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国連世界情報社会サミット(World Summit on the Information Society : WSIS)

国連障害者権利条約 著作権と障害

キキ・ノードストローム(Kicki Nordstrom)
世界盲人連合(WBU)
http://www.v2020.org/members/wbu.asp

項目 内容
会議名 WSIS フェーズ2 サイドイベント:障害者コーカス主催「第2回情報社会における障害者のグローバル・フォーラム」
発表年月 2005年11月15日、チュニス(チュニジア)
備考 英語版:原文

講演をしているキキ氏の写真

視覚障害者にとって非常に重要なテーマである、著作権問題についてお話しす る機会を与えてくださり、ありがとうございます。

まず、現在ニューヨークにおいて作成中の障害者権利条約の草案の中に、著作 権保護の例外を認める内容を盛り込もうという動きがあり、世界盲人連合として は満足しているということをお伝えしたいと思います。この条約の草案作成には 私たち世界盲人連合も参加し、力を貸してきました。

私がこの場をお借りしてお話しするのは、読むことに関する障害がある人々の ために著作権保護の例外を認めることについて、皆さんに簡単に説明をするため です。

これによって、WSISに参加している各国政府とNGOに、ICTにまつわるやや特別 な部分であるこの著作権の免除という点の重要性や社会性を認識していただく手 助けをしたいと考えております。

読むことに関する障害があると、従来の方法によって印刷された作品を利用す ることが難しくなります。この障害に該当するタイプには、視覚障害者、盲ろう 者、学習障害者、自閉症者、知的障害者、ディスレクシアという障害をもつ人々 、身体的な理由で本を持つことができない人々などがあげられますが、しかしこ れらに限られるわけではありません。

読むことに関する障害がある人が、小説や報告書などの出版された情報を利用 するには、その文献を音声、点字、読みやすいフォーマット或いはその他のアク セシブルなフォーマットに変換しなければなりません。

障害者はそのような文献のために喜んで正規の価格を支払いますし、特別な便 宜を図ってほしいと主張しているわけではありません。

しかし、多くの国々において現行の著作権法では、いかなるフォーマットにつ いても作品のコピーを禁止しているか、或いは文献を別のフォーマットにコピー することに関してまったく規定を設けていないのです。そのような法律は、文献 を読むために別のフォーマットに変換する必要がある、読むことに関する障害が ある人々を差別しているのです。

たとえば読むことに関する障害がある子供たちは、クラスメートと同じ内容で フォーマットが異なる教科書を入手することができなくなり、更には教科書をま ったく入手できなくなってしまうでしょう。

これは、世界のすべての児童が2015年までに一般義務教育を受けることができ るようにするという、国連の「すべての人のための教育」(EFA)プログラムと矛 盾します。また、2020年までに達成されなければならない8つの国連ミレニアム 目標(MDG)にも矛盾しています。

1948年の世界人権宣言第19条では、次のように述べられています。

「すべて人は、意見及び表現の自由に対する権利を有する。この権利は、干渉 を受けることなく自己の意見をもつ自由並びにあらゆる手段により、また、国境 を越えると否とにかかわりなく、情報及び思想を求め、受け、及び伝える自由を 含む。」

もし著作権保護を理由に情報を得ることができない人々がいたら、どうやって この基本的人権を達成することができるでしょうか?

障害者権利条約の草案の中で、国際障害コーカス(IDC)は、締約国が国内の 著作権法において、読むことに関する障害がある人々のために例外を設けること を求めています。

そのような例外によって、読むことに関する障害がある人々は法律に反するこ となく、出版された文献を購入し、それをアクセシブルな形に翻訳することがで きるようになります。

更に、既にアクセシブルなフォーマットの文献を、読むことに関する障害があ る人が利用できる別の状態に変換することもできるようになるでしょう。これは 重要なことです。というのは、多くの国々で本や文献をアクセシブルにする設備 が不足しているので、このようにアクセシブルなフォーマットになっている文献 を受け取ることができれば便利ですし、また骨の折れる作業を何度もせずにすむ からです。

最後に、IDCの草案文書では、著作権の侵害を防ぐために「技術的保護手段」 を施した電子出版による文献は、読むことに関する障害がある人々にとってアク セシブルな方法で作成されなければならないとしています。

その一例として、技術的保護手段によって保護されていることが多いPDFファ イルでは、しばしばテキスト読み上げ機能がブロックされていることがあげられ ます。

IDCが提案する草案文書では、そのようなファイルは、読むことに関する障害 がある人々のアクセスを妨げないような方法で作成されなければならないとして います。

世界中で数百万人もの読むことに関する障害がある人々が、現在、ほかの人な ら自由に利用できる出版された本や文献にアクセスできずにいます。そのため、 世界盲人連合は各国政府に対し、IDCが提案する著作権に関する草案を採用するよ う強く求めます。これは読むことに関する障害がある人々が、娯楽や情報収集、 また教育のために読む権利を確実に行使できるようにするためなのです。

ありがとうございました。