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国連世界情報社会サミット(World Summit on the Information Society : WSIS)

オープンフォーラム-先住民族における障害者に対するICTの役割
(Open Forum on Role of ICT for Persons with Disabilities in Indigenous Social Context)

野村美佐子
(財)日本障害者リハビリテーション協会 情報センター次長

項目 内容
備考 2005年9月28日開催 第3回準備委員会会合、国連 ジュネーブ(スイス)の報告

司会のLamine氏、モデレーターのNordstrom氏、河村氏、Nobrega氏の写真

WSISチュニスフェースの第3回準備会議は、2005年の19日から30日にかけて行われましたたがその期間のパラレルイベントとして28日に「先住民族の社会的な状況における障害者に対するICTの役割に関するオープンフォーラム」が開催された。このフォーラムの目的は、障害者と先住民族の問題を解決すること、また活動の連携を行うために共通の問題を明確にすることにありました。

このフォーラムは、WSISの障害者のフォーカルポイントである河村宏氏とチュニジアのチュニスにある障害者の雇用推進の団代、BASMAのMs. Souad Lamineが共同で司会を務めました。また英語、フランス語、そしてスペイン語の同時通訳が可能となり、様々な国の方々が参加することができました。

始めに河村氏からこのフォーラムの目的と形態について説明がありました。また河村氏から最初に障害者コーカスからKicki Nordstr?m氏に、続いて先住民族のコーカスからMalia Nobrega氏にあらかじめお願いしてあり、そのプレゼンをきっかけとして彼らをモデレータとし、参加者と供に討議をすることが述べられました。最終的に期待される結果を次のように設定しました。

  1. 相互理解と更なるネットワーク化
  2. 具体的に共同で行う活動(たとえば防災、ICTデザイン、メンタルヘルス、教育、知的財産権、パブリック・ドメインの情報等の共通の問題解決に関して)

Kiki(キキ) Nordstrom氏は、障害者コーカスを代表して障害者の状況、チュニスの会議時及びその後に予想される成果に関して概説をしました。まず我々は情報、コミュニケーション技術、そして情報の共有を話しているのでそれぞれの言語への翻訳の重要性について語りました。存在する問題を共に考えるためには相互の利益となる政策を討議し、情報を共有するためには共通のつながりが必要であるとしています。

キキは、障害者と先住民族の両方の部分を知っているけれどもお互いを知らなければ、そして日常生活についてどのような差別を受けているのかを話さなければ、理解しあえないと考えています。またそういった問題は文化に関わってきますが、言語を超えた問題になります。ろう者は、ろうの文化があるといわれていますが、キキ自身は先住民族の社会に身をおいていますが、そのことはあまりわからなく、障害者運動の家族の中にいると言っています。文化というのは深いものがありますが、ここではアイデンティティについて話をしています。お互いに理解をし、共有し、何を必要としているのか、あるいは何を期待しているのかをこの準備会議を通して認識していくことを望んでいます。キキは次のように語りました。

「我々は、深刻な差別に直面しますが、言語のグループや文化のグループそしてアイデンティティを超え、人権条約を超えたものであり、その差別は家族、日常生活、児童、若者、成人、そして高齢者に入り込んできます。またジェンダーや民族性などにも関わってきます。そのような複雑な社会、複雑な状況、人間の複雑な部分について公式文書に反映させなければなりません。目標は人権条約を人権の観点から障害者にとっても好ましい内容で解釈をしていくことです。そのためには自分自身が差別を受けることでもっと理解深まる、つまり前向きな差別ついて語ることだとしています。

成功に導くためにはすべての人が平等に生まれ、均等な機会そして権利があるという基本的人権に着目しなければなりません。しかし現実は実施されていません。公式の文書の中で平等に権利を持つものとして書かれております。たまたま障害者であるゆえに必要な情報・コミュニケーション技術の適用する費用について政府や企業がカバーしてもらえれば、貧困や社会から阻害されることがないと考えます。この分野については、障害者も先住民族にも関わってきます。貧困の撲滅はミレニアム・ディベロプメントゴールの一つですが、障害者は対象者になっていません。しかし我々は明らかに対象者なのです。決定には参加できない状況にありますが、我々は、障害者運動で次のような言葉を使用しておりますので、ぜひ先住民族の方々にも共有してほしい言葉です。

「Nothing About us, without us」

我々のことは我々で話さなければ何も解決しません。グローバルな社会において前進するために我々のニーズを自ら話すことができます。障害者であることを悔やむ必要がありません。障害者のない世界なんて不健康な世界です。障害者を取り除こうとする人もおりますし、社会の多くの人に望まれた存在ではありませんし、また政策上や国内の経済の負担となると考えられておりますが、そういったことに対して共に戦おうではありませんか。」

次にMaria (マリア)Noberga氏がプレゼンをいたしました。マリァはハワイ出身で現在はハワイ大学に所属があり、アメリカと提携をした太平洋諸島を回り、「Pacific Voice」と呼ばれるプロジェクトの事業に関わっております。そのための技術は太平洋諸島への声の技術として届けられ、このプロジェクトにより障害者も先住民族も声を出す権利が与えられました。また指導者に技術研修を行うことでマリアたちが去った後も、地域の人々は、声をあげることが可能な地域でのメディア的な存在となることができます。

マリアは知識の共有、知識と情報の提供は情報社会の基本的要素であると考えています。しかし先住民族は資格が与えられたり、認定されず、伝統的な知識をパブリックドメインと呼ばれることころに公開し、その所有権を失ってしまうことが最重要な問題として現れれてくると述べています。先住民族の知識において、西洋のパブリックドメインの概念でいけば、すべての情報と知識が公開されるやいなや考慮され、さもなければ経済やその他の目的で共有され、自由に使用することができます。ICTを先住民族の文化と言語の脅威であると考える人もいますが、マリアは適用が可能なツールと考えており、ICTの適用は学校教育に先住民族の文化と言語を教える状況にしてくれると思っています。更に長距離教育は辺鄙な先住民族が住む地域に文化的な教育を可能にする道具となります。また先住民族にとって他の人々に国際文化交流の理解を推進してもらい、ICTを通して偏見をなくすために文化や言語を教えると言うニーズもあります。先住民族に対する人種差別に対抗するツールとしてのICTの可能性もあります。これについては間違った情報に対処すること、また国際文化交流による理解にむけての活動に関して 2つ可能なことがあります。先住民族によるメディアの設立と先住民族以外の世界に向けての先住民族に関する教育用のコンテンツ制作です。先住民族のメディアは先住民族の観点から偏見のある情報に対抗する手段となり、先住民族の情報を提供する重要な手段となります。

先住民族、あるいは障害者のロールモデルをビデオレターや短い映画やCDを通して見ることができます。それらを見ることでサポートグループが作られていきます。またインクルージョンへの一番の障害は、障害者や先住民族に対する一般の人の態度です。そのことを乗り越えられればすべての人がコミュニティの一員となります。

マリアのプレゼンはハワイの学生グループとアメリカンサモアの学生との長距離教育についてのビデオ・テレコンファレンスの部分が含まれていました。このビデオは、2つの文化をつなぐためにどのように技術を利用するかについて知ることができました。また別のビデオはアメリカンサモアで製作され、現地の言葉と手話が使われています。このことは、技術を利用することで現地の言葉がわかる家族と情報を共有し、手話を学べることをわからせてくれます。

マリアのプロジェクトは、太平洋諸島にICTの機器を持ちこみ、インターネットがないところにはウェブサイトの情報をCDにいれ、コンピューターで見てもらうという活動で、マリアはその体験について話をしてくれました。

キキは、良い事例となると思っていることとして、ニューヨークの国連で行われる障害者の権利条約の起草作業において、キキを含む障害者及び関係者が政府の作業をリードしていることを述べました。先住民族についてのテキストも提案しましたが、多くの国から反対されているそうです。しかしここでは、障害者や先住民族を単に社会的な弱者と呼ばず、社会における少数派として認めるよう政府に呼びかけていくことを提案しました。また国連のウェブサイトが視覚障害者にとってアクセシブルでないことが述べられました。それと反対にアクセシブルな技術としてDAISYシステムを紹介し、ICT利用により社会に参加することができるとキキは述べ、そのために多大な貢献をしている河村氏に感謝の言葉がありました。すべての人の要求を全部満たすことができませんが、できるだけすべて人にアクセシブルにするようにしなければならない、そのためには、技術がバリアになるのではなく、人間の心と社会の構造がアクセシビリティの制限をしているのでそこをなくさなければならないということを最後にキキは訴えました。

ナイジーリアの代表者がキキとマリアのプレゼンテーションに感謝の意を表し、グラスルーツレベルの運動と連携について述べました。キキがその話を受けて自分たちの活動が多くの方のサポートを必要としていることを述べました。

チュニスのConchita氏は、かつてILOで働いていたが、最初はなかった障害のセクションを設立をした経由があり、やはりWSISの公式文書で障害者をメインストリーム化することが大切だという発言をしました。しかし障害者と先住民族を一緒にすることについては、すでに国連の中には先住民族の「 Paramount Forum」あるので問題があると言います。別に総称して「Vulnerable」という言葉を使っても良いのではという発言もありました。

ここで河村氏より第1および第2言語が第書記文字のない人々に役に立つ技術としてマルチメディアのデモンストレーションを行いました。DAISYは視覚障害者のみならず「印刷字の読めない障害を持つ人々」が同時に情報を共有することができるということを説明しました。コンテンツはスウェーデン語による漫画で説明をする「子供の権利条約」でした。このマルチメディアを製作するには、編集ソフトが必要ですがそのソフトは開発途上国に対しては日本障害者リハビリテーション協会から無料で配布が可能であることも付け加えられました。

そのプレゼンに対して視覚障害者が見えないのではという声に対してキキは、絵は見えないけれども音声があり、スウェーデン語なので内容が理解できること、マルチメディアであることにより知的障害者など様々な障害に対応できることは良いことだと述べました。

キキより、障害者と先住民族がお互いに共通することが多く、すでに共同で行っていることもあるが今後討議すべき共通の話題について提案をしてほしいことを参加者に伝えて広く意見を聞きました。

BASMAのSouad Lamine氏より、チュニジアのチュニスで開催される第2回「グローバルフォーラム」で提案を行うセッションを行ってはという話がでて、その際の議題はコミュニケーションとメディアではどうかという提案がなされました。

マリアから先住民族の「Paramount Forum」は一回しか出たことがないが、コミュニティには障害者がおり、先住民族にも障害者がいるので、フォーラムの討議でも障害者を含める必要があると意見がでました。

また河村氏より次のような意見が述べられました。

「アメリカでは、Bush大統領が高校までの教科書のアクセシビリティを規定する法案に作成したことで出版社がDAISYフォーマットでアクセシブルなテキストファイルを提出しなければならなくなるという話題が提供されました。また彼は、現在、10年間の行動計画を考えるWSISプロセスの中にいますが、2015年までに我々の活動の目標を設定しなければいけませんし、それぞれ言語での教科書へアクセスができない人たちがいるとしたらこの10年間のなかで着実に勝ち取っていくための過程を設定するべきです。10年間でできないかもしれませんがすべての子供たちや学生が社会参加をするために教育において基本的な情報を得る必要があり、そのための戦略をたてなければなりません。ICTは目標に到達するための重要な役割を担っています。我々のビジョンの中に社会から取り残された人たちも入れなければなりませんので、このようなアクセシビリティも10年間の行動計画の実施を考えるときに含めるという我々の重要な役割があります。そのためにイニシアティブをとる人が必要であり、地域的にも、国内的にも、国際的にもその人を中心とした連携を呼びかけていかなければなりません。」

河村氏の話を受けてキキが、先住民族を含めた問題についてチュニスの障害フォーラムで話すスピーカを捜すことに対して参加者から合意を得ました。チュニスの視覚障害者団体のシャカール氏は、障害者および先住民族に関わる共通の情報およびコミュニケーションに焦点を当てて話してもらってはどうかという意見をいただきました。

WSISの公式文書の起草に関わるグループに属している人が良いという意見も出ました。先住民族のコーカスからスピーカーを出したほうが良いという意見もあり、今回のモデレータであるマリアが一番の候補者となりました。

マリアは障害フォーラムに出席するための資金がでるかどうかまだはっきりしないが出席できれば、「Pacific Voice」のプロジェクトを紹介したいとしており、そのなかで有効事例を参加者と共有したいという抱負を語りました。

ファンドに関しては、河村氏よりチュニスで開催される第2回障害に関するグローバルフォーラムがDAISYコンソーシアムとBASMAの共催であるため、ファンドができないスピーカーに関しては、主催者側がファンドをするということが明確になりました。

参加者の写真