用語の解説 学習障害 セルフヘルプ

用語の解説

学習障害

 最近、「学習障害」への関心が急速に高まりをみせている。知能が特に劣っているわけではなく、感覚の障害があるわけでもないのに、読めない、書けない、計算ができないといった状態の子どもたちがいる。このような状態をこれまでの障害児の見方にとらわれずに新しい観点からとらえ直し、「学習障害(learning disabilities)」といったことばで表現する傾向が強まってきた。

 この動きは、1960年代に先ずアメリカにおいて顕著となり、このような学習障害児に適切な教育的措置や医療的措置をするための研究や実践が開始された。1970年代になると各国にその成果が普及し、また公的にも認知されるようになった。1983年の障害者教育法の中では次のように定義された。「特異な学習障害をもつ児童とは、口語または文字の言語の理解もしくは使用にかかわる基礎的な心理的過程のいくつかに混乱があり、その混乱が聴く、考える、話す、読む、書く、綴るまたは計算するという能力の欠陥として現われる児童をいう。この種の混乱は、知覚障害、脳損傷、微細の脳機能障害、難読症、発達上の失語症といった症状を含む。この用語は主として、視覚、聴覚または肢体不自由の結果であるが、精神遅滞、情緒障害もしくは環境、文化または経済面の不利から生ずる学習上の問題をもつ児童は含まない」。また共通してみられる主な行動特徴として、多動性、注意の転導性、知覚や運動協応の欠陥、衝動性、情緒的不安定などがあげられている。

(小鴨英夫)

 

セルフヘルプ
(Self-help)

 セルフ・ヘルプ・グループ(SHG)、セルフ・ヘルプ・オーガニゼーション(SHO)、セルフ・ヘルプ・ムーブメントといった用語で使われる。「自助」と訳す向きもあるが、その内容を伝える語としては不十分な感もあり、原語のまま使うことが多いようである。

 SH活動は、専門的・制度的アプローチに欠けている部分を補完したり、あるいは対抗する形で発展してきたが、その歴史は19世紀イギリスの友愛組合に遡る。今日では、WHOがリストアップした疾病のほとんどすべてにSHGがあると言われ、疾病や障害以外にも女性、児童虐待の親、独居老人など種々のグループが存在する。規模は大小さまざまであり、機能も単なる相互援助を中心としたものから社会運動を主に志向するものなどいろいろである。

 カットとベンダー(Katz & Bender)のSHGの定義では、自発的な小グループ、特定の目的のための相互援助、メンバーは共通のニードを充足させる仲間(peers)であること、ニードとは共通の障害や生活を破壊に至らせた問題の克服や社会の個人の変化であることなどをその特徴に挙げている。

<参考文献>ガートナー/リースマン『セルフ・ヘルプ・グループの理論と実際』久保紘章監訳、川島書店

Rita A.Varela“SELF-HELP GROUPS IN REHABILITION”The American Coalition of Citizens with Disabilities,Inc.

(河村ちひろ)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1990年6月(第64号)44頁

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