特集/リハビリテーションにおける国際技術協力 日本精神薄弱者福祉連盟

特集/リハビリテーションにおける国際技術協力

事例紹介

日本精神薄弱者福祉連盟

沼田千[よ]子

 本連盟の国際技術協力事業は、主にアジア諸国に対して行われている。これは、本連盟がアジア精神薄弱者福祉連盟の会員であり、また、アジア諸国からの要請により事業を開始したという経緯があるからである。

本連盟の国際技術協力事業

(1)精神薄弱福祉コース

 これは、開発途上国の精神薄弱分野で働く職員の教育・訓練を日本で行うトレーニングコースで、毎年1回行っている。開始年は1979年で、今年で15回になり、これまでにアジアを中心とした途上国30ヵ国から129名の研修生を迎えた。(第2回からは国際協力事業団よりの委託事業となり、ODA事業としては1993年現在で第14回)トレーニング期間は3ヵ月で、大きく2期に分れており、前半では、予防を含めた各サービスを行う機関での見学と日本の関係者との討論を行い、後半では、個々の研修生のニーズに合わせた個別実習を行っている。研修生は帰国後、日本で見、学んだサービスをそれぞれの国の実情に合わせて修正した上で有効に活用している。

(2)発達障害療育訓練ハンドブック

 発達障害を持つ幼児、児童の療育・訓練に携わる職員や親のために、療教育の方法を詳しく解説したハンドブックで、日本語、中国語、英語版を1988年から1992年までの5年間に1から5集までを発行し、25ヵ国に15,000冊を無料配布した。本ハンドブックは現在アジア数ヵ国語に翻訳され、各国で活用されている。(日本船舶振興会補助事業)

(3)英文白書

 日本における精神薄弱者リハビリテーションサービスと傾向をグラフィックに英文で表わしたもので、1989年より毎年発行し、200以上の世界各国に無料配布している。

(4)治療教育賞

 アジア諸国のこの分野の職員より論文を募集し、優秀論文3編に副賞20万円と共に授賞するもの。1989年から隔年に行い、今年で第3回になった。また、受賞論文および優秀論文の印刷発行を併せて行い、アジア諸国に無料配布している。

(5)ビデオ―発達障害とその原因

 発達障害の状況とその原因を関係者に正しく理解してもらうために、代表的な障害について視覚的に解説したビデオである。日本語、中国語、英語の3ヵ国語で作成し、1993年度は26ヵ国に400本、無料配布した。(日本船舶振興会補助事業)

 協力対象国の実情は日々刻々と変化している。それぞれの国の状況を把握し、私たちが何ができるかを知り、共に学び合える協力関係を築くことを基本に今後も活動したいと考えている。

日本精神薄弱者福祉連盟事務局


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1993年12月(第78号)13頁

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