シンポジウム/肢体不自由児者―特に脳性マヒの職業的能力開発について おわりに

シンポジウム/肢体不自由児者―特に脳性マヒの職業的能力開発について

おわりに

座長 広島県リハビリテーション協会副会長

佐藤俊之

 いろいろと貴重なお話しを伺いましたが、さらに、発生予防の問題が残っております。

 私たちの調査では、脳性マヒの発生原因で一番多いのが、早産、未熟児など、妊娠・出産に関係して―酸素不足云々ということがありますが―いるもので約80%あり、ついで日本脳炎、脳膜炎、頭部外傷などによるものが16%でありました。

 したがって、これらの発生を予防する方法をもっと広く徹底する必要があります。広島県では、昭和35年に母子衛生対策協議会を作って家庭ぐるみ、地域ぐるみ妊産婦を守ろうという運動を起こしております。その際、産婦人科の先生方が協力してくださったのでしたが、2~3年後に姿が変わったのは残念であります。姿が変わったけれども、今日なお保健所を中心に過去とつながっております。これがさらに発展していけば大変結構だと思いますので、将来、小池先生あたりに音頭をとっていただきたいものだと思う次第です。

 ところで、脳性マヒを含めて障害者は次のような5段階に分けて考えるべきだと思います。

 1. 一般健常者に互して競争的に職業の選択ができる者。もちろん大学へ進学することもありましょう。

 2. 多少の援助や指導があれば、授産所等で何らかの仕事ができる者。

 3. 家庭で留守番や手伝いができる者。

 4. ADLがやっと自立し ている者。

 5. すべてのことに介助を要する者。

 広島県では、第5段階の者たちが残されていたのでありますが、私たちはこの人たちを収容するために「ときわ台ホーム」を創りました。

 さて、上述した5段階に分けた者の比率は、おおまかに言って、おおむねそれぞれ20%ずつあろうと思っております。ですから十把一からげに「脳性マヒ」ということでなく、程度に応じて各種対策を考える必要がありましょう。

 「ときわ台ホーム」に収容している者の中にも、母親がずーっと背負って通学させた例もありますが、それが本当に美談であったかどうか、私の立場からすれば大きな疑問があります。ただ子どもが「かわいい、かわいい」の一心から、自分の手元から離したくないということで、適切な治療も訓練も受けないでいるうちに、親も年老いてくるうえに介助が十分にできなくなってきて、結局、私たちの施設へ入所する以外にないという状態になってしまう。

 そこで、家庭での考え方も将来大いに啓発する必要があろうと思いますし、学校教育についても、何もかも学校だけで解決つくものではありますまい。施設だけですべてが解決つかないのと同様に、学校だけで解決がつくものでもないので、医療、教育、社会、そして行政などが混然一体となってそれぞれ有機的結合というか、お互いに手を組み合い、力を合わせてやっていかんことには本当の福祉にならんと思います。

 とかく、学校と施設がそれぞれ別々に勝手なことをしようとする風潮がなきにしもあらずであります。これは厳に考えなおさなければなりません。協力し合っていかなければ成果はあがらないと思います。偉い先生方が1人や2人いても、どうにもなりません。家庭はもちろん、地域社会も密接に協力していくのでなければならないと思います。

 司会者としては出すぎたことを申したようでございますが、ちょっと気になる点がありましたので、いささか意見を申させていただきました。他に質問もないようでございますので、以上をもって終わりたいと思います。

 長時間ご協力ありがとうございました。


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1974年1月(第13号)39頁

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