特集/第7回アジア・太平洋地域リハビリテーション会議 障害をもつ人々に関する報道を改善するために

特集/第7回アジア・太平洋地域リハビリテーション会議

マスメディアに対する指針 国連セミナー報告

障害をもつ人々に関する報道を改善するために

 国際障害者年の目標達成にむけて情報メディアの役割を検討するセミナーが1982年6月オーストリアのウィーンで開かれた。これは国連広報部が主催したもので、参加者は、メディアなどリハビリテーションの障害者を合む専門家である。この会議では、障害をもつ人々について、また障害が生活にもたらす結果について、一般の人々の理解を高めるためマスメディアにたずさわる人々への指針が作成された。なお、同時に障害者関係団体に対する指針も作られている。

 新聞、本、雑誌、テレビ、映画、演劇、ラジオなどを通じ、メディアは人々の周りの世界に対する理解に対し際立つ強力な影響を及ぼしている。メディアを外の世界への窓としてみる人も、自分の周囲の鏡としてみる人もいるだろうが、メディアが人や場所や考え方について判断し伝達する力の大きさは、他に匹敵するものがない。

 メディアが社会の物の見方に与える影響の大きさ、そして社会のおよそ10パーセントが障害者という事実に鑑み、国連は1982年夏世界の専門家を集め、メディアに対する指針を作成した。この草案は世界77か国に回寛し意見を仰いだ。

 指針を十分に活用していただくために、若干の前提を考慮に入れていただきたい。

 1.あらゆる国のあらゆる状況におけるすべてのメディアに働く人々に利用できるものにするため努力したものである。以下に述べることがらはすべての人が一様に遵守せねばならない規則というわけではない。むしろ、いろいろなメディアにおいて障害者を正確に適切に描くための一助となり、さらにメディァ産業の個性や創造性を発展させるものとして提案された。

 2.この指針はあらゆる障害者─視力の障害、言語・聴力の障害、精神簿弱をもつ人々、移動能力に制限のある人々、情緒障害のある人々、慢性疾患等による機能障害をもつ人々、その他─を考慮したものである。同様に情報提供、教育、娯楽の各メディアにもふさわしいものとした。

 3.最後に重要なことはメディアに働く人々はこの指針の第一の目的を常に忘れてはならないことである。

 障害をもつ人々の可能な限り多様な、積極的かつ多次元にわたって社会に参加している状況を表現すること。

 以下は、世界的基盤にたち修正を加えた指針である。

 障害をもつ人々を、家庭、職場、学校、余暇の場、あらゆる普通の社会的、物理的情況の中で、描く。

 障害をもつ人ともたない人が混じる社会的状況の中で生じる自然な好奇心やぎこちなさを受けとめる。そして適切な場面で、このような好奇心が満たされるような、あるいは、ぎこちなさを減らすような積極的な例を示す。

 障害をもつ人々に焦点をあてた作品だけでなく、メディアの中に出てくる人々の中の一員として障害をもつ人を含める。

 障害をもつ人々を、依存的な人、あわれな人として描くことは避ける。また、障害をもつ人々に対する固定的観念─たとえば、障害をもつ人々は生まれつきの聖人君子であるとか、無性人であるとか、障害をもつ人は危険であるとか、特別な能力があるといった誤った烙印は避ける。

 障害をもつ人を表現したり説明したりすることばは慎重に配慮する。個人を見下すような語句は避ける。(例えば、盲同然とか、おしつんぼなど)

避けたほうがよい例

THE RETARDED 人を形容詞で表現することは好ましくない

CP VICTIM(CPの被害者) victimという語にはかわいそうな人という見下げた語感がある

AMPUTEE(切断者) 障害者を医学的レベルに下げた表現である

 障害をもつ人々を、一般の人と同じ多様な次元で描く。

 障害をもつ人々の成功や困難を描く場合、機能損傷を強調したり、状況を誇張したり感情的に扱ってはならない。たとえば、ニュースやドキュメンタリーなどで、障害についてふれるのは、障害が報道の中味と直接かかわる場合のみにする。

 一般の人々に、障害につながる機能損傷の予防や治療についての情報、障害をもつ人々とその家族に対するサービスに関する情報を提供する。キャンペーンの中や、一般番組や記事の中で伝えることができる。


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1983年7月(第43号)36頁~37頁

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