特集/教育リハビリテーションの諸問題
Effect of Rest on Test Scores of Physically Handicapped and Nonhandicapped Children
Dennis T.Fair*
Jack W.Birch**
武田 洋訳
身体障害児をテストするときに考慮されなければならない要因に、休憩時間と時間制限を延長してみるということがあげられる。Doll(1951)、Newland(1963)、Johnson(1967)、Anastasi(1968)が、身体障害児というのは、もし標準化されたテスト条件下でテストをした場合には、疲労しやすいことを示した。そのために、上記の研究者たちは、テストの監督のしかたと時間の制約を変化させるやり方を提唱している。もちろん、肢体不自由児個人が得たテストの点数が、普通児のものと比較できたうえでのことである。
Birchら(1966)は標準化されたアチーブメントテストの点数について、弱視児と教育的には視覚的な損傷のない子どもと比較してみた。両方の子どもたちに対して時間制限なしにいっしょにテストが行われた。そして障害をもつ子どものテストの点数が、標準の時間制約があった場合は低いということがわかった。
この研究の目的は、Advanced Stanford Achievement Tset(ASAT)の各テスト項目の間に休憩時間が与えられるならば、身体障害児のテスト得点も増加するのではないかということについて明らかにすることにある。
10人の身体障害を有する者がこの調査に参加した。その診断名は、筋萎縮、関節彎曲症、脳性マヒ、血友病、二分脊椎、ポリオなどである。この被験者は実験群(Hx)と統制群(Hy)に分けられた。
10人の障害のない被験者もこの調査に加わった。彼らもまた実験群(Nx)と統制群(Ny)に分けられた。
すべての被験者が西ペンシルべニアの二つの学校から無作為に抽出されたものである。学年とIQとCAのばらつきが調整され、それぞれ7~9学年、IQ96~130,CA12.3~15.8であった。
手続きと結果
HxとNxのグループがASATの社会科のテスト項目AとBの間に10分間の休憩時間がおかれた。HyとNyのグループには、その項目AとBの間に休憩時間が与えられなかった。この研究の目的が、身体障害を有する子どもたちのテスト得点が、休憩時間を与えることによって増加するかどうかを明らかにすることにあるために、ASATのB項目のみが採用された。この調査に参加したすべてのグループの得点の平均と標準偏差値は表1にかかげるとおりである。
グループ | 平均 | SD |
Hx | 30.4 | 3.980 |
Hy | 21.8 | 3.429 |
Nx | 30.4 | 2.417 |
Ny | 29.6 | 3.007 |
身体障害児と普通児の被験者の平均が有意差(p=.01)があったかどうかをみるために、t検定を行った。その結果は表2にみられるとおりである。
グループ | 平均差 | df | t | 有意差の検定 |
Hx Hy | 8.6 | 8 | 3.274 | .01 |
Nx Ny | 0.8 | 8 | 0.415 | <.01 |
結論
HxとHyのグループとの間には有意差がみられたが、NxとNyの平均の間には有意差はみられなかった。このことから次のようなことを結論づけてよいように思われる。身体障害者の全体としての潜在的な能力が表現されるようにするためには、身体障害児が標準テストを受ける際には、休憩時間と延長時間を配列するべきではないかということである。
参考文献 略
*ペンシルベニア州スリッパーリーロック州立大学特殊教育学部助教授
**ペンシルベニア州ピッツバーグ大学教育学部副学部長
(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1972年7月(第7号)18頁~19頁