同じ地球のよその国で(6)

同じ地球のよその国で(6)

─からだの不自由な人のための雑誌から─

石坂直行*

◇ ハンディキャップのない人にハンディキャップのある人のことを教育できるか

 ハンディキャップのある人は、ハンディキャップのない人のグループに参加することがきわめて有益である。

 ハンディキャップのある人が、同じ人たちだけのグループに参加することで果たす役割の重要さについては、改めていうまでもないが、ハンディキャップのない人のグループの活動に参加することで得られる利益を無視してはならない。

 ハンディキャップのある人は、学校内、職場あるいは社会的集会を問わず、ハンディキャップのない人のグループ内で役割を果たすことで、ハンディキャップのある人だけの環境からは得ることのできない満足を得ることができる。

 最も重要なことは、ハンディキャップのある人は、自ら公共全般の認識を高めさせることにおいて、最高の目標を達成すると考えられるが、それには他の人と接触することが決定的に必要である。

 ハンディキャップのある人と接触した経験のない人は、補装具を見るだけでも、懐疑心と忌避と率直な恐怖をかきたてられる。1本のつえすら、ろうばいを引き起こすことがある。これらの道具は、多くの場合、補助具としての効果よりも、いまわしいらく印としての逆効果のほうが上回る。補助具は使わなくても、歩行が不自由な人も、恐れをもって見られる。

 しかしハンディキャップのある人と接触した経験をもつ人の反応は全然違う。車いすの操作法をほんの少し教わるだけですぐに押し始めるし、歩道の縁石も正しいやり方で越えることができる。ハンディキャップのある人に手を貸すのにろうばいすることもなく、避けて逃げようともしない。手を貸すことを誇りに思い、そのチャンスを待っており、むしろ援助を拒絶されることを残念がる。

 ハンディキヤップのない人は、たった一段の階段でも、車いすの人にとっては、いかに打ち勝ちがたい障害であるかをめったに認識しない。それは、車いすの人と同行して自ら問題を経験するまではわからないことである。同様に、狭い通路、回転ドア、高い水飲台、出入り不能のトイレ、エレベーターのない建物などの問題を考えることはできない。また、どんなに重いハンディキャップをもつ人でも、職業をもつ可能性があることや、ハンディキャップが重すぎて運転のできない人の交通手段についても理解できない。これらの問題は、特別な理由が起こるまでは、だれからも見落されることである。

 ハンディキャップのある人の利益を図るための立法措置が続けられているが、それは必要な程度にははるかに及ばない。敏感に事態をとらえ、人を思いやる市民こそ、これらの目標を達成し、さらにハンディキャップのあるすべての人に真の機会をもたらす将来計画遂行のために必要な軍勢である。しかしその人たちを立ち上がらせるためには、まずハンディキャップのある人自身によって認識をもたらさなければならない。

 ハンディキャップのある人とない人とがもっと接触を増やすならば、無関心と誤解という破滅的な妨柵を打ち破ることができるし、さらには、昔「身体障害者」と呼ばれたかの恐ろしい概念を今日の社会から消去するのを助けることができる。

 ハンディキャップのある人を理解した民衆は、ハンディキャップのある人の能力を認識し、今日の社会が無理に押しつけている有形無形の妨柵を打倒する行動を進んでとるであろう。

(Accent on Living,Winter.,1972から)

◇ 宇宙時代技術活用センター

 最新技術を活用してハンディキャップのある人に利益をもたらす新しい科学技術を開発するため、米国政府社会・リハビリテーション・サービス当局は、リハビリテーション工学センターのネットワークを発足させることになった。初年度は140万ドルの政府資金が支出される。

 ユニークなのは、宇宙飛行技術者と医師とが、共同して研究と実施に参加する。この科学医学チームが開発を期待される革新的構想は次のとおりである。

 義肢あるいはまひした四肢を自在に動かせる電子装置、人工筋肉、金属関節、盲人が見られるカメラ、ろう者が聞ける聴器、その他。

 リハビリテーション工学センターのうち、直ちに開設されたのは、南カリフォルニア大学との合併でランチョ・ロス・アミゴス病院にと、フィラデルフィアのテンプル・ドレイクセル大学との合併でモス・リハビリテーション病院での2か所で、両センターとも初年度35万ドルを政府から支出された。年内にさらに2~3のセンターが、他の地方に設置される。

 この研究と開発の対象は、政府統計の示す米国内の切断者35万人、まひおよび変形者350万人、盲人128万人、ろう者170万人である。米国政府は現在リハビリテーションに年間1億2千万ドルを支出しており、このうち7百万ドルは研究とマンパワー開発に使われている。

(Paraplegia News,Nov.,1972から)

◇ 法律センター設立

 米国保健教育福祉省の資金援助と、ノートルダム法科大学の組織とにより、ハンディキャップのある人のための国立法律センターが、インディアナ州サウス・ベンド市に設立された。センターはハンディキャップのある人個人および団体の法的権利確立についてのコンサルテーションと援助を行い、法廷にも介入する。

(Paraplegia News,Jan.,1973から)

◇ ハンディキャップのある子どもの学校教育は憲法上の権利

 すべての子どもは、精神的、肉体的、情緒的なハンディキャップの程度のいかんにかかわらず、公立学校で教育を受ける憲法上の権利があると、ワシントン特別区裁判所でJ.C.ワディ判事が判決を下し、全公立学校にハンディキャップのある子どもの受け入れを発令した。

(Accent on Living,Winter.,1972から)

◇ ハンディキャップのある人を認識する日

 インディアナ州では1971年以来毎年1回「ハンディキャップのある人を認識する日」宣言を行っている。その目的は、ハンディキャップのある人の就職とコミニュティにおける建設的生活とを妨げているもの、すなわち建築物と人々の心と態度の中にある、ハンディキャップのある人を閉め出そうとする妨柵の存在を認識させることである。

 宣言の中で知事は、州内の全市長、その他の公務員、経済産業界のリーダー等に対し、当日の行事に参加するよう強く要請している。

(Paraplegia News,Dec.,1972から)

◇ 車いすブレーキ

 車いすは停止中ロックできるだけなので、下り坂では両手でハンドリムを押えていなければならないが、まさつで手が焼けたり、雨の日はリムも車輪も濡れて汚くなる。これを解決するため、イリノイ大学の3人の学生が共同して、車いす用ドラムブレーキを開発し、賞金1,000ドルを授けられた。研究には同大学の125人の車いすの学生が協力した。

(Paraplegia News,Jan.,1973から)

◇ 車いす450台のセミナー

 ミルウォーキーで開催された保健従事者セミナーで、400人以上の医師、看護婦、理学療法士、ソーシャル・ワーカー、ナーシング・ホームと病院の管理者、薬剤師、作業療法士、職業リハビリテーション・カウンセラー、車いす販売業者など参加者全員が、まる一日を車いすですごし、アーキテクチャラル・バリヤーズがいかに悪魔であるかを初めて体験した。

◇ ショッピングセンター駐車場

 カリフォルニア州サクラメントのモール・ショッピング・センターは、建物のそばに30台分の特別駐車場を設置した。それは車いすを自動車から取り出すためのスペースの必要な客用で、幅が1台当たり5.5メートルに広げられてある。

(Paraplegia News,Jan.,1973から)

◇ ガイドブック

□ Guidebooks for Handicapped Travelers

第3版。米国障害者雇用大統領委員会発行。米国内85都市と外国のガイドブックのリスト収録。

□ National Park Guide for the Handicapped

米国政府印刷局発行。242の国立公園の詳細具体的な利用手びき。

□ Catalog of NEW Assistance

米国保健教育福祉省発行。米国政府から受けられる援助のすべてを記載。

□ One-Day Adventures by Car

第7版。全米の車いすで利用可能ホテル等2,100個所を説明。3ドル。


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1973年10月(第12号)38頁~39頁




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