リハビリテーション研究(第96号) NO.11 用語の解説 ユニバーサル・デザイン

用語の解説

ユニバーサル・デザイン

 アメリカのデザイナー「ロン・メイス」氏が1970年代には提唱していたとされている。しかし、当時の氏の著作などはなく、これらの定義は、多くの者が独自に展開してわが国にも入ったことが、その概念がはっきりしないといわれる理由である。
 とはいえ、最近では氏の講演などからも、次の点については、おおかたの合意があるものと考えられる。まず、対象は「すべての人を対象とした製品・建築、空間のデザイン」であり、特徴は次のようなものである。
・障壁をつくらないという考えが基本。
・あくまでも概念であり、方法を示唆するものではない。
・目標を数字で表していない。
・概念であるから、規格や法律などにはなじまない。
・多様な人、者に対する適応を目指すために柔軟性が必要。
 そしてその原則は、
・物(空間)を使用するにあたって、誰もが公平な使用ができる。
・またそれは使いやすいものでなければならない。
・誰もがどこでもというように、フレキシブルに使える。
・個人の好みや能力に応じて使える。
・使用は難しくなく簡単で、特別な説明がなくても直感的に使用できる。
・間違いの許容。使用法を間違っても、安全で壊れることがない。
・少ない身体的負担と心理的、肉体的に疲労の少ないこと。
 これらを年齢、能力といった違いに対応できるように、初期のデザイン段階で考慮すれば、一般商品として広まり、結果的に市場が大きくなり、コストタウンとなるという利点があげられる。また、この思想は企業が関心をもつ、デザイン教育の原点として受け入れられる、という社会的効果をむしろ望んでいる。
 ところが、こうした槻念は、実際に物づくりをするデザイナーや設計者を悩ませることになる。これは「ユニバーサル」が原因となって、ある利用者にとっては「不便」なものとなる可能性がある。メーカ-ではある程度の対応をもって「ユニバーサル化」したとして、それから外れるような利用者へのケアがなされなくなる危惧がある。したがって、こうした物を使用できない者は、さらに不便を強いられる少数者となる。
 この解決のためには、「ユニバーサル」だけでは解決しない特別なニードをもつ者がいることを、デザイナーや設計者は認識することである。そして、こうした人々が対応できるように「個別のニーズ」に合わせた機器と、その機器を接続できるインターフェースを用意すべきであろう。
 なお、わが国ではこの用語が「特化した」デザインではなく…という意味で『ポスト「バリアフリー」』として広がった経緯がある.しかし「バリアフリー」自体にも「ユニバーサル・デザイン」の思想は入っていたと考えている。したがって、この2つのことばを分けることはあまり意味のないことと考えている。
  

(入藤後猛/日本大学理工学部建築学科)


主題・副題:

リハビリテーション研究 第96号
 

掲載雑誌名:

ノーマライゼーション・障害者の福祉増刊「リハビリテーション研究 第96号」
 

発行者・出版社:

財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
 

号数・頁数:

96号 52頁
 

発行月日:

西暦 1998年10月20日
 

文献に関する問い合わせ:

財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
電話:03-5273-0601 FAX:03-5273-1523

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