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第3回インターネット・ガバナンス・フォーラム(IGF)2008

テーマ:「次の10億人」への到達
マルチリンガル インターネットの実現に向けて

"Reaching the Next Billion(s)"
Realizing a Multilingual Internet

2008年12月3日
インド ハイデラーバード
河村宏
DAISYコンソーシアム会長

ご紹介ありがとうございます、議長。そして、皆様おはようございます。

 DAISYコンソーシアムは、印刷物を読めない障害がある方のニーズにこたえるために設立されました。このような方の中には、視覚障害者やディスレクシアの方、その他の認知障害を抱えている方がいらっしゃいます。けれども、DAISYコンソーシアムの活動の中心となっているのは、オープンで非独自仕様の、相互運用可能で無料の、世界中で共有できる標準規格の開発です。現在DAISYコンソーシアムは、動画に適用でき、手話のサポートも可能で、知的障害者のニーズも満たすことができる、最新の標準規格を開発している段階です。

 DAISY標準規格は、スイスの法律に従って設立された国際的な非営利団体であるDAISYコンソーシアムによって維持されています。DAISYコンソーシアムは、DAISY技術によって解決すべき重要な国際問題に的を絞り、取り組んでいます。たとえば、第一に、先住民族の学校も含め、世界各地の教室で使用される教科書の問題があります。そして第二に、災害避難訓練マニュアルのような人間の安全保障にかかわる情報の問題もあげられます。私たちは、多くの国々を襲ったインド洋津波の際、大変悲しい経験をしました。この津波では、インド洋を取り巻く国々の住民だけでなく、多くの外国人旅行者も亡くなりました。ですから、各地域での避難マニュアルがきわめて重要であり、それは初期警告システムと密接に結びついたものでなければなりません。しかし、これまでのところ、この問題を解決できそうな技術は、DAISY技術をおいてほかにありません。また、HIV AIDSも、知識ベースのアプローチで取り組むべき、非常に重要な国際課題です。AIDSとHIVへの対処方法を誰もが知っていれば、現在起こっている惨事は最小限に抑えられるのではないでしょうか。

 もう一つ、多言語環境におけるDAISYの効果が期待できる分野として、コンピューターの世界があげられるでしょう。なぜならDAISYこそが、視覚・聴覚障害を含む身体障害者、あるいは認知障害者や精神障害者などのあらゆる障害者の特別なニーズを満たせる技術だからです。これらの障害者のニーズはきわめて独特です。その現実世界でのニーズが、真の革新を生み出すのです。音声と画像、そしてテキストの同期によって、一つのチャンネルに対するアクセスの柔軟性が大いに高められるのは確かです。この結果、見ることができる人、聞くことができる人、そしてテキストを読むことができる人が、何でも同じタイミングで楽しめるわけです。点字に触れることしかできない人でも、ほかの人と同じタイミングで点字を読み、情報を共有することができます。手話やシンボルに頼っている人も、テキストやほかのメディアと同期しているプレゼンテーションを、ほかの人と同じタイミングで利用することで、知識や情報を共有できます。

 これまでのメディアのパラダイムでは、一部の人々が軽視されてきました。ビデオは内容が非常に豊富ですが、画面を見ることができない人にとっては、何が起きているのか理解することはほとんど不可能です。また音声は、聴覚障害者のためにキャプションや手話通訳が必要です。そして、知的障害者にとっては、シンボルが内容の理解に最も重要となっています。

DAISYは一つの標準的なフォーマットの中に、すべてを盛り込むことができます。このように、DAISYは読む方法として最も効果的であり、出版手段として最も優れていると考えられます。こうしてDAISYは、インクルーシブなインターネットとインクルーシブな出版の実現に向けて、社会のすべての人の参加を可能にする新たなパラダイムを創造します。

 最後となりましたが、私は民主主義社会の基本原則を強調したいと思います。それは、自由意思に基づいた、情報を十分に提供されたうえでの事前の合意で、将来のインターネット・ガバナンスの基礎とするべき原則です。これは、国連障害者権利条約に明記されておりますが、非常に基本的な人権でもあります。この原則に従い、インターネット社会やインターネットから疎外されてきた人々を参加させなければなりません。私はDAISYの技術とDAISYコンソーシアムがこの目的のために貢献していくよう、願っております。

ご静聴ありがとうございました。