特集/地域リハビリテーション メインストリームを目指すソーシャル・グループワーク

特集/地域リハビリテーション

メインストリームを目指すソーシャル・グループワーク

──その理論と実践技術──

Catherine P.Pappell D.S.W *

Beulah Rothman D.S.W **

解説・抄訳 小島蓉子***

解説
 

 障害者福祉に活用されるアメリカのグループワーク理論の登場

 アメリカで障害者のリハビリテーションと援助の専門教育が行われるのは、社会福祉系の学科や大学ではなく、教育学部のリハビリテーション・カウンセリング学科、またはリハビリテーション(専門職)教育学科である。

 一方、社会福祉系の学科には、いわゆるリハビリテーショニストとしての障害問題の専門家は殆ど不在であるが、社会福祉の専門技術の応用を精神障害者や精神薄弱者の福祉に試みている実践家や研究者は多い。

 各種障害者のための社会福祉の方法や技術が展開されている場は、施設、福祉センター、リハビリテーション病院、キャンプなどで、そこではグループワークが処遇方法の主役となっている。

 一口にグループワークと云っても、さまざまな機能や効果に向って幾多のモデルが開発され、実践に役立てられて来たので、その主な流れの中で、次に紹介するメインストリーム・モデルを位置づけてみたい。

 その第1は、社会変革モデルである。これは、グループの成員が求める社会目的に向かって組織や団体を動かし、社会改革、環境改革を達成するというグループ力動の使い方をするグループワークの「社会変革モデル」である。第2は、グループを臨床的な治療の場と考え、成員間の影響力や相互作用を通して、その集団の中の個人または集団そのものの治療すべき属性を治療し、取り除いていこうという「治療モデル」のグループワーク理論である。第3のモデルは長年、提唱者のパペル(C.P.Pappell)とロスマン(B.Rothmon)が研究を重ね、1988年のウィーンの社会福祉教育会議で発表した「相互作用モデル」である。これは、グループリーダーが指示的に人々のあり方を操作することなく、集団の相互作用によって発達的に成員間のメインストリーミングがなされるよう、メンバーの発達を支え、それによってノーマライゼーションに近づこうとする場合に用いられる方法である。

 この種のメインストリームをめざすグループワークの方法は、青少年活動、クラブ、教室など少数派の建設的な統合を図ろうとする場ではどこでも有効であろうが、今日注目されている実践の場は地域ケアプログラムの中にある。例えば、自立生活訓練や自助グループ活動など、身体障害児・者活動を進める技法として用いられる他、精神障害者や精神薄弱者のためのグループホームの運営においては、その処遇の技術としてこのモデルの活用が期待されるものである。

 次にあげるC.P.PapellとB.Rothmanの論文は、1988年ウィーンで開催された第24回国際社会福祉教育会議において発表された未印刷の論文である。本論文は、メインストリームを目指して適用されるグループワークの実践技術を解明し、その技術をいかに学生に教育するかを述べたものである。今回著者の許可を求め、翻訳をしたが、紙面の都合上、最後の教育論を割愛した。

 ソーシャルグループワークにおけるメインストリームの知的モデルの基礎となる仮説は、グループワークの歴史に根ざしている。北アメリカや西欧諸国におけるあらゆるソーシャルワークと同様に、グループワークは、19世紀の産業化によって産み出された人間のニーズに答えようとする努力から始まっている。移民や若い労働者のような人々は、一緒に働いている人々と単なる職務上のつながりで、特定の社会集団に限定的に所属しているのではない。彼らは、自分たちの生活空間の中や人々の暮らしのあらゆる面において、隣人に近づこうとしてきたし、個人的、地域的、そして社会的なあらゆる種類の問題に関わるところに近づこうとしてきた。平等主義者の存在とその社会を追求する民主主義のイデオロギーはメインストリームによる社会福祉の方法論が成立する基盤の素地を形成した。

 20世紀の初頭には多くの学問分野から産まれた知的な観念が、コミュニティワーカーと移民たちの意向を刺激し、社会に対する彼らの関係や個々人についての考えを明らかにしていくことに貢献したのだった。人間のパーソナリティの社会的性格は、民主主義の熟成がもたらした理念であった。初期のグループワーカーたちは、洞察を深め、知的な指導を求めて、社会哲学者や社会理論家の所説に傾倒したのだった。(Dewey 1934、Mead 1934、Lewin 1951)。

 20世紀の中頃までに、ソーシャルグループワークはソーシャルワークの専門職業の一方法として確固として位置づけられ、文献の相当な体系も開発されてきた。初期の専門家用テキストの著者たち(Wilson and Ryland 1946、Trecker 1948、Klein 1953、Phillps 1957、Coyle 1958、Kaiser 1958)は、社会哲学、社会学、社会心理学に関わる考え方に影響を受けたのみならず、精神力学の理論も取り入れていた。彼らの著書は1960年代に受け継がれていくものであるが、ソーシャルグループワークの理論は実践の豊かさと巾の広さとによって概念化されて行った。それはソーシャルケースワークとはどこか違う概念上の道に沿って歩んで来たけれども、グループワークも専門職業のための方法論的グループ実践の土台を開発していく中で、その位置を確立し始めていた。

 1963年に我々(Papell and Rothman)は、グループワーク理論の発達がたどって来た3つの基礎的理論の方向性が何であるかをとらえて発表した。我々は3つのモデルは識別されうるものであることを発見した。その第1は、社会目的モデル(the social goal model)であり、市民権、社会的行動、改革そして環境改革に重点を置いたグループワーク実践である。第2は、矯正モデル(the remedial model)で、クライエントの環境における個々人の治療やリハビリテーションに重点を置いたものである。このモデルはグループワークに対する臨床的な影響を反映している(Glasser and Garvin 1977,Vinter 1967)。第3は、我々が発見した相互的モデル(the reciprocal model)で、集団の有機的機能性に着目したものである。それは、メンバーたちが自分たちの目的を確立し、グループの多様性を体験できる相互扶助システムがニーズを見定め明らかにしていくというグループプロセスを強調するものである。これらは広い分野に派生し、同時に社会的、教育的、臨床的ゴールもしばしば含み得るだろう(Schwartz 1977)とされた。

 次の時代には、もっと多くのモデルが急増したが、それらは前述の理論の傾向の中から派生したものではなかった。グループを扱うあらゆるソーシャルワーク実践のモデルが共有したメインストリームのテーマの明確化を求める声が上がった(Lang 1979、Tropp 1978)。これらの著者たちは、1979年にソーシャルグループワークにおける「メインストリーム」モデルの理論を概念化した論文を発表している。我々は、ソーシャルグループワークの本質が潜んでいると思われた幾多のバラバラな理論を盛り込んだ研究成果を、蒸留することに努めた。このモデルのための行動科学の基盤を形成するに至った着想は、自我心理学、認識と学習理論、対象関係理論、コミュニケーション理論から引き出されている。

 著者らが提唱しているメインストリーム・モデル(Papell and Rothman 1980)は、5つの構成の相互作用に基づいている。グループ、グループのメンバー、グループの活動、グループと共にいるソーシャルワーカー、及びグループが機能する場である。これらの構成分子は、(1)内面のストレスの除去と個々人の成長、(2)メンバーと全体としてのグループに能力を付与すること、(3)環境の変化と社会的発展を促す、といった結果を生みだすために相互関係を、このモデルの中に持っている。この論文は、メインストリームモデルの5つの構成要素を解明するものである。

 グループ

 メインストリームモデルにおけるグループは、共通のゴール、相互扶助及び自然(制限されたりあらかじめ規制されていることとは自然で自発性に反する)な経験などを特徴としている。共通のゴールやグループの目的は、ソーシャルワーカーの専門職としてのゴールと、個々人メンバーの個人的ゴールとの融合から得られる。

 人々が自分自身と他者との間に感じる距離感を克服しようとする欲求は、小さな集団にあっても関連性を捜し求めるように人々を動機づけるような本質的で強力な動機の要因である。分かちあいや譲歩は、意思決定をしたり、問題を解決したり、葛藤の解消というようなグループの生活を通じて経験される。主な関心は、お互いに助け合うことがテーマなので、メインストリームグループは、「相互扶助システム」として捉えられるかもしれない。自発的で、意味を持った介入の集団プロセスは、グループの目的が実現される場合の道具となる。

 外面の概念(グループの環境に源を発し、あるいはグループ環境にまで発展する相互作用力のシステム)は、グループの外と内との現実の間に、継続的でかつ頻繁な交互作用があるという仮定に基づいている。外面性は、グループメンバーが共同でその環境に対して影響を及ぼし、修正し、貢献するような行動を起こす場合、あるいは環境の求めに応じるためにグループに根づいた基準を用いる個々のメンバーを援助する場合に実際的に表示される。それぞれのメンバーが彼ら自身の私的生活から培って得た考え方を展開しうる基準枠としての考え方をグループは支持している。多くの集団心理療法と異なり、ソーシャルグループワークのメインストリームモデルは、グループの境界線を超えてメンバー同志が関係を継続するのを奨励している。

 さらに全体としてのグループは、結集された力の源であり、単独のメンバーではできないような方法で、その環境に刺激を与えることができる、影響力を長期にわたって行使し、効力と能力を経験する機会はグループの中の多数の資源によって拡大されるものである。

 メインストリームモデルに見られる最も顕著な面は「全体としてのグループ」の発達に重点が置かれていることである。このことはグループがいかに成長していくか、またこの変容過程の中で、グループの属性とエネルギーとが、いかに集団の目的と統合されていくのか、についての高度の理解を必要とするものである。次に現われるグループの発達過程で、かなり変わりやすいものは、グループの最初の構成員である。この構成は環境によろうが、あるいはソーシャルワーカーの専門家的努力により決定されようが、いずれにしても変わりやすいものである。グループに自力でのリーダーシップの役割が出現することを通じて、グループは増大するグループの自律性に見合ったメンバーの機構を作り出すようになる。これらリーダーシップの役割が養成され拡大されたとき、個人のニードもグループのニードも申し分なく満たされるようになる。

 人間サービスの分野の他のあらゆるモデルとこのメインストリームモデルが異なる要因は、目的とプロセスに対してメインストリームモデルには柔軟性があり、多種の人間のニーズに応えられるという有効性があることである。

 グループにおけるメンバー

 メインストリームモデルにおいてのグループへの関心は、メンバー個々人への関心と同等の強さを持っている。どちらか一方というよりはむしろ、グループにも個人にも重点が置かれる。メインストリームのグループワークモデルの認識は、クライエントや患者というよりも、介入期間を共にするメンバーであることが優先される(Falk 1984)。メンバーたちは健康維持や成長の促進を受動的にせしめられる人々というよりむしろ、積極的な人々である。メンバーたちは皆、グループ内での効果が得られるような潜在能力を持っていると考える。この能力を訓練していくと、個々人の内にも変化が生じる。従ってこのモデルにおいては、個人は社会的学習者として考えられ、グループの主要な目標が何であろうと、グループ経験を通じて社会機能や個人の技量を伸ばしていくという視点で見られている。

 メインストリームのアプローチにおいての関心は、他者と同じ帰属意識の絆を打ち立て、共感と一体感を持ち得る力量を開発しようという個人のニードであると表明しうる。この関心は、現代社会におけるいくつかの問題-すなわち個人の存在理由の喪失や、自己疎外感から来る不安、増大するアノミー(社会的基準や価値が見失われたり混乱している状態)-といった問題に対して、このモデルが応えていることであり、またこれらの問題はソーシャルワーク専門職の注目を要求していることでもある。そのグループが本来、治療的か予防的か開発的かにかかわらず、グループ内での支えは個々人のストレスを和らげる重要な要素なのである。

 メンバー個々人の差異、自律性、分離性はメインストリームグループにおいて支持され奨励もされる。これらの属性がグループの資源であるのと同様に、個々人においては強さの源泉であると考えられている。メンバーたちが個々人の差異についての意義や、その現実性を体験でき、肯定的な対人関係に影響を及ぼすのと同様、否定的な対人関係の影響をも認め、耐えていく技能を獲得できるようなテスト場面をメインストリームグループは提供しているのである。

 個々人のニーズと集団のニーズの間につり合いのとれた見通しを保っていくことが絶え間ない力道的な論点である。包括、コントロール、愛情という個人のニーズ(Schutz 1958)は、グループへの加入、権力とコントロール、親交と分化というグループの発達段階でのプロセスに反映される(Garland Jones and Klodny 1965)。否定的なグループの属性は、社会不適応の蔓延、スケープゴート(集団の中に犠牲者を出すこと)、つまはじきの人を生み出すといったことからでも、それらはグループにおける個々人の傷つきやすさをより高めるかもしれない。メインストリームアプローチにおいて、個々のメンバーに対する上記の、その他容赦ない危険は、抑制され、解決され、あるいは取り除いていかなくてはならない。何故なら、個々のメンバーの保護は、集団ゴールの達成よりも優先されるべきものだからである。

 メインストリームグループにおける活動

 行動と相互作用がグループの「言語」を構成する。もし成長を成し遂げようとするならば、行動をとることが必要となる。(Middleman 1968、Wilson & Ryland 1948)。何の行動も起こさなければ、個人も小さなグループのシステムのどちらとも、よい状態になることが脅かされることになる。それはグループを解散へと導く沈滞を生むであろう。

 例えば、仕事ばかりでなく遊び、厳しい意見ばかりでなくユーモアというような、言葉上の約束と同様に、非言語的な活動が持つ価値は、メインストリームモデルの歴史的伝統の一部分を成している。おもしろい活動やユーモアは生活の質を高め、精神の健康を増進する。グループワークは痛みを和らげるのと同じように、楽しい活動をできるだけ育成していこうとするものであり、これらはこのモデルが援助専門職の分野で他から大きく異なる点である。

 活動は自発的な興味とグループメンバーたちの欲求から生まれ、目的のある、共同の方法をとる中で実行される。自発的な起源と実行における計画性という二つの特色は、メインストリームアプローチにおけるグループ活動に向かっての主要な方向性を反映している。

 メンバーたちの新しくて表現豊かな体験は最初に「はつらつ(in vivo)」と現れ、そしてその後のグループの外の世界での体験と共に、グループ内で何度も何度も体験されるであろう。ワーカーは活動のアイディアをあらかじめ用意してグループに来るが、グループが自分で主体的に動けるように、集団の成長能力にいつでもすぐに応じるものである。

 メインストリームグループと共にあるワーカー

 メインストリームグループの専門職ワーカーはさまざまな役割のレパートリーを自分の掌中に持っている。例えば、グループと、個々人メンバーのニーズ及び、相互作用の起きている状況の評価にしたがって、「可能にする人(enabler)」になったり、「促進する人(facilitator)」になったり、「教師(teacher)」になったり、という立場から問題に介入することになろう。

 グループプロセスの自然さは、専門家の態度が暖かく、形式ばらず、そして、「権威主義から離脱」(Konopka 1978、P.128)であるべきことが要求される。

 メインストリームモデルにおけるワーカーのモデルは、真正であること(authenticity)と直進的(forthrigtness)であるという特徴がある。ワーカーとメンバーの関係は、メンバーの自己防衛的な姿勢を減少させ、信頼と親交と深めさせ、社会的距離を少なくさせるという可能性を秘めている。メインストリームワーカーの形式ばらない行動様式は、ワーカーとの一体化を促進する。ワーカーはメンバーの挫折や感情を扱いながら彼らを援助する。ワーカーはまた、このようなメンバーの打ち明け話の有用性や適正さを考慮しながら、彼や彼女の感情を分かちあうことであろう(Phillips、1957)。

 ワーカーの順応性は、それがワーカーの権威のあり方でもあるという概念の論理的派生物であるということを述べて来た。ワーカーのそうした権力の行使は、グループ生活を管理するグループの権限とは逆のことである。ワーカーは権力についてのこの概念を早くからグループと共有し、ワーカーもグループも、権力の交互作用を見守るのである。メインストリームグループではワーカーの権威に挑戦することは、一般に自治の発達に関わる当然のこととして認められている。しかしながら、個々のメンバーや全体としてのグループの福祉が威圧されたり、機能不全に陥ったりする場合、権威への抗議が否定的徴候として現われることであろう。グループの次第に高まる自立度を適切に評価し、そして受け入れるというワーカーの能力は、権力をグループ成員と共に分かち合っていくワーカーの大切な要素なのである。

 メインストリームモデルが応用される場

 グループが出会う場は、メインストリームモデルが役割を演じるための5番目の構成因子である。グループは矯正やリハビリテーションのための場に作られるかもしれないが、メインストリームグループは、能力の「強化」や「予防」や「能力の付与」の広義のソーシャルワーク機能として実践されるであろう。ソーシャルグループワークの実践の中で高められたソーシャルワークの機能があまりにも一般的になったために、グループ生活の概念は常に、楽しく、成長を産み出し、そして創造的な経験を含むようになった。病人が旅行をしたりピクニックに出かける;精神病の患者が祭りを開催したりダンスに参加する;青年達が芝居や映画を作る;老人が追憶の詩や自分たちの話を分かち合う、といったことがらは皆グループ生活として行われるのである。

 一つの機関でグループが形成される場合、そのグループは、ケースワークを志向するか、コミュニティプロジェクトを志向するか、二つの特別な関心は明らかにされる必要がある。第1に、一グループのための新会員の募集に当たっては、専門ワーカー全体のスタッフからの協力、献身、援助を必要とする。第2は、グループメンバーたちがインフォーマルなより一般的な集団に加わることは、仲間感の信頼感がより希薄となり、その機関の環境の意図的にも無意図的な変化に「さざ波効果(ripple effect)」を及ぼすことになる。

 ソーシャルワークにおけるアプローチの多様性に対して開放性や創造性を取り入れることが基範(norm)となっている場においては、メインストリームモデルは、その機関の機能の実現を強化でき、自己成長や自己実現においてクライエントメンバーの経験を高めていくことが可能となる。このモデルの中でグループ援助を提供する機関は、彼ら自身と彼らの地域に、利益をもたらすためのプログラムの開発にかかわるものとしてグループを期待することが可能となる。メインストリームモデルは、個人やグループのレベルと同様、組織レベルでの成長をも確信しうるほどに拡大され、入念に仕上げた力量を与えるようなモデルなのである。

 いくつかの重要な介入テクニック

 グループの形成と維持とは、メインストリームモデルの中で働いているワーカーにとって、重大な関心事である。ワーカーのとる最初の介入は、グループ作りの活動と認められる。それは、①グループの形成過程に着手すること、②グループにふさわしい新会員を募集すること、③グループ内のメンバーの興味を導き出すこと、④グループのメンバーたることに対しての初期の二律背反の感情(入会の喜びと不安)を取り扱うこと、⑤個々のメンバーの持つグループ価値受容の潜在性を生かし、「ヴィジョン形成を助けること」(Schwartz 1961)、⑥受れ入れ可能で実行可能の目標を明確にするべくグループを援助していくこと、⑦契約を成立させること、そして、⑧機関や地域に対するグループの目的を説明しながら適切な便宜と支援を取りつけることなど、に関するテクニックが含まれる。

 グループ作りには、規範や手続きを作りあげる中で、グループを援助するグループワーカーが必要とされる。グループ作りのプロセスが続く間、グループワーカーは個々のメンバーのグループの受容と、相互援助に各メンバーが貢献するよう諸条件の発達に努力する。ワーカーはメンバーたちの中にある共通性を強調する。つまり共通の興味、共通の苦痛、年齢、性別、文化及び民族性という類似した特色を強調するのである。このような要素はグループの密着度を育成し、いわばグループシステムを一つにまとめ上げる「人間同志の間の接着剤」なのである。

 グループ機能を強化していくためにグループワーカーが用いる主なテクニックは、グループの中でグループが絶えず意思決定するのを促進することであり、グループ自らが下した意思決定の経過と結果を評価することを含む。それによってグループはグループ自身の成就を「自らのもの」として自覚でき、また増大された自律性に満足を覚えることができるからである。このことは能力付与(empowerment)の結果に直接関わっている。

 グループ発達のさまざまな段階を通じて、グループワーカーは、個人とグループの成長の促進をゴールに置きながら、意思決定、コミュニケーション、参加、規範づくり、葛藤の解決、社会的責任というプロセスに意識的に介入の焦点を当てる。ワーカーの影響は、メンバーたちがワーカー介入の意図の真価を認めることによって、明らかに発揮される。メンバーたちは、このようにワーカーの指示を受け入れることも、修正することも、拒絶することも自由にできるようになる。彼らはワーカーの人間的な姿勢と、テクニックを受け入れるので、対人関係の技術と、彼ら自身や他人を援助する彼らの能力を強化されるのである。

 相互扶助の障害になるとされてきたグループワークのテクニックは、グループの成功に関して批判的である(Shulman 1979)。これらのテクニックは、他人の関心から自己の関心を区別させ、またお互い同志が正直にコミュニケートするように、メンバーたちを援助することに関わっている。グループ維持の問題としてこれらの問題を扱うことは、個人の機能不全よりむしろ、グループの束縛をより強化させることになる。

 上述したように、グループの状態に影響を及ぼし修正するためにグループワーカーが用いた方法は、メンバーが問題を話せるようにし、その問題を再構成できるようにし、また、不穏当な個人的行動に対しては制限を加え、それに直面できるようにするといった個別化された介入(Vinter 1967)とは、確かに異なっている。これらの介入の効果は、意図的な受療者にとって有益であると同様、しばしば傍観的なメンバーにとっても有益である。

 グループワーカーは非言語の介入や活動を自由に用いる。これらには、自己表現的な芸術、ゲーム、運動、役割練習、模擬実験、空想の形式というものが含まれている。こういった活動は特に、メンバーの属性や潜在的な成果を考慮に入れて、注意深く選ばれる。活動プログラムの分類は、グループワーク文献の中に発展を見ることができる(Middleman 1968、Vinter 1985、Whittacker、Wilson & Ryland 1948)。そしてこれらの成果は、すでにメインストリームモデルの中に採用されている。

 社会開発に関するワーカー介入の戦略焦点は、グループの中で「期待される責任」を奨励することである。このことは意思決定の全レベルでなすべきか、問題解決の全レベルでなすべきかの二者択一を計りにかけることを要求する。この戦略で重要なことはメンバーに個別的に直面しても又、グループの中で対応したとしても恐れを抱かせないようなやり方であるので彼らが、喜んで責任をとることができるのである。

 今まで述べてきたいくつかの介入テクニックは、メインストリームモデルにとって必須なものである一方、他のグループの方法論やモデルから介入術を借用したり、結びつけたりすることも、メインストリームモデルの基本的な価値と概説に一致している限り、あるいはそのモデルの完全な状態が維持できる限り、それを排除しているものではないことを述べることは大切である。

〔以下、このメインストリーム・モデルを専門家教育に当ってどう展開させるかの論議は紙面の都合上、別の機会にゆずりたい──訳者〕

参考文献 略

*ニューヨーク州アデルファイ大学(Adelphi University)の社会事業大学、大学院教授。

**フロリダ州マイアミのバーリィ大学(Barry University)の社会事業大学、大学院教授。

***日本女子大学教授


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1990年6月(第64号)28頁~34頁

menu