特集/第15回リハビリテーション世界会議 ICTA委員会セミナー報告

特集/第15回リハビリテーション世界会議

委員会報告

ICTA委員会セミナー報告

初山泰弘*

 ICTA委員会のセミナーは、RI総会の前々日の5月31日に、リスボン市内の国立職業訓練校(Institutio Emprego e Rehabilitacao Professiona1)で開催された。

 参加国は、フランス、インドネシア、イングランド、オーストラリア、イスラエル、スウェーデン、デンマーク、ニュージーランド、西ドイツ、スペイン、ヨルダン、オランダ、ポルトガル、日本の14か国で出席者は24名、私は日本委員の中村裕先生欠席のためオブザーバーとして出席した。

 会は午前10時から午後6時半まで、昼の2時間に及ぶランチ・タイムを含めて、8時間余にわたって続けられた。

 以下その要旨を報告する。

 最初、会場となった職業訓練校の校長氏から歓迎の挨拶があり、次いで委員長のDr.Dollfusから、会場の変更とセミナー開催が1日になったいきさつについて話があり討議に入った。

 討議は午前10時から午後6時半頃まで、2時間の昼食をはさみ続けられ、最後にRIに対する要請文が採決され閉会となった。

 以下議題となった要旨について述べる。

1.ICTAの活動報告

(i)スウェーデンICTAのDr.Thomas LagerwallからDeaf-blind(重複障害者)の為のTechnical Aids情報誌の紹介(ABD:Aids for the Deaf-Blind)があった。一つのTechnical Aidsの紹介に一頁を使っているのが特色で、各国からの情報を集め追加して行きたい由であった。このようなDeaf-blind重複障害者は2,300万人の人口を持つNordicの国々では3,500名、スウェーデンでは1981年に400名、現在は1,200名と推定されるという。イングランドの委員から実態調査を進めてはどうかと提案があったが、実施困難という悲観的な意見が多かった。

(ii)IPCAS(International Project on Communication Aids for the Speech-Impaired)

 言語障害者に対するコミュニケーションエイドに関する国際プロジェクトについて、スウェーデンのDr.T.Lagerwallから報告された。このプロジェクトは、言語障害によるコミュニケーション障害者の実態を調べ、各国間の情報交換、テクニカルエイドの開発など国際的な協力体制を作り上げるためのもので、現在、カナダ、スウェーデン、イングランド、アメリカの4か国が加入し、活動を行なおうとしている。各国の協力をお願いしたいとのことであった。なおスウェーデンでは現在、約30,000人がコミュニケーション障害を持っていると推定されている。

(iii)アジア太平洋地域のICTA委員会についてオーストラリアのM.Foxから本年2月にニュージーランドで開かれたICTA委員会の報告があった。

 委員会はオーストラリア、インドネシア、ホンコン、フィリピン、日本、ニュージーランドが集まったが、アジア太平洋地域のICTA委員会事務局をニュージーランドに設置することに決定した。この委員会では環境制御システムの開発や、パンフレットの発行、地域に根ざしたリハビリテーション(CBR)などが討議されたといわれる。

2.1983年10月ワシントンで開催されたRI総会の報告

 同じくM.Foxから報告された。

 建物の構造上の問題、移動の際の問題など障害者に不利となる障害がかなり残っており改善策が検討された。また、スウェーデンのICTAのエネルギッシュな仕事にもかかわらず予算は毎年減少されているという。この点についてRIに要請をしなければならないという報告があった。

3.委員長交代

 現在のDr.Dollfus(フランス)から、何人かの候補者に委員長を依頼したが、いずれも経済的理由から断わられた。次期委員長としてカナダのMr.Mickie Milner(リハビリテーション・エンジニア)を推選したいという発言があり、本人不在のまま、委員会は賛成し、次期委員長はMickie Milnerと決定した。

4.その他

 ICTA委員会とInternational of Technical Aidsとの関係の説明があった。すなわち、ICTA委員会は、RIの下部組織として、職業委員会、教育委員会などと、並行してある委員会の一つである。一方、International(or Information)Center of Technical Aidsは世界各国に設置されているテクニカルエイズに関する情報センターであって、組織的には全く異なるものである。しかしながらその目的は共通であり、ICTA委員会の委員がテクニカルエイドの情報センターと関係を持っている者が多いので、運用上は両者が協力しあう事が良いと考える。しかし、現在情報センターが、活躍している国は大変少ない。今後は各国で情報センターとしてのICTAの活動を支援してほしいという要請が委員長から述べられた。

 ICTA情報センターの活動計画に対して、RI本部はどちらかというと財政的援助を減らす傾向が強い。このため委員会として次のような要請文を提出することになった。

 スウェーデンのICTAは、長期間にわたり障害者のために情報活動を続けてきた。この機能は大変重要であり、今後共、活動を存続させるべきである。そのためにRIは財政的な支持を続けるよう要請する。

 次回の委員会は、1985年秋に、フィンランドでISPOEが開催されるのでその次期に合わせて開くことに決定した。

 そのほか、昨年から今年にかけて行なったテクニカルエイドの使用状況についての調査結果としてスウェーデンのICTAから資料が提出された。これは、1984年2月~3月にかけて回答のあった33か国(44名)からのアンケート結果をまとめたもので、その内容については後日報告するつもりである。

 なお、この資料は日本リハビリテーション協会に保存されているので、御希望の方は申し込まれたい。

 以上、委員会の要約を報告したが、各国の情報センターが必ずしも活発でないことが感じられた。

 なお、ICTAテクニカルエイドの定義についても問題が残こされているようであるが、ここでは義肢装具を除いた障害者のための日常生活用具と解釈している人々が多かった。

 また、ICTAではこの自助具の他、建物の使用上の問題(アクセシビィリティー)と移動の問題も大きなテーマとして検討されていた。

*国立身体障害者リハビリテーション・センター


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1984年7月(第46号)19頁~21頁

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