用語の解説 ハートビル法 福祉のまちづくり条例

用語の解説

ハートビル法

本格的な高齢者社会を迎え、高齢者や障害者など身体機能上の制限により日常生活及び社会生活に何等かの不都合を受ける者の自立と社会参加を促進するために、建築物におけるハード面での問題を取り除き、建築物の質を向上させることを目的として、1994年(平成6年)9月に施行された「高齢者、身体障害者等が円滑に利用できる特定建築物の建築の促進に関する法律」をいう。

適用は、病院、劇場、集会場、百貨店など、条文中「特定建築物」と定義されている不特定多数の人が利用するものに対してであり、個々の建築物において適用を受ける場所は、条文中「特定施設」と定義されている利用者が日常的に使用する部分に対してである。具体的には、建築物の出入口および廊下の寸法、扉の仕様、廊下及び階段の表面仕上げ、スロープの勾配や手すり、エレベータの各部寸法及び設備、便所の仕様、駐車場や建築物周囲の敷地内道路の仕様などに対して、高齢者や障害者等が安全にかつ容易に利用できるようにするための基準が示されている。

またこの基準は、配慮する各項目について最低条件を示した「基礎的基準」と、より好ましい条件を示した「誘導的基準」の二段階になっていることを特徴としている。基礎的基準は、高齢者や障害者等が建築物を利用できるようにするための最低限の条件を示していて、誘導的基準は、特段の不便を感じず建築物を利用できるようにする条件を示している。

これら各種配慮は、条文中「特定建築主」と定義される特定建築物を建築しようとする人の努力義務となっていて、強制されるものではない。しかし、計画段階で基礎的基準を満たさない場合は、都道府県知事は特定建築主に対して指導や助言を与えることができる。誘導的基準を満たす場合は、特定建築主は都道府県知事に対して「計画の認定」を申請でき、認定を受けられると、容積率の特例、設備費の補助、税制上の特例、低利融資など各種優遇措置を受けることができる。

(村井裕樹/日本大学大学院理工学研究科・後期課程)

福祉のまちづくり条例

地方自治法に基づく条例で、施行される自治体内における公共的性格を持つ建築物、道路、公園、交通機関等を高齢者や障害者等が支障なく利用できるようにするための統一的基準を定めている。内容は自治体ごとに多少の相違が見られる。しかし、いずれも高齢者や障害者等に配慮された建築物等はすべての人にとって利用しやすいものになるという考えのもと、個々の建築物の点的整備ではなく地域一帯の面的整備を目標としていて、おおむね以下のようになる。

対象は、公共的性格を持つ施設(官公庁、福祉施設、病院、診療所、金融機関、図書館、劇場など)、日常生活で利用する店舗(理美容院、スーパーマーケット、レストランなど)、駐車場、公衆便所、道路、公園、鉄道の駅、バスターミナルなどであり、条例中「一般都市施設」などと定義されている。

整備項目は、出入口、廊下、階段、駐車場スペース、案内表示、視覚障害者用の各種設備などであり、寸法や仕上げをはじめとして各種仕様の基準が示されている。さらに一般都市施設のなかでも、とくに公共性の高い施設や一定規模以上の施設を「特定施設」などと定義し、より細かな配慮を規定している。また、高齢者や障害者等に配慮したバス等車両の整備や住宅の供給など、一般都市施設以外に対する配慮も促している。

これら各種整備は各施設等の所有者に対する努力義務となっていて、基準に適合する場合は知事あるいは市長に対して適合していることの証明を申請することができる。しかし特定施設においては、新設や改修の際、事前に計画の届出が義務づけられていて、知事等は指導や助言を行うことができる。さらに正当な理由なく整備基準に対して著しく不十分な計画であった場合は、必要な措置を勧告することができ、勧告に従わなかった場合はその旨を公表することもできる。

なお、自治体では福祉のまちづくりを推進するために、施設の新設を行う場合の低利融資や、既存施設の改修についての補助などの制度を定めている。

(村井裕樹/日本大学大学院理工学研究科・後期課程)


主題・副題:リハビリテーション研究 第100号

掲載雑誌名:ノーマライゼーション・障害者の福祉増刊「リハビリテーション研究 第100号」

発行者・出版社:財団法人 日本障害者リハビリテーション協会

巻数・頁数:100号 1~64頁

発行月日:西暦 1999年10月1日

文献に関する問い合わせ:
財団法人 日本障害者リハビリテーション協会
〒162-0052 東京都新宿区戸山1-22-1
電話:03-5273-0601 FAX:03-5273-1523

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