用語の解説 アドボカシィ インフォームド・コンセント

用語の解説

アドボカシィ

 個人の生活の質を高めるために権利を擁護する一連の活動。アメリカ合衆国において、発達障害者(精神薄弱者及び精神薄弱者に準じたサービスを必要とする者をいう)は、自分で自分の権利を守ることが困難な障害特性を持つため発達障害者に対する重要な援助法としてアドボカシィ(Advocacy以下A)を位置づけている。また同国のアドボカシィは広義には以下に示す①②③の3つの形態があるといわれるが、狭義にはそのうちの①の意味を持つ。

①個人に関与するアドボカシィ:障害者一人ひとりが、適切なサービスを提供され、権利が擁護されているかどうかについて、個人の生活を見守り、必要な活動をすること。この中には、(ア)一般市民、親の会、ボランティア等民間の活動(Citizen or Lay A.)、(イ)障害者自らが自分の権利を学習し、それを擁護するための活動(Self A.)、(ウ)施設入所者の権利を擁護しかつ施設の処遇を監視するために、州政府あるいは裁判所から任命されて行う活動(Public A.)がある。

②行政機関の施策やサービスに関与するアドボカシィ(System A.):行政が行うサービス、施策及び法律等が権利擁護にかなっているかどうかを監視し、必要に応じて改善させる活動をすること。主として連邦・州政府が設置している評議会がその機能を果している。

③法的アドボカシィ(Legal A.):権利擁護の上から問題視される事例を法廷に持ち込み、判例を出させる等、法律的側面から権利擁護を行う活動をすること。

(白井俊子/東京都心身障害者福祉センター)

 

インフォームド・コンセント

 Imformed Consentとは、医療行為を実施する際の患者の納得と同意を得るための説明ということで「説明と同意」と訳される。用語としては、1957年からアメリカで使われるようになった。もともとは1945年第二次世界大戦直後に行われたニュルンベルグ裁判でのナチスドイツの人体実験問題に端を発する。この考え方は、ヘルシンキで開催された世界医師大会で「医療行為は患者の納得を得て行うこと」というヘルシンキ宣言で欧米諸国に浸透していった。アメリカで1972年に患者の権利章典が発布され、1981年の世界医師会総会では患者の権利に関するリスボン宣言が出され、近年は、この考え方はさらに発展して、患者の権利として「自己決定権」へと変わりつつある。

 日本においても、1985年に弁護士中心に患者の権利宣言が出されている。自己決定権への進展理由は、①お任せ医療・パターナリズムに対する反省批判、②医療の高度化、専門化、多様化、③疾病構造の変遷、④障害の慢性化、重度複雑化、⑤医療体制の変化、⑥医療知識の普及が上げられる。具体的には、臓器移植、薬物の臨床試験、一般臨床検査、癌の告知、安楽死等が大きな社会問題となっており、必要性、効用、危険率、選択肢等の説明と同意が求められている。

 リハビリテーションにおける障害者と専門家との関係も同様で、1981年の国際障害者年以後は特に自立生活(IL)、QOLが重視され、それとともにこの考え方は急速に日本にも浸透した。障害者の人格の尊厳の尊重に基づき、「どう生きるか」の選択決定はあくまで当事者自身にあることを明示している。砂原は、インフォームド・コンセントとは、相互尊敬と相互参加に基づく共同意思決定と定義している。その内容は、ライフスタイルや価値の多様化等心理社会的内容を含めた総合的意思決定である。第26回リハ医学会招待講演で加藤は、日本人は概して自分と考え方が違うのは異端であるといって少数の考え方を排斥する傾向があると戒めている。個を尊重することが大切で、臨床の場における望ましい関係、医療・福祉の今後の進展の原点として、インフォームド・コンセントの考え方は、増々重要視されるものと考える。

(長田香枝子/東京都心身障害者福祉センター)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1991年3月(第67号)46頁

menu