各国の障害者統計(Ⅰ)

各国の障害者統計(Ⅰ)

International Rehabilitation Review

Fourth Quarter 1983 and First Quarter 1984

 国際障害者年の準備の為、あるいは障害者年のプロジェクトの一環として、多くの国々で障害者に関しての調査が実施された。その内の何ヶ国かでは、国勢調査の中に障害に関する質問が含められていた。次のレポートは、国際リハビリテーション協会が各国から受けとった報告をまとめたものである。それぞれの国がそれぞれの形で調査を行なっている。ある国では、初めて正式な障害統計調査を行なっているし、すでにあった統計の数字を修正したところもある。又、ある国では、機能的又は経済的意味に注目をしているし、たとえば雇用や障害児発生率など特殊な項目について調査している国もある。調査目的、その方法、調査対象年齢が異なる故に、その結果を並べて比較することはできないが、これらのレポートは、各国の政府や他の高いレベルの所で、障害の内容や原因についてを記録しようとする意識が増大していることを示している。又、特に注目される点は、次の2つの傾向についてである。1つは、より広範な障害の定義を受け入れているために通常はこのような調査から除外されるようなグループも包括されている点、そして国際的手法と障害定義に対する認識の高まりによって、各国にまたがったデータ比較が向上された点である。

国際連合障害者統計に関する専門会議

 国連の障害者統計に関する専門家グループ会議は、4月2日から6日、オーストリア、ウィーンの国連社会開発人道センターにおいて開催された。この会議は国連統計局と社会開発センターにより召集されたものである。

 国連統計局では、障害者に関する統計の潜在的調査者及び利用者を援助するために2つの技術報告の用意を行なった。このプロジェクトは、国連社会開発人道センターとの協力のもとで実施された。

 1つの報告は、家族調査を使って障害者についての統計と表示を行なう方法についてである。これは、どの様に効果的に統計を計画し、集計し、作表し、普及するかについて強調したものである。実際の国の実践例-特に発展途上国の-が使われている。

 もう1つの報告は、エジプト、イラク、ヨルダン、レバノンそしてシリアにおける障害者統計調査の展開についてである。コンサルタントであるマリー・チャミー女史は、これらの国々を最近訪ずれて、国の統計担当官及びその関係者と共に、過去5年間に行なわれた様々な調査と障害とのかかわり合いについての評価を行なった。チャミー女史は又、ヨルダン・クェートそしてリビヤのメンバー組織との会見を援助した国際リハビリテーション協会に相談も行なっている。

オーストラリア

 1981年2月から5月迄の間、オーストラリア統計局は、障害を持つ人々のニーズと問題についての国内調査を行なった。調査のためのサンプルは2つのパートに分かれている。第一のパートは、約33,000世帯を対象としており、その中で7,145人の障害者がインタビューを受けた。そして第二のパートは、723の施設を対象とし、その中の4,668人の障害者がインタビューを受けた。この調査の為には、WHOの“損傷(impairment)、機能障害(disabilities)、社会的不利(handicaps)”の分類が、定義を行なう上での基本とされた。機能障害者というのは次にあげる損傷の内の1つかそれ以上を持つ人のことである:視力又は聴力の損失・言語障害・発作あるいは意識喪失・学習又は理解遅滞・腕、ゆび、足の障害・長期にわたる神経、情緒の治療・身体活動及び身体的作業に対する制約・精神障害又は活動を制約する長期にわたる治療・薬物治療により援助や指導を必要とする人。社会的障害者(handicapped person)とは、年齢5歳以上で、次の分野の1つあるいはそれ以上で活動や仕事を行なうことのできない機能的障害者(disabled person)と定義されている:身辺処理・移動・コミュニケーション・学校教育・就労。

 1981年の調査では、総人口の13%、約1,900,000人が障害者であり、その2/3、ほぼ9%が、社会的障害者であることがわかった。総人口に比して、障害を持つオーストラリア人の年齢は高めである。総人口の9.7%が65歳以上であるのに対し、障害者人口の36%が、65歳以上である。8つの主たるグループが、主な障害を代表しているといえる。つまり、筋・骨格障害(関節炎、背骨の障害及びリューマチなど)43.4%、聴覚障害36.3%、循環器系障害25.6%、精神障害20.9%、視覚障害13.3%、神経系統の障害12.6%、呼吸器系統の障害11.3%、精神薄弱者などが7.6%、そしてその他が29.5%である。上記の神経系統の障害の内、もっとも多いのが、麻痺、ついで脳卒中、てんかんの順になっている。

 雇用に関しては、1981年3月の時点で、年齢15歳から64歳の障害者の内の労働人口は、一般のその年齢における70.1%に対し、39.5%であった。

 300ページにわたるこの調査の報告から以上の様な数字が出てきたわけであるが、これは、“Handicapped Persons Australia, 1981”というタイトルがつけられており、R.J.Cameronによって編集され下記で入手可能である。Social Surveys and Indicators Section, Australian Bureau of Statistics, P.O.Box 10, Belconnen Act 2616 Australia.この報告書には多くの表が含まれており、次の11の項目をくわしくカバーしている:人口統計の側面、障害の状況、補助具の利用、利用されているサービス、雇用、教育、輸送交通、住宅、レクリエーション、施設ケア及び収入、である。付録には、質問表のサンプルと、障害者(機能的障害及び社会的障害)の分類についての技術的な注意ものせられている。

ベルギー

 ベルギーにおいては、障害者に関する完全な統計調査は行なわれていないが“Fonds National de Reclassement Social des Handicaps”が、その1963年から1983年迄の活動報告の中で、いくつかの見つもりの数字を発表している。

 年齢65歳以下の全ベルギー人口中670,000人が、身体的又は精神的に何らかの障害を持っている、あるいは、65歳以下の12~13人に1人が障害者であると推定されている。全障害人口の内、448,000人が身体障害者、22,000人が視聴覚障害者、200,000人が精神障害者である。原因について見ると、110,000人が先天性のもの、360,000人が障害や病気によるもの、そして200,000人が事故によるものである。

カナダ

 障害者に関する特別議会委員会の勧告により、スタティスティクス・カナダは国内全土に渡った障害者に関する資料の収集を行なった。この資料には、障害についての統計及び、障害と教育、雇用、住宅などの分野との関連についてが含まれている。

 小規模のサンプル調査が1984年に実施される予定であるが、それによって、アトランティック州、ケベック、オンタリオ、プレイリー州そしてブリティッシュ・コロンビアの5つの地域における障害者人口の見つもりが出ることが期待されている。スタティスティクス・カナダは又、1986年の国勢調査の中に、障害者についてを把握して詳しい調査後調査を可能にするための質問を加えることを提案している。(資料:Access,1983年8月号 Canadian Rehabilitation Council for the Disabled)

 カナダ厚生省によると、総人口の約10%、あるいは2,325,000人が障害者であるといわれている。この数の内、1,415,000人が、労働年齢にある成人障害者である。厚生省は又、全障害者の12%が、施設に入所していると推定している。

 雇用に関しての正確な数字はないのだが、前厚生大臣のラロンデ氏は、障害人口の約50%は失業中と見つもっていた、が厚生省の公表によると、その数字は80%、障害者州組織連合によるとその数は90%にものぼるのではないかと言われている。(資料:Removing Barriers,1982,Canadian Rehabilitation Council for the Disabled)

インド

 1981年の7月から12月にかけて、インド政府は視覚、聴覚、言語及び運動障害についての国内サンプル調査を実施した。この様に、地方81,858世帯、都市部56,452世帯に渡る包括的な調査が行なわれたのは初めてのことである。その結果については、様々な角度から今もって分析中であるが、主要な結果についての要約は次の通りである。

 定義:上記4つの障害の内、1つあるいはそれ以上を持つ者が身体障害者と考えられる。各障害は非専門的に定義される。たとえば、視覚障害は2つのタイプ、つまり両眼完全失明者、そして光を感じることはできても、眼鏡使用で日中3メートル離れた距離で、指の数を数えることのできない者、に分けることができる。

 発生率:4つの障害の内の1つを持つ人の全体での割合は1.8%、6億8千4百万人の人口の内の12,000,000人である。地方部では1,000人中18人が、都市部では1,000人中14人が身体障害者である。全体的に見て、女性よりいくらか男性に発生率が高い。障害者人口の約10%が、1つ以上の障害を合わせ持っている。

 運動障害:12,000,000人の障害者人口の内、だいたい5,400,000人が、移動について大きな困難を持っている。その原因を多い順にのべると、手足の奇形、マヒ、関節機能障害、そして切断の順となっている。ポリオが、マヒのケースの30%、手足の奇形の30~40%の原因となっている。けが、やけどそしてポリオが、手足の奇形の主要な原因であり、けが、やけど、ライ病が、切断の主たる原因であった。

 視覚障害:視覚障害の発生率は、地方部では、100,000人に対して553人、都市部では、356人の割合で、女性のしめる割合が高い。主要な原因は、白内障、角膜混濁、緑内障そして出血である。

 コミュニケーション障害:年齢5歳以上についての資料データによると、聴覚・言語障害の発生率は、合わせて12,000,000人中4,700,000人である。

(小野有紀子訳)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1984年7月(第46号)41頁~43頁

menu