Activity Level Rating Scaleで全得点によって表現されたが、30か月以後の精神遅滞を伴う脳性マヒ児に関してはいくつかの下位項目についても表現された。ただし、それ以前の年齢の者については表れなかった。30か月未満の精神遅滞を伴う脳性マヒの幼児の(a)と(j)の相関は-.05で、12か月の平均間隔を伴っていた。30か月以上の精神遅滞を伴う脳性マヒ児の場合、r=+.51で、同じく16か月の平均間隔がみられた。

 脳性マヒの幼児と就学前の子どもで、正常の知能を有する者については、総得点で知能の低いグループよりも比較的に安定性があった。また、それはDuke Preschool Laboratoryで示した障害のない子どもの反応に似ていた。30か月以下の脳性マヒ児の(a)と(j)の得点の相関係数は+.78で、30か月以上の者は+.56であった。障害のない子どもの場合はrは+.61であった。

 10項目に分類された行動の得点の分布については、年少と年長の子どもでは異なった成長過程を示すことが明らかになった。年少の精神遅滞を伴う脳性マヒ児の場合、注意の集中、社会的反応行動、発音、微笑、努力について得点の高いことが、(a)と(j)の得点から明らかになった。また、積極的な探究、逃避、破綻行動において得点が低いことが示された。年長児については、永続的な努力注意の集中、逃避行動などで増加を示し、微笑、破綻行動については減少していることがわかった。

 障害のない子どもでは、相応する脳性マヒ児に比べ、発音と身体行動で高い得点を示した。(a)と(j)の行動得点の間に、注意の集中、探究、社会性、努力というような行動について得点が高くなっている。平均点では、逃避行動、積極的な微笑、破綻行動、攻撃的で独断的な行動について、得点が低くなっている。

 行動得点の総点とCattell IQとの相関については、30か月以下の精神遅滞を伴う脳性マヒ児の場合は+.62で、30か月以上の者では、rは+.57であった。同じく、行動得点の総点とQuick Screening Scaleとの相関は30か月以下の者で+.50、30か月以上の者では+.58であった。行動レベルとIQ、さらには発達得点について、知的に正常な脳性マヒ児と障害のない子どもの場合には、肯定的な関連というものは、はっきりとは表れなかった。

Exceptional Children、April,1972より)

*ノースキャロライナ州、デューク大学心理学部準教授

**東京教育大学教育学部附属桐が丘養護学校教諭


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1972年7月(第7号)14頁~15頁

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