特集/リハビリテーションにおける国際技術協力 障害者インターナショナル(DPI)

特集/リハビリテーションにおける国際技術協力

事例紹介

障害者インターナショナル(DPI)

ニノミヤアキイエ

1.はじめに

 障害者インターナショナル(DPI)はリハビリテーションのサービスを提供する専門家中心の障害に関する活動に対して、当時者である障害者を中心に組織された国際組織である。「完全参加と平等」の精神を基礎に1981年、シンガポールにて世界53ヵ国の代表によって結成されて以来、国連の諮問機関となり、国連・障害者の十年計画において世界各地でNGOとして多大なリーダーシップを提供している。DPIはアフリカ、ヨーロッパ、南アメリカ、北アメリカ、そしてアジア・太平洋各ブロックから構成されている。したがって、ここではアジア太平洋ブロックにおける活動を中心に報告する。

2.DPIの国際活動

 DPIは人間・市民中心の活動なので、技術協力というようなリハビリテーションのアプローチではない。したがって、人間性の追究、基本的人権、障害を持った女性、自立生活運動、平和活動、市民権運動、教育を受ける権利、就労する権利、経済保障の権利、社会活動・文化・レクリエーションに参加する権利、政治に参加する運動等をしている。DPIではリハビリテーションという言語はほとんど用いられていない。用いるとすれば「人間性回復」という意味を指している。旧来のリハビリテーション国際活動は国家レベルのものが多く「技術協力」という言葉を用いていたと思う。しかし、DPIは草の根運動、消費者運動のアプローチを採用しているので国際交流・協力を中心に国際活動をしている。

 1982年よりアジア太平洋で開催された国際セミナー・活動を以下に述べる。

1982年 日本において、世界評議会を開催し、平和と障害のテーマで広島において平和マーチをする。

1983年 タイ国バンコク市において、障害者指導者養成セミナーを開催。障害者組織の形成、発展を中心に行う。

1984年 オーストラリアのアデレイド市にて、障害者のセルフ・ヘルプ運動、障害の正しい認識研究等をテーマにセミナーを開催する。

 以下、1985年はバングラデシュ、1986年は韓国、1987年はパキスタン、1988年はタイ、1990年はフイジー、1991年はシンガポール、1992年は中国、そして1993年はバングラデシュが予定されている。各国際セミナーはアジア太平洋ブロックの多くの国の障害者が多数参加している。

 さらに、1993年からのアジア太平洋障害者の10年は、議長であるハ代英太氏を中心に毎年4~5ヵ国で障害者の自立のためのリーダー育成および障害者団体の形成、発展を促進するセミナーを計画している。1993年はモンゴル、タイ、パキスタン、ソロモン、インドでセミナーが開催された。バンコクのDPIアジア・太平洋開発事務局はカンボジアの障害者救援活動をしている。国連ESCPAと密接な協力関係を持ちつつ活動を発展している。

神戸聖隷福祉事業団 ホーリスティック社会福祉研究所


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1993年12月(第78号)19頁

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