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特別レポート

アメリカ合衆国の障害児教育関係法

―PL94-142、504項、PL99-457の理解のために―

小鴨英夫

 アメリカ合衆国における障害児教育行政の基本的な連邦法である「障害者教育法」(Education of the Handicapped Act, PL91-230)は、1970年4月に制定されたが、それ以後、数度の改正を経て現在に至っている。これらの法律の中に規定された要件にはその時の各方面からの論議を呼んでいる問題が見出されるので、アメリカの障害児教育を理解するための恰好の教材となろう。

 これらの中から、「障害児教育法(PL94-142)」、「リハビリテーション法504項施行規則」、そして、最新の「1986年障害者教育改正法(PL99-457)」について、一問一答の形式で解説した。

1.PL95-142と504項について

Q.PL94-142とは?

A.公法(Public Law)94-142、すなわち「全障害児教育法」(Education for All Handicapped Children Act)は、1975年11月29日にフォード大統領によって署名され、合衆国議会を通過した法律である。この数字「94」は第94議会を通過したことを、「142」は第94議会で大統領によって署名された142番目の法律であることを示している。

Q.PL94-142の立法の趣旨は?

A.PL94-142は次の4つの目的を有している。

 ・特殊教育を必要とする障害児と障害青年のために特殊教育プログラムが利用できるよう保障する。

 ・障害児と障害青年に特殊教育を提供することを決定する際、公平で適切であることを保障する。

 ・政府のすべての行政レベルで特殊教育に関する必要条件や行政上の手続を定める。

 ・連邦政府の補助金を通し、州および地方を財政的に援助する。

Q.504項とは?

A.504項は、合衆国の障害を有する市民に対する差別を廃止するための基本的な公民権の規定である。504項は、1973年の職業リハビリテーション改正法(Vocational Rehabilitation Act Amendments of 1973)の一部として制定されたものである。504項自体は簡潔に表現されているが、その意味は奥深いものがある。その法令は次の通りである。

 「合衆国の障害者で、その障害の故に連邦の財政援助を受けて行われるいかなるプログラム、または活動への参加から除外され、それから得られる恩恵を拒否され、あるいは差別を受けることがあってはならない」ことを規定したものである。

Q.PL94-142と504項は誰に適用されるか?

A.PL94-142は、特殊教育と関連サービスを必要とする3歳から21歳までのすべての障害児に適用される。504項は、年齢に関係なくすべてのアメリカの障害者に適用される。そのため、504項は、適切な特殊教育の保障の見地からと、もう一つは、普通プログラムへの接近(accessibility)という見地の両方からの公教育に関して3歳から21歳までのすべての障害児に適用されるのである。

 それ故、PL94-142の規定と504項の規定との間には、密接な関係にある。

 1986年の障害者教育法改正法(Education of the Handicapped Act Amendments of 1986, PL99-457)は、発達の遅れをもつか、発達の遅れをもたらすかも知れない状態あるいは実際に発達の遅れの危険な状態を有する誕生から2歳までの子どものために、随意の州補助金プログラムを設けている。(詳細は第2章に記述)。

Q.PL94-142と障害児教育行政の基本的な連邦法である「障害者教育法」(Education of the Handicapped Act, PL91-230)との関係は?

A.PL94-142は、「障害者教育法」(EHAと略称)のB章(PartB)だけを全面改正したものである。B章は以前、基礎的な州への補助金計画を述べたEHAの一部であった。この法の他の構成部分(A章よりH章)は後に、1983年障害者教育法改正法(PL98-199)および1986年障害者教育法改正法(PL99-457)によって改正された。

 そして、障害者教育法B章を改正したPL94-142を含め、障害者教育法のもとにあるすべてのプログラムは、合衆国教育省の下の特殊教育プログラム部(OSEP)を通して管理される。

Q.PL94-142のような法は以前にみられるか?

A.PL94-142にみられる主要な規定、例えば、正当手続の保障や最も制約の少ない環境においての教育の保証のような規定は、1974年障害者教育改正法(Education of the Handicapped Amendments of 1974, PL93-380 〔1974年8月21日制定〕)のような以前の連邦法にも要求されているものである。

 PL94-142は、その1年3か月後の1975年11月29日に制定された。

Q.この法の目的のために、「障害児」(handicapped children)はどのように定義されているか?

A.この法では障害児は、

 「精神遅滞、難聴、ろう、整形外科学上の障害、その他の健康上の障害、口話または言語の障害、視覚障害、重度の情緒障害、または特殊な学習障害をもつ子どもで、そのために特別な教育や関連サービスを必要とするものである。」と定義されている。

 この定義では、この法の下で適格な子どもを決める2つの明確な基準が設けられている。第1はここに記されている障害の一つ、もしくはそれ以上をその子どもが実際にもっているかどうかということ、第2には、その子どもが特殊教育と関連サービスを必要としているかどうかということである。障害をもっている子どものすべてが特殊教育を必要としているのではない。何らプログラムを修正変更しなくとも出席できる子どもは沢山いるし、またそうさせるのが当然である。

Q.連邦政府の現行の「学習障害児」(Learning disabled children)の定義は?

A.この法律では、「特殊な学習障害をもつ児童」(children with specific learning disabilities)を次のように定義している。

 「話しことばや書きことばを理解したり、使ったりすることを含めた基礎的な心理的過程のいくつかに混乱があり、その混乱が聞く、考える、話す、読む、書く、綴るまたは計算するという能力の障害として現われる子どもをいう。この種の混乱は今まで、知覚障害、脳損傷、微細脳機能障害、難読症、そして発達上の失語症といった症状を含む。これらの用語には、主として視覚障害、聴覚障害とか運動障害に原因があったり、精神薄弱、情緒障害もしくは、環境的、文化的、経済的不遇による学習上の問題をもつ子どもは含まない。」

 ここで環境的、文化的、経済的不遇によるものは含まないことに注目していることは大変重要なことである。というのは彼らは障害をもたないのに学校では学習困難を経験するかも知れないからである。

Q.子どもが前の定義にあげたいくつかの障害を有し、かつ特殊教育と関連サービスを必要とする場合、PL94-142は、このような特殊教育(special education)をどのように定義しているか?

A.PL94-142では、「特殊教育」を次のように定義している。「障害児の独特なニーズを満たすために特別に考案された指導で、両親や後見入に費用を負担させないものをいい、学級内の指導、体育の指導、在宅指導そして病院内、施設内の指導を含んだ特別に設けられた指導を意味している」。この定義で重要な語句としては、「障害児の独特なニーズを満たすために……特別に設けられた指導」である。この法令の定義によれば、特殊教育は「特別な」ものであって、障害児の独特なニーズを満たすために設けられた指導である。であるから多くの子どもたちにとって特殊教育は彼らの教育の全てではない。更に、この定義から特殊教育は普通教育の基本的目標や成果から導かれていることをはっきりと意味している。であるから、例えば一人の子どもへのかかわりは、その子が精薄であることから起こるのではなく、その子どもが独特な教育的ニーズ、すなわち、特別に設けられた指導を必要としているためなのである。

Q.PL94-142の中に定義している「関連サービス」(related services)とはどのようなものか?

A.「関連サービス」の概念はこの法の中でよく理解することが重要であり、次のように定義される。

 「輸送、ならびに障害児が特殊教育から利益を受けることを援助するために必要とされる発達、矯正、その他の面の援助サービスをいう。(言語病理学、聴能学、心理学的サービス、理学および作業療法、レクリエーション、そして医療サービス、相談サービスを含む。ただし、医療サービスには診断および評価のみを目的とするものは除く)そして、子どもの障害の状態の早期発見と評価を含むものである。」

 重要な語句は、「特殊教育から利益を得る障害児を援助するために必要とされる」ことである。このことから次のようなことがいえる:その子どもは特殊教育と関連サービスを必要としているから障害児である;特殊教育は子どもの独特のニーズを満たすために必要な特別に設けられた指導をいう;そして、関連サービスは特殊教育の指導から利益を得るため子どもに対し必要な付加的サービスである。

Q.法令の中に関連サービスのリストは含まれているか?

A.含まれていない。その他のサービスが、もし特殊教育から利益を得るため障害児にとって必要であるならばこの法の下では関連サービスとなりうる。例えば裁判では、断続的な導尿(カテーテル法)を関連サービスと判定した例がある。

Q.州および地方教育当局は、すべての関連サービスの支払いをしなければならないのか?

A.いいえ。数多くの公的機関は関連サービスに対する支払いができるし、援助すべきである。単に教育機関がすべての障害児が利用する教育に責任をもつからという理由だけで、教育機関それ自身、特殊教育と関連サービスに対する全費用を持たねばならぬということではない。

Q.PL94-142が基本的に要求していることは何か。

A.PL94-142は初めに、すべての州及び州内の各地方教育機関は1978年9月1日までに3歳から18歳までのすべての障害児のために、無償の適切な公教育が用意できていることを要求した。更に、1980年9月1日までには3歳から21歳までのすべての障害児にこの教育が用意できていることを命じた。

Q.この命令に何らかの例外はあるのか?

A.18歳から21歳の若者に関しては、もしこの要求が州法、または実際の施策、もしくは裁判所の命令と矛盾するときは、何れの州においても適用しないものとする。3歳から5歳の子どもに関して、完全なサービス命令を達成するための予定表や他の規定は、後で述べるPL99-457に包含されている。

Q.504項施行規則では、無償で適切な公教育の保障に関し、どのように述べているか?

A.504項では本質的に同様な要求をしている。しかし、PL94-142では、「無償で適切な公教育が用意される」であるのに対し、504項には「…提供されなければならない」と述べている。504項施行規則では、それ自体、特定の年齢グループには言及していない。その代わり、「公立の初等・中等教育」の節で、義務教育年齢の子どもにふれている。

Q.504項では、就学前の子どもや若成年者に関して何を要求しているか?

A.504項施行規則では、単に就学前と成人教育プログラムでは障害を理由として差別はしないこと、更にかかるプログラムの接近性は直ちに実施されるということを簡単に述べている。

Q.504項とPL94-142は、本質において、無償の適切な公教育という同じ要求をしているが、PL94-142と同じように504条の下でも連邦資金は認められているのであろうか。

A.いいえ、504項は、1965年の市民権法(人種)のタイトルⅥや1972年教育改正法(性)のタイトルⅨと同様に市民権法であり、そのため資金に関する特別な授権は含まれていない。

Q.「適切な」(appropriate)教育の意味は?

A.「適切な」は、それ自体定義されていないが、PL94-142により求められている個別教育プログラム(IEP)のしくみを通して、各児童に対するものとして理解されている。それ故、すべての関係者によって認められひとりひとりの障害児のために作成されたIEPは、事実上、障害児に対する「適切な」教育プログラムとなる。

Q.PL94-142では、障害児は「最も制約の少ない」(least restrictive)教育環境の中で、無償の適切な公教育の用意がなされていることを要求している。この意味は?

A.次のような規定ではないことに注目しなくてはならない。

 ・メインストリーミング(mainstreaming)に対する規定ではない

 ・すべての障害児が普通学級で教育されることを命じているのではない

 ・特別な教育環境(例えば寄宿制の教育プログラム)をなくするものではない

 そして、この規定は次のことを命じていることにも注目しなくてはならない。

 ・障害をもたない子どもと共に行なう教育は、「最大限において適切な」目標となる。

 ・個別教育プログラムは、最も制約の少ない環境の到達に対して使われる管理的な用具であり、それ故に各自の「独特のニーズ」にかなった枠組の中で適用されなくてはならない。

 ・IEPの文書では、もし子どもが最も制約の少ない環境から、より制約的環境へ移される場合、その理由を明記しなければならない。

Q.504項施行規則では、最も制約の少ない教育環境という点について何を述べているか?

A.504項規則ではPL94-142 で用いられている最も制約の少ない規程はほとんど同じである。しかし、大きい差異は、504項の規則では、最も制約の少ない環境の中に教育の場として、「家庭に最も近い」措置を含んでいることである。

Q.個別教育プログラムの基本的な意味は何か?

A.「個別教育プログラム」(Individualized education program 〔IEP〕)の用語は3つの重要な概念を示唆している。第1に「個別的」は、IEPでは子どものクラスとかグループよりも、一人の子どもについての教育的ニーズを記述しなければならないことである。第2は「教育」の意味であるが、IEPでは、この法で定義されている特別な特殊教育と関連サービスに限定している。第3に「プログラム」は、IEPではその子どもに実際に提供されているサービスのことを意味している。

Q.個別教育プログラム(IEP)の展開にあたってどのような人々が参加するか?

A.この法では、4人の人々の参加が要求されている。両親または後見人、子どもの教師、特殊教育を提供し、またはその提供を監督する権限をもった地方の教育機関または中間ユニットの代表者、そして、適当な場合には当該児童を加える。

Q.個別教育プログラムに含まれる基本的な内容は何か?

A.この法律ではIEPの構成要素として次のものをあげている。この文書では、

(A)当該児童の教育上の成績の現在の水準に関する記述

(B)短期の教育目標を含む年間の目標の記述

(C)当該児童に提供される特別な教育サービスおよび当該児童が将来、通常の教育プログラムに参加できる範囲に関する記述

(D)教育目標が達成されているか否かを最低年一回の体制で判断するために適切な客観的基準と評価手続ならびに日程表

を含む。

Q.個別教育プログラムはだれが準備するか?

A.各州および地方教育機関は、IEPがどのような施設もしくは機関が子どもに特殊教育を提供しあるいは提供するであろうかに関係なく、特殊教育を受け、あるいは受けるであろう障害児のために提供されることを保障しなければならない。

1)州教育機関は、各地方教育機関が各障害児に対してIEPを作成し、実施することを保障しなければならない。

2)州教育機関は、各公的機関に障害児のために特殊教育と関連サービスを提供することを要求する。

Q.地方および中間教育機関はIEPに関して何をなすべきか?

A.・各地方教育機関は各学校年度の初めまでにすべての障害児について個別教育プログラムを作成するか修正しなければならない。そして必要な場合は、その内容を修正しなければならないが、そのためには少くとも年1回、再審査の会議が開催されなければならない。

  ・各地方教育機関は子どもの個別教育プログラムを開発し、再審査し修正するため会合をはじめ、指導する責任をもつ。

  ・特殊教育を受けていない障害児のために、会合はその子どもが障害児で特殊教育と関連サービスを必要としていることが決定した日から30日以内に、会合を開催しなければならない。

Q.IEPは私立学校や施設にも適用されるか?

A.適用される。州教育機関は、公的機関によって私立学校に措置されている障害児に対して、個別教育プログラムを作成し、実施することを保障しなければならない。

 公的機関は、障害児を私立学校や施設に措置する前に、その子どもの個別教育プログラムを作成するための会合を開催しなければならない。更に、公的機関は、私立学校や施設の代表者が会合に出席することを保障しなければならない。代表者が出席できない場合には、その機関は、私立学校や施設の参加を保障するためにその他の方法を利用しなければならない。この中には、個別の電話連絡や会議電話連絡の方法が含まれる。

Q、子どものIEP作成の中で教育機関は親を含めどのような手続きに従うか?

A.・各地方機関は、障害児の両親の一人もしくは両方が各会合に出席していること、もしくは、相互に日時と場所を同意した会合のスケジュールを含め、参加する機会が与えられることを保障するために、措置を講じなければならない。

 ・もし地方教育機関が、会合への出席の同意を両親から得られない場合、会合は両親不在で行われてもよい。この場合、地方教育機関は、次のような日時と場所に関して相互に同意を得るための試みに関する記録を作成しなければならない。

(1) 電話連絡とその結果についての詳細な記録

(2) 両親に送付した文書とその返答のコピー

(3) 両親の家庭や職場への訪問とその結果についての詳細な記録

 ・地方教育機関は、両親がろうであったり、母国語が英語以外である場合の通訳の手配を含め、両親が会合への手続きを理解することを保障するために必要なあらゆる手段を講じなければならない。

Q.PL94-142のもとでは、特殊児童に対する適切な教育の構成について同意しない場合どのようになるか?

A.州は、子どもと両親もしくは後見人に対して手続上の保護措置を保障しなければならない。これは既存の法(1974年障害者教育改正法、PL93-380)での適正過程の権利(due process rights)の保障が、94-142の中で改正され、その範囲も拡大されているものである。元来、州は無償の適切な公教育の提供に関する手続的保護を、障害児およびその両親または後見人に保障することを確保する手続を確立し維持するものである。

 保障される手続的保護(procedural safeguards)としては次のものが含まれている。

・障害児の親または後見人が、子どもの発見、評価および教育上の措置ならびにその子どもに対する無償の適切な公教育の提供に関するすべての関連記録を調査する機会ならびにその子どもについて自主的な教育評価を得る機会

・教育機関が、この児童の発見、評価または教育上の措置もしくはその児童に対する無償の適切な公教育の提供を(i)開始または変更することを提案し、もしくは、(ii)開始または変更することを拒否するとき、にその児童の両親または後見人に対して前もってなされる書面による通知

・この児童の発見、評価または教育上の措置もしくはその児童に対する無償の適切な公教育の提供に関する事項について不服を申し立てる機会

・不服申立てが受理されたとき、両親または、後見人は、州の教育機関、地方の教育機関または中間教育ユニットにより、州法または州の教育機関の判断に従い、運営される公正な適正過程における審理の機会を与えられる。この場合の審理は、その児童の教育または福祉に関係する機関またはユニットの被雇用者によっては行なわれない。

・前項で要求される審理が、地方の教育機関または中間教育ユニットにより行なわれるときは、その審理でなされた事実認定および決定に不服な当事者は、その審理の公正な審査を行なうよう州の教育機関に対し訴えることができる。

Q.PL94-142は、児童の評価における差別に関して何を述べているか?

A.PL94-142では、障害児の評価と措置のために用いられるテスト、評価用具および評価手続きは、人種上または文化上の差別とならないように選択され、かつ運用されなければならないとしている。そして評価資料や手続について次のような重要な規定を設けている。

・テストやその他の評価用具が、(i)明らかに実行が不可能でない限り、その児童の母国語またはその他のコミュニケーション様式(意思伝達の方法)で与えられ、実施され、(ii)それが用いられる特定の目的にとって有効であり、(iii)その製作者の指導に従って訓練を受けた者によって実施されること。

・テストやその他の評価用具の中に、単に画一的で一般的な知能指数を算出するために計画されたものではなく、特定の領域の教育的ニーズを評価するために作成されたものが含まれていること。

・テストが感覚や操作や話す技能に障害のある子どもに実施される場合、そのテスト結果が子どもが障害をうけている感覚や操作や話す技能を反映しているのではなく(ただし、その技能がそのテストで測定しようとする要因である場合は除く)子どもの適性や学力レベルまたはそのテストで測定しようとするその他のすべての要因を反映していること。

・子どもの適切な教育プログラムを決定するための基準として、単一の手続きだけを用いないこと。

・評価は、問題となっている障害分野の知識を有する少なくとも一名の教師か、その他の専門家を含んだ、多専門家間のチームまたはグループによって実施されること。

・その子どもが、問題となっている障害に関するすべての領域について評価されること。(この中には、必要な場合、健康、視覚、聴覚、社会的・情緒的状態、全般的な知能、学業成績、コミュニケーションの状態、運動能力が含まれる)

 PL94-142の施行規則では、各州および地方教育当局は(i)各障害児の個別教育プログラムはC節の規定に従って再審査され、(ii)前記の評価手続に基づいて実施される子どもの評価が、3年おきに、もしくは諸条件を満たし、子どもの親や教師が評価を要請する場合は、より頻繁に実施されることを保障しなければならないと規定している。

Q.PL94-142では、資料と情報の機密性について何を述べているか?

A.PL94-142では、障害児と親に関する教育記録の濫用などについて規定しているが、これより大きな規定として「Family Educational Rights and Priracy Act(FERPA)」が存在する。

 PL94-142の施行規則では、先ず、「両親への通知」に関して

・州当局は、障害児の判定、措置、評価を両親に十分に伝えることができる通知を出さなければならないこと。その通知には、以下の事項が記されてなければならない。(i)どの程度その通知が州内の様々な人種グループの母国語で公表されるかについての記述、(ii)個人を特定できる情報が保管されている子どもに関する記述、求められる情報の形式の記述、州が情報を収集する際に用いる方法(情報源となる人物を含む)の記述、および情報の利用方法の記述、(iii)関係機関が、個人を特定できる情報の保管、第三者への非公開、維持および処分に関して実施する政策と手続きの要旨、(iv)個人を特定できる情報に関する両親と子どものすべての権利の記述

・いかなる判定、措置、または評価活動の前にも、州内の親に十分にその活動を知らせられるように、新聞やその他のメディア、もしくはその両者に通知が公表されなければならない。

〔アクセス権〕

・各関係機関は、両親が本項に基づいて収集、保管、利用されている自分の子どもに関する教育記録を閲覧し、審査することを認めなければならない。関係機関は、不必要な遅滞なく、また個別教育プログラム会議や子どもの判定、評価、措置に関する聴聞会の開催以前に要請に応じなければならない。これは、要請がなされた日から45日以内に行行われなければならない。

・本条に基づいて教育記録を閲覧し、審査する権利の中には次のものが含まれる。

(i)記録の説明と解説に対する正当な要求に対して、関係機関から返答を受ける権利、(ii)情報を含んだ記録の写しを与えられないために親がその記録を閲覧し、審査する権利を侵害された場合、関係機関にその記録の写しを送るように求める権利、(iii)親の代理人が記録を閲覧し、審査する権利

〔記録の修正〕

・本項に基づいて収集、保管、利用されている教育記録の情報が不正確であり、誤っており、子どものプライバシーやその他の権利を侵害していると考える親は、その情報を保管している関係機関に、情報を修正するように要請することができる。

・関係機関はその要請に応じて、要請を受けた日から適当な期間内に、その情報を修正するか否かを決定しなければならない。

・関係機関は、要請に応じて情報を修正しないことを決定した場合、その旨を親に伝え、聴聞会の権利について親に助言を与えなければならない。

その他、「聴聞会の機会」、「聴聞会の結果」、「聴聞会の手続き」などについて述べているが、「情報の破棄」については

・公的機関は、本項に基づき収集、保管、利用された個人を特定できる情報が子どもに教育的サービスを提供するために、もはや必要でなくなった場合、親に知らせなくてはならない。

・情報は親の要請により処分されなければならない。ただし、児童生徒の氏名、住所、電話番号、学年、出席簿、在籍クラス、学力レベル、修了年度についての記録は永久に保管されてもよい。

Q.結論として、PL94-142(ほとんどの部分で504項の中に確認されている)の権利と擁護では何が保証されなければならないか?

A.PL94-142では、州および地方そして中間教育機関によって堅く守られねばならない数多くの規定がある。

・両親や後見人に対し費用を負担させることのない無償の適正な公教育の用意と保証

・すべての障害児に無償の適正な公教育の有効性の保証

・すべての障害児それぞれのための個別教育プログラムの維持

・法の適正過程手続の保証

・定期的に両親もしくは後見人に相談を行う保証

・親がわからないとか親としての役割を果たすことができないとき、または当該の児童が州の被保護者である場合、その児童のために行為する代理人の確保

・すべての障害児は「最も制約の少ない」環境の中で特殊教育が提供されることの保証

・差別のないテストや評価の保証

・資料や情報の機密性を保持するための方法や手続の保証

2.PL99-457―1986年障害者教育改正法

 1986年10月8日、レーガン大統領は、公法99-457に署名した。

 この新法は、障害児と障害青年に対し、大きな変化をもたらした。PL94-142のいくつかの主要な章がPL99-457により改正された。

Q.PL99-457は、PL94-142およびPL98-199をどのように改正したか?

A.PL94-142(障害者教育法 〔EHA〕 のB章)における権利と擁護のすべては、1990―91年度では3歳から5歳までの障害児に拡張されている。

 この目的達成を援助するために、先の就学前奨励補助金プログラム(Preschool Incentive Grant program, PL94-142, Sec. 619)はこの年齢グループのために連邦の財政上の貢献ということでは劇的な増加という形で改正されている。

 ・障害幼児や乳児(出生から2歳まで)に対する新しい州補助金プログラムは、この法律により定義されたすべての適格性をもつ子どもたちに対して早期療育(介入)サービス(early intervention service)を提供するために設けられたものである。このプログラムは既存の障害者教育法(EHA)のH章として新しく出現したものである。

 ・EHAのC章の中での早期教育の権限(障害をもつ幼児の心身の発育、社会的発達および言語の発達を助長し、親の参加を促し、地域社会にこの児童の問題に対する理解を広めるための諸活動を内容とするプログラムの開発および実施のための取決め)は、この新しい早期療育および就学前開始の目的を達成するために援助が最大限に維持され改善されている。

〔就学前〕

Q.州は3歳から5歳の子どもにサービスを提供するよう命ぜられているか?

A.1990―91年度までに、PL94-142の資金を充当しているすべての州は、3歳から5歳までのすべての障害児に無償の適切な公教育を受けることができるような状態にしておくことを保障しなければならない。これに応ずることが出来ない場合は、次の損失を被る。

 ・新しく設けられた就学前補助金

 ・より大きなPL94-142方式のもとで3歳から5歳児に支給されている金額

 ・EHAの自由裁量のプログラムによるC章からH章のもとで認められた就学前特殊教育に関するもののみの補助金と契約

Q.3歳から5歳までの子どもに提供されるサービスはどのようなタイプのものか?

A.これらのサービスは州教育機関と地方教育機関とを通して行われる。州教育機関と地方教育機関は、`サービス方式の範囲を提供するために他のプログラムや機関、そして供給者と契約することができる。この委員会報告では、学校授業の長さや就学前プログラムの範囲や種類の変化を確認している。例えば、通園ホーム方式や通園センターとか全日制センター方式などである。また、この報告では、就学前プログラムでは、家庭サービスが重要な役割を演じていることを述べ、また両親の希望する時間はいつでも、就学前の子どもの個別教育プログラム(IEP)の指導が含まれることを述べている。

Q.子どもの数を含めたデータ要求は、PL94-142のそれと似たものか?

A.各州は、サービスを受けている3歳から5歳児の報告は要求していない。このため、各州ではEHAの618条によるデータ収集のために、これらの子どもをカテゴリーによる分類は要求していない。

〔早期療育〕

Q.早期療育サービスに適格な子どもは?

A.この法令では、発達上の遅れ(各州によって基準は決められる)をもつ、もしくは典型的な遅れた状態、もしくは(州の裁量で)重要な発達上の遅れの危険を有する出生から2歳までのすべての子どもと定義している。

Q.資金は州にどのように配分されるか?

A.このプログラムの下での資金は、出生から2歳までの子どもの相対的な数に基づいて州に分配される。すなわち、人口調査に基づいた配分で、サービスを受けている子どもの数に基づいた配分ではない。1987会計年度には5千万ドル、1988会計年度には7千5百万ドルが認定され、以降の年度にもこの程度の金額が必要であろうといわれている。

Q.州はどのようにして補助金を受けることができるか?

A.補助金を受けるために:

初めの2年間:知事はこのプログラムの全体的な管理を行なう指導機関(どの機関が指定されるかは州の裁量である)を選定しなければならない。また、知事は、関連する機関、消費者、そして供給者によって構成される中間機関調整協議会(Interagency Coordinating Council)を設立しなければならない。この協議会は、中間機関の契約や資源についての援助をするほか、州の申請を進展し履行に関し援助する。そして州に対し別の方法で助言も行なう。この協議会は、また指導機関としても活動する。

3年目:州は、すべての適格性をもつ乳幼児への早期療育サービスを提供するための州規模で組織されている構成要素を公的政策として採用することを説明しなければならない。

4年目:州は、早期療育サービスを提供するため州規模の組織が効果的であることを説明しなければならない。また、州は次のものを、適格性をもつすべての子どもに対し提供しなければならない。

それは:多専門分野による評価、個別家族サービス計画、そしてケース処理サービスである。

5年目とそれ以降:州は、有資格の障害乳幼児のすべてのものが州の適切な早期療育サービスが利用できるようにしなければならない。

Q.州規模のシステムはどのようなもので構成されているか?

A.州規模システムは次の要素から構成されなければならない。

 ・州によって使用される「発達上の遅れ」という用語の定義

 ・ひとりひとりの障害乳幼児に対する多専門分野からの評価が利用できること

 ・各障害乳幼児に対する個別家族サービス計画(individualized family service plan 〔IFSP〕)の有効性

 ・包括的な障害児発見システムの維持

 ・早期発見に焦点をあてた公衆認知プログラムの維持

 ・州内で利用できるサービス、資源、そして専門家の名簿の維持

 ・人的開発の包括的システムと適切な有資格職員に対する規準の維持

 ・一般行政、監督、そしてプログラムと活動の監視、中間機関の協定に対する責任(指導機関)の維持

 ・サービス提供者と契約に適した方法の維持

 ・支払い責任機関から随時の返済のための手続の維持

 ・両親や後見人に対する手続的保護の維持

 ・データ収集システムの維持

Q.どのようなサービスが提供されなければならないか?

A.早期療育サービスは、各適格性を有する子どもに対し、多専門チームや両親によって開発された文書による個別家族サービス計画(IFSP)が包含されなければならない。

 サービスは、発達上のニーズを満たすようにつくられ、特殊教育、口話と言語病理学、聴能学、作業療法、理学療法、心理学的サービス、両親と家族に対する訓練と相談サービス、移動サービス診断目的のための医療サービス、そして保健サービスが包含されている。ケース管理サービスは、すべての有資格の子どもやその両親に対し、提供されなければならない。すべてのサービスは有資格の職員によって準備され、州は設立、そして維持規準、保障、認可方針に対するシステムを設立しなければならない。すべての早期療育サービスは、両親に対し無償で提供されなければならない。

Q.個別家族サービス計画(IFSP)はIEPとよく似たものか?

A.その計画に子どもと家族の両方についてのニーズを書くことを除いては、よく似たものである。個別家族サービス計画は次のことを包含している。(a)その子どもの現在の発達レベルの記述(認知、スピーチ/言語、心理社会、運動、そして自助)、(b)子どもの発達を高めるため家族の支えやニーズについての記述、(c)子どもや家族に対して達成されることを期待する主要な成果についての記述、(d)進歩を決める基準、手続き、期間、(e)サービスの方法、頻度、そして強度を含めた子どもと家族の独特のニードを満たすために必要な特殊な早期療育サービス、(f)サービスの開始とその持続期間、(g)ケース管理者の氏名、(h)早期療育から就学前プログラムへの移行についての手続。

 個別家族サービス計画は、少くとも一年一回は評価しなければならないし、適当であるならば、6か月ぐらいごとに再調査しなければならない。

Q.早期療育プログラムへの連邦資金の使用には制限があるのか?

A.このプログラムによる連邦資金は、早期療育サービスの規定のため州規模システムの計画、開発そして履行のために使用される。資金はまた、サービスの一般的拡大と改善のためにも使用される。しかし、実際の直接プログラムサービスではこのプログラムによる連邦資金は「最後の手段の支払者」である。すなわち、障害者教育法による資金は、公的もしくは私的であろうと、連邦、州、もしくは地方であろうと、他に適切な資源が存在するならば、使用できないということである。この規則は、各州において効果的な中間機関の参加が達成できることが重大であることを強調しているものである。

Q.機関相互間の協力が命ぜられているか?

A.PL99-457は、PL94-142のもとで、中間機関の協力を強調する目的で、PL94-142(障害者教育法B章)を大きく修正したものが含まれている。州教育機関は、最終的に責任がある一方、多くの機関はサービスを提供することが期待されている。

 委員会報告では、保健、福祉、その他の社会サービス機関は教育機関とともに協力していくことを述べている。

参考文献 略

淑徳大学教授


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1988年1月(第56号)37頁~47頁