用語の解説 Technical Aids Rehabilitation Technology Assistive Technology

用語の解説

Technical Aids
Rehabilitation Technology
Assistive Technology


近年、国際会議などでAssistive Techno1ogyという言葉に出会う。略して単にATといわれることもある。障害者の支援のための、「技術」と思って聞いていると「機器」としか解釈できないこともある。一番困るのは日本語に翻訳する場合で、筆者も経験があるが、「支援技術」と訳すと変な日本語になることもある。現在では「福祉機器」と訳している。
 「福祉機器」に対応する英語には、Technical Aids、Rehabilitation Technologyなどがある。これらがAssistive Technologyに代わられようとしている。なお、welfare equipmemtは和製英語であって通用しない。
 Technica1 Aidsは伝統的に使われてきた用語であり、機能障害を補償するための機器を表すが、死語と化しつつある。最も大きい理由は、aidsがエイズ(HIV)とまぎらわしいためである。たとえば、Aids for the B1indからは「盲人のための機器」よりは、「盲人のエイズ患者」を連想する方が多い。RIのICTAが名称をInternational Commission on Technical AidsからInternationa1 Commission on Technology and Accessへと変更したのもこのような理由による。
 Rehabilitation Technologyは国連世界行動計画(1983)において、福祉機器の支給がリハビリテーションサービスの一環として位置付けられたことにはじまる。しかし、Rehabilitationには一定期間に達成すべき過程というニュアンスがあり、障害者が日常的に使用する福祉機器を表すには適当でないという意見が大勢である。
 Assistive Technologyが最初に公式に使われたのは1988年アメリカの「障害者用機器支援法」においてであろう。ここでは、「障害者の身体機能を維持、増進、改善するための機器類ならびにシステム」と定義されている。ここでtechno1ogyが用いられたのは、障害者に提供されるべきものは物体としての機器のみではなく、使用者のニーズに即した処方、適合や利用のための訓練などを含むサービス全体を表現するためである。アメリカでは、機器そのものに限定した場合、assistive deviceという言葉を用いる場合もあるが、このような区別をしない方が一般的である。
 最近、ヨーロッパのHeartプロジェクトでは、「高齢者・障害者のQOLを改善するための機器」と定義している。今後はこれが主流となろう。
 なお、technologyがなぜ機器を表すのかの説明はどの辞書にもなく、欧米の友人達に聞いても納得ゆく説明は得られていない。「福祉機器」も変な日本語であるが、似たようなものと考えればよいのではないかと思っている。

(山内繁/国立身体障害者リハビリテーションセンター研究所長)

 


 

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「リハビリテーション研究」
1998年3月(第94号)39頁

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