用語の解説 市町村障害者生活支援事業 ピープル・ファースト/People First

用語の解説

市町村障害者生活支援事業

 この用語は、障害者プランにより登場した事業の名称である。この事業は平成8年度からスタートした。その目的は、障害者プランにおける7つの視点の第1である「地域で共に生活するために」を実現することである。

 市町村障害者生活支援事業は、在宅で生活している障害者に対し、在宅福祉サービスの利用援助、社会資源の活用や社会生活力を高めるための支援、ピア・カウンセリング、介護相談及び情報の提供等を総合的に行う事業であり、これらを通して、障害者やその家族の地域における生活を支援し、自立と社会参加の促進を図ることをねらいとしている。

 事業の実施主体は市町村であるが、施設・法人等に事業の委託ができ、ソーシャルワーカーが常勤するほか、必要に応じOT・PT、保健婦などの専門職を雇いあげ、ニーズに即したサービスのコーディネートができ、また、夜間・休日等にも利用できる。特色は、公的な事業としての枠を超え、地域で生活する重度・重複障害者の切実なニーズに応えられることを目指している。

 「社会資源を活用するための支援」として、移動支援などの従来型の他、近隣の方に障害者の自宅の台所でお惣菜の調理方法を教えてもらうなど、地域の人たちの協力(共助)をコーディネートするような新たな取り組みが期待されている。この他、障害のある当事者によるピア・カウンセリングも取り入れられたこの事業を、障害者福祉の新たな時代への歩みとしたい。

(三友敬太/厚生省大臣官房障害保健福祉部企画課)

ピープル・ファースト/People First

 この言葉は、まだなじみのないものだが、これには、知的障害をもつ人々の反差別への訴えが表れている。

 その起源は、北欧におけるノーマライゼーションの思想にあるとも言われる。60年代後半までに知的障害者自身による活動や集会が開かれていたが、それを受けて1973年にカナダで当事者による会議が行われた時、参加者の1人が「知恵遅れと呼ばれるより前に、自分たちはまず人間(ピープル・ファースト)として扱われたい」と発言したことに由来している。現在では、それが彼ら自身のグループの名前として、アメリカや英国などで広く使われている。

 このような運動やグループの中心をなす概念は、セルフ・アドボカシーと呼ばれる。これは、一個人の身近な自己決定・自己主張から始まり、ひいては福祉サービスや政治・社会に対する働きかけを含む幅広い概念である。

 同様の意味を持つアドボカシーにわざわざ「セルフ(自分)」をつけているのは、当事者性・主体性を奪われてきたからこそ、ピープル・ファーストの活動を“当事者による”活動であると強く主張しているのであろう。

 近年、ピープル・ファーストのように、知的障害をもつ人々が自発的に集まってグループをつくり、余暇活動や社会的なアピールをしているものが誕生してきている。こうした活動が今後の福祉サービスや社会の状況に大きな影響を及ぼしていくであろう。

(寺本晃久/ピープル・ファーストはなし合おう会)


(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1996年11月(第89号)49頁

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