用語の解説 誤用(misuse) コンダクティブ・エデュケーション

用語の解説

誤用(misuse)

 理学療法、作業療法その他のリハビリテーション(以下リハと略す)医療技術が正しくなかった場合に種々の害を及ぼしうることが、リハ医学の比較的初期から指摘されており、誤用(misuse)症候と呼ばれてきた。これは医療によって作り出されるもので医原性(iatrogenic)の症候であり、決してあってはならないものであるが、残念ながら現実にはかなりしばしばみうけられる。

 比較的多く見られる誤用の原因は、不適切な関節可動域訓練である。関節可動域訓練は極めて基本的なリハ医療技術であるが、実は細かな知識や技術を必要とする。正しい方法で行わないと異所性骨化や肩関節では肩関節周囲炎や肩手症候群を起こす。また、足関節背屈訓練で扁平足や舟底足を作ってしまう。その他の誤用症候としては、膝関節をロックすることに対して適切な訓練や装具を検討しないまま歩かせて反張膝を生じてしまったり、不適切な杖や松葉杖の使用法による腋窩の圧迫による腋窩神経麻痺や手根部の圧迫による正中神経麻痺などがある。

 誤用症候は絶対にあってはならないものであり、適切な注意によって防がなければならない。

文献 略

(大川弥生/帝京大学市原病院リハビリテーション科)

 

コンダクティブ・エデュケーション

 集団指導療育、ペトゥー方式、ハンガリー式教育法とも呼ばれている。

 ハンガリーの医師・教育者ペトゥー・アンドラーシュ(Peto Andras)(1893~1967)が、1945年からブダペストで主に脳性麻痺児を対象に適用した。その後発展して国立運動障害児者研究所となり、コンダクター養成大学を併設するようになった。

 この療育法の特徴は、

1)障害の部分に直接アプローチする従来の医学的治療ではなく、障害を含めた一人一人の子どもや成人のパーソナリティ全体に間接的にアプローチする教育だということ。

2)運動面、心理面、言語面などに別々の専門家が関わるのではなく、コンダクターという資格を持つ教育者がすべての面に同時に関わるということ。

3)マン・ツー・マンの関わりよりも、グループを通した間接的な指導によって自立心、意欲、競争、模倣などを利用すること。

4)通園部門もあるが、3歳以上は主に宿泊療育を受け、起床から就寝までの日課の中で、ADL、授業、遊び、運動課題などをコンダクターが指揮している。

5)運動課題は一連の課題と呼ばれ、臥位、座位、立位、歩行などがある。障害の程度・タイプによって様々なリズムが使われ、リズミカルな意図化が行われる。

 なお、日本では枚方市のわらしべ園と北海道大滝村の大滝わらしべ園で村井正直医師が導入している。

(わらしべ園/長見有人)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1994年6月(第80号)52頁

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