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ひと目でわかる障害関連情報:アジア太平洋28の国と地域のプロフィール

主な7つの視点による本書の概要

本項では、本調査により得られた情報を以下7つの視点により要約する。

1)人間開発報告書の指数

人間開発指数は、3カ国(アフガニスタン、クック諸島、キリバス)を除くすべての国と地域から提供された。25の国と地域のうち、5カ国(オーストラリア、日本、香港特別行政区、中国、シンガポール、韓国の順)は「人間開発高位国」群に入る一方、大多数の20カ国(マレーシア、タイ、カザフスタン、フィリピン、中国、フィジー、トルコ、モルディブ、ベトナム、インドネシア、モンゴル、インド、ソロモン諸島、カンボジア、ラオス、ブータン、パキスタン、ネパール、バングラデシュ、東ティモールの順)は、「人間開発中位国」群に属している。

2)人口統計

グラフ:総人口に占める障害者の割合
(訳者注―国名:左から)

オーストラリア 20.0
トルコ 12.3
ラオス人民民主共和国 8.0
ベトナム 6.4
バングラデシュ 5.6
中国 5.0
日本 5.0
韓国 4.6
香港特別行政区 4.0
ソロモン諸島 3.5
ブータン 3.5
モンゴル 3.5
モルディブ 3.4
シンガポール 3.0
カザフスタン 3.0
パキスタン 2.5
カンボジア 2.4
インド 2.1
タイ 1.7
ネパール 1.6
フィリピン 1.2
インドネシア 1.0
マレーシア 1.0
クック諸島 0.7

さまざまな障害者比率

28の国と地域のうち、24カ国・地域から障害者の割合に関するデータの提供があった。グラフから分かるように、比率は0.7%から20%までと差異がある。この知見は、障害データについてたびたび指摘される分析を裏付けるものである。障害者比率は国によって大きく異なるが、それは障害者人口にそれほどの差があるからではなく、国によって障害の定義、調査方法、データ収集能力が異なるからである(「Box」参照)。

従来の医学的アプローチによる定義

28の国と地域のうち、24カ国・地域が障害の定義または障害者の定義のいずれかを提供した(「総括表」参照)。障害に関してさまざまな表現、記述方法、分類方法が見られるものの、ほぼすべての定義は、障害を能力の制限、限定および/または欠如または喪失、および/または正常な行動の欠如または喪失と述べており、やはり障害の定義についてたびたび指摘されるように、提供される定義の多くは従来の医学的アプローチに基づくものであるとの分析を裏付けている。

4つの機能障害

機能障害および制限の種別について回答を寄せた国・地域のうち、ほぼすべてが身体的、視力(知覚)、聴力、知的障害という側面を取り上げている一方、心理社会的かつ/または不可視性の障害(慢性疾患など)、重複障害、言語障害、発達障害はそれほどとりあげられていなかった。

専門用語と翻訳―「精神的(mental)」の解釈と用法

心理社会的障害(psycho-social disabilities)の記述には、「精神病(mental illness)」(オーストラリア)、「精神保健上の問題(mental health problems)」(キリバス)、「精神病的障害(psychiatric disorder)」(モンゴル)など、さまざまな表現がある。また、知的障害(intellectual disabilities)の記述についても、「学習または理解の困難(difficulty in learning or understanding)」(オーストラリア)、「精神的ハンディキャップ(mental handicap)」(香港)、「知的障害(intellectual disability)」(日本)、「精神発達遅滞(mental retardation)」(韓国)など、さまざまな表現がある。

「精神障害(mental disability)」は、心理社会的障害を指す(日本、韓国)か、知的障害を指す(バングラデシュ)か、場合によって異なる意味合いで用いられているように見受けられる。しかし、これ以外の国では、「精神的(mental)」という語が心理社会的障害と知的障害のどちらかを指しているか、明確にはされていない。

法の意図にあわせた定義

法の意図にあわせた定義を提供した国と地域もみられた。香港特別行政区およびオーストラリアである。香港特別行政区では、目的によって3通りの定義がある:障害者登録用の定義、調査用の定義、ならびに差別禁止法に沿った定義である。この定義によれば過去には存在したがすでに消失した障害のある人、および障害のある人の関係者も障害者の中に含まれる。

雇用および教育へのアクセスに関するデータを備えている国や地域は少ない

9の国と地域から、障害者の就業率に関するデータが提供された。「障害者」、「経済活動に従事している」、「雇用」の解釈ならびに就業率の調査方法は9カ国間で異なるものの、最高は韓国の89.4%に対し、最低はモンゴルの26.4%である。4カ国からは、比較対照として全般的な就業率が提供され、障害者の就業率よりも高率であることを示している。

障害者の教育へのアクセスに関するデータは、7カ国から提供された。就業率に関するデータと同様に、「就学児童」、「学校」の解釈ならびに就学率の調査方法は4カ国間で異なっている。最高は韓国の83.6%、最低はモンゴルの2%である。

3)制度的枠組み

多くの国が複数の省庁からなる機関を備えている。

28の国と地域はいずれも、国内調整機関か担当部署のいずれかを備えている(「総括表」参照)。複数の省庁からなる機関を備えていると明言している国が12あるのに対し、アフガニスタンなどは障害問題に対応するのは単一省庁である。バングラデシュでは、政府および障害者を含むNGOからなる17の多部門のメンバーで構成される「国内調整委員会(National Coordinating Committee)」が設置されており、国内64の各県にある県レベルの「障害委員会」がその活動を支えている。

4)法制・政策の枠組み

多くの国が障害条項を憲法および障害に関する法律または計画のいずれかに盛り込んでいる。

自国憲法が障害について具体的に言及しているとの情報を提供した国が16あった。4カ国は、機会均等、不差別、バリア除去の保障という文脈で言及している。

包括的障害者法があると回答した国は14あった。また、12の国と地域には、障害に関する国内行動計画がある。そのうち、6つの国と地域は包括的障害者法と行動計画の両方を備えている。カンボジア、マレーシア、東ティモール、ベトナム、アフガニスタン、バングラデシュ、インド、トルコ、フィジーの9カ国は、行動計画を現在策定中である。

障害者差別禁止法

障害者差別禁止法があると報告したのは5カ国・地域であった。この数は、「国連障害者の権利条約」が国レベルで適用されるようになると更に増加すると見込まれる。

5)インクルーシブな社会の促進に向けた国内の取り組み

多くの国と地域には割当雇用制度、アクセシビリティ基準および標準手話がある。

障害者の割当雇用制度があると報告した国は15あった。15カ国のうち、12カ国から割当雇用比率に関する情報が提供された。割当雇用比率は1~4%の開きがある。フィジーおよび東ティモールは、割当雇用制度を現在策定中である(「総括表」参照)。

アクセシビリティ基準があるのは18の国と地域、標準手話があるのは16カ国である(「総括表」参照)。

6)財政面の取り組み

社会開発目的の支出または障害関連目的の国家予算の比率または総額に関する情報を提供したのは7カ国あった。国内調整機関への年間予算配分に関する情報は、9カ国から提供された。

7)地域的・国際的政策枠組みへの取り組み

28の国と地域のうち、カザフスタンを除く各国が「アジア太平洋障害者の十年(1993~2002、2003~2012)に向けたESCAPアジア太平洋地域の障害者の完全参加と平等に関する宣言」の署名国である。

ILO第159号条約「障害者の職業リハビリテーションおよび雇用に関する条約」を批准しているのは9カ国である。