第5章 全体のまとめ

 本調査は、①個別支援会議のあり方を総合的に評価する尺度を開発し、個別支援会議の運営指標を明らかにすること、および②開発した評価尺度により各地域の個別支援会議の実情を把握し、その課題を明らかにすることを目的としたものである。
 本調査でいう「個別支援会議」とは、「複数のニーズを持つ事例の課題解決について、多職種が協働して支援の目標や計画を議論する過程であり、ケアマネジメントの展開点として機能する場」をさし、個別支援会議の構成要素として「構造」「内容」「結果」「技術」を想定した。「構造」とは個別支援会議を時間的・物理的・空間的に規定する要素をさし、個別支援会議の中で議論される具体的な「内容」、およびその成果物としての「結果」、結果を導き出すための「技術」を想定したものである。

 調査は、2 つの群に対して直筆アンケートを行った。1 つは、「理想的な個別支援会議モデル」を抽出するために、都道府県または職能団体が主催するケアマネジメント研修のうち、個別支援会議を想定した事例検討型研修の参加者を対象とした(研修調査)。もう1 つは、「個別支援会議の実情」を把握するために、個別支援会議が積極的に行われている地域の地域自立支援協議会の協力を得て、実際の現場で行われている個別支援会議の参加者を対象とした(実務調査)。

 研修調査および実務調査のそれぞれについて「個別支援会議の概念」を把握するために、アンケート調査について因子分析を行い「個別支援会議モデル」を抽出した。抽出された因子を「構造」「内容」「結果」「技術」の枠組みで整理したところ、研修モデルについては、「構造」として「ケア会議場面の環境」「ケア会議の召集タイミングと人選」「ケア会議の進行枠組み」が、「内容」として「生活の多面的理解」「他機関・他職種の相互理解」が、「結果」として「支援計画の具体化と共有」「当事者の参画」「連携の具体化」が、「技術」として「相互作用の促進」に関する因子が抽出された。

 一方実務モデルにおいては、「構造」として「ケア会議場面の環境」「ケア会議の召集タイミング」「ケア会議の進行枠組み」が、内容として「支援の評価と生活変化」「相互理解によるネットワーク形成」「生活状況の把握と課題の明確化」が、「結果」として「支援に必要な情報の共有と連携の具体化」が、「技術」として「相互作用の促進」が抽出された。

 これらの結果について、研修モデルと実務モデルを比較考察したところ、「構造」「内容」「結果」の側面において若干の相違が認められ、実務モデルの課題として考察された。また、「技術」に関する因子構造の相違は示されなかった。

 上記のことより、実務における個別支援会議の課題として、①個別支援会議参加者の「人選」のあり方、②事例の生活を「多面的に理解」する視点、③「当事者の参画」を反映する支援計画を策定することの3 点が示唆された。最後に、研修モデルを基軸として、個別支援会議の運営指標を提示した。


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