幼児の集団指導-新しい療育の実践-
原理 | 関係枠 | 原理と関係枠との関係内容 | |
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1 | 関係連帯性の原理 | ① 自己関係 ② 人関係 ③ 物関係 ④ 集団関係 ⑤ 状況関係 |
関係的に存在する人間の立場を明確にまる基本概念。関係的に成立する状況(関係状況)において、関係的に構成する単位を、自己、人、物および集団、状況とし、特にどの関係が強調されているかによって、①自己関係、②人関係、③物関係、④集団関係、⑤状況関係が把握される。(全体状況が強調されるときは、対集団関係、対状況関係として把握される)。 |
2 | かかわりの原理 | ① 内在 ② 内接 ③ 按在 ④ 外接 ⑤ 外在 |
関係的に成立する状況に、どのように位置づいて(かかわって)関係状況を担っているかを示す原理(関係構造を明確にする原理)、①関係に入りこんでいる。(演者的かかわり方)。②関係を内側から担っている。(補助自我的かかわり方)。③関係の内と外とを統合的に担っている。-内在的超越、超越的内在を可能にする担い方-(監督的かかわり方)。④関係を外側から担っている。(観客的かかわり方)。⑤関係から隔離しているあり方(舞台的かかわり方)、などがある。 |
3 | 可能性の原理 | ① 自発性 ② 創造性 ③ 生産性 |
関係的存在は、関係の変化にかかわることによって発展する。そのかかわり方の可能性には、①内在的かかわり方から内接的かかわり方への方向に変化する、②内接的かかわり方から接在的かかわり方への方向に変化する、③接在的かかわり方が展開する、などがある。 |
4 | 三者関係の原理 | ① 一者関係 ② 二者関係 ③ 三者関係 ④ 多者関係 ⑤ 統合関係 |
人間関係の基本的な次元における類型的把握。その把握の仕方には、①人間関係を自己関係的に把握する型-人間関係を自己(自己に成立する独自の世界)に関してとらえる、②人間関係を他者関係的に把握する型、③人間関係を「間」関係的に把握する型、④人間関係を網状的に把握する型、⑤人間関係を統合的に把握する型、などがある。 |
5 | 関係価値性の原理 | ① 実存的 ② 現象的 ③ 関係的 |
関係状況の基盤の性質にかんする原理。 ① 一回性・絶対的価値性。 ② 多様性・多価値性。 ③ 状況性・相対的価値性。 |
6 | 行為性の原理 | ① 情緒 ② 認識 ③ 行為 |
関係的存在が、関係的状況へかかわる表現活動の原理。状況体験を、①心情で表現しながらかかわる。②思惟で表現しながらかかわる。③ふるまいで表現しながらかかわる。 |
7 | 役割性の原理 | ① 演者的 ② 補助自我的 ③ 監督的 ④ 観客的 ⑤ 舞台的 |
関係的状況における人の関係的なかかわり方を示す類型、①状況に、ふるまいながらかかわる。②状況を明確化したり、人と人との媒介的役をとりながらかかわる。③場面(状況)設定、場面転換をはかりながらかかわる。④状況を見たり眺めたりしながらかかわる。⑤状況の展開をそのままにあらしめている。 |
8 | 集団性の原理 | ① 個人 ② 集団 ③ 社会 |
関係は集団において具現化される。集団は個人と、社会に介在し、集団の成立発展は、個人の発展を導き、同時に社会の発展に関与する。 |
9 | 相即性の原理 | ① 即図性 ② 即地性 ③ 相即性 |
関係的に成立している状況において、「目立つもの」と「目立たせているもの(目立つものを支えているもの)」との関係の仕方にかんする原理。①「目立つもの」に即して明確にする。②「目立たぬもの」を「目立つもの」との関係で明確にする。③「目立つもの」と「目立たせているもの」との関係を明確にする。 |
10 | 相対的独立の原理 | ① 即在 ② 並立 ③ 共存 |
関係状況を構成する単位としての人、物、自己は、関係的に存在しながらも、相互に独白の固有性を維持して機能する。その独立の仕方には、①即して存在する(内接的に存在する)②対して存在する(外接的に存在する)。③接して(交叉して)存在する(接在的に存在する)などがある。 |
11 | 間性の原理 | ① 媒介関係 ② 保留関係 ③ 包含関係 |
関係状況において生起している事象と、それを成立させている事象との「間」的性格を明確にしたり、事象と事象の関係を発展させる原理。①事象と事象の関係を発展させる(新しい事象の形成。創造活動を促進する。)②事象と事象のそれぞれを明確にする。③事象と事象を包んでいる地盤との関係を明確にする。 |
12 | 可変性の原理 | ① 固定性 ② 可動性 ③ 律動性 |
関係的存在は、関係の変化に伴って変容する。その変化の仕方には、①関係の変化が生ずる中で、固有性が維持される、②関係の変化に即して固有性が変容する、③関係の発展的変化と共に固有性が変化し機能する、などがある。 |
13 | 過程性の原理 | ① 動機 ② 経過 ③ 結果 |
関係における事象の過程を明確にする原理。人間活動、事物の運動の①契機、②過程、③成果の一連の関連的変化を明確にする原理。 |
14 | 関係具現化の原理 | ① 理論的(理性的) ② 実践的(情意的) ③ 技法的(判断的・操作的) |
関係状況に成立する事実や人のかかわり方は、その実際的活動において発展する、〈実践〉。発展は、原理的基盤に基づくことによってもたらされる、〈理論〉。効果的な発展は、関係操作の方法が明確化されることによる、〈技法〉。 |
15 | 肯定性の原理 | ① 受容 ② 容授 ③ 受授 |
人間の存在の仕方を、状況において、今、ここで活動している(かかわっている)あり方として、肯定的にとらえる原理。そのとらえ方には、①受け入れる、受け継ぐ、②受けとめる(受け流す)、③受けこたえる、などがある。 |
16 | 関係認識の原理 | ① 一般的(標準的) ② 特殊的(類型的) ③ 個別的(事例的) |
関係状況の認識の型を明らかにする原理。 ①関係状況における一般性・共通性を認識する型。 ②関係状況における特殊性・類同性を認識する型。 ③関係状況における個別性・独自性を認識する型。 |
17 | 関係展開の原理 | ① 停滞 ② 維持 ③ 変容 ④ 充足 ⑤ 発展 |
関係的に成立する事象(または関係状況)は、動き、変化する。その変化をもたらす契機は主として人間活動による。関係発展の形態には、①静止形態、②持続形態、③変化形態、④展開形態、⑤促進形態などがある。 |
18 | 影響性の原理 | ① 点的影響 ② 線的影響 ③ 面的影響 ④ 立体的影響 ⑤ 状況的影響 |
関係状況における関係的行為・活動は、そのもののみの行為・活動にとどまらず、他に影響を与え、拡大・発展する可能性をもつ、その影響の与え方として、①関係の局所的内面化・深化的影響、②関係における局所的行為・活動が、他の局所のとり入れられて、影響する。③関係における局所と、他の局所との相互行為・活動が、別の局所へとり入れられる。④関係における局所的行為・活動が、場面の全体的行為活動となって、(そこに新しさが成立して)影響する。⑤全体状況への影響、などがある。 |
19 | 操作性の原理 | ① 関係体験 ② 関係認識・洞察 ③ 関係操作 |
関係状況に存在し、今、ここでの関係活動を体験し〈関係体験〉、それを自覚して、関係発展の方向を見通し予測し〈関係認識・洞察〉、関係状況にかかわって状況の変化をもたらす〈関係操作〉。 |
20 | 変革性の原理 | ① 適応 ② 変革 ③ 創造 |
関係的に存在している個人が、関係状況にかかわりながら、どう関係を体制化・構造化・体系化していくか。その体系化を明確にする原理。①関係状況に順応しながら現体系を維持する。②関係状況の発展方向性を示しながら、現体系を革新する。①関係状況に新しい可能性を成立させながら、現体系を発展させる。 |
21 | 統合性の原理 | ① 総合 ② 融合 ③ 統合 |
関係的に成立している状況においては、分化し、生起している事象・領域、思想・活動などが、それぞれ、どのように位置づき、関連し、体系化するかの過程を明確にする原理。①それぞれを全体の部分として位置づける(相互の差位をそのままに全体をとり上げて位置づける)、②それぞれを関連させて一つにまとめる、③差異を 関係的に生かし、共通領域を明確にしながら位置づける、などがある。 |
22 | 未来志向性の原理 | ① 過去 ② 現在 ③ 未来 |
関係的に成立し、変化する状況の時相のどこにかかわることが、人間活動の発展をもたらすかを明確にする原理。そのかかわり方には、 ①今、ここに、過去の活動を位置づけてかかわる。 ②今、ここに、現在の活動を位置づけてかかわる。 ③今、ここに、未来の活動を位置づけてかかわる、などがある。 |
23 | 関係発展の原理 | ① 成立 ② 展開 ③ 発展 |
関係の発展は上述の原理の成立・展開の経過において示される。その関係図は、表3-2に、示している。 |
注1:本表の作成:情緒研究会*松村康平・佐藤啓子〈1973.7.2、作成〉(1977.2.23、記載順変更、一部追加)
注2:本表に示された原理は、1973年7月現在までに発見され、実践されているものを跡づけたものであり、今後、さらに、新しく発見され、体系化されている途上にある。(4⑤、21③は追加のもの)
*・情緒研究会は、お茶の水女子大学児童臨床研究室において、1969年1月に発足、同年2月まで活動が続けられた研究会である、(その成果は、「日本の幼児の精神発達」V、日本保育学会著、フレーベル館に掲載されている)
・研究会のメンバーは、松村康平、北原歌子、一柳(松原)和子、松島(千田)敏子、三宅(佐藤)啓子である。
主題・副題:幼児の集団指導-新しい療育の実践- 38頁~41頁