特集/第15回リハビリテーション世界会議 レジャー・レクリエーション・スポーツ委員会

特集/第15回リハビリテーション世界会議

委員会報告

レジャー・レクリエーション・スポーツ委員会

鈴木秀雄*

 今春の第1回国際障害者レジャー・レクリエーション・スポーツ大会(略称RESPO)においてもレジャー・レクリエーション・スポーツ委員会が開催され、討議がなされた。

 今までのような競争・競技を中心とした既存のスポーツ活動とは異なった形態で、障害の軽重や部位に関係なく、万人が参加できるレジャー・レクリエーション・スポーツプログラムの開発や、理念の普及をどうすすめるべきかということがその討論の中心でもあった。レジャー・レクリエーション・スポーツに対する明確な概念化をし、障害を持った人へのレジャー・レクリエーション・スポーツというものがどのような形態で行なわれるべきか、社会の中にそれらがどう位置づけられるべきかという方向性を見極めるためのワーキンググループも委員会の中に構成された。

 今回の第15回リハビリテーション世界会議においてもレジャー・レクリエーション・スポーツ委員会の方向性が模索され、レジャー・レクリエーション・スポーツとは障害者にとって一体何なのか、また既存のスポーツプログラムとリハビリテーションプログラムとしてのレジャー・レクリエーション・スポーツがどのような関連をもって存在するのかということについて議論がかわされた。

 レジャー・レクリエーション・スポーツに対する概念や定義は、専門家の中にあっても異った意見が百出するが、しかしすでに万人に増大する形態となって存在するレジャーやまたその中でのレクリエーション・スポーツが障害を持った人びとにとっても精神的・身体的・社会的にも独立した方向で享受できるものとならなければ意味がない。そのような方向づけや形態を産みだす手助けを国際リハビリテーション協会の中にあるレジャー・レクリエーション・スポーツ委員会が果たしていかなければならないのである。

 他の職業委員会、教育委員会、社会委員会、ICTA委員会、医学委員会、組織委員会とは異なり、レジャー・レクリエーション・スポーツ委員会は1980年の発足であり、より多くの課題解決をしていかなければならない委員会でもあるが、真の人間性回復のために活用されるべきレジャー・レクリエーション・スポーツはリハビリテーションの一領域として今後、より重大な役割を演じていくものであるといえる。

 このような状況の中で、レジャー・レクリエーション・スポーツ委員会のワークショップでは、以下のような意見や、提言が出された。

(1) 国際リハビリテーション協会事務局長Norman Acton氏による第1回国際障害者レジャー・レクリエーション・スポーツ大会(RESPO)の概説や趣旨説明に対し、RESPOではRecreationとSportsのみが表現されているのみで、レジャーという語が消去されてしまっているので、名称の再考を要するという意見や、RESPOはあくまで略称として用いられたものであり、むしろ正式にはレジャー・レクリエーション・スポーツという三語は大衆の合意を速やかに得、競技や競争的なプログラムとの区別をする観点からも、分離されることなく三連語で用いられるべきである。

(2) RESPOにおけるAiming at Real Leisure, Recreation, and Sports for the Disabled(障害を持った人への真のレジャー・レクリエーション・スポーツをめざして)という講演内容を活用し、レジャー;レクリエーション;スポーツ;セラピューティックレクリエーションそれぞれの概念化を進め、障害者へのプログラムの活用提供という観点から方向性の明確化をすべきである。

(3) 各国のレジャー・レクリエーション・スポーツの実情を明確にした上で、どのようなプログラムをリハビリテーションの中でとらえ、社会やコミュニティの中にどのようにレジャー・レクリエーション・スポーツのリーダーを育て、プロフェッショナルな分野を構成していくかという検討が必要であり、情報交換システムの確立がなされるべきである。

(4) 新しい委員会ではあるが、愛知宣言が第1回RESPOで採択され、レジャー・レクリエーション・スポーツの概念化を進めるための小委員会もアジア・太平洋地区で作られているが、今後具体的な検討が必要である。

(5) レジャー・レクリエーション・スポーツという三語はアルファベット順であることだけではなく、むしろ個々の概念の広い順ということからも、このままの順で三語が名称として残されるべきである。

というような意見が交換された。

 各国の国情に応じたレジャー・レクリエーション・スポーツに対する運動展開が必要であると共に、一方ではリハビリテーションプログラムの中ですでに重要な役割を果している現在までの理解から、積極的に各国(特に発展途上国など)への強い働きかけをし、レジャー・レクリエーション・スポーツに対する理念の普及をも推進していく必要があるといえる。

 以上のことから、レジャー・レクリエーション・スポーツ委員会は、現時点において、方向性を明確にしていくための機関が必要であり、第16回リハビリテーション世界会議の中でのレジャー・レクリエーション・スポーツに対する確固たる位置づけをしていかなければならないといえる。

 いずれにしても第15回リハビリテーション世界会議の中でのレジャー・レクリエーション・スポーツ委員会の動向から、現状を厳しく見極めようとするとき、第16回世界会議へ向けて、委員会のしっかりした目的をかかげ、段階的な目標をセットし、現状の多くの課題を一歩ずつではあっても解決していかなければならない。第16回世界会議に向けて多くの問題を投げかけた第15回リハビリテーション世界会議であったといえる。

 新委員としてポルトガルにて開催された第15回リハビリテーション世界会議への出席であったが、今後積極的な活動展開を進めていかなければならないことを痛感した世界会議であった。

 なお、今回のレジャー・レクリエーション・スポーツ委員会ワークショップへの参加は、カナダ、バングラデッシュ、日本、ポルトガル、香港、オーストラリア、イギリスの国々であった。

*関東学院大学


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1984年7月(第46号)29頁~30頁

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