用語の解説 文字放送(TEXT TELEVISlON) 脳性麻痺の二次障害

用語の解説

文字放送(TEXT TELEVISlON)

 テレビ電波の一部分を使って、文字や静止図形を送信する放送である。日本では昭和60年に本放送が始まった。文字放送を見るためには、文字放送受信装置内蔵型のテレビ受信機を購入するか、普通のテレビ受信機にアダプターを装着しなければならない。文字放送の番組には、文字・図形などでニュース、天気予報、観光情報などを伝えるものと、聴覚障害者のために、ドラマやアニメなどに字幕を付加するものとの2種類があるが、ここでは聴覚障害者向け字幕について述べる。

 現在、NHKと在京民放では、字幕放送を実施しており、NHKの「朝の連続ドラマ」「大河ドラマ」や、民放の「サザエさん」のほかいくつかの時代劇などに字幕が付けられている。文字放送字幕番組は、聴覚障害者の情報保障に非常に重要なものであり、報道、娯楽だけでなく、ろう児の言語教育や社会性の育成にも役立つ。

 しかし問題もある。第一は字幕番組の数が少なく、平成4年4月現在、週に約15時間しか放送されていないことである。この時間数は関東地方のもので、他の地方では文字放送を実施している民放は少ない。第二に、文字放送を受信できる機器の価格が高いことである。その結果、全国普及率はまだ低く77万台(平成3年12月)である。アメリカでは週215時間字幕番組を放送しており、平成5年7月からは、13インチ以上のすべてのテレビ受信機に字幕受信装置の内蔵が義務付けられる。

(秋山隆志郎/東京情報大学)

 

脳性麻痺の二次障害

 成人脳性麻痺の人達でしびれや痛み、運動機能低下を訴える人がかなり多い。障害者労働医療研究会の調査結果では、比較的若い人達でもこれらの症状や日常生活活動の能力低下出現率が高く、加齢と共に増加傾向があることが指摘されている。他の医学系の調査研究で脳性麻痺に頚椎症の発生率が高いという報告が多い。

 脳性麻痺の不随意運動や筋緊張の過剰亢進は、頚・腰部の疼痛の原因になりうる。これが永続すれば脊椎(せぼねの意)に加重の負荷を加えて変形を招き、変形した骨が脊髄(せぼねの中を通る中枢神経の意)やそれから出る神経根を圧迫すると、運動・知覚麻痺や根性神経痛・しびれ感などの原因になりうる。

 治療法として頸部への温熱・牽引・低周波、鎮痛剤、筋の緊張を弛緩させる薬剤も利用されるが、いずれも根治には結び付かない。頚椎の変形が脊髄・神経を明らかに圧迫している場合には、外科的治療法が奏効する。しかし本来の原因が不髄意運動や筋緊張亢進にある以上、これも根治的治療法とはいえない。同一姿勢で作業を長時間続けることが筋緊張を持続させ、疼痛発生の原因になる可能性もあり、短時間でも頻回の休憩時間をとり、緊張を緩める体操が有効かも知れない。

 さらに、高齢脳性麻痺者では呼吸器や消化器の合併症、転倒による骨折の発生頻度もかなり高いようである。臨床医学的に十分な調査・研究が実施されていないが、今後の重要な検討課題である。

(安藤徳彦/神奈川県総合リハビリテーションセンター)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1992年7月(第72号)45頁

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