特集/リハビリテーションにおける国際技術協力 アガペ交換研修プログラム

特集/リハビリテーションにおける国際技術協力

事例紹介

アガペ交換研修プログラム

―日本キリスト教奉仕団

武間謙太郎

1.いつ始めたか

 アガベ交換研修プログラムは国際障害者年の前年の1980年に始まった。なにぶん一法人の実施する事業なので大きいことはできないが、社会福祉法人日本キリスト教奉仕団の運営するアガペ身体障害者作業センターをベースとして、他のアジアの国において障害者の社会復帰、特にそのための職業指導に当たっている指導者を毎年4名以内招き、5ヵ月間の相互研修をするプログラムである。この計画は1993年で14回目を迎える。その間研修生は延べ10ヵ国から合計44名となった。また、このプログラムは交換研修なので、これら研修生の働いている施設に法人からも職員を派遣し、短期間の研修を重ねてきた。

2.なぜ始めたのか

 このプログラムは私たちのささやかな償いになることを願うことから始まった。

 先の戦争で周辺にあった国々は、人も国土も深い傷を負った。そして戦後の復興にも戦争当時国ほどの援助を受けることもなく、再び周辺国として扱われてきた。現在アジアの国々には極めて多くの障害者がいて、十分な処遇を受けることもなく苦しい生活を余儀なくされていることに対しては、歴史の上で主役を演じた国としてかなりの責任があると思う。

 事実このプログラムを始めたころには、かなり多くの研修生の心の中に日本人に対する刺があった。そしてこのプログラムを通して新しい交わりが生まれ、和解ができて帰国した研修生が多くいた。

 償うことから始めたプログラムだから、研修生の重荷を共に負い、共に苦しみ、共に生きることがこのプログラムの標語になった。

3.研修について

 1980年代はアガペ自身、どのようにして障害者を社会の基幹企業に送り込めるかについて試行錯誤した10年だった。コンピュータのソフトの習得が障害者の社会復帰にひとつの活路を開いた。研修生が来るようになって分かったことは、英語圏の人々にとってこのソフトの習得は比較的学びやすいということだった。すでにインドのマドラスにある施設では障害者にソフトを教えている。3人の職員のうち2人はアガペの研修生であり、階層の厳しいインドの社会で、ソフトを学んだ障害者が企業に就職するようになったことは奇跡を見る思いである。

 また、乏しい予算でこのプログラムを運営するため、このプログラムに参加するのに適した研修生を迎えなくてはならない。そのため最終的には現地面接によって研修生を採用しており、成果を上げている。

4.結び

 相互交換のプログラムなのでこちらも学ぶことが多く、施設の活性化に力をそえている。一番国際的になったのは施設に住む利用者の人々である。これからも続けていきたいと思っている。

社会福祉法人日本キリスト教奉仕団常務理事


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1993年12月(第78号)15頁

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